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聞き語り記録 | ||||
エスキス塾講師 堀井義博さんに聞き語る 01 02 03 04 05 |
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02 個展やれ 祭りのマス化と自由・自主・自治 大人の競い合いへ 個展する学生 |
02 ■ 個展 やれ 堀井:佐藤さん今回、けっこう細かく観たから・・会場で本戦の前の日の100選審査と、本戦直前の「競り」も観ているじゃないですか。それでね、俺は無責任だから、適当なことを言うけど。 審査員が350点から100点に絞る予備選。学生の事務方と一緒に回って行って、これシールって言っているのを見たでしょう。本来はあそこに制作した人間が居て話すべきだと思うんですよ。見本市会場と同じでさー、自分のブースに学生が居て、審査員が回って来たら「これはねー」って説明するの。その姿がそもそもだと思うんですよ。 (絵:SDLより 100選に絞る・予備選の様子) 佐藤:時間もたっぷり要るし、学生のキャラに左右され過ぎるのではない 堀井:もちろんそうなんだけど。でも同じ事が結局は起こっているじゃん。内容に関係なく、何となく気になったから選んだとかで、やっちゃっているから同じなんだよね。 佐藤:審査委員長が各審査員に問いかけた姿が象徴してたな。「審査員の皆さんにとって、そもそも卒業制作って評価できないんじないですか」(審査員それぞれの評価軸へ)と。評価軸の設定が曖昧のまま、SDLは18回まで来ちゃった。日本にはプロ建築家のリーグ戦は無いので、建築家の評価基準を設定してない方がいいのかな〜。 堀井:SDL初頭は、それでよかったんじゃないですか。 佐藤:SDL全体を観察したの、初体験でしたから総括できないんだけど。「卒業設計日本一決定戦」という命名が間違っていると思いました。卒業制作って競うものなのか。個性の芽を探し自覚する最初の公的な場だと思うので。若い芽を比較するためのフェアなルール設定はできないでしょう。スポツのように単純化して順位を決めないほうがいい領域ですよね。無理に祭り化し続けているのは、別の意図が働いているんだなーと思いました。 ■祭りのマス化と自由・自主・自治 堀井:わからない。最初はそれでよかったのかもしれない。エスキス塾の呑み会で学生に散々説明したら、逆にびっくりしていた。 卒業設計日本一決定戦とは言わなかったけど、俺らは京都で学生だった頃、単に学内の講評会がつまらない、自分たちでインデペンデントな講評会を創って、それがいまだに続いている。それは仙台のSDLより長い歴史を持っているんですよ。 佐藤:ディプロマ京都ですよね 堀井:当時はデプロマ京都とは言わなかった、そういう名は付けてなかったけど。そこに繋がっているわけです。(diplomaxkyoto.jimdo.com) 佐藤:本来なら、学生たちが自主的に学外へ出て行って卒業設計の展覧会を企画実行するんだと。 堀井:やればいい (絵:SDLサイトより 35選から10選へ、通称競り・セミファイナル審査) 佐藤:京都では学生が地自主的にやっていた。東北・仙台では無かった学生による行動だったが、せんだいメディアテークがオープンとなる、タイミングの良さもあり。東京コンプレックスを、逆転できるチャンスだと思ったのかな。色々な欲望がミックスされ、新世紀も明け、仙台に名建築が出来たし、それらの高揚感がSDLを生み出した。 堀井:俺は上手く言えないんだけど、京都の講評会は自分が昔か関わってたから、京都はこういうつもりでやったという意識がある。それを前提に言うけど、仙台も、九州のデザインレビューも、北海道組卒業設計合同講評会も。九州と北海道は観たことがない、だからあくまで推測。 もしかしたら、元々は学生がやりたかったはずの展覧会を、いつのまにか大人たちが取り上げているんだよね。 佐藤:学生から取り上げた。さらにスポンサーをくっ付け与え、学生の自主性を奪うかのように、マス化するお祭りに仕立てた。今、学生は大きな祭りの小さな歯車になっているのか。各歯車は毎年・毎年・更新されていく。祭りの全体はすでに精緻な仕組みが完成されてしまっている。誰も止められないシステムだけが動いてしまう。祭りのマス化の弊害は、学生の自主・自由・自治を奪っている、それでいいのかな。学生会議について、調べてないので推測ですが。その危険性をはらんでるけど誰が学生に向かって警鐘を鳴らし続けるのだろうか、その疑問もうかびますね。 ■大人の競い合いへ 堀井:その点に関しては、佐藤さんと概ね同じ意見。つまり、元々は学生が気楽にやりたかった祭りだ。スポンサー付けて、組織を大きくして、なんとか、かんとかで、開催しているうちに、先生に頼む部分が増えて来て。気が付いたら、いつのまにか先生がそれを取り上げている。しかも困ったことに「日本一なんだ」と言い始めたら「うちの研究室の学生が日本一!!」