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渡邊豊和さんの講演記録
W: 講演会にもちろんスライドは持って行くんだけど、大体80枚がワンセットだ。今回は佐藤君が
若いときからズーットやってくれと言うから・・、
・黒い背景に「1・1/2」の模型を二つに割った横断面の大写し
会場笑い
こういう会合が好きなもんだから。そういうときは一杯持ってくるんですよ。普通の人と逆のやり方なんだけど、今日は
240枚持ってきた・・のかな。
会場 ホーゥッとため息がもれる。微笑みから期待感を含む笑いにかわる・・
全部やるかどうかはやるかどうかは別として、詰めちゃったからね・・これは1974年に出来たもんです。
設計するのに2年ほど。僕の建物は常に時間がかかっちゃってるから。・・・これは模型ですけど。これが事実上の処女作なんですよ。「1・1/2 」
いっかにぶんのいちという名前をつけてるんですよ。・・・
黒を背景に縦断面の大写し・・
観たら解るでしょう。左が1で右の方が二分の一になっている。地下に一回入って、上がっていく。1階から入れない事になっている。
イギリスの建築雑誌で「AD」というのがあるんだけど 。日本の建築雑誌と違ってヨーロッパの建築雑誌というのは美術よりも上なんですよ。建築はものすごーく地位高いですから。
今から20何年前ですから、その当時は丹下健三ぐらいしか載らなかったもんなんです。ぼくも載るとは思わなかったけど。
出来てから、
たまたまイギリスから留学生が来てて、向こうの留学生は年だから、30ぐらいの人だった。写真巧い人でねー。知らないときに写真撮っていって図面下さいと言うから、「はいよ」とあげたら。そしたら、
バカーと大きく出てね。それで有名になっちゃった。日本って面白い国なんですねー 。そうすると競争でくるんですよ。
会場 笑い
丹下健三か、あと一人二人しか載らない時代に、今は一杯載るようになりましたけど。そういう時代ですからね。
・・・ 1・1/2の立面写真スライド・・・
建築やってる人はわかると思うけど。こういう建物だったらば、今でもそうだけど新建築というのが権威のある雑誌なんだけど、そこに普通載っけるんだけども、僕はそれには載っけないで・・・たいした雑誌じゃなかったけど、この雑誌に載っけると決めたら、あとは絶対しないです
。約束したら必ず守るから。そういう性格なんでね。逆にそれで成功したんだね。 「
あの人はへそ曲がっている」ってんで
会場笑い
それから楽でしたけどね。
・・屋根立面のスライド・・・ 1/2の2階から見下げた内部のスライド・・・
二分の一になっている所が診療所で、奥の一の方が住宅なだけども、これは診療所の写真です。天井も高いので全部に写真撮れないんですよね
。2階の方ね。
・・・・ 階段を見上げるスライド・・・
写真一杯あつたんですけども、数が多いから、はしょってきてますから。一回地下室に下りてから、診療所の下を潜って、階段をトコトコと上がって行くと、8帖の舞台なんですよ。
・
・・天井にぼんやりした太陽のような下界の屋根に光の粒がのるスライド ・・
この写真解りにくいですけれどね、ドームの下に屋根のかかった・・ようするに、家の中に家があるの・・
会場から ため息がもれる
こんなこと、今やる人いるかもしれないけど。その当時、こんなことやるの、世界にいなかった。世界に誰もいなかった。そういこともあったから、イギリスの雑誌でも大々的に取り上げたんだと思うけど。
・・ w氏立ち上がりトップライトと・・屋上に光る粒を指さし示す・・
このドームのトップライトと舞台屋根のトップライトが垂直に一直線なんですね。なかなな面白いんですよこれ。光がこういう風に来るから。この絵は照明付けてるけど、照明付けなくても結構明るいんですよ。
・・中央に太陽回りに星の様なスライド・・
こういう感じですね。屋根は銅板です。まん丸い部屋があってその上にドームが乗ってる。四角いプランの中に丸があるから、部屋がいびつな部屋なんですよ。船に使う丸窓を使い。今はあるけど、このときは船のしか無かったの。当時捜すのが大変なんですよ。無いからね・・行ってこの分だけ買って付けた。完全な船のための窓なんです。これは。そこから覗き見たときの風景。
・
・・切り妻屋根の妻面の立面スライド ・・
これ2番目。渡辺豊和建築工房に最初に来た仕事がそれでしたから。それ建ったでしょう。こっちはそれで有名になったから良かったんですけど。
