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聞き語り記録 
中谷圭佑SDL2018実行委員長に聞き語る
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05 SDL2018について
   失敗することに成功した
   プロセスが面白かったらいい  
   転戦し続ける学生





 05 
SDL2018について

佐藤:ここからはSDL2018の概要などを教えてください
中谷:先ほど言ったとおり1年間かけて用意をしていて審査員を呼ぶために早く動いたりお金集めのために早く動いたり。それもあるんですけども、毎年「テーマを作っていて。「学生会議としてテーマを何にするか」っていう議論に凄い時間をかけてます
 例えば、後でもお話しますけども、題は「テーマをなくすなんですね。前の代は「境界をとく」だとか、昔は「建築を叫べ」とか。毎年ポスター・フライヤーも学生会議が作って、自分たちでデザインして、ポスターに載せるテーマとそのテーマに関したポスターデザイン・フライヤーデザインであったり。
佐藤:中谷実行委員長が選んだ「テーマをなくす」というテーマ
中谷:そうですね、テーマとテーマに沿った大会のコンセプトみたいなものを決めて、それに合わせて会場のデザインだとか壁面のデザインをするんです。
 「このコンセプトに合った審査員をお呼びしようか」という話を通して、審査員を決めています。

 Diploma×KYOTOは卒業設計する学生が運営をしているので、動機が明快だと思う。「自分の卒業設計を誰に観てほしいか」で審査員を選ぶことができる。
 SDLの面白いのは卒業設計をやったことない学生たちが集まって、卒業設計大会の運営をしていて。なので、「卒業設計ってなんだろうね」みたいな話から始まって、「なんで卒業設計するの」「なんで卒業設計なのに日本一決めるの」みたいな話をしていって。

 そんな議論の中で、卒業設計の、その人の人生の中での位置づけはなんなのか、それが社会に出る足掛かりなのか大学生活の集大成なのか、どういうものとして位置付けるんだろうねー。卒業設計を通して、自分の言いたいことを言うのか、それに対しての意見を取り入れるためにやるのか、みたいな話をしたり。
 卒業設計大会として、そこに出品することによって何が得られるんだろうねー、どうしていくんだろうねー・・・みたいな話をつらつらとして。

 それを自分たちの運営するモチベーションだったり、出展していただく方のモチベーションとして、どういうテーマを設定しようっていう話になっています。


 (絵:学生会議ブログより)

失敗することに成功した

佐藤:SDLに対して一人の個人・学生自身から見た内容の話だけですが。それでいいように思うけど、同様な学生がたくさん集まって来た時に違う意味も発生すると思うんです。そこで学生と審査員などの、大人がまじり合った内容については棚上げされてますか。
中谷:テーマの後、審査員の話とかは、「どういう議論が展開されていくだろう」その話しはするので、「建築卒業設計の日本一なんだけど、他のジャンルの人を呼んでみよう」みたいな話は来るし「そうすることで問題はなんだろう」 「新しい評価軸をつくることがSDLの目的なのか」それとも、卒業設計の日本一っていうのが文字通りの日本一で、その人がその後、建築の業界で、凄い最前線でやっていくような方を、見極めるような大会なのか、みたいな話もしてて。
 SDLはお祭り的な要素があるのか、凄い厳格な祭典みたいなものなのか、それらを通して、僕らはSDLをどういう大会にしたいのか、っていう話をしてますね。
佐藤:学生会議の、年度別テーマ決めによって、その年度のSDLの質などのベクトルが決まるわけですね。学生会議での学生さんの議論が低調・不調であると、大会はそれを写してしまうね。
中谷そうなってしまう ふふふ

佐藤:「SDL2018、テーマをなくす」に至ったその経緯を聞かせてください
中谷:テーマをなしにしようとしたのは、元々テーマについて話をしているなかでテーマが全然定まらなかったというのがあって。
佐藤:多様な意見が出過ぎて、で的が絞れないということですか
中谷そうですね。でじゃーテーマって何んだろうって考えたときに、たぶん僕らがばーんと打ち立てるものっていうより、大会が終わってからじゃないと見えて来ないものだよねーっていう事は分かって。そういうものだと。
 大会が終わって、そのときの議論の中で、その年のテーマが見えて来るものだから、それをあえて断定して狭めてしまうのではなくって、いっそう無にしようぜと。あとはどういう話だったかなー。
 なので今年のファイナルは言葉を借りるならば「失敗することに成功したみたいな。
 テーマというのが、一番最初、2003年から始まって、2005年から出たのかな〜。どこかのタイミングでテーマが出たんです。
 その頃は「盛り上げるためにテーマをつくろうぜー」みたいなものが、10数年という時間の中で段々形骸化していって、引き継いだものだから「じゃー僕らもテーマをつくろう」みたいな事がずーと起こっていた。そんのな気がしていまして、SDLの色んなルールだったりも、形骸化しているものが一杯あるような気がしていて。
 で、テーマを無にして審査員でどういう審査をしようかと。で審査員を呼んで結果として、こういう誰がどう見ても、会う人会う人にあれは日本一じゃないだろう」みたいな事を言われるんです。


 (SDL2018 日本一位 渡辺顕人さん卒業設計動画)

