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聞きi語り録 | |||||
3月11日pm8時〜 仙台市内の焼き鳥屋で酒呑みながら |
エスキス塾講師 堀井義博さんに聞き語る 01 02 03 04 05 06 |
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目次 01 SDLエスキス塾 ファイナリストたち 盛り上げた浅子さん 三回目の塾 講師の言葉を血肉化 02 個展やれ 祭りのマス化と自由・自主・自治 大人の競い合いへ 個展する学生 03 大学の現在 在野の建築家が なぜ 建築スフィアー 04 SDL2018の感想 311直後の話へ 時間の非実存性で 05 出品までの経費 追加しておきたいこと 文字記録を残すとは 抗弁してみる 06 逆質問 死んだ後のあそびなんです アーキエイドで起きた事 巨大防潮堤 復興について エスキース塾2018 講師 (講師の絵:SDLサイトより) 堀井義博 講師 1992年京都工芸繊維大学修士課程修了、1992年株式会社UPM入社、2000年ETHZにて客員研究員、2002年0110110 architects設立。 東海大学、慶応大学、東北大学大学院、宮城大学、宮城学院女子大学などで非常勤講師。 2012年小島善文、福屋粧子とAL建築設計事務所を共同設立。 五十嵐太郎 講師 建築史家、建築評論家。東北大学大学院教授。 を務める。 門脇耕三 講師 建築家・建築学者 ・経歴 ・主な著書 |
01 ■SDLエスキス塾 佐藤:堀井さんはエスキス塾講師を務め、今年で3回目だそうです。初めにSDL2018の感想をお願いします。何も無でもいいです 堀井:何もないことないけど。五十嵐君と違ってすっきり話せないので。ちょっと考えるね・・・ えーとねー、俺が思ったというよりは五十嵐君が言っていたことだが、「なるほどなー」ということの一つが。 前も会ったとき(2018年1月13日の日記) 言わなかったっけ! エスキス塾は、SDL日本一決定戦に卒業設計を出品していた人の中で、仙台に来たんだけど・・言葉は悪いけど。なんて言うか・・偏差値低い子たち。トップ10に残らない人たち。仙台に決定戦の観戦に来て「誰かと話したい」その希望を受け止める場所だ。 (2018年1月11日仙台市内文化横丁にて 3ショット自撮り) ■ ファイナリストたち 去年まで、具体的には「どういう事が起こっていたか」と言うと「エスキス塾でしゃべりたい〜」って希望をする人と、公式戦でファイナリスト10選に選ばれる人たちはスパーンと分れて、被らなかったの。 10選に残る人たちは、学内でも、たぶん凄く評価されてたり、別の何かで既に勝っていたり。「全国大会でも、自分は一位レベルだ」「トップレベルだ」と思ってる人たちが来ている。で、誰も申し合わせていないのに、スパーンと分れていたの。 その理由は2つぐらい俺は考えられる。一つは、一回目のエスキス塾は突然始めたので学生たちにも知られてない。学生会議からは公式にアナウンスがあって「エスキス塾やりますから」と言うけど、そもそも聞いてないし。 佐藤:本戦の情報しか見てないわけだ ■ 盛り上げた浅子さん 堀井:何か、解らないから様子見、っていうか知らなーいって感じ。まずそれ。エスキス塾の二回目は去年。 「そういえば、そういうの去年もあったなー」ぐらいでやったんだけど。今年と同じように俺と五十嵐君がやるはずだったんだけど、唐突に「浅子君、来てよ」って。それこそよく喋る奴、すごい鋭い批評を面白くやる、めちゃ好い奴なんだ。 俺も五十嵐君も割と親しいから「来てよ!きてよ」って言って来てもらった。浅子君は、学生たちに人気だから「え!浅子さんが批評してんの!?」みたいな感じで、集まったの。それでも本戦のおまけで。皆、あんまり気にしていなかった。 で、来た連中・学生たちは、一回目も二回目も「すごく来てよかった〜」って言ってくれたわけ、要は楽しかったと。 佐藤:どのように何が楽しかったんでしょうか 堀井:佐藤さんに何度も言ったつもりなんだけど。学生は会場にただ単に作品を置くために来たんじゃなくって、自分の作品について喋るために来ているから。 でも、ファイナリストに選ばれないと喋れない。ファイナリストに選ばれない人は喋らずに帰るんですよ、SDLの仕組みじょう。エスキス塾は選ばれる、選ばれないは関係なく、喋れるんです。 講師から、そこで意見をもらう。イエスとかノーとかじゃなくって。結局は対話が重要だから。講師と対話をしたくって学生の皆は来ている。俺らもそう思っている。