HOME   佐藤敏宏が作成しました     2012年  
 
福島第一原子力発電所の事故によって起きている様々な問題を勉強し始めました 勉強過程の記録をつくってみます 暇な方はご活用ください
2011年7月27日 厚生労働関係の基本施策に関する件(放射線の健康への影響議事録
参考人
 01明石真言 02唐木英明 03長瀧重信 04沢田昭二 05児玉龍彦 06今中哲二 
質疑応答
 07山口和之(民主)    08吉野正芳(自民)  09坂口力(公明)
 10高橋千鶴子(共産11阿部知子(社会民主党・市民連合)12柿澤未途(みんなの党)

  09 
  ○牧委員長 次に、坂口力君。

坂口(力)委員 先生方にはきょうは大変お忙しい中をお時間をちょうだいいたしまして、こうして貴重な御意見を聞かせていただきましたことに心からお礼を申し上げたいと思います。

 それぞれ貴重な御意見をお伺いさせていただいたんですから全員の先生方にお聞きをしたいわけでございますが、二十分間という制限された時間でございますのでお聞きすることができない先生もいられるかもわかりませんけれども、そこはお許しをいただきたいと存じます。

 まず明石参考人からお聞きをしたいと思うんですが、先ほども、住民は何を目安にしたらいいかなかなかわからずにいる判断に今苦しんでいるというお話がありました。

実はそれは私たちも同じでありまして、どう説明したらいいのか判断に苦しんでいるわけであります。きょう先生方のお話を聞いたらかなりすっきりするかなと思ってここへ来たんですけれども、かえって何か難しくなったような気もするわけでありまして、なかなかこれはそうもいかないなと。

我々政治家の方が、こうしなさい、ああしなさいと言うと、政治家に対する評価というのは低いものですから、政治家が言ってもそれは言ったとおりにしちゃだめだというようなことになってしまう。やはり、ここは専門家の先生方にこうだというふうに言っていただくのが一番なんだろうというふうに私は思っております。

 それで、明石参考人にお聞きをしたいのは、そうした中でありますが、家を遠く離れて生活をしている方がたくさんお見えになります。この皆さん方にできるだけ早く帰っていただかなければならない。帰っていただきますのに、これまた難しい基準ですが、大体このぐらいになったら帰っていただけるという一つの基準と申しますか、判断基準があるんだろうと思うんです。

 先生が、ここを先に片づければ、ここのところを国が優先して解決すれば早くお帰りいただけるようになるのではないかというふうにお考えになっているところがございましたら、ひとつこの際に御発言をいただきたいと思います。

明石参考人 数字でお示しするというのは、先ほどのいろいろな先生方の御意見もございますとおり、やはり学校で、とある数字で区切ってしまうと学校に行けない、それから学校に行っても外、校庭で遊べないというような、かなり不利益も生じてきてしまうと思います。これは逃げて数字を出さないということではなくて、やはり納得ができる、つまり、学校で遊べるんだ、子供さんたち、お母さん方に公園に行って砂遊びしても大丈夫だという確信というか、そういう安心感を得ていただける状況をつくり出す。

 それは、数字だけではなくて、私自身は例えば1ミリシーベルト、2ミリシーベルトが体に影響が出るというようなことは全く思っておりません。ただ、そこも住民の方々に納得していただけないということであれば別のことを考えなければいけない。ですから、数字で表すのではなくて、その住民の方々の安心、それから理解、納得でてんびんにかけて、学校で遊べるような状況、それを周り、環境でつくってあげるということが重要ではないかと思います。 ですから、数字だけで縛るというのはやはりちょっと難しいのではないかというのが私の意見でございます。

坂口(力)委員 同様なことを唐木参考人からもお聞きをしたいと思うんですが、先ほどこの論文集をちょうだいいたしまして、先生もここで、規制値というのは安全と危険の境ではないと書いていただいてありまして、規制値というのは行政が対策を始める目安であると。  ただし、先ほども御質問がございましたが、行政が動き始めますと、ここ以上のところはこうだと動き始めますと、もうそれが基準になってしまうと申しますか、国民の側はそれを基準にして、それ以上は危険なんだということになりがちになると私は思うんですね。

 行政が行います方の対策というのは、普通の、危険性からいきますと少し数値の低いところから始めるということになりますから、その低いところがだんだん基準になっていくということになりますが、ここは、行政がやります基準というのも、規制値にできるだけ近いところでやるように指導していただくと申しますか、先生方から言っていただくということも大事じゃないかというような気が私はするんですが、先生の御意見をもう少しお伺いしたいと思います。

唐木参考人 ありがとうございます。

 まず、規制値をもう少し緩い方に持っていくとというお話がありましたが、先ほどお話ししましたように、規制値というのはなるべく厳しくしておいた方が、食品全体、何か、どこかがおかしいぞということを見つけるためには非常に有効なので、これを動かすのはなかなか難しいだろうというふうに思います。

