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聞き語り記録 中谷圭佑 SDL2018実行委員長に聞き語る |
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06 実行委員長の意図どおり 予選得票数は単なる目印
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佐藤:転戦し続る動機は不明のまま残りました。著名な建築家などにコメントを頂いて、そのことで自分の悩みを無くし励ましたいのか。日本の教育現場では先生が答えを与え続けるので、大学入学後も他者承認を求めてしまうのでしょうか 中谷:それはあるんだと思います。他者承認と、あとなんとなく有名な建築家だったら、自分の答えは知っているんじゃないかと思うような人がいるような気がして。 そう思ったのは僕自身、昔そう思っていて。ですが、今回審査員長でお呼びした青木さんが宮城大学での対談のとき忍び込んで質問をしに行って。質問したら「僕も分からない」って言われて。 「じゃーどうしていこうか」そこからある意味、自分で気付いてなかったけど「有名な方は知っている」と思っていたような自分がいたので。その事にその場で気付きましたので。 もしかしたら、そう気づく機会が無いのか。色々な建築家の本を読んでいて「この本を書いた人だったら、ぼくの考えを上手く言ってくれるんじゃないか」みたいなのがモチベーションで出す人がいたりするんですかねー。それと色んな人に意見を聞きたいっていう心理だとは思います。 佐藤:実行委員長を続け審査員も多様であると知った。人間として生きて行くために自分はこうありたい、評価軸はこうしている、こう考えている。それは社会状況も変わり続けるので、自分で探したり壊して、作り続けていくしかないんだけど。高度成長期なんかは単純で単一の価値、そうでない時代もあったが。 人間の思想の可能性を発見するために、建築を実践している人もいるだろうし、実社会で実利を得るために、他者の役立つ設計してまとめ上げ、認められたいと願って実践している人もいるだろうし、研究者として日々実践している人もいるだろう、建築界の権力闘争に励んでいる人もいるでしょう。それぞれの領域で長い間、生き続けてしまうと硬直化に気付きませんからね、ここまでに得た価値が絶対であると思い込む傾向は強いと思うものです。島宇宙の快楽でしょうか、年を重ねるほどそうなる。 IT革命の成果がもたらす変化し続ける社会の中では、その時成立していた他者も発注者も社会も、あっというまに消えてなくなる。体験してい得る社会とか建築とか人間とか発注者という事態は人が思い込みたいよりずーっと短命なんだと思います。自分の実績を学生に押し与えたり、社会や人が無い作品だと決めてみたりもできる。決めつけて言えちゃう島宇宙の住人、そのような人間の面白さもある。 若い学生さんが、尊敬しり、多様な人間を見て笑い合うという事態がつくられるなら、SDLの場はいい。テーマが無いSDL2018は、テーマ無なので、その影として審査員がまとまってなくて、多様で良かったという言い方もできますね。 中谷:悪かった〜とすごい分かるのは、最後の決まり方がよくなかったな。やはり。あの後にもっと「どっちかにしましょう」となったじゃないですか、決戦投票みたいになった。 佐藤:一回目の投票は大きな〇と小さな丸の3票を投票し合った。全部で21票の配分は、0票の作品から4票の作品までばらけた。「建物語」は1票だったんだけど一位の決定時に二位滑り込んでしまった。その事で、SDL決戦の場自体は崩れ分断し混乱してしまった。(票の移動が起きたあたりから審査録) 一位を決めるための投票の後に時間が無かったことで、二位は横ずれ的に決まってしまった。委員長の「一位をきめましょう」という提案によって、審査員が揺れ動いてしまって雪崩が起きたように二位三位も決まった。だから観戦者たちなどへ消化不良症状は蔓延してしまったのでしょう 中谷:これは僕ら、運営側がもう少し、それこそ真ん中の梱包表彰は要らなかったですね。あの15分が加わっただけで、手を挙げて多数決にしましょうとなった瞬間に「いや待て、待て」と誰かが待ったをかけたら、もう一段落、一転回あったような気もします。 佐藤:そうかなールール内での祭りなので、異議申し立てが始まろうとした瞬間に、一位を獲得した渡辺顕人さんは意図を持って発言しました。「僕は一位じゃなくって、ぜんぜんよくって、ここで一位とっても、べつに、建築家になれるわけじゃないし。建築家って職種もあいまいになって来ると思うんですけど」と。その発言によって、彼は反論や議論を抑え込んでしまい一位を手に入れてた。