HOME 佐藤敏宏が作成しました | 佐藤敏宏(元・エア建築家)@セシウム都市フクシマ による聞き取り記録集 |
「O邸」 設計者 中山英之さんに聴く (2013年 5月 19日千駄ヶ谷にて) (生い立ち 01 02 03 ) ( O邸を語る 04 05 06 ) (伊東事務所のこと 07) |
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2013年7月4日早朝のO邸 神社の木々の葉を共有している 向かって右 神社領域 O邸足下周りの様子 2013年7月現在右の隙間が出入り口となっていた 現在の玄関は狭い太った人は通れない 緑のトンネルの奥に玄関は在る 玄関風の場所から見返す 右家型領域と家事領域および二階の領域を結ぶ階段 早朝のO邸家型内部で目覚める 縦に布団を敷く 早起きの子ども達に布団は奪われる 3人揃ってアイパツドを使いお気に入りのアニメを観るのが早朝の日課のようだ 家型の内部には子供用の仮設の部屋が設えてあった |
04 O邸を語る 佐藤:O邸のことについて いきなり聞かせてください。大学院卒業後からの間を抜いて、いきなり O邸の話ですけれども。設計における抽象的な話をしていただければ。形をつくったのか、何て表現したらいいのか解らないんですけど。中山さん流にO邸はこうだとか、説明してくれませんか。そこから話を展開していきたいので 中山:そうですね〜 何かO邸に関しては説明が支離滅裂になっちゃうんですよね〜 何か凄く 分裂しているというか 佐藤:それはどういうことですか 中山:何か一本筋が通ったコンセプトというのを上手に今まで説明出来たためしがなくって。上手く言えたなーと思っても、大事なことが全部言えてないような気がしたり。 あんまり上手に出来た建築では、「上手に作れたな−」っていう建築では実はないんですけど。でも「一番 自分にとっては切実な建物だったなー」とは思っていて。 どこから どういうふうに説明していいのか 難しいんですけど。 いつも説明する順番としては、まず景観法というのが京都にはあって。 あそこは山並み背景型っていうタイプで町屋型っていうのとは違う。山並み背景型っていう景観コードが掛かっているエリアで。要するに見下ろされた時に屋根が見える。その屋根に対する幾つかの決まり事を守んなきゃいけない。 で勾配屋根にすること という事とか。明度、色とか軒の出とか、屋根を中心にした決まりがあったんですね。 だから、いわゆるフラットルーフみたいな物ではなくって。スラブの積層みたいな形で作る建築ではなくって。屋根が付いているっていうことを守んなきゃいけない が一番最初にあったんですね。 それでとりあえず 屋根が。だらだらと作った順番を話すと。考えていた順番をだらだら話すと。 敷地のまん中にとりあえずカットした、三角にカットした物を置いて観る。なんかぼーっと観ているんですけど。模型とかを想像したり。どうも「なんか棲みたくないな−」っていう感じ。 隣が神社で、その隣はそういうコードが掛かる前の四角っぽい建物で。その間に家の形をした物を置いて観ると、どうも何か家の中よりも、その家を取り囲むぐるーっとした周りの側の方が何か空間らしき何かに見えるんですよね。 それで奥様からは「お庭が在る家が欲しい」っていうリクエストが、唯一のそれは実は具体的な施主からのリクエストだったんですけど。「お庭がある家が欲しい」って言われたので。本来そこはお庭にしなきゃいけない所なんですが。そっちの方に棲んでみたくなったんですよね。 それで、なんとか まん中の家をよじったり、細くしたりしながら、周りの空間をなるべく大きくしちゃって それでそっちの側に何か屋根 掛かり みたいな物を母屋に立て掛けるみたいにして、作っていって、お風呂とか、キッチンとかダイニングとか、そういう住宅に必要な 佐藤:庭に並べてみたと 中山:(住宅に必要な)機能を庭の側にね、並べ始めちゃったんですよね。この辺に居ると谷間みたいな感じだとか、この辺に居ると隣の神社の樹のドームの下に居るみたいな感じだとか。 その時寄っかかる壁として、その「屋根付きの母屋が在るとけっこう 居心地がいいだろうなー」とか。何かそういうことを考えているうちに。全部が家の周りで事足りちゃったんですよね。 佐藤:ふふ ふ なるほど 中山:その代わり庭がなくなっちゃったんですよ。在るんですけど庭はね、その間にぽつぽつと庭があるんですけど。肝心の庭が無くなっちゃて〜 それで、家の中を観た時に 家の中にはたいした機能が残ってなかったんですよね。一瞬たりとも家の中の機能について考えてなかったので。 佐藤:なるほど 中山:それで 何か まるで他人事の様に自分の最初に置いた家(型)を、けっこう歪んできちゃったりしたり、凄い細くなって来たりしてたんですけど。なんとか家らしき原型をとどめていて、景観法のコードを守ってる物体が真ん中に残ったやつを、スタディーの後半で改めてぼーっと見て。