HOME 作成 佐藤敏宏 2018年3月12日晴れ 13時〜 仙台駅傍の通路上 |
聞き語り記録 | |||
SDL2018出品者 須藤悠果さんに聞き語る 01 02 03 04 05 06 |
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02 なれず 悔しくないの 建築人生の扉 後輩たちへ愛の伝言 制作資金 |
02 ■なれず 悔しくないの 佐藤:作品数は最盛期より少なくなってるそうですが、332作品でも審査時にじっくり見てる時間ないよね。今年は1分ずつ観ても332分掛かる。チラ見ですよね。図面と模型の前で制作者が、審査に立ち会って応答するわけでもない。100、選出の時も作者の立ち合い説明付きじゃないし。物を審査員の面々が深読みしすぎて選んでしまっているのかも。壇上で語らせてみたらガックリすることも。 須藤:毎年、一作品や二作品あるのは、しょうがないと思うんです。1、2個なら、それはそれで盛り上がるじゃないですか。今年はほとんどそれで審査員が焦って、解釈を言う。そんな姿になっちゃった気がして。それはどうなんだろうなー。 佐藤:毎年参加してないので同意しますと言えないです。先ほど言いましたが、震災遺構、遺品についても言えることです、作品を遺構と読み替えてみると。物と語り部の関係で、受け取る側に異なる意味が生まれる。物だけ観て読み手が当初想った意味とはまるで違ってしまう。その関係と意味の違いの問題は、SDLにも共通していると思いました。 そういう状況、モノ(卒業制作品)と語り部と、そこから生まれる意味の深さと浅さを考えちゃいますね。 須藤さんのSDL1年目については、本を通して体験したんだろうが、残りの3年間は見続けました。4年目には出品したので、当事者です。当事者だからこそ強く言える 須藤:確かに。でもそうやって考えると、凄い短い時間の中で審査を頑張って頂いてるとは思うんです。去年までのレベルと違ったなという思いです。 佐藤:審査員の問題なのか、出品された作品の質の問題なのか、両方なのか私には結論を出せないです。が、須藤さんの感想は素晴らしい一例になると思います。 須藤さんがファイナリストに選ばれなかったことは「くやしい」と思ってないんですか 須藤:セミファイナルの票が2票はいっていたので、もしかしたらと。 セミファイナルは、まず100選を選ぶんですよ。100から競りに掛ける作品を選ぶ。そのときは審査委員長が独自に100の中から10選ぶんですよ。それとは別に審査員が33ずつ分けて、99作品。33ずつ分けた中から、何作品かを押すんですよ。そこから競りが始まる。競りの議論の中でファイナリストを、どれにするのか決めるんです。 佐藤:出品した学生さんはその事を知って出品しているですか 須藤:知っているんじゃないですか 佐藤:東北大やSDLに関わって来て4年生の人は知っているのだろうけど。他大学から出品している人は知っているのかな 須藤:去年までの本を読んでいれば、たぶん分る 佐藤:SDL過去問回答本のような本があるんだと。その本を読んで選ばれる作品つくろうとして、そんな卒業制作しないでしょう。どうしても気になり過去問が掲載されている本を読んでしまうんだね。 須藤:読みましたね。そうすると、私には審査委員長が入れた一票。審査委員長の10作品の中に入っていて、セミファイナルの担当の人も1票入れていたので。セミファイナルは満票だったんですよ。 だからもしかしたら呼ばれるかも知れないと思って、呼ばれたら直ぐプレゼンを持って行かなきゃいけない。 まだ呼ばれるか分からないのに、準備しなければいけない。そういう人が一杯居るカフェ、みたいな所が在ったです。そこで作業してたら、電話が掛かって来る人が居て。何人か抜けて行くんです。勘違いだった人が残ってみたいな。 佐藤:喜んで泣いたり叫んだりする姿、そこを観たかったなー。くそーって怒っている姿も観たかったなー。なんで選ばれないだよ俺の作品・・って怒んないんだ。ツイッターで指立てていた出品者はいましたよ。 須藤:いました。呼ばれるのか判らないっていう状態で、静かに終わっていくので、終わりの瞬間が無いから、わーっとは成らないんですけど。 佐藤:祭りだと分かってても悔しがって演じて欲しいんだけど。アンビバレントの生煮え状態で祭りを閉じる。精神衛生に悪そうだね。 とは言っているけど、皆んさん本気で待機しているのでしょう、って突っ込みいれたくなる。 須藤:ははははは、実際そうですね。
