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布野修司さんに聞き語る | ||||||
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02 店内賑やか リヤカーの実作 3点が100選に |
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布野:日本一位など16年分並べると時代の表現の全体が見えるはず 佐藤:今回の日本一決定戦を観戦して「建築の終焉」だなって思ったんです。あとで決定戦のデータを持参したので、仙台日本一決定戦ファイナリスト10選をそれぞれ観てください。 建築から外れている。そういう才能はあっていいんですけど。建築を学んで建築領域外で花を咲かせるのもいいんです。建築外で開花するんだろう作品が選ばれているな〜と思いました。 言葉をベースに建築を作りだす、言葉を手掛かりに建築をつくる人も目立ちました。それから建築の存立に社会性を求める学生、その2種類ですか。 布野:社会性というのがちょっとね、何となく頷いたけど。例えば月面に造ってもいいよとか、架空の土地でもいいよと。それから今の言葉の問題については言葉大事だよ、凄く。言葉で考える、道具だからね。 タイトルとかキャッチフレーズとか全部含めて社会的なメッセージ。社会と言うとあれだな。そういう意味ですよ。ストレートに、今、例えば住宅問題があるから、それについて提案するみたいな社会性ではなくって。社会に対するトータルな表現。 佐藤:京大卒の伊藤明子住宅局長が語る820万戸の空き家問題に、ガチで組んで何とかするってのは無いです。自分探し、発見みたいな作品、卒業設計を作りながら自分を探しているという感じです。自己を確立させようとする、他者承認というんでしょうか、実存的・リア充追及ってやつです。 (布野先生は黒大駱駝艦や黒テントが好き、私は勅使河原三郎や状況劇場かな) 布野:この店、こういう使い方があるんだ。日曜日に呑み会をやるんだ〜 佐藤:日曜日の夕方なのに凄い混んでますね。 布野:予想違いだ 佐藤:音録できてないんじゃないか〜、すごい賑やかですねー 布野:悪かったね 佐藤:いやいや 賑やかでけっこうです たぶん音採れてます 布野:冷ややっこありますか 店員:あります 布野:二つ、大きいんだっけ、一つでいいと思う。冷やしトマトは無い。 店員:600円になります 佐藤:それでお願いします 布野:何か頼んでよ、つまみで言えばなんかあるよ 佐藤:昼飯おそくて、あまり腹も空いてないんですよ、肉じゃがありますか 店員:ない 布野:とりあえず考えておくから。ここね芝居やっている奴らが来たり、アルバイトでやっているんだよ。 佐藤:目の前に大きな唐十郎さんの腰巻お仙 横尾忠則さんの懐かしいポスター貼ってますしね〜。麿赤児ひきいる大駱駝艦もポスターもあります 布野:映画を撮っているやつとか、タレントも来る。テレビ局の奴も来る。 佐藤:初めて来ました、有名な居酒屋なんですね 布野:その筋ではね
佐藤:なるほど。布野先生が長年卒業設計に関わてて、印象深い卒業設計を提出した者はいましたか。これはちょっと凄いなーというの 布野:最近書いたけど、京大の卒業設計の平田のは凄いと思った。京大のキャンパスに、何となくメッセージが有るんだけど。学部ごとにバラバラだったり、というような話と、実際に再開発しないといけない。それぞれ思い出せばあるよ。 佐藤:大学ごとに特徴はありますよね 布野:ある。それとやっぱり時代があるよね。バブリーの時はね本当にバブリーなことをやるんだ。 佐藤:そうか、社会生活が滲み出ちゃうのか〜 布野:状況がそうなの。(近頃は)リノベばっかになって来る。 佐藤:今は、ちまちま、日本一決定戦でもリノベ、木造住宅改修ふう、みたいなのも目につきました 布野:そうでしょう 佐藤:霞が関ビルを解体する作品もありました。現実の状況に合わせ学生が賢く応答しているのかも 布野:審査員・評価する側から言えば、それはあんまり評価されないじゃん。やる子は2、3年ぐらいの前の日本一決定戦の卒業設計の色々、賞をとったやつとかを観るから。それを観るなかで、テーマセッティングするわけ。「あ、こういのが賞をとっているのか」賢い奴はやるわけだから。 佐藤:小賢しいですね、過去問集のように決定戦の結果が載った作品集を見尽くす〜 布野:そうそう、過去問をみてやって 佐藤:議題設定しないで事例を見てっての、夢が無い感じがするなー 布野:色んな奴がいる、リヤカーの実物作るとかね、そういうパターンも時々ある。フィリピンで実際に造ったリヤカーを出してくる奴はいた。 佐藤:一つの建築としての塊から外れて、人間の暮らす経路みたいなものを建築化する、あちこちにバラバラに造って、それら全てで建築は一つになる、そんな作品もありました。 敷地一つに一つの大きな機能をもった建築ばーんと提案するんじゃない、分散型・ばらばら在り人の行動で一つの建築になるとでも言うか。好感もってます。 布野:ある段階から、アーバンデザインみたいなのをやりだす。そうするとねー、建築じゃないってという。スケールが上がって。平気で1/1000とか、そのぐらいなのをやるみたいな。そいうの分かれるけど。 すみません。レモンサワーを一つ。
