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  2017年10月05日 龍光寺眞人さんに聞く
 杉並区にて
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■ 母親が倒れて

佐藤:前回の聞き取り時は群馬に住宅を設計されてましたが、仕事はどうですか
龍光寺:相変わらず、住宅をメインにしています。内容はあんまり9年前と変わってない
佐藤:大学で教えていますか
龍光寺教えてます、今は芝浦工大で2年の後期です。設計を教えてますね。細々とですね木造の住宅をメインに仕事してますね。
2年ぐらいかな前にですね母が倒れまして。それから仕事量を減らしんですよ。それまではなるべく、たくさんやろうとしていたんです。

佐藤:お母さんの介護をメインに暮らしているってことですか
龍光寺:介護はおやじと姉に任せて、たまに帰るぐらいなんですよ。今はだいぶ元気になって。ようやく自力でぎりぎり立てるぐらいに回復してきたんです
それまでは仕事を休みなく、ひたすらやっている感じだったのが。平日も母親に子供を預けていたんですよ。倒れた日も預けているときだったんですよね。実家におやじも居て子供も一緒にいるときに倒れたんで発見が早かったんです。
子供はみてもらえなくなったから、必然的に土日は仕事の量を減らしましょうと

佐藤:保育園に預けてなかったんですか
龍光寺預けてました。ご飯は作ってもらってましたけど、基本は見てもらうことがメインでしたね。子供をみるのは仕事しながらは出来なかったので。母親が倒れたのが大きな変化ですね。


子供育てと仕事

佐藤:仕事場で子供育てながら設計してたのではなくって、あ母さんに預けて仕事をしていた
龍光寺仕事場で子育ては難しかったですね、現実問題として。打ち合わせとかも、ちっちゃいときは難しかったですね。仕事場で子育ては想像できなかったですね。今は打ち合わせとかにでも子供と一緒に行ったりもしますし。

佐藤:いいお父さんになりましたねー。一緒に仕事に出かけお父さんの働きぶりを見てもらうほうがいいでしょう
龍光寺それはそう思います。地鎮祭とかも一緒に行ったりとか。
佐藤:奥さんも一級建築士ですから、家族で仕事を一緒にして、現場に一緒に行くのはとてもいい
龍光寺:そこはどこかで開きなおりましたね
佐藤:おめでとうございます。生活・暮らしながら設計の仕事をしようとしているんですよね。
龍光寺:そういうふうに言ってくれるのは佐藤さんぐらいですね。なので致し方ないというか。やっている内容はそんなに変わってなくって。

佐藤:子供が大きくなってお父さんの建築を批判するようになる日が楽しみですね
龍光寺:言われるかもしれないですね。

佐藤:家族の暮らしと一緒に事務所もある人はいい。インターンシップの方々が来たり、お客さんが来たり、色々な人たちがやって来て。外国人もやってくる。子供が育つ環境としては、正常で適した環境だと思いますね。暮らしの場に他者が入って来て、一緒に仕事を進めて稼いで生きている。両親のその姿に子供が日々接することができているのはいいですよ。
龍光寺そうそう

佐藤:お父さんが子供たちに仕事内容を説明して聞かせるより、子供の目の前で仕事ぶりが展開され、子供自身が受け止める場になっているのがいい。実力がばれて馬鹿にされる危険性もあるけど、

龍光寺そうやってや、られていたんですか
佐藤:俺はそう暮らしているので、子供に馬鹿にされているというか、からかわれていたね。馬鹿にされるのは営業マンが来て「先生」と言う、その姿を馬鹿にしているだけで、仕事の中身ではなくって、先生と言い続ける営業マンなどを馬鹿にしていたのかもしれない
龍光寺小さいときからそうしてたんですか
佐藤:家で仕事してたから、そういう環境になっていた。業者の人も独特な業界訛りで「先生」と俺を呼ぶから変ですよね。
子供が観ると不自然な大人の交流に見えるんだろうね。妻は俺を「先生」と呼ばない。世間はおかしなことになっている、そのことを知る入口にはなっていたと思うね。だからか子供は建築家になりたいと言わず仕舞いでしたね。

龍光寺より庶民的になっているのかなーと。
佐藤:いいと思いますね
龍光寺:普通に暮らしていくにはどうしたらいいかと。
佐藤:子供が成長しちゃって俺は老人になり、今の龍光寺さんのように子育てしながら設計する、その暮らしかたが出来ない
龍光寺:そうですね、その時にしか出来ない暮らし方だと思う

佐藤:住宅の仕事をされているそうで、依頼者は同世代の人が多いと想像しますと、いい感じだと思いますね

龍光寺:いい影響もわるい影響もあるんでしょうけど。私の考えと妻・池守の考えは違うんで、だから戦いながら仕事してます(笑)
佐藤:夫婦が違う考えで仕事しているって、いいですね
龍光寺:好きなものとかは似ているんですけども、お互いにプレゼンテーションが必要なんですよ。
佐藤:「奥さんのプレゼン審査を通過しないと外に案をだせない」っていいなー。誰かにプレゼン前審査を依頼したいぐらいだよね。
龍光寺あー そうかもしんないですね
佐藤:学生さんに見てもらっても激しくは突っ込みいれないだろうから。奥さまに厳しく審査されている