佐藤:10選入りを待つ場、そこには不思議な祭り状態があるんだね。俺は大学の建築教育を受けてないので、そういう体験も知らない。 SDLという祭りがなくっても、建築家になる人は成るでしょうと想うんですけど。成ろうと思って建築家になれる人は、ごく少数だとは思うんです。変な話をしだしそうなので止めよう。 要するに通過点のお祭りだけど、一所懸命で挑むのはよいね。悔しがるって事が大切な事なのかなーっても思いますね。 建築を造って、なんぼの建築家っていう捉え方もあるし、アンビルドでも次の時代を拓く建築になるし、たんなる建築に関する言葉だけでも次を拓くだろうし。どこまでが建築家への路上であって、大学生の時にどの程度到達してればいいのか、示すことはできないんです。 言葉のレベルでも、模型、画像、動画を造って実現しなくっても建築家っても思うし、実際に造ってこそ建築家でもいいし。3っぐらいの段階と領域があるとすれば、その三つに関わりなく、俺は造るだけの施工現場から建築に入ったが・・ 卒業制作で悔しがる気分の重要性を理解できても、意味は理解できないです。目標があって進めることは、楽そうだとは思います。 ですが手で描けない建築とか、こういう建築だって語れない、つまり表現できないないと実建築には至らない。そこは現場から入った俺も、入口は解っている。若いうちにそこを鍛えあげる、SDLというよい機会があるんだなーと思います どうですか、卒業制作展に出品してみて、建築を造りたいという切っ掛け、糸口は見つけましたか。自分の建築人生の扉は見つかったんですか、どうですか 須藤:そうですね、それは凄い上手く行ったと思います 佐藤:どういう事か具体的に話してください 須藤:私は通年設計だったんです。テーマを選ぶときから、絶対自分のために卒業設計をしようと。 佐藤:自分自身のための建築を創るぞ〜と。 須藤:そうです。ここで何か発見したいけれど、その発見は自分自身のためだけにしてやるー。 佐藤:自分自身の(可能性)発見したい・・あれ違うかー 須藤:今後、建築家をやるに当たって、もし建築家になり設計をやるに当たって有益な発見をするために、卒業制作をやるんだと。 佐藤:自分好き。自分の欲望に貪欲ですね 須藤:はははは、そこはめっちゃ満足してます。ファイナルに選ばれなかった時も、そんなに「そか」ぐらいだったんです。
佐藤:自分の欲望に対してめちゃ思い切り進んで実行し、満足と 須藤:自分のためにやったので。でも、その後、怒られて。先生に、ふふふ、なんでアウトプットもっとしなかったんだって。どんなに好いことをやっていても、ちゃんと観てもらう努力をしないと、選んではもらえない。東北大学は皆その努力がなさ過ぎる。一人だけじゃなくって何人もの先生に言われました。 ファイナルで勝利して欲しいというよりは昔からある東北大の構造的な表現の弱さにイライラしているんだと思います。 佐藤:先生方から期待され発奮を促されてしまったと。作品のレベルはいいけどプレゼンのレベルが低すぎると。他流試合もしてないだろうし、どこで気付くの。いきなり壇上に立たせて喋れといわれてもね、人生一回だけの勝負。練習過程は無でしょう、どう克服するんでしょうか。 須藤:プレゼンというか模型ですね、模型表現ですね。模型が小さいとか、こんくらいで良いだろうみたいな。東北大って模型は小さくって地味なんです。 佐藤:いまの語りは今後の後輩たちへの愛の伝言ですね 須藤:ははははそうですねー
佐藤:後輩たち、私を乗り越えて行ってくれよ、熱い愛情だね 須藤:私はお金が無かった、模型つくりも、お金が掛かるじゃないですか。みんな何処からお金を出して、あんな大きな模型作るのかって 佐藤:出品に掛かる総額、経費の話も聞きたかったです。経費はいくらかかって、誰が出すのかです 須藤:そうなんです 佐藤:SDLに出品しようかなと思い立って、制作を開始してから何か月掛ったのですか。 須藤:だいたい製作するのに一か月ぐらいです。構想は人によります。通年で設計をやっているか、前半は論文をやっていて、そこから始めたかによるんです。 通年設計をしている人は構想は長いですね、半年とかそれ以上。論文をやっている人の方が多い。