ところが設計事務所やったばっかりでしょう。でね仕事
よーたのみに来るんですよ。有名になったもんだから。それはよかったんですけど。「
どういうモン建てました」と言うからね。知って来る人もいるけど、ほとんど知らないと思うんですよ。
僕は物書きだから。若いときから新聞に書いてましたから。名前が有名だった。建築の以外のことを書いてましたから。(建築家)と書いてますから。
それだけで来るんです・・人。住宅頼みにね・・。で、どういうモノ建てましたかと・・さっきのモノしか無いから見せるでしょう。もう、
次の日こないんですよ。
会場 大笑い
それね、2年続いたんです。建たないわけ。
会場大笑い
今みたいに学校の先生やってると給料もくれるけど。そのころ設計事務所でしょう。佐藤君と一緒ですから。そうするとね。家内は学校の先生を辞めてましたから、
その時の貧乏は‐―‐つらい。
会場大笑い
全・然・収入無いんだもの・・。家でやってたわけじゃないですから。大阪で事務所持つてましたから。
そらぁーよく持ったもんだと今でも思うけど。これは何で言ってるかというというと、来た人で半分ほど設計しては逃げて行く人もいましたけれど。
会場大笑い
思ったモノと違うでしょう。だってこんなことやるからね。
さっきのようなモノばっかりやってた。今でもそうだけど。
極めて過激な建築家だけど。今でも
石山修武か渡辺豊和かと言われてるくらいで、過激な建築家ですから。でね、こつち飯食えなくなってね、
もう何来てもやってやろうと思ったんです。
会場笑い
産経新聞で住宅相談をその頃やっていて、ぼくはレギラーだったんですよね。一杯来ましたよ。来たけど、スケッチすると変なスケッチになっちゃっうから、まあいいですと・・行っちゃうわけ。この人だけは絶対モノにしてやろうと。
普通の家の格好してるでしょう。
会場大笑い
これいいな・・となって、
・・会場 普通の家・・笑う・・
南面の普通の家の立面スライド・・
ごく普通ですよね。だから成り立ったわけですよ。
・・玄関上部見上げスライド・・・
これ玄関の手前ですけど、上。まだガラッと戸を開いてないんですよ。
・・ホール見上げ・・
開くとこれですよ・・
会場笑い
またこれもイギリスだったかな、これも大々的に出してくれた。「
仮面の家」と言ってるの。何が面白いかと言うと。
世間体
会場笑う
これ奈良県なんです。
奈良県は古いところですから。瓦屋根でないと、隣近所の人に後ろ指さされるんです。僕も奈良に住んでるから解るんです。「
解りましたと」外は世間体。で、施主に「
内側やってもいい」と言つたんですよ。「もちろん良いです」と
会場笑う
こういうことやってると知らないからね。
ガラッと開けたら全然違う。
会場 いいねぇー
僕は名前の付け方が巧かったんだと思う。もともと
小説家になろうかなと思ってたから。多分巧いと思う。「仮面の家」」解るでしょう。
会場笑う
仮面は普通の仮面で内側は違うから、
ジキルとハイド。あれ、パーツと浮かんだ。ジキルとハイドやってやろうと。題名と根拠が非常に明快だから外国の雑誌も判ったんですね。
・・列柱ホール見上げスライド・・
こういう感じ。これは面白いと・・
一寸奥に入って行くとおとなしくなる。まだ下もある。これはここでお終りでなくてズーット下があるんですよ。
会場笑い
2階分で下の方が谷間になって、
カゥーッ・・とある。
会場笑い
90センチの谷間で、高さが4メートルぐらい。カゥーッとある、強烈ですよ。
会場笑い
友達の建築家を連れて観に行ったの。黙ってたの。ビックリすること判ってたから。「
大したことないじゃない」といつた顔してるわけ。「
今に見てろ」と、そんでガラッと。「
あアーっ」
大笑い
と、それで一瞬動かなくなった。内心
「ざまーみろ」と。
会場大笑い
有名な建築家だけど、名前言いません。
これが2作目。その間
2年間仕事が無くて、ーね。ついに。一回ね。「こーなったら
乞食するしかないな」と思ったことあんの。大阪に心斎橋というところがあるんですよ。橋の上に乞食がいて、今はいないけど、モノもらってるわけ。
子供を連れてその気にさせよと思って連れていつた。覚えて無いらしいけど、自分の親父つて変な親父だと思ってる。今でも寄りつかない。上の子は貧乏よー知ってるわけ。ズーッと貧乏その時極端やったから
笑いが続く
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