「Fukushima Gofuku Remains」       (2023年5月5日〜) 

鈴木達治郎氏講演録 「原子力平和利用と核不拡散─プルトニウム問題を考える」

         01 02 03 04 05 記事  (2018年12月作成頁をリメーク版 2023年5月9日

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濃縮施設と再処理施設、2つあれば核兵器は作れる

 どういう国が(プルトニウムを)持っているか? フランス、日本、ロシア、イギリス。

アメリカは軍事用の物から解体して出て来たものが多いんですね。

ブルー色のところ、多いのは原子力発電所から出て来た使用済み燃料に有るプルトニウムを分離して回収したものが多い。再処理と呼ばれている使用済み燃料からプルトニウムを回収するのを実際にやっている国が、たくさん貯まっている。

 1980年代はドイツは実は30トンぐらい有ったんです。日本と同じように有った。全部使っちゃったんですね。今年中にたぶん今年(2016年)か来年中には無くなってしまいます。使っていけば無くなっていくんですね。再処理しなければ。

 絵は国際原子力機関がパンフレットに使っている、核兵器つくるにはどうしたらいいのかという、技術的な絵なんです。注目していただきたいのは、高濃縮ウランを作るウラン濃縮施設と、プルトニウムを使用済み燃料から回収する、これが鍵だと。





  
 悩みの種 (濃縮された核物質とプルトニウム)

 今日のお話のポイントはここに有る。原子力の平和利用を拡大していったときに、何が一番心配か?というと、この濃縮施設再処理施設、あるいは濃縮と再処理技術、これをどうするか。

 あるいは濃縮された核物質。再処理から出て来たプルトニウムをどうするのか。これが一番の悩みの種なんです。

 従って今日お話するのは、原子力発電拡大したときに色々問題があるんですが、小規模な原子力プログラム供給するのに大変・・・ですけど。 再処理や濃縮をしなければ、比較的検知は難しくない

■原発の使用済み燃料の再処理

 問題は濃縮。原子力発電が建ちますと、自分で濃縮したい自分の燃料を作りたいと。

 それから使用済み燃料必ず出てきますので。「使用済み燃料をどうするのか」という時に「再処理をしたい」という。この二つが一番の懸念の元です
。これによって核物質に転用される高濃縮ウランプルトニウムが出てきてしまう。

小型民生用でも高濃縮ウラン作成可能

あとで出てきます、イラン問題に関係してくるんですが。小規模でも原子力の平和利用用のウラン濃縮施設を作ったとします。100万KW級の原子力発電所を一年 濃縮ウランを作ると、だいたい、130トンの規模の濃縮施設が必要です

 天然ウラン150トンからだいたい20トンの低濃縮ウラン。さっき言いましたようにトンのオーダーで出てきます。(小型民生用)発電所からは。

 2万キロと書いています。20トンの低濃縮ウランが作られるんです。が、じ施設で運転モードを変えていく。例えばこの20トンの4%低濃縮ウランを燃料だけ原料に使って、同じ濃縮施設で、濃縮したい、やると100キロの高濃縮ウラン93%の高濃縮ウランが、一週間で出来てしまう




Source: International Panel on Fissile Material (IPFM),“Global Fissile Material Report 2006”,

保証措置 IAEA査察重要

 同じ施設でも、運転モードを変える事によって、高濃縮ウランが急速に早いスピードで出来てしまうので、濃縮施設を造るということは大変に核拡散のリスクを高める。ただし 保証処置 IAEAの査察が入っていると、そう簡単には運転モードは変えられません

 したがって保証措置を掛けることが非常に重要です。掛ってかかってないと、技術的にはそんなに難しいことではありません。

■ 分離プルトニウムが一番怖い

今度は分離プルトニウムっていう言葉を覚えていただきたいです。

プルトニウムはさっき言いましたように、使用済み燃料の中に必ず入っています。約1%と言われていますが、入ってますので、ドンドン出来るんです。

 我々が気にしているのは使用済み燃料の中に、近づけない放射能のために。これを核兵器に転用されるわけではない。核拡散上はリスクは少ない。安全上は非常に問題ですよ。が核拡散上はリスクは少ない