龍光寺:僕も、いろいろ変化なのかなー。話し合いながら作るみたいなのが、それぞれの意見を入れるっていう意味じゃなくって、色々意見をぶつけて作っていくっていうのが、いいんじゃないかなーと思っていて。

学生に教えているときも、最近特にそうなんですけど、私が意見をするというよりは、学生同士で意見を出し合ってもらうように、指導してますね。私があんまり言ってもしょうがないから。もちろん水準に達してないものに関してはしょうがないので、ある程度のものがあれば、これは話し合いの遡上に載せても大丈夫だなーって。
ある一定のレベルに達している作品には自分の意見はいいから、こうしたらいいとか単に感想でもいいから、話し合おうかみたいな。そんなふうに学生とは接してますね。

佐藤:以前から設計事務所を営みつつ先生もするつもりだったんですか。
龍光寺思ってないで、ないです。学生との年齢が離れたというのもあると思うんですよ。学生は20歳で私は40歳なんで、だいぶ離れてい来たんです。30代前半とはまた違った距離感が出来てきて。
世代もあると思ってまして、学生には学生のリアリティーがあって。私が置かれた状況と関心とかリアリティーけっこう距離があるような気が今はしているんですね。その中で、学生は学生同士で共感し合えるものが有るわけだから、彼らに話し合ってもらった方が好い議論ができるのかなーって思ってます。僕の立場からも言うけど、まずはそっちで話してもらって。それがいいのかどうかは分かりませんけど。
僕、もう6年教えているんですけど。反応がどこかで悪くなったなと思ってるんですよ。僕がしゃべって教えることが違うんじゃないかなーと違和感が生まれて来たので変えたんです
最初は話しても通じたんです。たぶん世代が近いからかもしれないです。で、みんなで盛り上がってワイワイやっていた感じだったんですけど。だんだんリアクションが薄いぞと。同じような事をしゃべっているつもりなのに、反応が薄いぞと気付いて、悩んでいたんですよ。学生同士で議論をしてもらったら活発に話し始めたんで、世代がそれだけ離れたんだなーと。
人によりますよね。学生によってはグイグイ来る人もいるんですけど。来ない人の方が多くって。彼らにとってみたら、先生は先生でこっちに居てもらってる方がやりやすいんだなーと。

佐藤:発注者との間ではどうですか、同好会的ノリノリ作業じゃなく、プロとしての作法に変化しましたか、設計者自身が気持ちよくてもしょうがないわけだから
龍光寺:最初は一緒に考えるのが面白いなーと思っていて。変わりますねー。仕事をやっていくうちに、そうなったというのもあるし。そうならざるを得ないというか。勝手にそうなっていきましたね。どんどん普通になっていますね。
佐藤:原理主義を通してても周りが壊れていくだろうし。社会の変化に対応し続けていると「時代を表している何かにはなれるよ」ね

龍光寺そういう考えはありますね
佐藤:2008年から2017年までの社会変化に対応して、龍光寺さんと奥さんの個性が融合して仕事に特性が出ていると思うんです。詳細は分からないけど。社会が乏しい時代には大きな旗を揚げて引っ張らなければいけなかったが今はそういう状況じゃない
龍光寺成熟した社会みたいなものに、通じるんですけど、ある答えが見えてきた感じがしますね。
佐藤:龍光寺さんは先生の教えに従って建築を考えてきている。ある種・天才型の人は自分の感情を、そのまま建築化できる人で。龍光寺さんは先人の影響も受けつつ、共に暮らしている人々の暮らし方の影響も受けつつ、建築を考える人。天才型は危険極まりないですよね。危険な人間・建築家を目指してないでしょう

龍光寺目指してないですねーこういう話をする機会が無いのでおもしろいですねー。メディアと話すときというのはテーマがあって話す感じゃないですか。今日はテーマが無いし、佐藤さんは話やすいから色々話ちゃったんです

佐藤:紙媒体はターゲットリーダーを想定して編集して売る。語り手の権威を落としては売りものにはならない。
今日の聞き取りは龍光寺さんが、今何を思っているかを聞き取り記録を残したいだけなので、建築に関す話でなくても記録が残れば。今日の話と5年後の話は違う内容になると思います。

龍光寺:佐藤さんの活動は混とんとしたものをなるべく混とんとした状態で見せるというか。好い処だけ見せているってつまらないですよね実際

佐藤:人間の貴重で分厚い生活はどこにでもあると思ってます、許された予定時間が来たので今日はここで終わります、長時間おつきあいいただきありがとうございました

龍光寺:ありがとうございました




 2017年龍光寺眞人さんに聞くこれでおしまいです。長い話を最後まで読んでいただきありがとうございました。次回は2022年ですおまちください
 (文責:佐藤敏宏)