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聞き語り記録 
 辻琢磨さんに聞き語る (SDL2018最も若い審査員)
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 02 人間らしいことを 
    全員異なる評価基準 
    町場のイベント・学生のイベント

 02 

人間らしいことを

辻:感想ですね。
佐藤:審査員の要請依頼があったときに、何を思いまいしたか
辻:呼ばれた瞬間ですか「まじか」みたいな。ふふふふ。でもねー、断る選択肢は無いんで。「お受けします」っていう感じでした。
 メンバーを見ても「面白そうだなー」と思った。「バランスがよさそう」っていうか。お会いした事が無い方もいましたし、青木さんの事は前々から存じていたので。「どういう議論になるのかなー」と、楽しみだった。モチベーションは高く、参加しました。

佐藤:こんな議論をしたいと思ってましたか。
辻:そういうのは無かったです。現場で考える感じ。ただ、運営に対する、卒業設計展全体に対する、違和感みたいなのはずーっと有ったので。

佐藤:どういう違和感ですか。各地で開かれている卒業設計展に対しても、ということですか
辻:そうですね。ディプロマ京都もそうだし。「なんで、こんな事をやっているの」っていう事ですね。

佐藤:学生は、何をすべきでしょうか
辻:やっぱり友人と旅行したり、議論したり、実家に帰って親孝行したり。
佐藤:出品展に参加する前に人間らしいことをせよと。
辻:人間らしいことをやった方がいいですよね
佐藤:ま、そうだ
辻:うん。建築家である前に人間なんで。学生って一番、時間的に余裕が有る時期じゃないですか。それを、ああいう刹那的なイベントに、全霊を投入して。なんていうのかなー。就活だってそうじゃないですか。全身全霊を賭けて自己否定されるかどうかに、自分を投げ出さないといけないっていうのが、あらゆるタイミングで有って。それをわざわざ自分で、増やす必要はどこに有るのだろうっていうか。


全員・異なる評価基準

佐藤:出品していた学生さんたちと、何歳ちがいでしたっけ
辻:ちょうど10歳じゃないですか
佐藤:辻さんが学生のときは、就活もこんなにキツキツじゃなかったですか。今とあまり変わらないんじゃない。
辻:長期的に見たらあんまり変わらない。みんな出すことに意義みたいな流れは感じてたとは思いますよ。大西麻貴さんが前年ヒーローになったので。
佐藤;学生は自由で貴重な時間を、既成の仕組みの中に投入してしまい、学生がやるべき事を見失っているんじゃないのか、という批判ですね。
辻:そうですねもうちょっと批判的に捉えてもいい。どっちでもいいんですけど。もうちょっとねー。なんでやるのかっていうのを、一度立ち止まって考えた方が。
佐藤:働く大人でもないし、子供でもないし、自由な立ち位置にあるのに、わざわざ窮屈な場に自らハマっていくっていうのは、理解しにくいでしょうね
辻:そう

佐藤:社会に出て働きだすと、もっと大変な場に押し込まれていくのに。自由な時間を奪い取られに進んで行くとは。周囲を見回して学生は、「選択肢は、これしかない」と思っているのではないかな。大学教育の全体が自信喪失しているの

辻:学内の評価だけじゃ足りないっていう事もあるとは思う。建築設計の評価が全てじゃないし
佐藤:卒業設計を評するって「何か」という問いは、青木委員長から発せられたて印象に残りました。委員長への評価軸への応答は全員違ってた

辻:そうですよね
佐藤:全員違うのは健全だと思うんだけど。審査員長が語っていたけど、無理を承知で順位を決るしかないと。で、ああいう結果になったんだけど。今に始まったことじゃないんでしょう。
辻:今というのはどの今ですか、佐藤さんが学生だった頃からですか
佐藤:俺は高卒で、ゼネコンで設計始めたので、大学生をやってないん分からないです。大学の卒業設計を解ってない。
辻:そうなんですか

佐藤:大学での卒業設計の今昔と課題などについては、布野修司先生に(後日公開)明後日の夜、聞く予定です。布野先生は1960代末から現在まで、大学の卒業設計を見続けていると思うので聞いて記録します。戦後の事は分かっているか知らないんだけど。卒業設計の今昔を聞いてみたいので。
辻:  はははは


町場のイベント・学生のイベント

佐藤:SDLはシステムと時間割がともにキツキツに出来ている。その中へ、何で参加し祭りをするのか分からない。堀井さんが語ていたのは学生が主催していたイベントを大人たちが取り上げ、大人の競い合いへ(後日公開)と変容したと。証拠がないので、調査が要りますが、強めに翻訳すると大人が奪ったということかな。
辻:先生もそうだし、スポンサーもそうなんですね。
佐藤:最初かから建築系に資金供出を願いでて、スポンサー有だったのかな〜。分かってないですけど、sdl2108中谷実行委員長に聞いて記録します。お金が無いので先生たちが支援し、そうなった可能性もある。
辻:よかれと思って始めた。

佐藤;「大きなイベントの費用を、学生だけに支払わさるのは気の毒だ」と思ったのかも。スポンサー資金参加の功罪はあると思います。その態勢で動き出してしまったら、誰も止められなくなってしまう、総無責任もたれ合うSDL態勢の完成ですね。主催する学生たちは毎年更新されるし。SDLの中心に居て、責任を取る人の不在問題があります。その仕組みが継続されて16回が終わった。「ここで止め」と言う人は居ない。真ん中が空洞なんですね
辻:縦割り、代替わりもありますしね。継続して責任をもってやっている奴が、ないですよね。