 問題は分離プルトニウム(使用済み核燃料を)再処理して分離してしまいますと。出す放射線がα線と言って非常に弱いエネルギーしか出さない物なので、こうやって、人が自由に扱える。(絵)これで2.5kg入っている。比重が大変重たいので、非常に少ない量、ボリュームが少なくてっても(プルトニウムが)たくさん入っている。 ちょっと大きな水筒ですね。2.5kgらいはっちゃう。これが3つ有れば爆弾が出来てしまう。

 プルトニウムは、分離プルトニウムは注意していただきたい。「プルトニウム」というとここにも入っている。分離したプルトニウムが一番恐い

さきほど最初にお見せした表も図もですね、分離したプルトニウムの量でお話をしています。分離したプルトニウムが一番怖い。したがって再処理することが核拡散リスクを高める。




希釈したらいいんじゃないか」という、高濃縮ウランの場合はね。 プルトニウムは希釈できないと言わてました。

 が、実は今でもまだ、原子力平和利用を薦めるている人たちの中には、原子炉から出て来る使用済み燃料中にプルトニウムは汚いくって、色んな物が混じっている。

 あるいは核分裂性のプルトニウムの比率が低いんですね。兵器級プルトニウムという言葉が出て来ることがあるんです。

 濃縮ウランと同じように、核分裂をするプルトニウム239の比率が90%以上。非常に純度の高いものを、普通は兵器で使う
使用済み燃料 使い難い 熱も中性子も一杯出す

 ところが原子炉から出て来る使用済み燃料の中に入っているプルトニウは燃料として使っているので、239の比率はだいたい60%ぐらい。

60%ぐらいになって他の分裂しないプルトニウ240とか242とかが入っているです。その比率が高いと、使い難い、熱も出すし。さっき言ったように中性子も一杯出て来るんで、爆弾に成らない・・・という言い方をすることがあります。

 今でも、電力会社のHPに行っていただくと「我々が使っているプルトニウは質が悪くって核兵器には適さない」という表現をしている。適さないという表現はまぁ間違っちゃいないんだけど、誤解を招く

 適さないと言われちゃうと、使えないっていう意味に解釈できますね。そんな事はない使えます。使えるので、国際規制は非常に厳しくなっています。

テロリストでも作れる広島長崎級爆弾

 科学的な分析をして、原子炉級プルトニウであっても、テロリストでも出来ちゃう。広島原爆、長崎原爆ぐらいのものであれば「出来てしまいますよ」ということを、アメリカのエネルギー局。

 実はこれは公開していなかったんですけど、1990年代に、あまりにもですね、平和利用を推進する人たちが、我々のプルトニウムは汚いから使えないと言うので、じゃー分った、公開をした資料に基づいてこういう・・ができる。

 従って後で出て来る核燃料サイクルを話をしたときに、もし電力会社の方が、原子力産業の方が「我々の使っているプルトニウムは爆弾にはなりません」ともし言ったとしたら、それは正しくない。しっかり(1997年米エネルギー省)文献を指摘してあげてください。


核兵器の製造をどうやって止めるか

保障証処置(NPT)

 ではどうやって止めるのかということです。これは国際政治の部類に入るわけですが。

 今日お話したいのは、NPTの中で言われている保障措置ですね。

 保障置にって軍事利用をしないように監視している、その追加議定書というのを、お話ができる。 何が違うか。あとは輸出管理です。濃縮再処理を輸出しないっていう約束を供給国で、これは規制じゃないです。ガイドラインと言われている自主管理ですね。


 もう一つは二国間原子力協定

例えばアメリカが日本に原子力を供給する場合に。日本がどこかに供給するときに、濃縮再処理を与えない。 こういう事によって、何とか濃縮再処理の技術をコントロールしようとしているわけですね。
















shomei_61_e.pdf (mofa.go.jp)





shomei_61_e.pdf (mofa.go.jp)
濃縮再処理を与えない(NSG)

保障措置というのは、単純に言うと「プルトニウムは、使いたい」と言ったときにですね、IAEAに対してですね「今年何キロ、プルトニウムを使います」と言って、それを申告して、実際に100kgなら100kg使ったということを証明するわけですが、そのために査察に入って計量管理する

