HOME  作成 佐藤敏宏 
2018年3月12日晴れ 13時〜 仙台駅傍の通路上      
聞き語り記録 
記録一覧へ戻る SDL2018出品者 須藤悠果さんに聞き語る
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01 SDL 私の誇り
    ファイナリストの選び方間違
   今年 やばくねーか
   競り 

02 なれず 悔しくないの
   建築人生の扉
   後輩たちへ愛の伝言
   制作資金
   

03 須藤悠果さん 卒業制作
   トライポフォビア分析
   5原則発見 
   宗教施設を

04 漫画で意図を表す
   アルゴリズム建築の前に 
   宗教建築じゃない道
   練りが足りない

05 キモカワイ建築
   ミネルバの梟語りじゃね

06 エスキス塾に不参加 
   雑談
   現代の奴隷制 


 01
SDL 私の誇り

佐藤SDL2018において35選に選ばれましたが、惜しくもファイナリスト10に成れず、おめでとう残念でしたね。
須藤:そうですね ふふふふ

佐藤:大学4年生、卒業直前ですね。SDL出品者なので、なぜ出品するのか聞きたいです。まず感想からお願いします。SDL(せんだいデザインリーグ)2018どうでしたか。



須藤毎年、観に行っていたんですよ東北大学に来たっていうことは仙台デザインリーグが、近くにあるってことになってる!
佐藤:気合はいっている〜んだねー
須藤:それぐらいの意気込みです。

佐藤:どこから東北大へ
須藤:私は栃木県の佐野市です。実家からは東京の方が近いのに、わざわざ、東北大で建築を、学びにやって来ました。
 多くの講演会とか、建築の催しものが東京で行われることに、東北で建築を学んでいる学生は、モヤモヤ悔しい思いをしているんです。そんな中、卒業制作という一番大きいコンテストはメディアテークで行われることに、一種の誇りみたいなモノを持っていたから、毎年、観に行っていたんですよ。

佐藤:SDLが毎年開催されているって東北大に入学するまで、知らなかったでしょうー
須藤ふふふ、知らなかったです。入学してちょっと経ってから知りました。それからメディアテークっていう建物の、建築史上の役割みたいなものも、凄く大きいと思うのです。仙台に在るのか〜ここで勉強するのも意味がありそうだと思いました

佐藤:smtはオルタナティブ・モダンなのかな。近代建築の柱と床をあのように変容させ、床は薄くて平らで四角。壁は二重のガラス、モダン建築をすこし脱出始めた記念すべき建築ですね。21、新世紀の幕開けとともに、仙台に出現し話題になった。その建築が仙台に在ったと。

須藤:しかもそれが、私たちの代が生まれた年なんですよね。
佐藤:2001年生まれですか
須藤:メディアテークって、もっと前じゃなかったですか
佐藤:コンペの時期かな〜そうすると。オープン2001年じゃなかった。俺が五十嵐太郎先生と花田達朗先生に初めて会ったのが、2001年8月22日で、嵐の日で その日の教授との出会い記述ありsmtオープン記念イベントに沿った講演会場でしたから。2001年だと思っていましたよ。須藤さんが「私が生まれた時に出来た」って勘違して生きるって重、要なことだよね注:竣工引渡2000年8月10日

 (絵:smt 模型 webより)


ファイナリストの選び方間違だ


須藤はははは、それは凄いことだなーって思っていたんです。今年のSDL2018は毎年観ているなかで、ファイナルの盛り上がりに欠けましたファイナリストの選出を間違えたんじゃないかって凄い思いました。
佐藤:どういうことでしょうか。審査員みなさんが間違えて10作品を選んでいるっていうことですか
須藤:そう思いまいした。
佐藤:須藤さんが観ても、建築は終焉しているでしょう
須藤はははは終わっているかも知れないけど。その中で、もっと新しい事をやろうーと見えた作品は他に有った。ファイナリストは、喋りたがらない人が多かったなーと思いました。

