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聞き取り記録 |
プレゼン一覧へ | 渡辺顕人さん |
質疑応答 |
360 司会:動き始めたようでよろしいですか。 architecture to life 渡辺顕人:よろしくお願いします。 これまで建築は動かないものとして使われてきました。それは純粋に技術的に難しかったからだと考えます。 これまでも自然をメタファーとした、動いているような建築というのは多くありましたが、形を決めないといけないっていうことで、どうしても変化のある断片を切り取ったようなものにしかなりませんでした。 僕は建築をもう少しはみ出して、コンピューテーショナルなデザイン手法から、建築らしさを保ちながらも、生物的、動く、抽象的な生命を創りました。 次お願いします このファサードの動きは、空のような移ろいを表現していて、その変化が内部に影響するような事を今回は考えました。 次お願いします これムービーで流れますか。 これはギミックの説明をするのは大変なので、動画で観ていただくと分かるかなと。 ファサード、パネルが一杯あると思うんですけど、4枚のパネルが重なり合う中心にモーターをスラブから入れて、それが横に移動することで、豊かな曲面を造っています。 曲面の動きというのは、 次お願いします 曲面の動きは環境音から異なるパターンで生成されます。 外界の音の変化を乱数を発生させるコンポーネントの変数に加えて、波の支点と周期と高さが無秩序的に変更されています。 今回は音でやったんですけど、センサーを取り換えてプログラムを書き換えると、建築が生物みたいにあらゆる環境とインタラクティブな関係を築くことができます。 次お願いします。 この建築に特定の敷地は設定していなくって、用途と形態もユニバーサルに成立するような、ギャラリーと直方体を選びました。 重要だったのは生物的に動く建築を、アートとかパビリオンとか、インスタレーションじゃなくって、ちゃんと建築のアクティビティが収まった状態で、提案することでした。 つぎお願いします 断面図と、コンセプトとスケッチです。 次お願いします。 内部空間は光る洞窟のような展示スペースをイメージしていて。ファサードの動きの変化を内部空間に引き込むことを考えました。 スラブの一端を大きく開いて、半透明な素材を用いる事で揺らぐ自然光を採り込みます。 スラブの表情を含めて、自然の無秩序的要素を抽出して、人工的な自然を構築することで、神聖の消去された中性的な環境を、ギャラリーの展示スペースとして提供します。 つぎお願いします プランです 左上から、地下、隣が1階、2階、3、4階と まあ収蔵庫とかほとんど展示スペースです。 最後、次お願いします。 内部はこういう形で、洞窟のような印象の空間になっています。以上です |
質疑応答 |
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ブレゲンツ美術館 1997 (54) |
■生活空間を入れるべきではなかったか 門脇:評価された・・僕が凄くいいなーと思うのは、これは一種の大きな生物のような建築であって、で環境と勝手に彼はコミュニケーションするわけですよね。 そのコミュニケーションする中で人間が生活すると、何て言うかもっとこれが、サンゴ礁の中でお魚が生活をするような。そんなような感じになるんじゃないかと想うんです。 これはやっぱり建築ではなくって、つまり人間が目的に造った構造物ではなくって、やはり独自の意志、意思というか、生態を持った生命のようなもので。そういうものが、我々の世界観というか、共存感というか、自然観というか、そういうのを更新すると思うんです。 で、それが凄くいいなーと思うんですが、一方でギャラリーにしたのはなぜか?いうのが質問で。これは生活空間、なんらかの形で。住宅じゃなくってもいいと思うので、生活空間を入れるべきだったのではないかと思うんですけども。いかがでしょうか 渡辺:その通りだと自分でも思うんですけど。 ギャラリーが好きだったので、ギャラリーにしました。 門脇:でも狙いは凄く解りました。さっき動かなかった時に、渡辺さんを応援するんじゃなくってこのブレゲンツ君を応援しちゃう僕たちが居る。これはもう作者を越えた一人の生命として振舞っているので。さっきのパフォーマンスも含めて狙いが解るなーという感じです。 |