 それではどうしたらいいのかというのは、私は、教育が一つあるだろうと思います。それは、私の近くにスーパーマーケットがありますが、大体、主婦の方は奥に手を突っ込んで、奥の方から牛乳をとっている。なぜですかと言ったら、奥の方に賞味期限、消費期限の長いものが置いてあって、手前は賞味期限、消費期限が近いものが置いてある。それは、ヨーロッパでも日本でも同じだそうです。ですから、主婦の方は奥からとるということですが、ヨーロッパの方に聞いたら、ヨーロッパの方は手前からとるんだそうです。それは、牛乳は、きょう、あした、あさってぐらいで飲む、だから手前からとってもいいと。ただ、ずっと長い間置いておく人は、奥からとる人もいると。これはなぜなのか。それは教育なんだそうです。日本はそういった教育が一切行われていない。ただ賞味期限が長ければいいだろうというふうに皆思い込んでいるところがあります。

 したがって、同じように規制値についても、量と作用の関係というものも、これは非常に単純な理科の教育で済むものですから、これは小学校、中学校のときからきちんとやることによって状況は随分変わるのではないかと私は考えております。

坂口(力)委員 ありがとうございました。

 唐木参考人に、もう一問だけお聞きをしたいと思います。

 国内の安全対策が大事だということを御指摘になりまして、その安全対策をやっていきますのに、先生の食品のところに限っていただいても結構でございますが、ここを徹底的にやっていきますためには、現在の日本の中の対策のための施設なりあるいはまた人なり、そうしたものはまだ足りない、もっとここは増強しなきゃいけないということなんでしょうか。他の分野から急に連れてきてできるものでもないと思いますけれども、できるものならそうした方法もあると思いますが、お聞きしたいと思います。

唐木参考人 私の資料の最後のところに食品の安全を守る仕組みという四段階の図がございますが、目標の設定と規制というのは、厚労省、食品安全委員会が行います。

 それから、二番目の、安全を守る努力と規制の遵守、これは、農場から食卓までと言われる食品の生産から流通加工、それから消費までかかわるすべての方が努力をしないといけない。ここのところが、だれが失敗しても食品は危険になってしまう。ここで一番大事なのは、教育訓練だろうと思います。ここが一つ足りないことがあると思います。

 三番目の、検査と違反の発見、これをやるのは保健所で働いている食品衛生監視員そのほかの関係の方々です。ここの数が決定的に足りないということもあります。これがユッケの事件なんかの裏側にもある問題だろうと思います。

 したがって、日本の食品の問題というのは、添加物や農薬あるいは今回のセシウムではなくて、決定的に微生物による食中毒ということは御存じのとおりで、公式の統計だけで年間3万人、そこに隠れている数からいうと、それの百倍、二百倍の食中毒患者が毎年出ていると言われておりますので、そこを何とかするためにも、やはり食品衛生の強化というのは絶対必要だろうと私は思っております。

坂口(力)委員 ありがとうございました。

 それでは、長瀧参考人に一つお伺いをしたいと思います。

 先生は、チェルノブイリの方にも随分御活躍をいただきまして、そのことにつきましては書物等で拝見をさせていただいております。

 先生のきょうのお話の中で、晩発影響と申しますか、ずっと後になってきましてから影響が出てくるというお話を聞かせていただいて、これはなかなか手ごわいことだなと。今回、福島で起こりました原発の事故におきましても、当面の問題につきましては皆一生懸命やっているわけですけれども、二十年先、三十年先にどんなことが起こってくるかというところまでまだ思いが至っていないという気もするわけですね。そこを、このチェルノブイリのところから先生がごらんになりまして、もう少し警告をしていただくことがあれば、教えていただく。

 そして、そうした晩発的な影響が出るというのは、継続的な放射能に対する暴露があったときに起こるのか。それとも、継続的ではないですけれども、一時的だけれども大量に暴露されたところに起こるのか。その辺のところもあわせてお聞かせいただければありがたいと思います。

長瀧参考人 本当に、非常に大きな、大事な御質問でございます。

 晩発影響にしても、私自身は、確実に、科学的な結果がどこまでわかっているかということをはっきりさせることがやはり大事だろう。そうすると、放射線の晩発影響について世界で一番たくさんの人をフォローしたというのは原爆でございますので、原爆の影響から何年後に何が起こるかということを推察するということが現在わかっていることでございます。チェルノブイリに関しても、もう二十五年たちまして、それなりの結果がわかっておりますので、それも科学的にわかった。

 そういう科学的にわかった事実と、それから、いろいろな生物学的な研究によって推測できるといいますか、癌の発生のメカニズムであるとかそれに関するいろいろな研究がありまして、賛成、反対をまぜますと、本当に賛成も反対もいろいろある。現実に、低線量の晩発影響に関しまして、アメリカの科学アカデミーとフランスの医学アカデミーが全く違う見解を出しているという状況でございます。

