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 福島第一原子力発電所の事故によって起きている様々な問題を勉強し始めました 勉強過程の記録をつくってみます 暇な方はご活用ください
2011年7月27日 厚生労働関係の基本施策に関する件(放射線の健康への影響議事録
参考人
 01明石真言 02唐木英明 03長瀧重信 04沢田昭二 05児玉龍彦 06今中哲二 
質疑応答
 07山口和之(民主)    08吉野正芳(自民)  09坂口力(公明)
 10高橋千鶴子(共産11阿部知子(社会民主党・市民連合)12柿澤未途(みんなの党)

 06 
   次に、今中参考人にお願いいたします。

今中参考人 今中と申します。児玉先生の熱弁の後で、ちょっとたじたじとしております。

 私自身は、京都大学の原子炉実験所というところで原子力工学をやっておる者です

それで、私自身、原子力、原発というものは基本的に危ないものだというふうに30何年前から思っていますので

原発で事故が起きたらどういうことになるのかというのをずっと研究しておりました。具体的には、原発で事故が起きたときの災害評価とかチェルノブイリの事故が一体どんな事故だったのか、また、広島、長崎の原爆線量の話とかセミパラチンスクの放射能汚染の話なども調べてまいりました。


 それで、今回の福島事故についてなんですけれども、ある意味で私は非常に驚きました。ただ、私自身は、3月15日2号炉の格納容器が破壊された段階で、ああ、チェルノブイリになっちゃったというふうに確信を持ちました。というのは、放射能を閉じ込めておくべき最後の壁が破壊されたということで、中の放射能がツーツー行け行けで外に出ていくという状態が3月15日に発生しました。それで、今、児玉先生がおっしゃったように、東京の方にも飯舘の方にも濃い放射能が飛んできということになったんだと思います。

 私自身は、今現在、福島の周り30キロから、また飯舘は40キロになりますけれども、住民が避難したということでは、もうチェルノブイリと同じ事態が福島で起きている、起きちゃったというふうに思っております

 私自身、チェルノブイリに行ってよく聞いた言葉は、彼らにとって時代がそこで変わった、チェルノブイリ前とチェルノブイリ後ということで時代が変わったというふうによく聞かされました。私が思うに、やはり日本も福島事故で、ある意味で、福島前、福島後ということで時代が変わってきたのではないかというふうに実感しております。


 それで、私自身、時々皆さんから呼ばれて話をすることがあるんですけれども、そのとき何を言っているかというと、日本も放射能汚染と向き合う時代になったんですということを言いますチェルノブイリの人たちもそう言っていました。それで、その後、一番困るのは、今中さん、そう言うけれども、私ら、放射能のことも被曝のことも全然わからへんということで、ううんと考えていまして、結局、私自身は、きょうお集まりの議員さんも含めて、一般の人たちも含めて、ベクレルとは何ぞやシーベルトとは何ぞやということになじんでいただいて、理解していただいて、そして自分で考えていただくということが一番大事なんだろうと思います。


 きょう、余り時間がないんですけれども、お手元の方に資料があるかと思いますので、それに沿ってざっと駆け足で行きたいと思います。

 まず、一枚目の下の、私自身、原子炉実験所という原子炉があるところで働いていますので、もう40年間やっていますので、被曝に対する感覚というのはあります。

 そこに書いてありますように、1マイクロシーベルトという被曝、これは一回の作業でする分にはほとんど気になりません。というのは、皆さん今ここにいらっしゃいますけれども、ここでも自然放射線というのがあります。大体一時間当たり0.05マイクロシーベルトと思われて結構だと思います。となると、丸一日じっとしていても1マイクロシーベルトの被曝は外部から受けるということで、これくらいの被曝でしたら、まあ気にしなくていいやと。僕たちはあくまで職業でそれをやっていますから、一般の人はまた別ですよ

 次に、一回の作業で10マイクロシーベルトとなると、これはもう計器に出ますし、ああ、ちょっと浴びちゃったなという感じです。ちなみに、胸部レントゲンで受ける被曝線量が大体50マイクロシーベルトというふうに言われています。それで、まあちょっと浴びたなと。