■ 動くという定義 中田:今、門脇さんがおっしゃった、これは生命体であるという、その理解にあなた自身は共感出来ているのかな。 渡辺:できてます 中田:出来てる。一方でさっき建築は動かないっていう話をして。 でも建築っていうのは色んな応力に対して頑張っている。実は微妙に動いている。その、応力を生じさせることによって何かを目的を達成させるために建築は動いて、ないように、見えるけど。必死に抵抗して動いているじゃないですか。 渡辺:はい 中田:で、その動く動かないっていう微差かもしんないけども「実は動いてますよね」って言う事に対して、貴方は「それでも動いてない」というふうに主張する 渡辺:動いていると思うし、変化していると思うんですけど。 中田:なぜ聞きたいかと言うと。動く動かないっていうふうにはっきり言い分けて、仕掛けで、動かすっていうことを動くって定義した瞬間に、建築というものの持つある種のポテンシャルみたいなものを、何かスルーしちゃっているように聞こえて。 言っている事解りますか。何かポテンシャルみたいなものをスルーしちゃっているっていうか。だからメカニズムで動かすと。で中にギャラリーが入っているっていう話にどんどん落とし込んで行くと、門脇さんが指摘した部分というのは、実はあまり消化されていない感じがしていて。そこは貴方は解ってたっていうのを聞きたかったの。 渡辺:というか、生命の定義がけっこう難しいと思うんですけど。 門脇:少し助け舟を出すと。これはね、スマートハウスのオルタナティブだと考えればいいんですよ。今のスマートハウスって、人間の快適環境に合わせて、自立的に。例えば空調を制御したりするじゃない。そうじゃなくって、そのスマートハウスそのものが人間の意志とか、快適とか、関係なく動くのである、というところで他律的な生命たり得ていることですよね。 渡辺:はい。ふふふふふ 門脇:だからねー、僕は、断然これでいいと思いますけど。 青木:僕も助け船だしたいんですけど。独自の生命であるという事は、逆に言うと、人間とその生命との関係って、普通の関係と別の、逆になっちゃうと思うね。 中田さんが言ったような意味で言うと、普段の考え方だったら、人間のために建築が在るでしょう。でもこの場合は逆になり得るわけ。この独自の生命を持つ建築のために、人間が居る。 実際さっき貴方がコンピューターを動かしたでしょう。貴方はこの生き物(卒計)に使われたわけ、動くためにね。そういう意味で言うと、いわゆるメンテっていうものが、意味が逆で、機械が人間に命じる、っていう関係だと思うのね。 だからやっぱり「これ惜しいなー」と思うのは、実は独自の生命なんだけど、そこにはメンテナンスする人が必要で、その人を、つまり、「これをケアする人というのが、どこに、どう居るのか」っていうのが含まれていると。人間と機械っていうか、建築の関係がひっくり返ったと思うのね。そこはちょっと惜しかったかなーと思ってます。 |
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■人間が建築に使役される 司会:なにか今の質問に対して考えたことはありますか 渡辺:ちょっと 司会:そこまで考えてない。動けばいいやぐらいなの。そんなことないよね 辻:僕もいいなーと、これを、ブレゲンツ君を観たときに、ちょっと変な気持ちになったわけです。 門脇:我々はもう名前付けちゃったんです、ブレゲンツ君 辻:ふふふ。設計者としていつも設計しているやつが、動いてて、スケール違いますけれどね。擬人化するっていう事について、ちゃんと考える切っ掛けを与えてくれていると思うんですけど。 今の青木さんの話と近いんですけど、動力源というか、食べ物っていうか、それを理想像がもし有れば聞いてみたいっていうか。勝手に自走してさー、喋ったり、喋りはしないけど、動いたり。排せつしたりとか、っていうところまで行くと、どんどんどんどん人間のコントロールを離れていくと思うのね。 つまり、電気抜いたら止まっちゃうっていうことがさー。ジレンマになっているんじゃないかなと思って。その辺の理想的な動力源 渡辺:本当はこのファサードの一枚の中にソーラーパネルみたいな物を貼って完全にして動かしたかったんですけど。模型では今回は電源を引っ張ってやらざるをえなかったという感じです |