論文だけでもいいんですけど、論文だけの人は意匠系にはいないです。東北大学は私以外は全員論文も書いてました。両方やる人が多いんですね。 佐藤:経費の話に戻しまずが、1月掛かるじゃないですか、一人で模型を作れないから、手伝ってもらい、朝から晩まで作り続けるんでしょう。ご飯ごちそうするよね。何人に手伝ってもらうんですか。 須藤:私はお金が無かったので、ほぼ二人、三人か。 佐藤:4人分の夕飯代は要るね。1食千円で20日やると8万円じゃない。そんなに掛けずカップラーメンだけ支給するとか 須藤:いやいや、学食ですが、ちゃんとご飯も食べてもらったし、打ち上げもやりました。 佐藤:模型の材料費も要るよね。 須藤:私はほんとうに、SDLでずば抜けて安いんです。最後の打ち上げで、皆に呑め呑めを抜いて計算すると、夕飯代も入れて二万円、二万五千円ぐらいです 佐藤:安く仕上げたと。表現が乏しくなるわなーはははは 須藤:確かに、卒業設計の発表はそれで。そこからSDLまでで、ちょっと追加、しました。 佐藤:打ち上げ呑み会、掛かりそうだね 須藤:一人3500円でおごった、6人で打ち上げしました 佐藤:21000円なりと。卒業設計の段階ですよね、さらに手を加えていくんでしょう。どのぐらい掛かったのかな。 須藤:私は模型に全く手を付けなかった。大判印刷があって、それが外部講評会の大きい講評会をすると一回インク代が5千円かかるんです。 佐藤:高額なので試し刷りはできないね。一発印刷だと。大学で無料で印刷できないと 須藤:東北大学は無料じゃないんです。レーザープリンターも無いので。そういうお金が掛かる。 佐藤:インク代などプリンター費用が掛かるんだと 須藤:けちって来たのに、そこで大出費ですね。先生たちに怒られたのはSDLまでに模型をもっとやれよと。そういう事だったと思います 佐藤:建築模型にも現れる格差社会の現実だね。金持ちの子供とか、金持ってないと、学生時分から建築家になるための扉を開くことが出来ないかのようだね 須藤:建築科の学生を見ているとお金持ちばっかりです。。 佐藤:お〜そうなのか。経費の話をもうすこし聞かせてください 須藤:雑誌とかを見て他の人を見ると10万円ちょいみたいです。卒業制作っていう、卒業設計の各大学の優秀作品を、まとめた雑誌が出るんですけど。そこに制作費という欄があって、それを見るとだいたい10万円ぐらい。先輩からも「10万円は掛かるよ」といわれている。 佐藤:外部の学生さんは、仙台までの往復の交通費と宿代や宴会費用が加算されるね。 須藤:模型の配達代が一番厳しいです。梱包して宅配に依頼するんです。 佐藤:仙台の人々はメディアテークまで持参するんじゃないんだ 須藤:今年から駄目になったんですよ。すぐそこにメディアテークが在るのに、ど田舎まで車で持って行って、私は二万円掛かりました。でも私のは模型が小さいくて二万円なので。ちゃんと大きく作るとどんどん運送料は上がって。さらに九州とかだと八万円とかになるんですよ。 佐藤:熊本大学と九大から来てた学生に、本戦直後の呑み会で会ったけど、ああ、沖縄からも来てたな。交通費に運搬費とたくさん、SDL参加のためには経費が要るね 須藤:いったい幾ら掛かっているのか、私がもし沖縄の学生だったらたぶん出品するのは諦めるぐらい、お金が掛かってしまいますね。 佐藤:お金持ちじゃないと建築家の道へ入れない。しみじみお金の問題を学生の時から背負っている。 須藤:はい、本当にシミジミ ふふふ 佐藤:模型製作期間は1月ぐらいで完成したと。構想はかなり時間が必要でしたか。 須藤:私は凄い構想に時間がかかりました、8月からずーっと取り組んで。ずーっと研究みたいな感じで、取り組んでて。アドバイスを毎回もらって。 (絵:ツイッターより) 佐藤:SDLの裏方は120人ぐらいだそうですが、その学生さんに対しては出品者としてなにか思いますか。 須藤:学生会議っていう団体が実行しているんです。私の友達も一杯いているんです。学生団体なのに、対応とかもすごいなーって思います。マニュアルが毎年たぶん有って、格好いいなーって思うのと。私も運営のお手伝いをしていた事があって、凄い大会を学生だけでやっているなーと思います。 その03へ続く |
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