佐藤:証拠なしで無理に言えば阿部仁史さんかも知れないですね。メディアテークが竣工したのと重なってスタートしたから。建築界で最も注目される会場で学生の日本一決定戦を開く、先生方もメディアテークも有意義だったんだろうね。
辻:日本一の建築が出来たから、日本一を決めようということですよね
佐藤:終わりの姿を決めずに始めてしまった。今は、システム・仕組みだけが継続され毎年動いている状態なのかも知れない
辻:そうですよね。イベントの終わり方みたいなの、僕も幾つかイベントをやることがあるんで。終わり方は本当に難しいです

佐藤:大学に関係なく、町場に小さな自腹イベントが多数ある方がいいじゃん。お金が無くなったり、仲間割れしたり、喧嘩になって終わる、のでいい。
 大学は仕組みでもあるから、永遠に続く可能性はある。町場の自腹イベントと比べたら、SDLはだらだらと継続してしまう可能性は高い。
 柳原照弘さんが声かけて始めたデザインイーストのように、イベントに関わると、仲間割れして設計事務所が分解したりする。運営がめんどくさくなると浜松の辻さんに投げたりして、ダッチロールしながら進んで行くのがいいよ。

辻:そうそうはははは

佐藤:エッセンスだけが残っていくじゃない。
辻:デザインイースト上手いですよね。ちゃんと終わり方も考えようとしているというのは。

佐藤:俺が続けてた建築あそびもそうだけど。自腹イベントをする意義だよね。大学には議論の場が在るし議論友もいるだろう。だけど、大学を卒業して会社に勤めだすじゃない、組織事務所に入所したり、ゼネコンの設計部に入ったり、役所の建築課に入ったりする。そこでは蛸壺的な話になって、蛸壺暮らしでは外との関係が無くなる。
 そうなるので村野藤吾さんが大阪で「学生を社会に放り出したままにせず、私塾のような事を開いた方がいいんじゃない」ということで、西澤文隆さんとか渡辺豊和さんが私塾を延々と続けていた。立ち消えては誰かが芽を再び育てる、繰り返しがあり続いていた。大阪のアーキフォーラムは、今は消えているみたいだけど。
辻:関西の流れですね。
佐藤:コールハースが『PrpjectJapan』に関して講演している動画を観ると、丹下健三も自邸に弟子たちを招いて、飯を食わしたり、就職を斡旋したり、仕事を世話したりして仲間を育てていたっていうことが分かる。関西だけではない、のではと思うんだけどね。






 建築系の学生が、社会に放り出されたままにしないで、建築系の大人たちが繋がっていくワイワイし合う。自由につながりを続けるために、拘束なしの自由な組織は要る。学問的な縦割りじゃない、横のつながりで成り立つ建築の議論の場づくりだね。
 大学の人間関係見ると、軍隊に似て、上下関係が強すぎる。研究室の人間関係って実力じゃなく年功序列なんだろうか。年上の人は偉そうにしているじゃない。そういう関係を取り払う仕組みは外部に要ると思うんだよね。
 建築は大学で学んで社会に出たら出来上がりじゃない。一生続いていくことだから。自由に議論が出来る保障された場所が要ることは明らか。大人たちが集まって議論する場所が要る。関西にはそういう空気が強くあったと思います。
 東京圏は情報も人も勝手に集まってしまう。スポンサーもたくさん集まっているので、スポンサー有の各種イベントも仕掛け易い。出版社も多い。

辻:ほっといてもね。
佐藤:今は知らないけど、1980年代半から2000年前後でも関西の建築系の人々はエネルギーが湧いてたんだよ。大学では研究室で議論をして冊子をだしたり、展覧会を開いたり。 が、SDLのように、いつのまにか、システム化された大学外のイベントが賑やかになって、研究室の活動が見えないので・・。学生主催のイベントに参加すると建築家に成れるという幻想があるとすれば、間違っているね。数名の建築家がそれを切っ掛けに育ったとしても、全体としては、大きな犠牲を見過ごすことになると思う。

辻:そこも気になりますよね。

佐藤:先に話が出たけど、2010年だったかな。(大室佑介さんに聞いた記録などへ)東北大の加藤拓郎さんという学生さん
辻:ダメハウス
佐藤:彼がSDLについて文句を言い放っていた、愛が溢れていたので。日本一に選ばれた人が、その後どういう人生を歩でいるのか、調べて、聞いてみようと。
 SDLの後にプロリーグは有るのか〜。日本一を決め、放ったらかし〜って、問題ないの。(SDLの後・裏方した学生さんは大宴会)(仙台建築都市学生会議

辻:それは難しいじゃないですか、フォローまでは。
佐藤:1位と2位を審査員で呼ぶとか。その後の生きざまを聞き続けるとか。観察し続ける責任はあると思うが。設計プロ・リーグが出来ればいいんだけど、無いし、独立系建築家を応援する応援団もありゃしない、悲惨な状態が続いてある。

辻:その後のフローですか。
佐藤;今は、裏を支え主催している学生たちは楽しそうだ。インタビュー記録動画作ったりしているので、改善はされているように見えます。
 卒業後のフォローについては荷が重い話なのかも知れない。建築家系の大人たちの問題になるんだけど。一人で悶々としてて建築家になるしかないのでは、学生後の建築家への道生活は、無駄が多すぎるように想いますね。

辻:まあねー
佐藤:新自由主義、それでいけば、いいということもあるだろうけど。
辻:建築の業界だけで解決できる事と、もっと広い枠組みで、捉えるべきことと。二つありますよね。

佐藤:そうだね

  その03へ続く