「なんなんだ これは?!」ってなってたんですよ。 ともに ふふふふふ 「こいつを どうしよう」っていうふうになって でその時に「これはまあ、なんか家の形をしているけど、中に何にも機能も残らなかった」から、庭と考えても いいし。あとは建物の周りに色んな機能を 付けて行くと 丁度 屋根が掛かった所とそうじゃない所が交互に並ぶみたいな感じで、敷地の周りを一周したので。そこは小さな庭でもあるわけですけども。本来的な意味における庭でもあるんですけど。 真ん中のお家から、ホテルの廊下みたいにドアを並べると。一号室の、101号室のドアを開けると外に繋がってて。102号室のドアを開けると何かトイレに繋がっていて、103号室を開けるとまた何か別の所に繋がっていて。104号室を開けるとまた外になっているみたいな。 庭とか建築とかが、等価なものとして、並んでいる。どこでもないホテルの廊下みたいなものに真ん中の家が成って。 その感じってういのが、ある意味では庭みたいな。建築を作った時に最後に残った場所を僕らは「庭」って呼んだりするんですけど。「そういう場所に成るのかなー」と思って。そうだとしたら、何か建築としてのまとまり みたいなものがちゃんと在ると同時に、ある時間帯とかによっては それが無くなって町とそのまま繋ぐというか。「家としての囲いが一面 無くなる」というか そういう両義的なもの。そういうふうなものにしておくと、一応「だらだら〜とやって来たスタディーに 落とし処が作れるかな−」っていうふうに考えて。すごい だらだらとした歯切れの悪い説明ですけど。 佐藤:いやいや実に分かり易い説明 す 中山:そういうプロセスで思考を経て あの家が出来たっていう感じです。 佐藤:そうだよね〜 それは好かったですね ともに はふふふふふふ 佐藤:確かにね、あの真ん中の 、今説明を聞いていると通路のようなね、庭のような、目的合理の目で観ると 何とも言えない不思議な場所ですよね。 僕はああいう機能も 説明もくっついてな空間が原点にあって、それを中心に 中山:佐藤さんの原点 佐藤: そこに機能のようなものがくっついてる。 それの事態が 面白いし。道路側から家の形だけ素ぽーんと 大胆な一枚ガラスで表象されてて、道路なのか、家なのか 曖昧になっているじゃないですか。そこが凄く好いし。使われ方も 対応しててそのように使われている。 僕が何度か行って泊まったときも そのように使われてました。僕が道路に寝ているみたいな感じで目覚める。布団も横に敷けないのから 中山:縦に 佐藤:縦にしいてねます。上の場所から早きの子どもが洗面所に降りてくると踏んづけられるので 神社側の壁にそって縦に敷いて。 子どもが必要な機能の扉を開ける時に寝ている俺をまたいで行く 中山:またいでいく へへへへ 佐藤:朝まで喋って寝た ばかりなのに 早起きの子ども達に踏んづけられると。大変だからね。そこに居ることによって、中山さんの建築を使っている人達と 強引に一体になってしまう、一緒にされてしまう。建築的強引によってね。戸籍上の家族でもないのにね。岡田先生から「泊まれ!」の命令が来て泊めていただきまして 何泊しても とても面白いなーと思いました。時々俺のインタビューの場としても 使わせていただきました。 ホテルの廊下みたいな感じで説明されましたけど。確かにそういう感じではあるけども、でも違いますよね。ホテルの廊下じゃないですよね 中山:まあそうですけどね。 佐藤:どうしてこういうものを?意図的に作ったのか、その当たりが体験してては判らない。それで そこを聞き取りに来たんですけど、よく分かりました、そうですか。それで出来上がってだいぶ4年ぐらい経ったかな。 中山:はい。 佐藤:今思い返して その当たりは。後で自分で解釈し直してみて、今の説明と違う感じになって来ていると思うんですけども。 中山:何か割とちゃんと説明出来ない、もやもやした感じで作業してたので。いまだにキチンと文章も書けたことがないんですけど。段々なんでそういうことをやったのか?っていうことが自分の中で解ってくるというか。 佐藤:そうですよね。 中山:徐々にこれでもだいぶ説明が上手くなって来たんです。要するに 佐藤:ふふふふ 中山:当時はそこまで 佐藤:そうだろうねー 中山:上手く話せなくって。これでも だいぶ ちゃんと説明が出来るように、時間が経っに連れて、成ってきたかな−。だから今来てくださって。まだ まともな話が出来てよかったなーって思う。ような、たぶん時間の経ちかたをしていると思います そういう意味では独立したてで、2個目の住宅なんですけど。その辺で作っていたもの っていうのがやっと今、なんで そういうことを何かやろうと思ってたのか ということが解ってきつつ あって。今一番最初の独立したての頃に作っていたプロジェクトについての、テキストとか、いわゆるコンセプトみたいなやつを、やっと書けそうだっていう時期に 一寸今なって来ているっていう。 