(←先生の書き込みの例)、みたいな話をし始めるわけですよ。 しょうもないなーと思うんだけど。そうすると大人同士が競い始めるわけです。 なんて言うのかなー学生の方が嫌だったら拒否すればいいだけなんですよ、学生は拒否しない、それが理解できないんだよなー 佐藤:日本の学問の世界に持ち込まれた成果主義っていうやつじゃないですか。日本の将来への悪しきベクトル、方々で起きていますよね。 建築系の仲間同士でも、競争と言う名の仲間同士の首の絞め合いでしょうか。 2004年4月から始まった、悪しき大学改革 (教授会の合議中心だった大学運営をトップダウン型に切り替えて意思決定の速度を速めることなどが狙い)の影響ですよね。 大学の先生たちへ「見える成果を出せ」と文科省から圧が掛り、毎年評価される。新自由主義のもとの、学問へも圧力が掛かる。学生の学外での自主・自治・活動まで奪うかのような、結末に〜。そうなっているように見えちゃうよ。見当違いであるといいんですが。 堀井:仮にそうだとしても、個人的に俺はまったく理解できない。 佐藤:そこまで、やってるとしたら、日本の皆さんは妄想の世界に生きているという証でしょう。現状のシステム世界に合わせて生きるだけ。で、学問でも親密な将来への活動ができ難く〜なっちゃっている。自分で決めた好き未将来は手に入れられない、トホホ状況が起き続ける。 「将来への不安に備えていると、不安が消える」その妄想は何の根拠もない。不安に備え、好き対策したはずだが数十年経つと福島原子力発電所事故。あんな巨大な人災を体験したし。将来は豊かになるべきだー!と想う、勝手な真面目さを持つ大人がたちが、やってくる社会に災いをもたらしてしまった。 学生さんたちだって、いつのまにか企業の奴隷にされちゃう可能性がある。たとえば東大卒の電通・女性社員(高橋まつりさん)の過労自殺が起きても、根本原因は解消されず。企業による今世紀初頭の新・奴隷制は続いてしまうよね。 堀井:俺は全然、社会の波にまったく乗らない ふはははは 佐藤:大多数の人々は、やがて起きるだろう不安に備えて大企業で働いて幸せになろうと考えている。その状況は年ごとに悪化して続いて止まらないように感じますが。若者たちは組織のシッカリした大手企業へと向かい、アトリエ系・建築家の絶滅が迫る。ここでの話でないな。 ■個展する学生 堀井:おっしゃる意味は理解してますけど。ただ単純に拒否すればいい。 今も拒否している人も居ると思うの。拒否して生きている人は、目立たないよね。去年か一昨年かな。俺の知っている人、友だちの研究室の学生が、学内で一番になった。普通だったら偏差値高い奴として、SDLに堂々と出して来る。でも、それ嫌だから、日本一展を無視して海外旅行に行って来ますって、旅行に行くわけ。なにやってもいい、構わない。海外旅行でもいい。俺だったら、つまらない、胡散臭い全国大会に出すよりは個展をやると思うのよ。要はこっちの方が突出しているから。 佐藤:個展の話を聞いて思い出した!京大にいた布野修司先生の理解もあったんだろうけど。京大生だった渡辺菊眞さんは学外で個展を開催してたな。詳し話は聞き取りした。記録したな。 元気のある学生で、個展会場に大学の先生を呼びつけて、喧嘩してたかも。先生はブリブリ、「世界が違う、二度と来ない」と捨て台詞を吐いて出ていったたらしい。故・大島哲蔵さんが、この季節になると語っていたよ。 (2009年12月個展を開いた当時の事を語る 渡辺菊眞先生 生い立ちからへ) 堀井:菊眞君は、たしか俺より1、2年下だから。京都でやった時に先輩のそれを観て「なんかツルンで、ウゼー」とか思ったんじゃないの。自分で個展やるのって正解なんだってば。 佐藤:南泰裕先生は院のとき有志と個展していたの思い出した。みなさん元気もあった。菊眞先生は若い時分には喧嘩好きだったのかも。 堀井:普段、見てたから分かる。そこはやんなくっていいと思うけど。ただ、つるんで何だかんだするのがウザかったら、一人で個展をやればいいんですよ。海外旅行もいいんじゃないですか。海外旅行だとSDLから逃げたように見えるからさー。逃げないで、別の攻撃を加えればいいわけ。 佐藤:SDLが開催された事で、卒業して春休みに海外に出るっていう行動と動機が不純に見えてしまいますよね 堀井:それだってSDLの影響受けているじゃないか。同じ影響を受けるんだったら、一人でも二人でも、全く別のインデペンデントの会をやる。その方がある意味では面白いわけですよ。 佐藤:誰かは個展を開催しているだろうけど。俺には知る術がないだけだ。SDLなどが、メジャーになってしまい、大きな祭りに光が当たりすぎて小さなインデペンデンの卒業設計の個展が見えにいじゃないですか。それが事実なら学生ための、建築系ジャーリズムは機能してないってことだね。 堀井:それは重大な問題。 佐藤:学生に愛は向けない俺ですが。今回は偶然に機会ができたので「全部観て体験記・入門を書いちゃおうかなー」と思いました。 