佐藤:堀井さんと五十嵐先生から「せっかく仙台に来ても喋らずに帰ってしまう学生が多いんだ」とは聞いてました。残念ながら盛り上がりに欠ける点は、今年、初めて多面的にSDL2018を観察させていただいただけで、何度も観てないから判断できないんです。決戦の壇上での対話の程度は、恒例より盛り上がりに欠けたと。

須藤去年は凄かったです。喋るし、質問にもガンガン応えるし。そういうイメージでした。 私が成長したのかも知れないんですけど。ふふふふ 今年はどうしちゃったんだろうっていう感じでした。

佐藤:去年のSDLでは、たくさん討論していたんだと
須藤:そう。凄いイメージ・考えを持った人が見抜かれて、ファイナリストに呼ばれて来た、感じが毎年してて。あの数の中から、短時間で皆さん選べるなーって。

佐藤:去年までは審査員は凄いと思ってたんだけど 〜今年は・・疑問だと
須藤:そう思っていたんだけどふふふ 今年は何かおかしいなっていうのが

佐藤:須藤さんはどう考えているんですか、まだ言葉にできないですか
須藤:出来ないですけど。今のところ分かっているのは学生のせいじゃないって思ってます。

佐藤:大胆な仮説でもいいから言ってみてください、どういう内容なの
須藤:言っちゃうと、たぶん審査員のせい
佐藤:審査員は学生さんたちが選んでるんだから、学生の質が例年より悪かったってことになるよ

須藤はい。だから大会の構造のせいか、または審査員のそれぞれの個人のせいか、選んだ審査員のバランスのせいか、それのどれかは判らないんですけど、そう思ってます

佐藤:今はまだ学生だけど、未来の建築家・須藤さんがSDLを観た意見だと。審査員のバランスや質が悪かったり、全体の構造が悪かったり、審査員の選び方と組み合わせが悪かったんだろうと。その考えに至っただけで、いいんじゃないかとは思いますけどね。
 須藤さんも20年も経てば審査員の立場になる可能性もあるので。学生が審査員を選ぶと場合はメディア露出が多い人=有名な人の中から選んでしまうんじゃないのかな。
 建築について造詣が深い建築学徒などで、メディア受けしない人は選ばれないのではないですか。雑誌で見慣れしてる学生さんは、そういう人間の思想や哲学の中身まで理解し選んだ審査員達だったら、議論がよい配列になるかもですが、議論が沸騰するように考えて選んでないんじゃないかな。
 建築メディアで既に有名になってしまった人には、須藤さんが想う未来は見えないんだと思うんだけど。未来を誰がどうやって見通し語り、示すのかっていう、とても大切な話ですよね。彼・彼女こそが未来のよき建築の道を拓く若者だって!って、誰が判決するのか。誰がそこを指南できるのか、難問でしょう。
 そこはどう思いますか。未来を誰も観てない体験してない、そのときに、未来を示すのって可能なのかね、その問題ですよね。

須藤:あー。去年までは審査員として呼ばれるような、建築家の方々は、皆さんそれが出来るんだなーって思ってたんです。だから今年は・・
佐藤建築を学んで成長した。で、須藤さんの勘違いだったと気づいたってことかな

今年 やばくね


須藤:勘違いっていうか。皆さんそれが出来るというよりは、あるバランスでそれが出来ていただけで、ちょっとズレルと、今年の様になるんだと。
佐藤:誰がよき審査員の配列を考えだせるのか。これが今年のベスト審査員の配列じゃー、って思って実践したら全く盛り上がらず終わる。そんな事も起きるよね。
 卒業制作それぞれ物と審査員の関係からうまれ出て来る。希望の芽が出る気配も無く、祭りは終わってしまう〜、そんな年もあるだろうし。
 人間が人間の作った物を観て語り、優劣を示す困難さ。不満だなーと思ったとき、上位に申し出て判定していただく審級制度が無い。なにしろ一発芸で決めるんだからね。その困難を観ているんだろうね。流行りの「AIで」一位を決める時代がやってくるかもしれないんだけど。人間は間違うからいいんだと思うな、難しい感想をいきなり言うね。 

