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 布野修司さんに聞き語る
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 05 感想を語り合う
    評価軸は色々

 05 
感想を語り合う

佐藤:今何が起こっているかは後でわかることも多いと思います。
布野:今、10選見せてもらったら、日本の建築界は低調だなっていう意味ですよ、その代表なんだから。
佐藤:出品してる学生は20年後は第一線で働いている可能性があり、未来を内包しているので、布野先生の言葉を借りれば、未来の建築界は低調だ。暗いと。
布野:暗いというか、あのね、みんな建築的じゃないんだよ
佐藤:俺は「建築の終焉」と言ってます。
野:なんとなくテーマセッティングはしてあるけど、その詰めは甘いのは学生だからしょうがない。でも先生だったらもうちょっと指導して、出来るだけリアリティーがある作品にしたほうがいい
 さっきの、壁が、ファサードが動くにしても、本当に動く絵、そこを描けって先生は言う。一枚描けって言う。「そこだけ模型を作れ」って、と言うよ。
 CGや模型で動く、イメージは出来ているんだから、瞬間で思いついているんだから、「それを出来るだけリアルにしてみせないと、迫力が無い」という指導をするよ
佐藤:一位の彼は大学内でほぼ相手にされてない、一位の学生さんの未来の建築像は「霧」みたいなものと語ってます
布野ふふふ
佐藤:建築の物を脱して状況をつくるんですよ、凄いでしょ。
布野:あ、そう。そういう人はどういう建築を創るんだろうね。凡庸な何も考えずに作ってほしくないよね。
佐藤:卒業設計はアンビルドだって割り切ってるんです。たぶですが、大人が気づかない事を、やりだすんだと想いました
布野それならいい
佐藤:審査会場で確信的に、一位に選ばれるタイミングで発言していましたので。一位決定時に学生に発言機会が与えられるんです。審査員がもめ始め、一位の彼は自分の評価が下がりそうな、その瞬間に発言して一位を獲得してしまいました。
 「日本一 いらないし〜、(一位を)とっても建築家になれるわけじゃないし〜」、という発言もしてました。
布野はははは、それは誰が言った
佐藤:一位を獲得した学生です。その発言によって反対審査員の言葉は鎮められちゃい、一位はあんただ〜の空気が出来たんですよ。
布野それは面白いねー
佐藤:彼は一位に成るため、確信して取りに来ていたから発言機会を狙って、状況を観てて、手を挙げたんです。状況を読むことに集中して行動してるんです。中学時代最低で学力だったと語ってますが。
布野:それは別の才能が有るんだよ仕事を取りにいったりする才能
佐藤:一位を取りに仙台に行って、一位を取って帰りました
布野建築ってそういう才能、必要じゃない、そういう能力
佐藤:確かに、場の状況を読む動物的な能力は要ります。でも目指す理想の建築が霧ですから。
布野ふふふ、それはどこの学生、何研だろう
佐藤:工学院大学です、何研かは分かりません。見たことない会ったこと無い建築系の人間が現れちゃった〜と思いました。
布野それはいい
佐藤:国家の状況もぐちゃぐちゃで本質・本物が潰されかけ、揺らいでます。建築の状況も似ていますから

布野:今年の10選だとね。僕が観た日大の学生でもバライティとしてあの10個ぐらいは有るよ。仙台に出して100選には3つ入ってたそうだよ。でも出すの大変じゃない。お金が掛るから。
佐藤貧乏人の子供は出品できない。聞き取ってみて「家族の所得格差も微妙に作品に影響を与えている」と思いました。日本一決定戦は大学で評価が低い金持ちの子の作品を称えるための場と、言い換えたら言い過ぎですが(笑)
布野:だけど金なくっても本気でやるんだったら、出来るはずだけど。送ってプリントすればいいだから。
佐藤:模型が主流になっているし、本戦の日に会場に居ないと失格なんですよ
布野:模型は本人が運んでいく
佐藤:持ち込み禁止なんですよ。
布野:それは展示するからでしょう。
佐藤:持ち込み禁止になった理由を聞いてないですが、学生は高い評価を得るまで転々と展を渡り移動する。輸送中壊れたりすると、クレーム付けたんじゃないかと推測してみました。
 2005年に日本一位になった大室祐介さんに会い、2010年に聞き取り記録を作りましたが、彼は模型を大学用と仙台用に二つ制作し仙台用は「真っ二つに切断し新幹線で運んで会場に搬入した」と語ってたんです。が、今は持ち込み禁止です。
布野:そうそう、箱を作って学生が運んでいた。持ち込み禁止、そういうのは主催者側の理由でしょう。
佐藤:模型壊れたらクレーム受けたくない。10選は観ていただいたとおりです。
布野模型で勝負している
佐藤:熊本大の福留さんの話ですと「大きさに関してはルール破りが多かった」そうです。巨大な模型を出すと手間も掛かるが、目につき選ばれやすいんだと思っていましたね。
布野:今すこし見ただけだから、分からない。
佐藤:パッと見で審査員の心をつかむかどうか、何度も周回して読み込んでいる審査員もいるそうですが。「プレゼンペーパー何枚も読み込んで分かってください」そういう作品は評価されにくいようです。沖縄の方言を元にし作品にした学生の語りは、なかなか味わい深いんだけど、模型になると評価が下がる
布野:あれ、模型がまずいよね