 それは、科学的にと言うときに、どこまでデータがわかっているかというのをはっきりする。それと、その科学的なデータをもとにして、これはポリシーでありますけれども、ポリシーとしてどこまで基準を決めるか。ですから、今我々が議論している1ミリシーベルトや5ミリシーベルトというのはポリシーに基づいたものでありまして、科学的な技術というと、先ほど申し上げましたUNSCEARも言った、疫学的には100ミリシーベルトまでしかわからないし、そのレベルはこれぐらいだと

 ですから、基本は、その違いをやはりわかっていただくということ。ですから、先ほどございました、今から一番の問題は、今から帰れるのかという人たちにとっては、帰りたい、帰りたいけれどもどれぐらいの危険があるのかという、物すごい葛藤に悩まされると思うんですね。そのときに、専門家が何も考えないでいきなり、5ミリシーベルトならいいだろうとか、1ミリシーベルトならいいだろうかということが一体専門家は言えるんだろうか、それだけのデータがあるんだろうかということをやはり謙虚に科学者、専門家は考えなきゃいけない

 ですから、幾つかの国際的な会合で、我々は、100ミリシーベルトまでは世界じゅうで、みんな影響があるということはわかっている、それは一瞬の被曝である原爆が主になっておりますけれども。それ以下に関しては、むしろ科学者はわからない分野である、不確実な分野だということで、積極的にそれを出して、その範囲は、住民の意思なり政治的な意思なり、その場の人間の社会で決めていくということも科学者、専門家としての一つの方法ではないかというふうに思っております。

坂口(力)委員 ありがとうございました。

 いろいろな角度から考えていかなきゃならないという、示唆に富んだお言葉だったというふうに思います。

 次に、沢田参考人に一つお聞きをさせていただきたいと思います。

 先ほど、ガンマ線、ベータ線のお話をしていただきまして、そして作用が異なることもお話しいただきました。これは広島の原爆のときにもそうなんですけれども、今回の福島の場合でも、いわゆる中心地から何メートルというのが一番問題にされておりまして、そして、きだとかの降った量だとかというようなことよりも、何メートルかというのが一番優先されているわけなんですね。

 先生の先ほどのお話を聞いておりますと、例えば原発なら、原発の中心地から何メートルのところということよりも、それ以外のこともかなり考えていかないといけない、必ずしも距離だけの話ではないんだなということを感じたわけですが、今回の原発の場合にも、何メートルという、ぐるっとコンパスで円をかいてというようなことが行われておりますが、その辺のところをきめ細かくもう少しやっていかなきゃならないんだったら、こうだというお話をちょうだいできればと思います。

沢田参考人 先ほど広島原爆の話をしたわけですけれども、広島原爆の場合は、火の玉ができまして、それが上空に急速に上がっていって、一万六千メートルぐらいまで上がっていったところが、雨が降ってくる。ですけれども、途中、一万メートルぐらいのところで圏界面に沿って横に広がったところがあります。ここは雨粒が小さくて、途中で蒸発して放射性微粒子になるわけです。それはほとんど測定されなかったわけです。そして、それは風で流されてきましたので、後で知ろうと思えば被爆者の中でどういうことが起こったかということから逆算しなきゃいけないんですけれども、そうやって逆算してみますと、かなり遠距離まで影響があったということがわかったわけです。

 今度の福島の場合は、そんなに上空まで上がらないで風で流されていきましたので、気象による影響というのが極めて大きいわけです。その点で大きな違いがあるんですけれども、しかし、放射性微粒子の降下の影響と、それから福島原発のいろいろな放射性物質の影響とは共通性があります。

 ただ、広島や長崎の場合は、そういうことで、距離とともにかなり精密に影響がはっきりわかってきているということですから、そちらの研究をちゃんとやっていくということがすごく大事になってくると思います。つまり、被爆者が受けたいろいろな影響というのは、かなり精密にたくさんいろいろな調査結果がありますから、そういう貴重なデータをきちんと科学的に解析して、とりわけ遠距離の放射性降下物による被曝ということを科学的に明らかにして、それは主に内部被曝ですから、今回の福島原発の事故の影響を評価することにつながっていくと思います。

 ですから、いろいろなことで意見がどうなっているか、科学者の意見もいろいろ分かれているということなんですけれども、その一番大きな理由は、そういう放射性降下物の影響、内部被曝の影響をきちんとこれまで十分研究してこなかったということで、これは科学者としても責任を持たなきゃいけないと思いますけれども、そこのところを科学者が協力して明らかにして、そして、福島原発の事故に対してもきちんと対応できるような、そういうデータを提供するという責任があるんじゃないかというふうに思っています。

坂口(力)委員 ありがとうございました。

 時間が来てしまいまして、児玉参考人や今中参考人は熱弁を振るっていただきましたので、ぜひお聞きをしたいと思っていたんですけれども、時間がもう来てしまったものですから、また次回に譲らせていただいて、また個人的な御指導を受けたいというふうに思っております。

 これで失礼させていただきます。ありがとうございました。


 その10へ