 さっき言ったように、誤差がどうしても出てしまますので、100kgだったら、誤差は1%ぐらい濃縮で出てしまいますので、1kgなんです。

 1トンとか、トンのオーダで使いますから、1%で10kgですね。8kgで爆発できてしまいますので、なかなか軽量管理だけでは全部管理は出来ない

それから、保障措置はそもそもの役割は検知なんですね。止めることはできない、阻止は出来る。さっき言ったように申告したものを後で「ちゃんと使った」ということを確認する訳です。その代わり、もし転用されてしまっている、止められない

でも、誰かが悪いことをしようとした時に、監視されているので、検知することはできる。「検知じゃ弱いんじゃないか」「止められないか」未だにその議論が続いているんです。最初っからそういう議論があったんですが。さっき話したように、最初っから1946年の時から、止めることは難しい

■ 重要な無告知査察AP

 もう一つ重要なのは、これです。元々IAEAの保障措置は国家権利、国家の主権というのを守らなければいけないので、国が申告したものを、チェックする。

 それで問題になったのはイラクと北朝鮮の両方の時にですね。申告してないものは、IAEAは検知も出来ない査察も出来ない

それはだめだよと、秘密にやて作られちゃうじゃないかと。それで、できたのがこの追加議定書です。アデショナル・プロトコル(APですね。これによって、未申告活動が検知できるような仕組みにしましょう、ということになりました。

 IAEAの査察というのは「今から行きますよ」と言って、それから申告したやつを観るわけです。このアデショナルプロトコルが(AP)入ると、突然、無告知査察ということが出来る。いきなり行ってですね、抜き打ち検査ができる。 環境サンプリングとか、細かいチリを取って、その中に核物質が含まれているかどうかというのを観ることができるようになったんですね。

 アデショナルプロトコルに入ると、この未申告の施設、秘密の活動を見つけることが出来る。 非常に重要な今仕組み。これも、新しい仕組みとしてですね、今世界に広めようとしているところです。

2国間協定


 次に2国間協定です。これは原子力の輸出をする国が原子力施設を買う国に対して被供給国が要求できるという。これも昔からアメリカが、ずーっとやってきたことなんです。最近は日本も輸出国なので、日本が被供給国にどういう条件要求しているか?というと、これは新聞記事で、ぜひ見ていただきたですね。

2010年にヨルダンと合意したんですが。日本は今10か国に・・・韓国が入りましたので、国が今や増えているんですね。これだけの国に日本は今供給国として、。アメリカ、イギリス、カナダ、フランス、オーストラリアは日本が買っている国の方です。 

日本は最初はですね、アメリカ、イギリス、カナダ、フランス、オーストラリアからウランを買っているんです。買っている国には受ける、買う方でしたから、条件を押し付けられたんですね。どうしても最初は核開発できない状況だったんですが。

 今は逆に供給国ですね。中国とロシアとカザフスタン。その他にも今トルコ、韓国とかと協定を結んでいます。こういう国に対して日本はどういう要求しているかというと、実は日本は結構、自分たちは濃縮再生をやっているんですが「相手国に対しては意見はしない、と言っているんですね。

 で「ヨルダンは、国内で再処理、濃縮をどうしても行なわない」ことにコミットした、貴重な国でですね。一番いい、我々にとってみたら。で、これをゴールデン・テゥルーと言ったかな、これを世界中に広めていけますね。二国間協定で濃縮再処理は拡散しないわけですが。

 じゃ「トルコはこの協定を受けてどうか」というと微妙な表現になっている。 原則はしないんだけど、実は条件が整えば移転することが出来る。再処理も条件ができれば再処理できる。これはトルコで、これが国会で問題になった。

条約上はこうなってますが、国会答弁で、岸田さんは「いえ条約上はそうなっているが、日本は認めません」と発言されたんですが。トルコから聞くと、たぶん怒る。おかしい、条件が揃えば出来る。

で、「なぜそうになっているのか」実は日本が被供給国、日本が技術を受けている、日本が要求して、日本は濃縮再処理したかった。日本が濃縮再処理やっているとですと、トルコがこういう条件で、「あなたたち自分が要求するときはこれでやっていたから、自分たちにも同じ条件でやらしてください」となっちゃうんですね。なかなか・・・トルコにはこれでやっている。

実はこういうのが多い、韓国もそうです。

問題はインドですね


その03へ続く