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聞き語り記録 
中谷圭佑 SDL2018実行委員長に聞き語る
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07 審査員の代理戦争
   SDL課題あれこれ

 07 
審査員の代理戦争

佐藤:渡辺顕人作品が日本一に選ばれ、それに対する決戦後の大ブーイングは中谷実行委員長の意図通りに言葉溢れることになり、すごくよかったなーと
中谷よかったと思いますし、ここから学生がどんどん学生という立場を戦略的に使って発信していく土壌が出来ればいいなと思っていて。
 さっき言ったようにファイナルって審査委員の代理戦争の状態なんですよふふふ、審査員の人たちも自分で自覚してやっているし、自覚して「これが一位になれないと、分かったからこれを推す」みたいなやり方をやってらっしゃるので。

 じゃー代理戦争をさせられているっていうのを学生側が分かっていたら、立ち回りとしてもっと面白い立ち回りができるだろうと思うし。聞かれたことに愚直に発言し、それを使ってじゃなく、それを学生側もある意味で審査員を使い始めたら、そこで生まれる議論っていうので、一つ違う次元にいけないかなーと思っていて。
佐藤:有史以来の人の体験や言葉を集めたり、つないで、組み直して自分が出来ている幻想だけど。そういう意図で違う次元に行きたいんだ。完全な作者のオリジナルは無いでしょう。中谷実行委員長の意図でいいと思うんです。だが、審査員がそう思っていない、その組合わせ、誤配は面白いんだよね。

 最初に戻って、大学とSDLの評価軸は違っていい。研究者それぞれの価値判断で学生の教育をして学生を鍛え続けていただくと。「日本一に入選したけど、あれは、しょぼい学生だったから、うちの大学はレベルが高いねー」というようなTLが落ちて来ました。先生がSDLに便乗しTLで流すのは拙いと思うんですけど
中谷まずいですねー



佐藤:大学内で評価されないがSDLで評価されたので我が大学の教育や学生のレベル高くって凄いねっていう発言も拙い。
中谷それは変な話ですね
佐藤:教育現場の自信がない、その表れなのかなー。嬉しすぎて口を滑らせたのか〜と想ったりもします。大学の先生には教育術や自論を磨いていただき、弾かれた、先生がはじき出した学生が勝手に他流試合に臨んで、高く評価されるのはいい、認めましょうという構えですよね。
中谷それでいいし、フィードバックとしてのSDLをちゃんと持ち帰って、さらに磨くっていう相互のプロセスがあれば建築教育自体もどんどん盛り上がっていくとは思うんです。現状は拙いですね〜
佐藤:フィードバックされず、が現状。なら大学教育をたんたんと磨いて頂き、SDLと価値が分かれて存在する方が、学生にもいいと思う。
中谷:もちろんフィードバックしたものを、こっちに転換しようじゃなくって、大学という自分の軸があった上に、こう来たんだけど、それに対して自分の軸はどう対応していくかっていうものが、そこまで大げさな大会でもないですが。


SDL課題あれこれ

佐藤:大学教育の現場は、SDL に影響されず各大学独自に研鑽していただければそれでいい。大学内の教育内容が見えるように開いてもらえるというか、共有のために何かは要るね。それも課題の一つ。

 話を変えます。学生会議のメンバーはSDL終わって温泉で大宴会してお仕舞ではなくって、今年残った課題に関してです。課題を抽出するための語り合いと記録が残されるといいんだが。「終わった頑張った楽しかった」という記憶しか残らない可能性がある、楽しいお祭り参加しました〜でいいのかも。


絵:仙台建築都市学生会議 ブログ 20180328~0329 追いコンより

中谷:仙台がただ終わって、妙な高揚感がどんどん薄れていく。実際にあった結果としてのハイコントラストな会話の中身がぼんやりしていくのがもったいないなーと思って。
佐藤:SDL2018に関する学生会議は3月で終わらず、結果を語り合いまとめて残すまで、数か月費やすのがよさそうだ。新旧が重なって存在している時期が要るようですね。
 何度も言ったけど、年度ごとに、ぶっつり切れてしまってる。ぶつ切りでバラバラになっている。SDLを調べようとしても、思い当たる人や情報が見つけにくいです。繋がっていないんじゃないか〜。
中谷そうですね ふふふふ
佐藤:テーマと審査員の選び方をもう少し話してもらえますか。宮城大での青木委員長の質問への回答ショックに打たれて「テーマをなくす」を選んだんですか

