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聞き語り記録 
 辻琢磨さんに聞き語る (SDL2018最も若い審査員)
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 09 まず、浜松で 
    遊びをもって 
    自主トレ・読書・勉強会 

 09

まず、浜松で

:例えば労働環境の話とか。なんで?そんなにスタッフが頑張らないといけないのかとか。学生のときは、そういうも情報入って来るじゃないですか。オープンデスクで行っている人とか、スタッフがスゲー大変そとか。何でそんなに身を粉にしてやるのかなーっと。何で仙台SDLやるのかなーと。一緒の違和感も有ったですね。

 独立し、浜松でやろうというのは距離も東京から離れられるっていのもあったし。関わる人間の種類が浜松の方が多いなと直感的に思って。建築を知らない人と、自分が知らない分野の人、行政の人とか、商店の人だったら、乾物屋もいれば、美容師さんもいて。それぞれ違う知識を持っている人が居たり。ジェネレーションもバラバラだから。

 多感な時期に自分の身を置く環境として、違和感が有る建築の中だけでどっぷり嵌っていると、あんまり好くないなーと思ったんですよ。

佐藤:一度、建築どっぷり界から逃走してみたと。違和感が生まれる場から離れてみたと
辻:そうですねふふふ。逃げたし、何となくアカデミズムの中を出て、建築家が社会に対して云々というのも地域でやるとか繋がれるだろうと想ったんでしょうね。完全に逃げるんだったら無人島に行った方がいいと思うんですけど。ちゃんとつながりつつ、違う価値観も享受できるっていう環境に移動した

佐藤:地域主義を信じていて離島には行かなかった。把握しやすい人間と人間の関係が有り、多様な人間が暮らしている故郷に一度、戻って。制度優先が目立つけど、そういう場所を探し出すのが、難しいのではと思いますが、浜松はすんなりと行きましたか

辻:いわゆる、コミュニティっていう感じでは、ぜんぜん無かったんですけど。単純に面白そうな人が居るなーっていう、仕事も有りありそうだなと思って、それで決めました。
 だから、べったりしたコミュニティとか、地域主義みたいな建築の作り方とは違うやり方で、建築を造れそうだなとは思いました。
 最初は、そもそも建築の仕事は無いだろうし。小さい、インテリアでやっていくんだろうなーと思ったんです。けど、面白いと想ったんでしょうね。

佐藤:逃げるというよりは、自分が生きている、そのリアリティーの在る場所を、自分に合った場所を保全して。そこから、もう一度立ち上がる、一度戻る、行ったり来たりできる場所がある感じだね。

辻:そこまで明確に考えてはないですけど。

佐藤:結果論かもしれないけど、そう見える。東京圏で身近な人間関係を作り出すには、あまりにも人が多すぎて、人が居ないと同じ状態になってしまう。評価の決まった人間が活躍する場でもあるし。
辻:東京でも、仮になんとか商店街でイベントやったりしたら、やったかも知れないですけどね。それは色んな因果が重なって、そうなった。そうなる状況が整ったという感じなので。自分一つの脳味噌の戦略ではないです。 

佐藤:浜松に戻ると、都会と地方の両方を暮らすことができ、どちらも明らかになって、自分も照射されて明確にはなったんでしょう
辻:そうですね
佐藤:横国で西沢さんに学んだこととか、浜松の市井の人々から学んだこととか、自分がこれからやるべきこが明らかになってしまったですか
辻:これからやるべきことはまだ分からないですけどね。


遊びをもって

佐藤:SDLに審査員で呼ばれたのは若者に人気で、人気の源は知らないんだけどね
辻:俺も解んないですよ

佐藤:辻さんは若者に人気なってたのでSDL座敷がかかる。何か実践しているのではないですか。辻さんの事を解ってないで聞き取っている俺は無礼極まるんだけど。面白い人々が集ま場に集まる人は面白い。で、辻さんも面白いそれは間違いないと思います。まだ明確にせず進展していただいて、今回のSDLで語られていたことは、たぶん浜松で実践している事と応答し合っているのだと思います
 「富士山の作品を観て自分の仕事が理解できた」と発言してましたので。気づきがあったと。辻さんの「評価軸としては遊びと言うかユーモアーというか、そういうところがちゃんと提案にも結び付いている。敷地とプログラムが設定されていて、リアリティがあるという事ですか。窮屈な計画じゃない、ガチの建築からはズレ出す、逃げ出す、退避してキョロキョロするというか。

辻:そうですね、それはあるんでしょうね。

佐藤:建築を考えている若者に人気が芽生えている辻さんなので「そこは何か・・」現場の浜松に行って聞き取らないと分からないことです。そういう身の構え方だとは分かりました。
辻:そういう態度が理想ですね自分は窮屈になっちゃうところもあるので、遊びをもってやりたいとは思いますけどね。