評価軸は色々

佐藤:卒業設設計はほぼ、アンビルドですよね。で、実現可能・リアルを基準に審査はしないでしょう。そこの基準はどうしてるんでしょうか
布野:さっき言ったけど、学生もそう思うから、自分の身の丈に合った案を自分で作って卒業設計にする。滋賀県大のときにリヤカーみたいなものを作っ学生が居て、それは卒業設計としては認めねーという構造の先生が居たよ。僕は馬鹿かーって「これは、ようやった」って。
 住宅っていうのはさー、図面の枚数が足りないわけだよ。本当にデティールまで書かないと。そうすると、ある程度の規模にいったりするじゃない。卒業設計って色々なんですよ。卒業設計で何をって何を要求するか先生によって、もの凄く違う
 だから卒業設計って言ったらね、例えばスペインのディプロマ、ディプロマ通ったら実施を出来る資格をもらえる。なのでほぼ実施設計の図面を描かなければいけない。それがディプロマの国、あるけど。日本の場合は何を狙っているのか
佐藤:そこは先生もバラバラで曖昧
布野:曖昧っていうか、コミュニティーで決めてりゃいいけど。だいたい分かっている。
佐藤:ローカル・コミュニティで評価軸は決めろと。布野先生は卒業設計を持ち歩いて就職活動に使うのはお勧めなんですか
布野:それはそういう動きをたまたま知っているというだけ、「あ!それなら意味あるね」って。それから、貴方が言っていたけど自分の大学の先生だと相性が悪くって評価されないけど、他流試合で認められたい、そういうモチベーション。


佐藤:卒業設計の評価軸がほぼ無いってことは分ったんですが。布野先生は地方の公共団体、そういう社会で実施コンペの審査員もされています。そこでも評価軸が無いんですか。
布野:実施コンペ、実施コンペは実施だから、軸は色々あるけど。形式的には作ってあるの。説明責任を果たさなければいけないから。
 何を求めているのかを、主催者、市町村なら「首長さんがちゃんと書け」と僕は必ず言う何をこの施設に期待しているのか、審査員もそれを全部理解した上で審査する。文章でもいいだけど「この施設はこういうのが大事です」と。

 僕が学生に指導するときは七っぐらいコンセプト、やりたいことを七っ出せと。ワン・コンセプトは駄目よと。外壁が風でひらひらだけ、じゃないと。それだけで何で一等賞なの
 実際の実施コンペだったら、少なくっても五つぐらい狙いがある。こういう図書館にしたいとか。そうすると選ぶ作品に「ちゃんと反映されているか」審査員は共通のチェックが出来るじゃないですか。
 クライテリア・判断基準、当座の評価はそれぞれ違ってくるけど、本当はそういうのがあるけど。
 卒業設計の場合はテーマ、バラバラだから、もうちょっと緩やか。これは一体どういうインパクトがあるかとか。最初に言った社会的なアピール。時代としてアピール力あるかとかね。 あとは個別にプレゼンの模型の表現力とかいうので、一応クライテリアあるけど。出て来たもので、どれを評価するかってのは、色々だよ。

佐藤:今回の審査員の評価軸の話ですが、各審査員に、評価基準を聞くとですね非常に曖昧で主観的なんです。私には何を狙って言っているか理解できず。分からないです。
布野はははは
佐藤:なので、今回の審査員それぞれの評価基準をお伝えします

  Pcの準備をする佐藤

布野:すみませんハイボールもらえる、あなたもういい、日本酒じゃなくっていい。審査員全員に聞いたの。
佐藤:会場壇上で委員長が聞いてました。動画が一時期、公開されていましたので文字に起して記録を作ったんです。いつも割れるのでしょうが、今回も票が割れたので、審査員長が各審査員に評価軸を質問したその内容です。
 門脇審査員は「この人が出てくると怖いなーという人を評価をします
布野怖い はははは
佐藤:学問的発言ではなくライバルと解して観てますね。辻審査員は「遊びと言うかユーモアーというか」
布野:ターザンね ふふふふ
佐藤:そうです。で、さらに「敷地とプログラムが設定されていて、リアリティがあるという事ですかね」辻審査員は浜松で苦労して仕事しているので切実な感じが出ていましたです。
 次に中田審査員は「空間を体験したらショックで死にそうなところを選びます」何を言っているのか分からなかったです。次に磯審査員ですが「僕にとっ影響を与えるもの。心ゆさぶるものを選びました。最終審査の段階においてはそれはちゃんと意識してやっていると、まぐれ当たりじゃないんだよ、ということ」

布野それも評価軸じゃねーな

佐藤:五十嵐審査員は「人類を置き去りにするようなものじゃ、よくなくって。共有共感できないと、駄目だ」次に赤松審査員「建築場所人社会と絶対切り離せないもの、そこに対して思考と回答みたいな事が有るもの。建築としてどうなの」ということでした。次に青木委員長は「刺激的なものが僕には面白いです。僕が知らない世界を持っているなーと思うもの。」でした。

布野:これは外の人に聞かせられないよね。
佐藤:俺は観客で現場で観たからweb記録に仕上げ公開しようと考えてます
布野それは、いいね
佐藤:プレゼンと質疑応答内容も含め記録を作りましたので、公開しようと思います
布野:それは凄い面白い ふふふ

佐藤:311でも、そういう思いでしたが、あの会場でも再度「建築は終焉したんだなー」と確認できました。一人で言っていてもしかたがないので、学生に聞き取って辻審査員にも聞き取って、記録を作っているとことです

布野分かった 

 その06へ続く