(360番 私の評価軸) そこまで言うなら一位でいいじゃん、という空気を作った、渡辺さんの勝負勘が全体のばらけそうな空気を締め直し、自分の評価にまとめてしまいました。渡辺さんの発言は効いたわけです。 学生自身が駆け引き出来る場として、彼の勝負師としての本領を発揮した姿は見習ってもいいのでは。その事はもうすこし評価されるべきだと思います。彼は今後の学生展における「コンピューテションの流れを作ってしまいたい」という意図でしたから渡辺さんの勝負の場にしちゃいました、あれでは皆なが彼に負けたんですよ。認めたくないのは理解できるけれど。 嫌がる者も多いのは知っている中で、ファイナリスト・参加学生自身が今後のSDLの流れを作ってしまった価値は認めてもいいんじゃないですか。旧来の建築村では彼のような学生の出現を恐れて、今後のSDLを憂うる人も大勢あぶりだした、その功績も認めたいです。彼はこれからも厳しい建築暮らしになると思いますので。 分かり易くは、あの場ではヒューマンとアンチヒューマンで仕分けして語られていました。簡単に言うと中谷実行委員長の「テーマなしが生み出す混乱」が意図通りに大成功した事実だったんですよ。 中谷:ある意味では、そうですね。議論を活性化するという点においては成功した。議論を活性化って、議論を通して色んな人が繋がるような気がしています。 僕自身も会場で中指立てた学生と一緒にばったり会って。
佐藤:Hさんですね 中谷:そうです。彼と語りながら会場を回ったり。 佐藤:彼が中指立てた絵を投稿したのは、100選の予選で票がたくさん入ったのに100選に入らなかった。その事に対して怒りの表現だったのでしょうか 中谷:そうですね 佐藤:一位の渡辺さん選びの時の票の価値と同じで、票が入ることと10選に入賞したり、一位に選ばれることとは連動しない。票はあくまで目印。そのことが理解されていない。だから起きてしまう中指立てた異議申し立て。 最終的に決めるのは審査員同士の議論。そこで決まるんだということです。でも、その都度、各審査員が、なぜ選んだかを各作品にコメントしてない。総評もせず終わってから喚いて板審査員もいると聞きまいた。だから審査員も票の意味を理解してないという証ですよ。」 Hさんは票の価値が不明になり、異議申し立て行動まで起こしてしまったんですよ!票と、選び決めることは違う、連動しない。ここで確認しておきましょう。 中谷:あれは僕自身も言ったんですけど、あのマークだと票数が多い人が選ばれているわけじゃないのに、あくまで見え方としてファイナルの場はマークが多いとか、最終的に選んでます、みたいに見えてしまった事がある 佐藤:参加学生に対して票の可視化の意味を正しく伝えてなかった問題。あくまでも参考。票が多い作品を10選などにて決定することではない。 中谷:そこは凄い問題だったなーと。 佐藤:仮の目印みたいなもので、目印が多いからって選ばれるわけじゃない。そこは共有されていなかった、プチ悲劇ですね。 「競り」の場も見学してましたが、雰囲気だけで、聞き取れないので、ほぼ不明でした。「予選票の価値」は本戦でも無いんだけど、総評と決定時議論がされないからそう決めつけても言えない 中谷:ふふふふ、そうですね。 佐藤:目印で入れた票がけど「時間が無いから」って「えいやー挙手で決めたしまった」。なので不満が噴出してしまうのは実行委員長・責任者としては言っておかなきゃいけない。建築系雑誌に投稿するとかして表明しておかないといけないのではないかな。 SDL2018で起きた参加学生と審査員の齟齬やもつれをどういうふう解いていって、次代の学生さんに伝えて活かすかです。次の代の学生さんは「卒業設計ってなに」からスタートすると 中谷:ふふふふそうですね 佐藤:20、30年後に実社会で「SDLのような議論の場をつくって、実施コンペも選べ」という発言もしていくことでしょう。 国立競技場のコンペの惨状を知っているでしょう。「日本では、ゼネコン設計施工がよい」と国家イベントで明らかにされてしまった。明治初期の建築状況に戻るんでしょうね。多くの主権者からも国際的に活躍している建築家なども不要に見えてしまいました。設計施工で工期も工費もまとめて頂いて、瑕疵もでたら面倒見ていただき、「ほどほどの建築が出来上がればいいじゃん」という空気が出て来てしまった。それを再度確認したショックの大きい事件だった。 スパーゼネコンは技術ストックもあるし、人員も動かすお金も多いし、困ったらいろいろ面倒もみてくれる。だから施工会社がいいと。有名建築家はそこまで面倒を見ることはできない。建築家無用論みたいな空気に戻って来てしまった。 「テーマを無くす」SDL2018も繋がって揺さぶられて、いるかのようにも見えますね。中谷実行委員長はその当たりはどう思ってみてますか その07へ続く |
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