HOME 作成 佐藤敏宏 |
聞き語り記録 福留愛さん(SDL2018遠方参加者)に聞き語る |
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07 人を解放する窓 新しいものを創る |
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佐藤:動画発表だったんですか 福留:アニメーションにしました。でもガタが来るんですけど 佐藤:まど・みちお 平仮名表記なんだな。このおじさんが岩田道雄さん 福留:自分は人の窓になりたいと話していて、まど・みちおは絵も描いているんです。 その絵と詩のテーマとして「自分は名前の後ろに隠れている、そのものの本質に少しでも近づきたい」というふうに話していて。 彼がなりたい窓というのは「人々を解放する窓ではないか」というふうに考えました。 佐藤:福留さんはそう受け止めたと。 何から解放されたいんだろうね 福留:場所から解放しようと思いました。 通常は建物の外周面にある窓というのが、内側に入り込んできて、色々とぶつかり合ったりとか、交差して分岐してっていうことが起こって、それによって出来た空間が、展示空間になっています 佐藤:まず開口窓をあけてから、窓から発せられた楔型の向はどういうルールで決めたんですか 福留:なるべく同じ景色にならないようにだったり、ここから見ている景色なんですよ。 佐藤:内側から外に向かって見ると。上の絵は塗りむらがあるので、最初の絵は中心が凹んでみえて、丸い茶碗のように見えてしまいました。描いた図の見え方はさほど気にしてないの 福留:淵を暗く塗ったら立体的になってしまったんですけど 佐藤:そうか、奥行きが出て見えてしまうと、これはダイアグラムを描いて 福留:これが平面図です。 工夫している点は、ここからスロープで上がっていって、またスロープで上がって、スロープで上がってこのレベルがあるんですよね。 敷地が、すこし低いんですよ。スロープぜんぶ通して高さ8mです。スロープは車椅子で上がれる勾配にしました。 佐藤:スロープの下は行き来しないのね 福留:はい 佐藤:登り切ったら行き止まりですか 福留:いや、一度景色が見えるです。 扉が有って再度入っていって、この入口からは全部展示室なんですよ。このボイドの空間っていうのが、階段だったりスロープだった。 階段を上っていくと、ちょっとレベルが上がった部屋が在ったり。ここは下がって行って部屋があるんです。 ここは抽象画の部屋だったり、まどさんが暗い時期の空間というのが、この間に出来ています。 ここは戦争の空間、戦争の時に書いていた詩をここに飾ったり。空間の明暗の表現。 一筆書きで天井までのところを工夫しながら、実際は人はここを通って近道していくだろうなーという道も在ったりして。でも人は自分の場所がよく分からなくなってきて。見える景色も断片的でというところから、人が解放されるような空間というような。これが登っていくスロープの場所で 佐藤:解放されるたり、囚われたり。どちらにも行ける空間になっている。見え方が多様に異なっていますと 福留:ここから、平面図での場所の位置で 佐藤:説明聞いていると、2分じゃプレゼン時間が足りなかったね。模型は粗雑に見える 福留:1/200で作っていたので 佐藤:手描きの絵の方がいい感じだ。全部手描きじゃだめなんだっけ。模型を必ず提出しなければいけないの 福留:いや、でも模型が無いと 佐藤:審査員に見てもらえないかな。絵の密度と模型の密度が違い過ぎるね。 福留:模型では全体像を示して、他はパースで。これはコンセプト・パース。窓、このパースが窓と詩の空間というのを示しているんです。 結局、実際仮想で描いているんですよ。こんなに空間が一気に見えることはないので。これで、一つの視点から立って観ると本当は凄い壁が収まっていく重層しているような空間が在るっていうパースです。そこに詩が一杯重なっている。 佐藤:模型では壁を透かした表現に仕立てられないので、手描きにして壁を透かした表現にしたんだと。 福留:もっと伝わるような模型の作り方があるんじゃないかと思います 佐藤:作りたい空間は平面などを見ると分かるけど、伝え方に難があるね。絵と模型の融合に工夫が要るね。 福留:説明はざっとこんな感じです 佐藤:最後に変わってる、コンセプト絵があったけど 福留:まどの宇宙の絵です。平面を一点透視で描いたときの窓の場所です。 佐藤:窓の配列を一点透視で描いたんだと。繰り返しだけど、手で描いた絵の質と模型の質の差が気になる。30枚、手で描いた絵の方が魅力的。プレゼンはこんな感じでいいですか 福留:伝わりましたか。
佐藤:まだ体験した事がない建築だね。窓を設えることで、まどさんの作品と周辺の景観とが連携して、作者の全体を追体験しようと、洞窟迷路じゃない建築かな。エスキス塾に参加してプレゼンして五十嵐太郎先生の講評は覚えてますか。 福留:新しいというか、新しい形式への意欲を感じるみたいな。私はさっきも言ってたんですけ、既視感が無い建築を心掛けていたので、五十嵐太郎さんに、そういうふうに言われたのが、意外で、自分って知らないことが一杯あると思っているので。凄い知っている人からそういうふうに言われたのが、凄い印象的でしたね。 堀井さんがパクるとか言ってましたよ。ふふふふふ。凄いショックだったみたいな事を言ってました。 佐藤:建築に対する構え方が堀井さんとは違うので、遊びというか、悦脱するというか、そこに辿り着いて、さらに抜けだせない人もいる。 福留さんは新しい形式に向かう意欲があると言われたんだけど、勉強して、そこへ行けるものではないからね。福留さんは世界の建築書を読み切って、理論書を読み尽くして、既視感の無い建築、そこへ到達したわけしゃない。知らなかったけど新しい形式へ踏み込んでいた。 福留:ふふふふ 佐藤:新しいとか、パクるとか、福留さんはごく素直・当たり前に到達した建築。肩に力を入れずに獲得できていたのは、よいね。 福留:私高専出身なんです。熊本高専です。 佐藤:途中編入したんですか 福留:そうです。高校一年生から設計をやっていたので、普通の大学生よりは、長いんです。なので知っている事も多くって、なるべくなぞらないように、意識してやっている 佐藤:なぞらないってどういう事ですか。普通は憧れた建築家の作品をなぞる、似せたがる、そこから始まると思うんだけど。模倣は一切しないの。 福留:新しいものを創る そこに対しての憧れがあったのかも知れない。建築家が新しい建築を創ったときに、感動する瞬間みたいなものを 佐藤:新しい、っていう定義はあんがい難しいね 福留:何か揺さぶられるような 佐藤:中田審査員の「ショックで死にそうな」と同じなの 福留:ははははは。 佐藤:パソコンを駆使してアルゴリズムから捻り出してる感じはない。紙に向かい、手と脳味噌と目とを使って、この案を組み立てて行ったのでしょう。スタディーも迷いまくってないし。何十枚も描いて出て来たって感じもないよ。 福留:何十枚は描いてないです 佐藤:この形式に、迷いなく、すーっと行き着いてる感じがする、そうでもなかったの。この平面を生み出すために。 福留:一枚目はすーっと行きました。 佐藤:進んだでしょう 福留:ここから、案に来るまではかなり考えました 佐藤:一枚目から最終案までジャンプする。その一枚目は無いんですか 福留:模型があります。 その08へ続く |
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