須藤:それはずっと思っていたんです怖くって誰にも言えなかったんです。
佐藤:それはなによりです。今日ようやく言ってしまって、よかったね、
須藤大きな構造敵に回しちゃうので、怖いなーと思ってたんです。でも誰に聞いても「ちょっと今年はやばくね」っていう感じ。
佐藤:若者から見たやばさっていうのは何。何に対するやばさなの。自分たち思い描いている未来の建築に対してなのか、SDLそのもののヤバさなのか、何に対してヤバいの。
須藤:う〜ん、デザインリーグそのものファイナリストがプレゼンしている時に一番感じますね
佐藤:プレゼンする学生がやばいってことですか
須藤:プレゼンする学生は悪くないんですけど。審査員がどれかの案を非常に買いかぶる、そのズレ。呼ばれた学生と審査員のズレが今年は凄い大きいなーと。

佐藤:物が発する意味と、物と語り部がセットになって語られる場から発生する意味はがまるで異なる。そのような事態は、震災の遺品とか遺構を通した同様な体験した語り場でも、起きていることですよね。
 審査員が物を選んだその時の思い、物を前にして語り部によるプレゼン後に立ち上がる意味。その違い。両方の意味のズレが大きく離れる方が、議論になり易いんじゃない。

須藤:そうですね、でも考えのズレというよりは、思いの深さのズレみたいなの
佐藤:解らない、思いの深さのズレってなに
須藤:そうすると、審査員が、いや、これはこういう事でやったんじゃないのーってなって。学生がまーみたいな感じになっちゃって、ガクンみたいな。
 理想なのは、気になるから呼んでみたら〜審査員よりも、もっと凄いことを考えていて、審査員が「あー、あー」みたいな。そいうズレは凄いいい議論だと思うんですけど。そうじゃないズレが。

佐藤:ファイナリストとして呼んで、壇上での議論を観ていたらガックリと
須藤:それもありますが。審査員の人は、プレゼンにある言葉も観て審査している
佐藤:未来の建築のために議論を深める、そのためにはSDLから議論を始めなければいけないんだと。「それを卒業制作を通して発見しよう」というイベントだからね。その意義に沿った作品を選んでない、と思ったんだ

須藤:私たちも正確に上位10人を呼んで欲しいとは全く思ってなくって。皆がSDLに行く目的は、議論を観て何かを得ることなので。正確に上位10人じゃなくっていいから、議論が生まれる作品そこは見抜いてくれよ!って思うんです。
佐藤:審査員の先生方も、未来の建築を発明する言葉とか、考え方とか、模型とか、それを観たい!とはっきり言ってたじゃないの。
 当日の壇上では審査員長が「卒業設計ってなに」と各審査員に問、語らせてしまう場面がありましたね(各審査員が語る評価基準へ)
須藤あはははは
佐藤:「俺たち決めていのかなー」という不思議な空気、戸惑いを表すような場面がありましたね。卒業設計の評価基準に対する意思は統一されずに、登壇していいんだね。
須藤:はい。統一はしなくってもいいんです。
佐藤:そう気が付いたんだったら、ヤジを飛ばせばいいじゃない。「未来の建築について議論しろー!」と。「私だって出品してんだぞー」って。ダメかな〜。不規則発言で静止させらるかも知れないが。審査員の発言が低調だと感じたんだったら、「発言させてください」って立ち上がるのいいかもね、審査会場を乗っ取る姿もいいんじゃないかな