 今回はテーマを無しにして、逆にテーマがあると、何となく僕の中で、テーマっていうものが一つ、これを軸に評価しましょう、というようなものの気がして。
 それをある意味今回は取っ払ったわけじゃないですか。取っ払うと色んな大多数の人が聞く側から、語る側に転じてきて
 なので観客、見ていた人はどんどん「いやあれはこうで」「それは違うんだよ」「お前はあっちが日本一だと思っているけど、これが日本一だよ」「でもなんだかんだ日本一だと思うよ

 みたいな議論が巻き起こった!その後の呑み会も人がなだれ込んでいましたし。審査員の方々もすごい議論をしてくださって

 SDL2018はちょうど、僕と企画局の局長が主体となって建築学生サミットを同時並行でやらせていて。そっちの関係でも、すごい「SDLとは何か」みたいな話を盛り上げることが出来た

 建築系ラジオにお願いして、松田さんをお呼びして。「SDLを運営しながら同時にSDLを批判する事ができたらおもしろいよねー」みたいなところから、全国の学生団体に僕らがアポとりをして呼んで。建築学生サミットをやって。延長戦もしました。
 建築系ラジオで延長戦というのがあったんですけど、あれも僕の方から呑み会の中で松田さんに「これだけ審査員の方が言ってくださっているから、今ラジオ録りましょう」って。松田さんにお願いして、審査員を集めて、辻さん赤松さん五十嵐淳さんに語っていただいて。
 ある意味全員が議論の場に立てた、議論の場に立てる媒体となった。それをするためにテーマを無くそうとした。

■ プロセスが面白かったらいい


佐藤:学生や審査員の赤裸々な言葉を引き出することに成功したと
中谷:そういう意味では成功したけど。最初の議論のはなし、テーマの話で、「卒業設計なのに日本一って」すごい引っ掛かって。日本一、なんて決めれないものじゃないですか。
佐藤:青木審査員長が頭から仕舞までずーっと語っていました



 (審査後の呑み会の様子)

中谷:青木さんも語っていましたけど。昔だったら、例えば、でか山みたいな、誰がどう見てもすげークオリティーで突き抜けるものが出てくるのか、そういうものを目指すのか。じゃなくって今回はテーマなしで日本一を決める。プロセス自体が面白かったらいいんじゃないかなーと思って。

佐藤:多様な議論を期待し出品した須藤さんからは低評価でした。中谷さんは非常にうまくいって、面白いSDL2018であったと。
中谷:今年は議論の展開に関しては、これは運営側の問題でもあるんですけど。ファイナルの審査時間もうちょっと延ばせたような気もしていて。
佐藤:時間割り通りに進行せず、議論の時間を長めにして論じ合う方が盛り上がったと。
 それもですが、ステージの対面雛壇形式。離れすぎている距離が議論を起こさない構造になっていたと思います。会場の形式が悪かったですね。

中谷:あれも前時代的なメディア形式だったので。そういうのもあって。ああやるとテレビで放送する側的には動画を撮り易かったりもするです。
佐藤:そうか、前時代的なTV媒体のコンテンツ撮影のための形式だったんだ
中谷そうです
佐藤:議論を起こすためのステージ形状になっていない、拙かったですよね、これはお茶の間へ届けることがメインになって、お昼のワイド・ショーの一つの素材だったんだ。(収入にカウントされていない、TV局はただ撮り放映か)
 学生会議の本意としては壇上で議論を起こして欲しかったが、不発だったと。SDLに関してなんとなく聞いいて「阿部仁史さんがもうやめろ」と語れば終わることも出来るだろうと思って、色々見て聞いてみようとも思いました。
 聞き取り後は「やめず改善して続ける方が仙台の学生さんたちにはよい」という考え方に至っています。学生がSDLは何のためにするのか議論し続けることが肝でした。こちらの方が重要です、メディアテークを借りて合計3年間もの長い間、仙台の学生と集まり自主勉強が出来る点を祭りより評価すべきだとおもいます。
 審査員の話も出たし、現実の社会との関係も出たし、SDLは学生、先生、大学、実社会の連携がほぼなされてない、4つほどの領域の人々が緩やかに繋がっているそのことも分かりました。
 多数の学生が集い来て年度末のお祭り。上手に騒いで活かす方法を、全体で考えて語り合い記録を残すのがいいな〜というこです
中谷そうだと思います


 転戦し続ける学生

佐藤:色々聞かせていただいて、まだ分からないことはSDLへの出品作品を学生さん、がさらに別の展示会に移動・配送して同じような場に参加し続ける。あれは何ぜでしょうか
中谷ふふふ そうですね
佐藤:出品した学生にとって、そこに最重要な意図が隠れてあるんだろうと思うんです。仙台スターだと語る者にも出会いました。名前を売って、自分自身で建築スターの階段を上るために一段なのかな。スター建築家になるための一歩を記す行為。建築という学問を極める一歩なのか、学外評価をえたいのか、観てても分からない。同じような場に出品して、人生一度の卒業設計なので、著名建築家などに言葉を多数もらってどうするのか。楽しいのか、転戦熱が湧き上がる動機が分かりにくいです、転戦病ですか。 
 TLなどで落ちて来るその後を追って見て、1年中開いてたら、追っかけ続ける学生も出て来てしまうのではないかと想ったりしちゃいました。一生それを続けてスターになっていくのか〜な。大学内で評価されても、学生はなぜSDLに出品し審査員のコメントを何時まで求め続けるのか、分かりにくいです。高い山がある、在れば登る、展があれば出品する・・のかな。

中谷旅、巡業をして・・・ふふふ


 その06へ続く