佐藤:だいた、いこんなところでいいですかね。繰り返しが多かったですが。学生はこんなことをやった方がいいんじゃない、みたいな事があれば。コメントを再度もらっておきましょう。若い人は好きな事や、選択肢がたくさんありすぎるので大変そうです

辻:人の話をちゃんと聞いて自分の事をちゃんと人に話すっということ。特に友達、同級生とちゃんと、当たり障りの無い感じじゃなく議論する
 それは建築の素養というか、ビルドに、ちゃんと共通言語が有るから、それを通して、同じぐらいの知識量があるんだから、バックグランドもあり、似たような感じで対等に話せる。

 対等に、ある深度を持った知的な情報について議論出来るっていう環境は、あんまり無いので

佐藤:社会に出てしまうと議論する場が無くなるっていうことですね

辻:無くなると思います。上下関係が出たりとか、知識に差が出たりする。議論の場をつくればいいという話もあるんですけど。学生の時にやった方がいいっていうのは、ちゃんと議論できる友達をつくるっていうことですね
佐藤:大学に入って、よき友達に巡り合えればいいね

辻:もあるから何とも言えないんでしょうけども、もし議論出来る学生が居たら大事にした方がいい

佐藤:SDLを見てても、議論を経ず資本主義批判になったり、作品に乱暴に投入して作り上げちゃう、その困難をどう学生は乗り越えていくのでしょうかね
辻:難しい
佐藤:新聞を読んだり、読書したり、研究会に参加したりしするとか。今年の1月11日の「宮城県の設計教育と都市」というお題での話し合いの場で、五十嵐太郎先生は自己紹介の中で「読書会に多数参加した」と語ってました。学生時代は時間があるので読書会に参加したんだと。そこで基礎をつくったと。今現在は学部横断した読書会が開かれているのか、分かりませんけど。

辻:へーえ


自主トレ・読書・勉強会

佐藤:建築の学生が議論する場所や、議論の仕方を身に着ける場所があるかどうかです。プレゼンの場もそうですが、自分の自由な発言が出来る場所が無いと鍛えられない。友達と議論し合うのは基本として。すこし広げる、世代や領域を広げ語り合う場に出向くことがよさそうですよね。(参照:自主トレで研究者の道を開いた石榑博士の経験談へその辺りはどうですか。

辻:僕も、やりましたよ
佐藤:建築の内容ですか
辻:歴史ですね現在建築史研究会っていうをやって。僕だけではないですけども。アドバイザーみたいな感じで、一回り上の藤原さんと、日建の勝矢さんと、倉片さんと三人居て。当時、SNSとかで声かけて、20人ぐらい集めて。2か月に一回ぐらい。
 現在の状況についてなんですけど、自分が気になることをまず発表して。そこから、深堀して歴史につなげていく作業をずーっとやり続ける。毎回毎回ディスカッションして。政治的になのかは、分からないけども。その時は市民のワークショプについて。コンペでワークショップから作る建築に興味があって。遡ってアレクサンダーに行ったり、最終的にワークショプの語源に辿り着く。
 
 その時のチームに山道君とか、モクチンの君とか。その後、そのつながりも有る感じです。

佐藤:能動的に動いていたんだね
動いてましたねー

佐藤:卒業設計に傾注するよりは、そっちが大事に思えるけど。得る物も多かったし、人間関係も手に入れことも可能だし。学校を越え、世代を超えた交流もいいね。

辻:それは大学院の時なんで、卒業設計は終わった後でしたけど。そこで出来た人間関係の方が大事ですね。ふふふ
佐藤:それはそうだ。ラウンドアバウト・ジャーナルに関わってたし。
辻:だから、仙台・SDLもそういう意味では一概に判できない。たぶんSDLで出来た人間関係っていうのも有ると思うので、大事にして欲しいと。

佐藤:卒制うまく行かなかった若者は、勉強会を開いて、各種イベントに参加しながら考え方を磨いて、今日の審査員の壇上に至る、といことですね。

辻:はははは。思考を磨いているかどうかは分からない。本を読むのがすごい苦手なんですよねー。読もうとはしているんですけど。どうしても生きている人と話したいと思っちゃうんですよ。
佐藤:生きている著者に会いにいくしかないね。

辻:例えば吉阪さんの本を読んでいると、吉阪さんと話したくなっちゃうんですよ。面白いことを言うなーと思うだけど、この人死んじゃっているんだなーって思っちゃって。悔しくなっちゃうんですよ。
佐藤:本に向かって話しかけて、質問したくなってしまうと。リアリティーのある本を作って欲しいというこですか

辻:その著者が生きて目に前に現れているような。
佐藤:AI使って、編集して、死んだはずの吉阪さんが、さも語っているようなメディアミックスの動画混じりふう本が出てきてきそうだね。応答もできそう〜、そうなるんだろうね。AI活用が発達すると、親しい死者と対話ができてしまうと思うね。(映画:ready player one内図書館)