須藤そうですね。ただ私の感想は、ファイナリストの人が悪いんじゃなくって、選び方が間違っていたんじゃないのかなーって思いました。

競り


佐藤:ファイナル10選の選び方が間違っていて盛り上がらなかったと。競りなどで10選選んだ人々の皆の責任だってことだね。(100選審査員・磯・門脇・五十嵐・辻・中田・桜井・小野田・本江・佃・土岐・齋藤・西澤・小杉・堀口・青木・赤松)
須藤10選を選ぶ議論を私たちは聞けてないんですよ。後々書籍で公開されるんですけど。競りの場面って後から公開されるのに、当日は公開されないから。だからそこが本当に正当だったかどうかまだ言えないんですけど。

 (絵:SDLサイトより。競り 35選からファイナリスト10をきめる)


佐藤:競りの場で語った言葉がそのまま編集し書籍に仕上がる、そうは誰も思ってないでしょう。編集・加工されて本になる。書籍になるってことはターゲットリーダー目掛けて加工した中身で刊行し売る目的なで。過去本の競りが事実だと受け止めるのは行間を読まぬ、鈍感っていうことじゃないの。それが一般的な本の現実じゃないの。
須藤でも信じてます、そこはふふふふ
佐藤:事実がまま本になって刊行されるなんんて思ったこと無いね。編集作業って意図を必ず入ちゃうよ 
須藤そうか 隠蔽されるか
佐藤:隠蔽されるかどうかじゃなくって、競りの場が編集され刊行されるってことだけ。深まった議論があったかのように編集することは可能でしょうってことです。
 ライブのまま、スリリングな展開のまま本にするとは想像しがたいです。編集意図がない編集なんて本の場合ないでしょう。須藤さんは信じていたけど、俺が余計なことを言ってしまったかも知れないね

須藤ははははは、今ちょっと疑いの思いが出てきました。今までは信じていた。書籍も形式化されていなくって、本当に言葉そのまま、凄いライブ感のある文章だったので、信じてました。競りもそのまま、誰が何をしゃべったか、そのまま全部。

佐藤:毎年本になって出版されるんですね。本戦の議論の中身もそのまま本になるんでしょうか
須藤はい。本戦の議論は当日聞くことができるんですが。競りは凄く遅く本になるまで分らなくって。運営をしている後輩とかが教えてはくれたんです。須藤さんおしかったですよって。それぐらいしか聞けないんです。

佐藤:出品者は競り話を是非聞いてみたいよね〜。競りの場を見学させてもらったけど、マイクが設置してるわけじゃないので議論の中身を全て聞き取ることはできないね。口ごもる人も、声が大きくてはっきり語る人も、混在してる中で競りが進んで行ったね。競り人は理解して進めるので責任重いと思いました。競りについては学生さんたちの間でも話題にはなっているですね。

須藤そうです。みんなそこには期待せずに、出品してると思います。祭りだからって。これは順位とか関係なく、ただの祭りだと思って出そう。そう話したりしてるんです。学生の間ではみな、そこは割り切ってるんです。
 でも議論は楽しみにしているので。そういう意味では今年は得るものが少なかったなーと思うんです。

佐藤:審査員の議論を活発にするだ、と勇んで「飛んでも作品」を出すと落ちちゃう可能性もある。議論しやすそうだと考えて提出すると、既存の考え方・既視感たっぷりな作品となり、古い提案になってしまう。出品者はそこを考えずに製作に集中するのが好いでしょう。

須藤:みんな自分の全力で出して来ているから、学生は悪くないんじゃないかなーと思うんです。「どれを選ぶか」そこが要なんじゃないかな・・

 
 その02に続く  



 注1)敷地面積3948.72平方メートル建築面積2933.12平方メートル延床面積21682.15平方メートル最高の高さ36.49メートル規模地下2階、地上7階+屋上階構造鉄骨造一部鉄筋コンクリート造着工1997年12月17日竣工引渡2000年8月10日工事費約130億円 せんだいメディアテークHPへ