佐藤:卒業制作費用の話にします、予想してたより掛かっているんですよ、聞き語ってみると。 布野:個人がということ 佐藤:そうです。学生の制作費用です。お金をかけてました。仙台に送る運送費用が要るんです、持ち込み禁止なんですよ。 熊本大学から送ると往復で6万円かかったそうです。決定戦当日に会場にいないと失格になるので、仙台に乗り込む足代、飯代、宿泊代が要るんです。デカイ模型をつくると手伝ってもらい毎晩飯を食わせる。完成すると呑み会するので、こちらも十数万掛かっているようです。 仙台から遠く、貧しい家の学生は出品を諦めているんじゃないかな、格差が浮き上がる。貧しい家庭の子供は建築学科に入らないのかも。 布野:だけど,なんでそうまでしてやるかだよね。金掛かる模型に。 佐藤:一位の渡辺さんはたった一人で作ったけど、材料費だけで25万円掛ったそうです。さらに運送費用。 布野:そんなに金を掛けて、本当に議論とか出来ないんだったら不満だよね。決戦会場が機械的にやっているだったら不満でしょう。記録集は出るんだっけ。全員の分は出るの。 佐藤:分からないです。320作品、全部掲載したら分厚くなりますねー、主な内容しか掲載しないのかもです。詳しく知らないです。 布野:小さくてもいいけど、参加した証。建築士受験のための〇〇学院が援助しているんじゃないの、それもちょっと嫌らしいんだけど。 佐藤:決定戦の運営資金の支援者たちですね。それもですが、審査の時間割に至るまでの仕組みが出来上がっちゃっていて、学生の自治運営ではないように見えました。システム・仕組みが関係者を粛々動かしている感じです。中心に何もないように感じますが、機会のあるときに調査してみたいですね。 感想ですが、仕組みができちゃっていてシステム更新がしにくいのか、真ん中がからっぽな感じでも全体はきっちり動い更新されずに継続されていくかのです。学生はすでにビジネスマン化し運営しているみたいです。 布野:ふふふふ。俺は仙台に行ったことないんだけど。ある段階で俺を審査員で呼べと言ったことはあるけどね。冗談みたいにね。小野田先生当たりに言ってたんだけど全然声掛からないから。 佐藤:「審査員を決める誰なのか」聞き洩らして不明です。名簿を見る限り東北大の先生とその仲間に決めているような気はします。(聞き取り後も曖昧である) 布野:それはいいんだけど、僕は知らない。興味も無いから噂で聞いているような、本戦前日に、100ぐらいセレクションしてる。 佐藤:私も、初めて体験して裏舞台と補完的なエスキス塾を知ったのです。16回分は知らないです。何が起こっているのでしょうかね。 布野:審査員が全部拾うべきだ。一応、目と時間を使って観て、一個でも気になるやつは上げて、みたいな作業をすべきじゃない。 建築学会の作品選も、ずーっといかがわしい処はあって。各支部に任してて、作品上げてくるんだよ。支部の審査っていうのはゼネコンも居れば設備の先生も居れば、何かぐじゃぐじゃな訳。それで、しかも観に行かせる。審査に行くっていのはシステッマテックでいいけど、クリアーにオープンになっていればいい。 日本一決定戦では僕がいる学部、3点100に入りましたというニュースが流れていた。 佐藤:関係・教員の喜びの言葉はTLで落ちてました。そのー方々で「教員が日本一決定戦の成果を活用する」その態度を批判する人もいます。 布野:そんなのは、俺の大学ではどうでもいいんだ。僕は学生の卒業設計を観て意見も言っている。その中にゼロ戦の機体を記念するみたいな卒業設計もあって、特攻隊員の、で、「お前どういうつもりでこれをやっているんだ」って、みんなの前で聞いたわけ。そしたら、非常に曖昧なわけよ。「それを記念して」とか言う。「特攻隊に行って死んだ人を、誰のために記念するだ」って。「特攻に行かせた奴はだれだ」と。そんな議論をしているわけですよ。それは「100選に入った」って言っていた。 佐藤:そうですか 布野:選ぶときに、ちゃんと観てのかないなーって。ただ絵を観て選ぶ。100選中の3を大学関係で、たまたま知っていた。一つは絶対入ってもおかしくない作品。清い心、お前は右翼かって言ってね「何を記念して、こんなもん記念館をつくらないといけないのか」という議論をした。 先生もみんなしーんとしていた。俺は言わざるえを得ない、その先生は黙っていた。色々議論することはたくさんあるじゃない。 まずテーマセッティング、プレゼンとかね見栄えとか、観れば力が籠っている作品とか、表現が分る作品は選び易いよ。下手くそな作品でも実施設計の審査になると一生懸命見るから。実施コンペの場合は、選び方の話とか全部聞かないと。 佐藤:今回の日本一決定戦で、上位を決めるための評価基準は決まってなかった。審査員が壇上で確認し合、ちょっと語っただけでした。布野先生が今言われたテーマセッティングと、プレゼン、自作の説明 布野:プレゼンでだいたい決めるんでしょう 佐藤:ここからは 今年仙台で10選に選ばれた作品をまとめて来たので観てください その03へ続く |
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