辻:それは面白いねですですね
佐藤:そういう媒体が造られる可能性は高いですよね。需要あると思うし。
辻:作ってほしい
佐藤:そういう事態は良い結果なのか疑問もあるけど。AIの事も語っていた、動く建築の彼に会うから伝えておきます。


:話が戻るんですけど、動く建築の彼が一番良かったのは。その電源の話になったときに、当然電源は無い方がいいと、自分でエネルギーを作って動かす、その延長に。本当はもっと霧みたいなやつがやりたいと言っていて。将来像はもっと霧みたいなものをコンピューターで制御して。内外が関係なくつながっているような、ジームレスに繋がっている、ぼやぼやっとしたイメージがあって。

佐藤:そうですね、よく覚えてますね

辻:それ、僕は衝撃的だったんです。一番よかったのはリソースが有って、これは本当に暫定的なんだと言う。そういうふうに捉えていたのが僕にとっては好かったんですよね。
 一応これからの建築の理想像みたいなのは、強めにあってそれを実現しようとすると、テクノロジーが暫定的だから、これをやっているという意識が、ちゃんとわかってやっているんだなーと思った、そこが大きかったですね。 

佐藤:派手に革命してますみたいな発言はせず「暫定的卒制しました」と。その姿勢は評価できる。彼は若くねーな〜。
ははははは

佐藤:若い人は言い勝ちなんだけど、押さえて発言していたし、赤松審査員は「私たちの出雲の動く壁と比べて、何か進化してんの?あんたの作品」という問いも。軽くいなしてしました。老練なんじゃないですか

:これで建築は生命を持ったんです、言い切りたいんだけど。
佐藤:彼が目指す建築は霧、言い切らなかった。目指す建築は、何かと何かの関係によって、偶然のように可視化される事態なんだね。動く壁に応答されても応じる気が無いし、考える次元が違い過ぎるので、冷静でした。審査員の質問は古いなーって。
:たぶん凄いちっちゃい、ドローンみたいなのでコントロールして、ばーって霧を発生させると思うんですけど

佐藤:霧みたいな、だから霧を発生させたいわけじゃないんと思う。何かと何かが重なる場に、未体験な状況が生まれ出るっていう意味かも
:本当にユークリッド幾何学で空間論じゃないけど、そういうのとは違うやつをやりたいんだなーていうのは分ったんですよね。それを僕も聞いてみたいなー。

佐藤:AI使って吉阪さんの本を読んでいると吉阪さんが答える、そういう媒体が出来るとおもしろいね。高額になるので、そういう媒体を造らなかったのか。紙媒体は、こんなもんでいいんだと思い込んでしまっていて、新しい本、人間に必要な媒体はまだ生まれていないということで・・。本を読んでて、著者と会話したくなるのが、本の本質だったで。あるいは本を読んでいると脳味噌が活性化しちゃって、次々に疑問が湧き上がって来て、問いを立て続けたくなる、ショックで考え込むんだと。好い本だということだね。

そうですね

佐藤:一貫しているんじじゃないですか、辻さんが作り出した建築もそうありたいと思っているし、言葉もそうあるのがよいと思っているし。常に新しい事が続くということだから、固定した価値観をもって評価するという世界とは違うので、なかなか大変そうだけど。決めずに漂い続けるって構えは、今の状況と対応してて、いい構え方だ。

:そうですかねー

佐藤:俺は「俺が世界一だー」と言い張る、おじさんたちばかり見てきたから、新鮮に思えるのかもしれないけど。おじさん世界は価値が固定されていて議論が生まれない世界。パターナリズムだろうし、他者と違いがあると喧嘩でお仕舞。
 辻さんは日本独自の建築の言葉で囲いこまれちゃうと、議論が産み出せてないっていう壁を見つめて、故郷に戻って、そこから始めるのがいいことだよと。
 浜松は故郷なんでしょう。建築が消えた、終焉した、定義しにくくなったのでしょう。私は何者でしょうか、そこから始めたんだと。

:それは、ちゃんと考えたいですよね。

佐藤:横国で吉村さんに否定され、YGSAで鍛えられても、自分の中にはずーっと違和感が残り続けていた。で、一端、故郷に戻って、始めてみたと。長い長い緩やかなショックは続いている、そう受け止めておきます

辻:そうかも知れないですね

佐藤:大勢の建築仲間にショックを与える卒業設計作品であり、SDLであってほしいですね。順位をつけるという話に矮小化せずに、そうなって欲しいです。「動く」愛称の作品についても、語り継がれる事態になることを願って。審査員として毎年参加する訳じゃないしね

辻:もうないじゃないですか

佐藤:SDLを注目して見続けているわけにもいかないでしょうから、そんなことで長時間ありがとうございました

辻:はい、ありがとうございました。



 辻琢磨さんに聞き語るは、これでお仕舞です。最後まで読んでいただきありがとうございました。(文責:佐藤敏宏 )

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