「Fukushima Gofuku Remains」       (2023年5月5日〜) 



鈴木達治郎氏講演の一部 

2016年03月02日長崎 特別市民セミナー

核兵器と戦争の根絶を目指して

   
             01 02 03 04 05 記事  (2018年12月作成頁をリメーク版 2023年5月9日) 作成佐藤敏宏 聞き間違いなどあると思います・・・。

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核兵器と原子力 違いと共通点

「原子力平和利用と核拡散」の話を、おおきく三っです。

一つ目が”核兵器と原子力の共通点と違い”簡単に技術的な側面も含めてお話いたします。

二つ目が”原子力平和利用が拡大していったら、どういう心配があるのか”核不拡散の観点からお話したい。

今日一番のポイントが最後の”核燃料サイクルによってプルトニウムが出て来る”ここが「私の30年以上続けている(主な研究)」 これだけで何時間でも喋れますが・・・

今日はハイライトということで、話したいと思います


  
核兵器と原子力発電は何が違うのか

今でも続いているオッペンハイマーの悩み

核兵器と原子力は何が違うんだ」簡単にお話したいです。まず歴史、ご存知の通り、核兵器から始まったんですね。

 左の写真はアメリカの最初のプルトニウム爆弾の実験なんです。オッペンハイマーという方ですね。科学者がこの爆発を見てですね、最初に言った言葉が「我々は新世界の破壊者になった」この伝記(上下巻、福島県立図書館所蔵)厚い本なんですけど、ご興味があれば、ぜひ読んで頂くと核兵器の歴史に関わる科学者の立場、よく出てますね。

 オッペンハイマーを中心に描いてはいるんですが。単純に言うと科学者は、あとでお話しますけど、一生懸命やるわけですね、当然ながら。ところが、爆発を見た瞬間にオッペンハイマーは「なんてことをしてしまったんだ」と罪の意識に変わるわけですね。それからオッペンハイマーは・・とかアメリカの政府に対しても厳しい批判的な言葉・言葉をとるようになって最後はスパイになって。「スパイとして疑われる」人生を送るわけです。

 その変遷が個人的なキャラクターも含めて、詳細に書かれた本なので、ご興味のある方はぜひ読んでいただきたいと。 

 オッペンハイマーの悩みというのは、実は今でも続いているということもちょっとお話したいと思います。

最初に核兵器で始まった。1945年に最初に爆弾が出来るわけです。最初はアメリカは何とか「この技術は世界に広めたくない」と・・・当然ですけど、思っていたんです。残念ながら、なかなかそれが出来なくって、それで、ガラッと転換したのが、1953年の平和のための原子力演説と言われているものです。


ファイル:オペレーションプラムボブ-ボルツマン2.jpg-ウィキメディアコモンズ (wikimedia.org)
出所:カイ・バード、マーテイン・シャーウィン、河邊俊彦(訳)、「オッペンハイマー:『原爆の父』と呼ばれた男の栄光と悲劇』 、2007年

1938年 ベルリンで研究 O・ハイマー F・ストラスマン
ウランに中性子を衝突させる実験、原子核エネルギーを解放する道がひらけた
1939年アメリカに伝わる。 最新鋭の加速器サイクロトロンがつくられる。・・ この反応を利用した爆弾の製造の可能性も物理学者の認識するところとなった。
マンハッタン計画ウィキ−より
 原爆開発に焦った アメリカイギリスカナダ原子爆弾開発・製造のために、科学者、技術者を総動員し計画は成功。
1943年 ロスアラモス国立研究所の初代所長に任命され、原爆製造研究チームを主導した。彼らのグループは世界で最初の原爆を開発し、ニューメキシコでの核実験(『トリニティ実験』と呼ばれている
原子爆弾が製造1945年7月16日世界で初めて原爆実験を実施。ウラン爆弾を広島に1945年 8月6日・プルトニューム爆弾を長崎8月9日に投下。数十万人が犠牲に。また戦争後の冷戦構造を生み出すきっかけともなった。

平和のための原子力演説"Atoms for Peace"

国連総会で ─色んなことが書いてあるんですけど─ 非常に気声のいい表現で書いてるんです。基本的には「核兵器の軍縮核不拡散のためにも、平和利用を広げることが、大事なんだ」と言ってるですね。

国連の軍縮総会、国連の総会でこれを発表して。この後アメリカは法律を変え、それまではコントロールして・・・民間に開放することになったわけです。そこから日本やドイツ、戦争に敗れた国々も「原子力開発を始めます」ということですね。