学生もそう思っている。 卒業制作で考えたことについて話したいんですよ。作品に「何点」とか言ってほしいんじゃなくって、「俺はそういうことについて、こう考えたんだけど、どう思う」っていう話、対話したいんですよ。 それに対して、我々講師は「こう思う」「それだったら、こうやった方がいい」と。それが批評じゃないですか。エスキス塾に参加した学生たちは「講師と対話できるるから、面白かった」ってみんな言うわけ。 一回目もそうだった。二回目の時は浅子君の協力で、もっと面白くなった。去年はめっちゃー盛り上がったんですよ。 佐藤:大きな反響があったが、浅子さんは来てなかったね 堀井:今年はめっちゃ忙しいのかな。声は掛けていたんですよ、来てもらう予定だった。エスキス塾は公式の企画じゃなくって。裏企画だから「来る」って言ってくれても・・ 佐藤:浅子さんって何者ですか 堀井:建築家 佐藤:プロフェッサーアーキテクトですか、在野の建築家ですか 堀井:在野、在野。どこの大学にも属してないと思う。 佐藤:在野の浅子さんの参加で、去年のエスキス塾は滅茶盛り上がったと 堀井:たぶん、去年の人たちが「この企画はいいよ」っていうのを後輩たちに広めたんじゃないかなー。分かんないけど。 エスキース塾参加希望者は、今年と同じぐらい40人ぐらい。10時半から午後4時までの時間内に講評できる作品数に限界があって、参加者の人数を絞って決めているから・・。メディアテークを使える時間制限。そこで捌ける人数を決めているんで。 去年は、とにかく非常に面白くって、俺も五十嵐君も面白くって。たぶん浅子君も「これはいい、これが本来でしょう」と。学生たちも、めちゃ好くって。それで今年は三回目。 俺はツイッターで、当然のように「浅子君、今年も来るよね」って呟いたら「いいけど、本企画でもないものに、自分でお金払って行くのは、ちょっと格好が悪すぎるから、呼ぶんだったら、交通費ぐらい出してよ」とか呟き返してきて。 佐藤:自腹で来るの、恰好わるいかね〜 堀井:学生の企画にさー、自腹で来るのはちょっと恥ずかしいじゃん。こっ恥ずかしいって意味なんだけど。せめて「交通費を出して呼んでよ」と言うのね。「何とかしましょう」と。俺も五十嵐君も「なんとかする」って方針になった。 SDLの企画運営をやっている学生たちに話したら、なんとかなることになって。「OK」だったんだけど。始まる一月ぐらい前かな、年明けてから「どうしても外せない用件が入ったので、無理」ってなった。 今年は浅子君だけでじゃなくって、公式戦の審査員になっていた門脇君が「俺もー」って言いだしたから。「それは全然・誰も断りませんよー」となって、引き込んじゃった。「君は交通費出ているからもういいよねー」って言って、引き込んじゃった。俺と五十嵐君と浅子君と門脇君と4人でやることになって、途中で浅子君が駄目になったけど、門脇君は残ったから、結局3人。あとから佐藤さんが「来る」って言ったので。 佐藤:門脇さんはプロフェッサーアーキテクトですか。今年のエスキス塾・講師の配列は好いと思いました。在野の建築家の堀井さん、プロフェッサーアーキテクトの門脇さん、建築史の学徒でありアート・建築の批評も日々、多量に軽々こなす五十嵐太郎先生。バランスがよかった。 堀井:そうかもね。 佐藤:失礼極まりない言い方なんだけど。門脇さんが正しい建築論を立て板に水の如く語っているのかな、建築・無学の俺には正誤はほどんど分からないので、聞きますね。 要は他者の作品を観た瞬間から滔滔と言葉で評価し続けましたよね。人は初めて出会い考え喋る時は、どもったり、つっかえたり、言い直したりすると思うんですよ。滔滔と語る。滑らかな語りを身につけてる、トレーニングで鍛えられた者は、笑うセールスマンぐらいだと思って暮らしていた。だから門脇さんの語りには戸惑いました。 高齢者になり、耳が衰え、初対面の方の声が聞きわけ難いこともあった。建築系の知識が無いのもあり、「門脇さんが語る内容を、学生たちは受け止め、記憶し、咀嚼して、ここから活かせるのだろうか」と。その事を判断できませんでした。 堀井:世の中には門脇さんのように、滔滔と語る者はたまにいるよ! ■ 三回目の塾 佐藤:門脇さんへの失礼はさておき、三回も参加された堀井さんとしては、今回もいい感じだったなーと思いましたか 堀井:最初に話したように、ファイナルに残るような、偏差値高い人って言うしか、他に言いようがないんだけど。この人たちも「エスキース塾に来たい」って希望してたんですよ。過去の二回には無かった反応で。 佐藤:そんなことは知らず「エスキス塾の前座で語れ」と前日に呼びかけ、俺は特別賞と三位と、他にカスリモしなかった学生を釣って来ちゃったからなー 堀井:いやいや。