 次に、100マイクロシーベルトになったら、これはかなり浴びます。これは、我々、放射線測定器で測る分に、すぐわかります、音でわかります。大体、1マイクロシーベルトを超えたら、ビーという感じで鳴りますから。100マイクロシーベルトを浴びる仕事、これはめったにしません。時間も限りますし、遮へいも考えます。ちなみに、飛行機に乗ってヨーロッパまで行って帰ると、大体50マイクロシーベルトから100マイクロシーベルトと言われています。ですから、私は、飛行機に乗って向こうへ行って帰るたびに、ああ、被曝しちゃったなと思いながら乗っています。

 その次に、その10倍、1000マイクロシーベルト、1ミリシーベルト、これは私からしたら大変な被曝です。私は放射線作業従事者ですけれども、一回で1ミリシーベルト浴びちゃいますと、うちにある放射線障害予防規程で1ミリシーベルト以下にしろと書いてありますので、これは私、始末書物になると思います。

 その1000倍の1シーベルト、1000ミリシーベルトが1シーベルトになりますけれども、これはもう大変です。1シーベルトの被曝があったら大変だ。これはもう病院に行って検査してもらう急性障害が心配される量だということになります。


 次のページのその3ですけれども、放射線に被曝すると、一度にぎょうさん被曝すると、細胞が死んじゃって急性障害が出るよと。それで、福島の周りの住民の方々、この人たちには、よくテレビで言われましたけれども、すぐには健康には影響はありません。ただ、後々になって癌とかいった心配がありますよという線量だと思います。これが晩発的影響、また確率的影響とも言われますけれども、では、何でそんな確率的影響みたいな、晩発的影響みたいなものが出てくるかというと、その下にあります。いわゆる放射線を浴びますと、我々の体を構成している分子、原子に影響がある、破壊される

 すなわち、我々、日常的に生活している分に、細胞の中でやりとりしているエネルギー単位は、我々の言葉で一電子ボルトとか二電子ボルトとかそれくらいの量ですけれども、放射線というのは10万電子ボルトとか100万電子ボルトとかいったエネルギーを持ったものが体の中に入ってきますから、場合によってはDNA等が破壊されるということです。

 では、それが一体どれくらい生物に影響を与えるかということですけれども、3ページの上の方です。これはムラサキツユクサの雄しべの毛の突然変異というのをはかって観察されたデータです。これは随分古いデータです。もう30年以上も前のデータですけれども、このデータでしたら、いわゆるエックス線を照射しますと、大体2.5ミリシーベルトに相当するぐらいのところから雄しべの毛の突然変異というものがふえることが観察されるという、これは非常に敏感な生物です。

 ただ、私が言いたいのは、我々生物は、発生してから非常に放射線の強い環境で生きてきたというふうに私は思っています。皆さん、自然放射線といったら非常に弱いものかと思われますが、私ども環境放射能をはかっている人間にとっては結構強いものです。そういう中で、我々、日常的にDNAなりそういうものが傷害を受けながら、なおかつ修復、常に傷害を受けて常に修復して生きてきたんだろうと思います。

 それで、四ページの七番、「ガンができる仕組み」ということで、児玉先生の方からもありましたけれども、いろいろな傷害が積み重なっていずれ癌になるということです。

 次に、その下の八番ですけれども、我々、日常的に、一年間で一ミリシーベルトの被曝を受けています。そして、五枚目の9ですけれども、その自然放射線によっても我々はある程度癌 になっているのではないかということが言われています

 では、自然放射線によってがんになる影響を観察できるかどうかということで、その下のスライドの10ですけれども、日本国において、自然放射線は場所によってかなり違います。そこの図にあるとおりです。そして、その次のページの11番ですけれども、では日本国のがんの発生率がどうなっているかというのを国立がんセンターから持ってきたのが11番です。