 最初から原子力の平和利用と核兵器の拡散の両立が可能か?・・と言ったら大変難しい・・・と言ったレポートがありまして

この結論を見ると、査察とか、いろんな方法で「軍縮・拡散を止めたい」と専門家が考えるんですね。これは1946年ですが。科学者のリリエソールさんと国務長官の外務・外交の専門家の科学者が一緒に作った・・です。

いろいろ仕組みを作るんだけど、「核兵器を使いたい」国の体質があって「戦争を考える」国がある限り、(核兵器の使用は)最終的には止められない1946年のときに言っているんですね。

 「じゃ〜どうしらいいんだ」と。なかなか悩ましい問題で、結局止めることは不可能なんだけど、基本的にはその(核兵器の使用の)スピードを遅くするか、(使用するための)壁を高くするか、「その方法しかない」ということなんですね。


(President Dwight D. Eisenhower "Atoms for Peace" )


・鈴木達治郎著 『核兵器と原発』

・ 鈴木達治郎氏の動画
・核兵器使用は止められない 
・核分裂反応 ウラン235 
・エネルギー比較
 ウラン1g =石油 1トン (100万倍)



核兵器と原子力の違い(高濃縮か低濃縮ウランか)

 ここで「核と原子力の違いと共通点」を一枚の紙に描いたらどうなるか?」ということを描いてみたいです。

 まず、核分裂反応の巨大さを実感していただきたくて、この数字を使うんです。ウラン235というのは核分裂をしてエネルギーが出るんですが、1グラムのウラン。(指で形をつくり)こんなもですね、本当にわずかで、出て来るエネルギーというのは1200万キロジュールになってます。1メガワットというのが分かり易いので1メガワットは1000kwの電気を1日使う電力。

 自分のご自宅で何キロワットぐらい使うかご存知ですか。どれぐらいだと思いますか。テレビとか何かあるんでしょうから、普通は1kw、ピークでもだいたい2k〜3kw。 普通はだいたい1Kwと考えることにしている。

1000軒の家の電気を1日使うエネルギーが1グラムで出来るんです。凄いでしょう。1グラムのウラン石油で換算すると約1トン。ということは100万倍なんですね。

 今日いらしている方は鉄腕アトムという世代。鉄腕アトムの歌ご存知ですが、何万馬力って言ってますか。10万馬力、というのは間違いではないんですよ。100万倍というのが、理論上のエネルギーなんです。実際にはロスがあるので10万馬力で、鉄腕アトムって胸の扉をぱかっと開けると原子炉があるんですね。






原子力の最大の悩み

科学者は当然計算するわけですよ。化石燃料の100万倍のエネルギーを発見した時の科学者の興奮って分かります。「やったー」としか思わないですよ。「これで人類のエネルギー問題は全て解決したんだ」と思う人と、「やったーこれで世界を征服できる」と思う人がいたんですね。これが原子力の最大の悩みです。

「巨大なエネルギー源として使いたい」と言う人たちと、「巨大な兵器として使いたい」という人たち、両方いた。残念ながら最初は核兵器から。

巨大なエネルギー、100万倍っていうエネルギーのスケールの大きさを実感して頂きたい。1グラムで石油が1トンですから。

 核兵器は材料は後で出てきますけどウラン235を非常に高濃縮にした、高濃縮したウラン。ウラン235は天然には0.7%しかないので、一生懸命濃縮している。20%ぐらいに濃縮すると。

 だいたい核兵器に使うプルトニウムの量は、核物質の量はキログラムで、千グラムですね。千から2千とか3千キログラムオーダで核爆発が出来ます
広島では64キロ、16キロトン。キロトンというのは科学物質、ダイナマイトとか、重量に換算して、トンが1000kgですからそれの千倍ですから、100万倍ですね。

普通ダイナマイトの爆発って10kgとか、それぐらいのダイナマイト。ビル全部を壊すのだと、何百キロぐらい?場合によってはトンのオーダが使われます。トンのオーダーのさらに千倍。トラックって何十トンぐらいしか運べないですから、それの何百台ぐらいのトラックのダイナマイトと同じくらい必要だ。同じもの(エネルギーが)が(プルトニウムでは)キログラム。このスケールを比べて分かっていただきたいんですね。プルトニウムが6kgで出ちゃう。20キロトン出る。凄いですね。

原子炉は低濃縮ウランを使用(トンか、キログラムの使用か)

 一方原子炉。原子炉は天然ウランか低濃縮ウランなので、爆発は出来ないですね、理論上。

だけど核分裂反応は同じです、巨大なエネルギーは出る。それを上手く制御して、一定の出力で使うのが原子力なんです。

原子力の場合は核物質の量がトンのオーダーなんですね、千倍なんですよ。従って原子力発電所を一機建てると、何トンのオーダーでグラムやプレファブが使うことになる。これが原子力発電所と核兵器の量の関係。これがけっこう大事。