堀井:インターネットの時代だから、インデペンデンでスポンサーゼロでも、努力次第で、多少の宣伝は出来る。SDLにお金を出しているスポンサーが、自ら宣伝している事は無く。金は出すけど、実は学生が努力しないと出来ないんですよ。宣伝もスポンサー自ら広告は出してくれない。お金だけだす。努力のレベルの問題だから、組織的にやると、なんとなく手が回り易い感じするけど。複数の大学から実行委員が出ていて100人も居るような組織じゃなくっても、3人ぐらいでやっていても、同じなんだよ。 佐藤:学生の組織が肥大化し動き続けてしまっていると、色々問題が隠れてしまって、参加学生は気付かずに歯車になって動くだけなのかな〜。本義は飛んでしまっても、参加しているだけで充実してしまうのかも知れない。 今回、いいなーと思ったのは、最後の方の審査員の質問に一位になった渡辺さんが「僕は一位じゃなくって、ぜんぜんよくって」(360番 私の評価軸)と、きっぱり応じて、審査会場の空気を一気に支配して、一位になってしまった。 で、一位の案に反対意見の審査員は反論せず、彼に一位を与えてしまった。審査終了後、ある審査委員一人が打ち上げの席で一位の結果に納得できないとめちゃぶー垂れてたいたよ。それを目の前で観てしまった俺は気分が悪かったことこの上なし。建築系大好きな俺でも、気分が悪くなったね、本戦の壇上で自論をもって論戦を挑まないで、呑み会でぶーぶー垂れては審査員の品位を下げるだけだ。 堀井:ふふふふ 佐藤:本戦の一連を演劇として観てたので、カッチョー悪い配役の登場は面白かったんだけど。自分たちで出した結果に対して、頑なに怒ってんだものなー、まずいよ。ツイッターでも同じこと呟き、建築ラジオでも垂れ流していた。 学生にみっともない態度を、晒すのは建築系・大人としても拙い。審査員自身の固定した過去の価値観で評価しちゃう。そんな者に学生の作品を評価する権利なんかあるのか〜。今ここで模索し続ける姿を壇上で見せるのが、審査員の守るべき最低の掟ですよ。自らの価値の化石化進める、かのような脳味噌なんか持ち込んじゃまずい。若い人のために有る建築の扉に自分の価値を固着・定着させて鍵を掛ける姿に見えてしまった。 堀井:佐藤さんが、ちらっと言っていたけど、一位になった動く作品作った学生。おそらく建築をやらないね。 佐藤:日本一位・渡辺さんの聞き語り記録 公開しますよ。彼は現在の建築はやらなくっていい。あの態度で建築に代わる事態を身の回りに立ち上げてしまえばいいだけだ。すみません、エスキス塾に関係ない話、脱線し続けてますね。 隣の歴史君に聞くけど、大学内では、上の先生たちが作った枠の中で活躍さえすれば評価が高まる。けど、自主的に学問や明日を拓く態度はでき難くなってる、と思うだけどね、何か感想はありますか 歴史君:ますますそうなっているよ。要するに、大学の教員たちは指導した学生が賞を受賞したとか・・教員の業績に書かされるから。コンテストへに対しては「やれやれ」って言うでしょう。 堀井:学生のお宝は同時に指導教員のお宝、なんで へーえー その3へ続く 参照:「国立大学法人化は失敗だ」山極寿一氏(京都大学学長) |
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(注 FBよりコピペ) (我が)T大学の〇さんが、◇◇で最優秀賞になりました。また、仙台でもベスト10に選ばれました。〇さん、おめでとうございます。 実は、〇さんの卒計は、学内では修士設計・卒業設計公開講評会に選ばれませんでした(それほど我が大はレベルが高いということ?)。実際、学内発表の時、〇さんは時間をうまく使えず、質疑もスムーズではありませんでした。 しかし、それがとても悔しかったようで、研究室の学生ではないのですが、ぜひ時間をかけて講評して欲しいと頼んできて、日をあらためていろいろ話をしました。そして、私だけではなく、指導教員の先生も◇◇の前に相談にのったそうです。 もちろん、私たちのアドバイスのおかげというよりも、そうして粘り強く取り組み、プロジェクトを見直し、発表の仕方を工夫しという、〇さんの熱意がこうした結果を生み出したのだと思います。 こうしたところに書いていいのかわかりませんが、決して器用な学生ではなく、よどみなく説明ができるわけではなく、しかしながら自分のアイデアをとても大切に育てるタイプです。卒業設計の途中でも、製図室で私と目が合うと、「先生、私の卒計、見ないと損ですよ。」と、自信だか、自己陶酔だか、わからない言葉をかけてきました。内容も独創的で、だってタイトルがTで、ベースがYですよ。誰でも、何だこれは?と思うでしょう。 〇さんのこのたびの成果は、本人にとってもとても大きなものでしょうし、同級生や後輩を大きく刺激し、励ますものだと思います。本当に嬉しいニュースですね。 |
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