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■将来像は霧みたいな 五十嵐:助け舟ばっかりだと、詰まらないので。これ何で、既存の科学を前提に考えたんですか。 もっと未来はこういう技術ができるだろう、テクノロジーが出来るだろうから、もっと自由に動くようになるんだとか。 なんでファサードだけなんだろうって思うし。中の床も壁も天井も全部動いて。こんなガラスみたいな素材じゃなくって 素材も今現在では実現されてないけど、将来的にはこういう物が生まれるであろうみたいな。全部未来でやって欲しかった。 モーターでこの模型自体を動かす努力って、それは大変だったろうと思うけど。図面上ではね、そういう現実とは離れて、思想を語って欲しかった、と思うんですけど。 入った瞬間に床が動き出してね、歩かずに運ばれて行ってとか。それこそ、内臓中に入って行ったような状況になるとかさー。そんな事はなんで考えなかったんだろう。「今作るためには」みたいなビジョンだったんですか 渡辺:今作るためにみたいなビジョンだった、将来像はもっと霧みたいなものをコンピューターで制御して。内外が関係なくつながっているような、ジームレスに繋がっている、ぼやぼやっとしたイメージがあって。 ただそれは、今は出来ないから、まずはファサードを動かすっていう感じ |
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■この提案 凄いのかしら 赤松:ファサードを動かすって、あんまり言ってもあれなのかも知れないけど・・シーラカンスで以前。出雲にビックハート出雲っていうのをやったことがあって。 それは私は担当してなかったんですけど、ガラスのダブルジャロジーの壁面が、風と雨と温度のセンサーで全部自動で動く。要するに内部の気候を読み込んで、建築が感知して。中に居る人間にとって一番いい環境を自動的に作り出そうというので。壁面っていうか、ガラス自体が呼吸する、ばーっと動いていく。やったんですよね。 それは気温が外の方がどういう状況で中との関係をなるべく、均質化して中間期にいい環境を内部にもつ。それは中に人が来ていい環境を作っていこうという意味だから。いままでの議論でいうと、内部空間を人のためにどうしていくかっていう、話だったんですけども。 これの場合、自立して、建築のファサードが動くっていうことと、でもやっぱり内部空間、アクティビティが収まったものとして作りたいと、言っていた割には、中のアクティビティっていうものが全然想定されていないなというのが凄く不満で。 こういうふうなこと自体は割と、そこまで新しい、模型で作るのはいいなーと思ったんですけれども。ただなんか、うん。やった事っていうか現実に在る物からあんまり進化してないように、私には見えちゃって。それってこの提案ってそこまで、凄いのかしらーって正直にちょと思っているところはあるんですね。 何かアクティビティが収まるものとしてって、言ったときに、どういうアクティビティを想定していたのかなーって。 渡辺:うーん。あると思うんですけど。あんまり生物っぽい動きをしてくれる、のは見た事がないなーと思って。僕はもっとこうー、自分が予期しないような変化とか、動く建築を見てみたくって。なだろうなー。何か人のためにとか、っていうよりは。 |
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■挑発が足りてない 辻:たぶんす、スピードの話でもあるんじゃないですか。動くスピードの話。すごいゆっくり動くとか、ばんばん早く動くと、より生物に近づくっていうことかなーと思うですけどね。 門脇:いや、ぼくねー挑発が足りてないなーと思いました。 例えばアラブ研究所とか、すごい近いものだと思うだけど。そこで想定されているものとは違った人間と建築の関係を作ろうとしているんですよ。 それは例えばトトロのお腹の上で寝るメイちゃんの感じで。トトロのお腹がわーっと動いている。その事がメイちゃんにとっての心地よさになるみたいな。その関係なんですよ。それはもっと分かり易くやるべきだったと思う。ぜんぜん挑発できないのでないか。そこが課題でしょう。 司会:時間ですのでいいですか。どうもありがとうございました プレゼン一覧へ |
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