 とういうのは、後で出てきますが、ある核物質を平和利用に使っているか?軍事利用に使っているか?・・・検証する保証措置というのは、計量管理するんです。片っ方(低濃縮ウラン)はトンのオーダーで、片っ方(高濃縮ウラン)はキログラムですから、千分の一の誤差があると、分かんなくなっちゃうんですね。これが難しいところですね。

(原発は)トンと(核兵器は)キログラムのオーダ(での使用量)の違いを理解してください

 残念ながら出て来る、核分裂性物質非常に毒性が高くって厄介なんです。基本的には(核兵器も原子力も)同じのが出て来る。これが死の灰になって出るか、放射性廃棄物が出るかで違うんですが。厄介な物が出て来る。

世の中いいことばっかしじゃない。巨大なエネルギーが出て来る、素晴らしいエネルギー源なんですけど、残念ながら出て来る物が非常に厄介な物が出て来るんですね。

プルトニウムの入手は簡単

 高濃縮ウランは0.7%の(天然)ウラン235を濃縮していく。非常に技術的に難しいです。 出来てしまうと広島型原爆のように、実験しなくっても爆弾が出来てしまう。ということです。

 現在、高濃縮ウラン、基本的には世界中で持っている人たちは、核兵器とか持っているんです。民生用、平和利用に使っているのは研究炉です、量的には非常に少ない。高濃縮ウランは薄めれば核兵器の材料にはならないで、これからはどんどん薄めていけばいいんです

ウラン型原子爆弾かプルトニウムの型原子爆弾か

 プルトニウムは残念ながら入手は簡単原子炉が在って、ウラン燃料が有ると原子炉の中でプルトニウムがドンドン出来ていく、自然に。それを回収してしまえばいい。プルトニウムの方が入手は簡単

ところが、プルトニウムは自分で中性子を出しますので、ウラン型原爆よりも作るのが難しい。だから実験が必要と言われています。高濃縮ウランは25kgぐらい、プルトニウムは8キロで爆弾が出来る。プルトニウムの方が小型に出来る。

原発で出来るプルトニウムで核爆弾は作れる

 世界的に見ると、民生用、原子力の平和利用によってプルトニウムがどんどん増えている。残念ながら希釈は出来ないのが現状です。薄めても薄めても汚いものが、一杯入っていても爆弾に使えわれる

平和利用と核不拡散について

では平和利用と核不拡散の問題でございます。核物質の話はちょっと簡単に紹介しますと、高濃縮ウランは世界で1300トン、 ポスターが貼ってありますけど、広島型原爆で換算すると、21,000発

プルトニウムが500トンぐらい有るんですね、長崎型の核兵器に換算すると80,000発 両方で100、000発以上有る

 だいた核保有国に、ほとんど固まっているんです。プルトニウムについて言えば日本は突出して持っている47トンんです。後で、これが問題になります。これは見にくいですが

 高濃縮ウランは核軍縮が進むと、薄めて商業用の原子力発電所の燃料に使えるので、減って来てはいるんです。まだこれだけありますけども、減って来てはいる。


Source: RECNA, http://www.recna.nagasaki-u.ac.jp/recna/datebase/nuclear0/fms/poster
貯り続ける日本のプルトニウム

 問題はプルトニウムですね。核兵器用の(分離)プルトニウムはほとんど生産していないので、ドンドン減少しているんです。核兵器から出て来た核物質がまだ、使われていない、処分されていないんで、紺の部分と青い部分はまだ残っているんですね。



Source; Zia Mian, Alex Glazer, “Global Fissile Material Report 2015: Nuclear Weapon and Fissile Material Production,” presented at NPT ReviewConference, May 8, 2015.
gfmr15-003.key (fissilematerials.org)



Source; Zia Mian, Alex Glazer, “Global Fissile Material Report 2015: Nuclear Weapon and Fissile Material Production,” presented at NPT ReviewConference, May 8, 2015.


 一方で、原子力(発電所)から出て来た使用済み燃料の再処理をして回収した民生用の分離プルトニウムが貯まり続けている。今や軍事用を上回る量になっている。というのが現状。これが今日の本質的な議題です。

プルトニウムが有る限り核兵器は作られてしまう。どうしたらいいですか?





 その2に続く 



Source; Zia Mian, Alex Glazer, “Global Fissile Material Report 2015: Nuclear Weapon and Fissile Material Production,” presented at NPT ReviewConference, May 8, 2015.