そうじゃなくって、彼らが希望してたんですよ。でも、ルールとして「本戦で話せなかった人に、話す機会を与えるのがコンセプト」。 ファイナリストは、本戦に残った時点で自動的に権利が無くなるんです。そういうルールにしていたんですよ。そうじゃないと、あっちでも喋り、こっちでも喋りになっちゃうじゃないですか。 一応それで、彼らは本戦に上がったったから。彼らが「自動で消されるの嫌だなー」って言うから「来ればいいじゃん」と。 佐藤:10時半から午後4時までの時間内で、40人の講評をするのが限界だと 堀井:相当一杯一杯。後ろにいたから分かると思うけど。最後の方は俺はヘロヘロだからさー。 (絵:福屋先生のFBより) ■ 講師の言葉を血肉化 佐藤:作品の領域があまりにも広くって、専門的に語る状況にはならず、深まらないというのか。言い方変だけど 堀井:わかる 佐藤:今後の建築の道を拓くだろう若者に対して、講評者の配列が、このままでは問題であるかなーとも思いました。 それから、各作品に対して批評の言葉が発せされてるが、それらの言葉群を学生各自が記憶する術がないのではないか。どのように記録して講師の言葉を継続的に咀嚼して、彼らは血肉化するのか。その仕組みがないのではと思いました。 2分間のプレゼンは原稿作って発表、何度も練習してるようでした。練習後にエスキス塾に立った彼らは、講師の言葉を受け止め、どう保全しているでしょうか 堀井:ここから先は五十嵐君の独特の才能だと思うんだけど、エスキス塾の流れ作業だけでは絶対に充分じゃなくって。その後の懇親会が凄く重要なんですよ。 懇親会になった時に発表者と批評者の関係者はなくなって。お酒の席を同じくするじゃないですか。そうすると「さっき先生が言ったことって、どういう事なのか、もう一度説明してください」」そんな話を、食いつきの好い奴はしてくる。 エスキス塾2・3次懇親会の様子 呑み会からがある意味、本当のディスカッションが始まるわけですよ。それまでは、言っちゃ悪いけど、あの人数を、あの時間内で講評をやるのは流れ作業。その流れ作業が重要な入口なわけです。呑み会にはフックが有るから、「先生さっきこう言ったけど、もう一回、言って・・」みたいな話になる。 呑むと、訳が分からなくなっていくから、本当は酒を呑ない方がいいのかも知んないだけど。呑み会が進むとテーブルがグチャグチャになって、席を交換し合って進む、いい交流の場になる。 佐藤:酔っぱらってしまっても、講師の先生と喋った記憶は残る。それからグチャグチャに誤配された人と人。呑み会の場でしか成り立たない、新しい人間関係が生まれていた。そこで今後の建築における人間関係を、手に入れる。それでいいんですよね 堀井:それはけっこう重要なのよ。 佐藤:講師の言葉を血肉化するためには、捨てたり、記憶し続け活かさなければならない。対話でも文字にかえて何度も読み返ししたりするとか。初回だからそこまでやる必要もない、気もするんだけども。 堀井:はははは、 佐藤:学生にとっては今後に必要な、豊かな建築の人間関係が生まれる扉を開ける場所で、稀なる課外授業になってた・・ですよ。それが重要だと。 学生・自らが話したことを世間・課外授業に出ても、興味を持って応答してくれる他者が居るんだなーと、その事を知る場がエスキス塾で、それを実体験する。 建築人生のスタートに当たって重要ですね。 エスキス塾2・3次懇親会の様子 堀井:そこが凄く重要だし。真面目に喋れば、案が好きとか嫌いとかを越えて話すことがあるわけだから。その事も重要じゃないですか。 「好き嫌いでしか判断しない」というのが好くなくって。世の中の建物は全部好き!なんて奴はいるわけない。凄く普通なんですよ、考え方や好みの違いは特別じゃない。 佐藤:意見の違う・価値の違う他者との対話を成り立たせる。そこが建築的学問を学んだ良さの一つですからね。エスキス塾を大まかに理解できてきました。 進めて、今回の先を想うと、本戦からエスキス塾が分割していったように、エスキス塾に参加した人が、似たようなワイワイ会を地元に戻り分割させるのが理想ですよね。 まずは仙台には学生が寄り集まって来る、楽しい場が設えてあるのがいい。実務的な講習会は高額で、毎年多数開催されている。だが、自腹のエスキス塾に似た場、金銭目的ではない自主トレの場はほぼ無い。在野で設えては実践されているのは、ほぼ無い。実施しているかもしれないけど。俺には大学系列での講評会しか見えていないんだよね。 02へ続く |
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