 これは 死率の分布です。先ほどのが自然放射線の分布です。その関係をプロットしてみたというのが、その下の「ガンマ線量率とガン死率の関係」。これを見ていただいたら、横軸が自然放射線で、縦が癌死率ですね。結局これは、癌死率に対して自然放射線の影響は認められません。つまり、自然放射線の影響は、癌というものはいろいろな原因でなりますから、その変動の中に隠れて見えないというふうに私は考えています。ないのではないと私は思っています。

 では、我々が現在使っている放射線のリスクはどういうふうにして求められているかというと、7ページの上の13にあります。これは長瀧先生も説明があったかと思いますけれども、広島、長崎の追跡データですけれども、一応、これを眺めて、私は、50ミリシーベルト以下では話をするのは難しいだろうなというふうに思っています。

 それで、こういうデータをもとに、もっと下の方、1ミリシーベルト、2ミリシーベルトを考えるときに、その下のスライド14のようないろいろなモデルが考えられている。ではどのモデルがいいのかというのは、いろいろなデータを参考にしながら、なおかつ理論、生物実験等を眺めながら考えてまいります。

 それで、有名なデータですけれども、ナンバー15、八ページですけれども、これは「オックスフォード小児ガン研究」といいまして、1950年代に、子供、胎児ですね、妊婦のおなかにエックス線を浴びて、その後小児がんがふえたというデータであります。

 その次ですけれども、16番。これは非常に興味深いデータですけれども、私の友人であるスウェーデンのトンデルという疫学をやっている人ですけれども、スウェーデンの汚染地帯の汚染レベル別にがん発生を見ると、どうも汚染が増えると癌も増えるぞというデータを出しています。これは統計的には有意です。では、これは果たして因果関係かどうなのかというので、彼自身と私はいまだにディスカッションをしています。それで、きょう児玉先生からお話を聞いたような、内部被曝によって体の中でセシウムの分布が異なるといったことでこれも説明できないかなという仮説を今考え始めているところです。

 そういったデータの一つとして非常に興味深いのは、9ページですけれども、日本国の原子力産業労働者約20万人を、大体平成の初めぐらいから今現在、20年近く追跡調査されていますけれども、これはフィルムバッジ等で記録された被曝線量とそのがん死率を見ますと、どうも被曝線量が増えると増える傾向にあるぞというのが出ています。

 それで、一応、これをやっている放射線影響協会の結論としては、明らかな証拠は見られなかったというふうに結論されておりますけれども、私自身は、スライド18番にあるように、これはサジェスティブ、影響を示唆しているデータではないかと考えています。

 次に、19番、10ページですけれども、これはチェルノブイリの子供の甲状腺がん並びに広島、長崎のデータの年齢別の感受性ですけれども、やはり子供に対する影響は大人に比べて大きいんだというのは、如実に示していると思います。


 最後、結論ですけれども、結局、放射線被曝の晩発的影響については、直線モデルが最も合理的で、批判に耐えられるタフな仮説であろうと私は思っています。ということは、被曝量が少なくてもそれなりに影響があるという考え方では、被曝の基準値というのはあくまで我慢量だというふうに解釈すべきだろうと思っていますどこまで我慢するのかということについては、社会的、個人的判断で決まる問題ですから、一般的な答えは無いというふうに私は思っています

 ただ、参考としては、通常時の一般公衆の被曝基準値、これは年間1ミリシーベルトです。ICRPによれば、この数値というのは、一般公衆が被曝に対して気にせずに、神経質にならずに普通に生活できる量ということで決められています。

そして、放射線作業従事者は、年間20ミリシーベルトということになっています。この数字は、我々は放射線作業従事者ですけれども、放射線作業従事者が被曝によってこうむるマイナス面が、普通の産業の労働災害と同じレベルになるであろうというふうに、大ざっぱながら見積もってきた数字で、それなりに根拠のある数字だと思っています

 そして、今回の場合は、子供の感受性が大きく、そして子供は、大人に比べて将来、非常に長い人生を生きるということで、子供の被曝はなるべく少なくすべきであるということです。

 どうもありがとうございました。(拍手)

○牧委員長 ありがとうございました。

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