中谷:元々は、最初にオファーを出していた委員長は青木さんではなかったんですね。学生会議の中でなんとなく「審査員は誰がいい」という投票みたいなことをして。一度〇□さんお呼びしようと話は固まったんです。「どうやら〇□さんはその時期すごい忙しい」っていうことで、改めて「審査員長だれがいいか」議論の中で青木さんに決まって。
 学生会議全体としては「審査員の方々6名を、だれ選ぶのか」っていうのは凄い話を進めてはいて。「どういうジャンルの人を呼ぶべきなのか」例えば磯さん「ジャーナリズムの側の人を入れたら面白くなるじゃないかなー」ということでさん。あとは構法みたいなところから門脇さん。最近色んな所で議論されていらっしゃるし「呼んでみたらどうなるのかなー」みたいな。
 全体的に年齢層が高くならないようにはしている。年齢のばらつきはあるけど、50歳、60歳の方々が集まっちゃうと、どうしても対立構造になっちゃいそ〜怖いなーと思って。ある程度ばらつかせながら。



佐藤:若い人だけでどう「審査員は30歳前後、または40歳まで」と決めて審査選択するのもよいかと思います。ですが若い人は建築メディアへの露出が少ないので、知る手がかりが少ない。
中谷:そこは難しいと思いましたね中川エリカさんを呼ぼうとしていたんですが、中川さんも「時期が難しいから」と。若いけど色々発言をしてらっしゃる方を探しました。
佐藤:そうそう、審査員、女性一人でしたね
中谷:今年はそうでした
佐藤:建築家を選ぶのか、教育者を選ぶのか、兼ねている人を選ぶのか、アート系で他ジャンルの若い人を選ぶのか、そこはどうですか。
中谷:全然違うと思います。プロフェッサー・アーキテクトかどうかでも全然違うし。
佐藤:教育に関わらず、実践・建築家で生きている人は個性的ではあるけど。手探りの学生にとって有効な人選か。そこは疑問だけど。審査員の選出は悩ましい課題の一つですね。
中谷:毎年、毎年、議論して決めるけど悩ましいし、正解はいまだに分からないですね。当日ふたを開けてみないと分からないっていうところがあるので。そこは割り切って選んでます。

佐藤:予選の審査員名を見ると、東北大の先生とその仲間たちになっているのはどうしてですか。学生会議が決めているんですか
中谷そうですね予選の審査員は学生は決めてないですね。もともと仙台建築都市学生会議のアドバイザリーとして結成されている先生方が予選審査を行っている
佐藤:予選審査に役所の建築家とか、組織の建築家とか、施工会社の建築家とか、設備のプロとか、各支部長とか入れると、金集めでも有効に機能するだろうし、実建築社会の声も拾える。多様性も出るので、色々有効だと思うんだけど。100選決めの予選審査員を多様にするのはどうですか。
中谷:それやったらたぶん予選の審査すごい面白くなるとは思うんです。そういうことを提案すると「そうやってわざわざお願いするんだったら、予選じゃなく審査員じゃなく。予選お願いしますっていったら、頼み方は失礼になるんじゃないかなー」っていうことを言われたり
佐藤:失礼ですが、それでもやってもらえませんかと当たって「失礼な!」と言われたんじゃないですよね。建設業界の会長さんとか、JIA宮城支部会長さんとか、建築士会会長さんとか、設備業界の偉いさんとか役所の土木部長さんとか、人によるとは思うけど、若い学生さんと交流出来て喜ぶんじゃないかなー。「失礼な俺はひな壇にしか上がらない」って言われてから諦める。一度上げてみたら。100選予選の最初、そこが閉じているので、どうしても閉じた、固定されたベクトルを内包してしまっているのでしょうか。
 課題の一つ、参加する学生の動機が分からないんだけど。ファイナルストに残りたいだけなのか、エスキス塾のような言葉を得るための、語る場を求めたり、著名な先生からコメントをもらいたいのか、不明ですね。


 (絵:エスキス塾の様子)

中谷最近はエスキス塾みたいなものの方が求められているような気がして。たぶん五十嵐太郎先生自身も、それを何となく感じとって、本戦の審査員をずーとやっていらっしゃったんですが、本戦から抜けてエスキス塾を立ち上げて。
 今エスキス塾が人気の企画になっている。何となく学生の心理として、そういうところはあるだろう。
佐藤:エスキス塾をたっぷり重ねて、その後本戦になるのもいいかも知れないけど、1週間ぐらい時間をかけないと終わらないでしょうね。
中谷:なんとなく学生の中で「100選に選ばれるのは実力だ」と。それから「10選を経て一位になるのは運だ」みたいな話があって。そう捉えられてしまっても、しょうがない様なファイナルの形になってはいます


 その 08へ続く