佐藤:相当 時間が 掛かりますよね 自分が作った建築の意図を明確にしたり 咀嚼できるまでには なかなか解らないですよね 反芻し続け解こうとしないとね 中山:分かんないですね 佐藤:解っていた外に解るべきことがあることをわかるには時間が要る。 僕は「建築の理想は路上だ」って言っていて。僕の作り方は構成を考えて共有部分と個室部分みたいな領域に分けて、パブリックな場とプライベートな場を分けて その他者と主体の境界に家としての物語が立ちあがるかのように作ってきたのです。 O邸を見て体験して、パブリックな空間がメーインというか ほぼ全部パブリックな場になっていて。個室が無い わけじゃないですか。他者の空間ばかりで、主体になる自分の空間・場が無いっていうことがいいです。 主が消える、溶融することによって他者と主がドンドン入れ替わることが出来る。誰でも招き入れ 主に仕立てることがが可能である。 立ち上がるけど誰のもの建築でもなくなっていく。そういう近代の所有制度から成る家制度から見ると「危うさ」と言ってもいいし、21世紀の建築の可能性と言ってもいいし。2重にあることが 本来の建築の力であると言ってもいいんだけど。 主体であることや 21世紀もくてき合理・機能的な場の所有を 断念することによって、他者との交流や交換や主との 他個交換の豊かさが立ち上がってくるっていう面白い あれはいい 場所だと思うし。 建築は社会全体の中から生み出されて来てて、もちろん中山さんが今仰られて来たことも、中山さん自身が発明したことではなくって、色んな人間の記憶だとか体験した言葉や知見が、中山さんの他者である自身の身体を通し 積層して言葉や建築としてアウトプットされている。ある条件が与えられて 敷地が与えられた時に 具体的に 模型を眺めながらでも中山建築として結実して出て来る。完成する。 自己と多他者や社会の知や言葉が 建っているということだと思います 自他が曖昧になっていくということが中山さんの中でどういうことなんだどう?おれはO邸を観てたのね。これはもう俺の建築感から言うと「この建築は理想だな〜」と「俺はもうやること無くなった」と思いましたよ 中山:すごい嬉しいことを言ってくださますね 佐藤:そうですよ。ただその時にですね、頼まれた人のもの(建築)でもない訳だよね。発注者の意思はどこにもないので、果たして今での建築の作られ型から言うと、所有の対象として あるべき建築とはズレているわけですよね。でも、みんなの場として使える可能は凄く湧き上がる 次の社会の暮らし方や制度が生まれていないので。偶然かも知れないけど 建築が個人の所有物から解放された事態にO邸は見た目はなっていたんだよ 俺が観て体験した 瞬間 瞬間に 偶然かも だけれど 主体が所有するべき建築的事態が溶けてしまって共有できない。20世紀的な 所有される 建築って長い時間で観ると こういう事だったを自覚出来てなかったのでないの〜と。 人間は7、80年で死んで行き、異なる他者が使いだすので時間を圧縮すると色んな他者が使って共有しているんだけど。 更地にし「新しく作る」かのような 建築を発注する他者は 「私のお金で私の家を作ってください」と依頼がくるので おかしな依頼のされ方になっているんだけど 今現在はそうされてしまう。 O邸のプロセスと経過は それらがひっくり返った?か! のような事態になっていた。 そこがとても面白い 名建築なわけです。 そこで 「建築を共有するということはどういうことなの?」かシェアするでもいいけど。発注者が消えたかのような様、所有物なのに他者が入り込む時に在る場を包含する建築をつくりだす 現在とは? 2世紀建築の事態とな異なっている よね 中山:そうかもしれない 佐藤:一般的な 流布している 公共な建築じゃないんだけど いつの間にかめちゃめちゃ 自主・パブリックな建築になっちゃていた 。奥様の使い方をみているとその通りになっている。 色んな他者が来て共有されたいた場のようになっている。この がらんどうな場は 一体 誰の家なのか? その面白い様を 俺は多数 動画や写真を撮ってますけど。台所も 友達と大勢の子ども達と味噌造りして で共有して使っていました。 どこからでも入ってこれるし。風呂場からも入って これますしね 中山:そうですね 佐藤:現在は玄関が完成当時と 逆という か別の場になっています からね。偶然立ち上がった家型の空間の壁に扉くっつけちゃったんだけど、最初から目的合理じゃない ルーズさが建ってしまった、意図的な 建て方はではないけど、 まだ説明出来る言葉になってないので待ちます。 数年後に 説明できるようになると〜嬉しいですねー そのことによって 今話したような可能性とは別の意図が 生まれて来たりして これは凄いなーと俺。 俺の 建築の作り方からはそう 想える だけなので、中山さんにとってはどうでもいい 話なんですけどね 中山:どうでもよくないです。どうでもよくないです その05へ |