2022/10/7〜8日 辻琢磨さんと1泊、2日間すごし語る  @静岡県浜松市 作成:佐藤敏宏

 (4) 運動会の朝  
辻さんはお爺さんが建てた木造2階建の自宅の改修しながら暮らしている
01 「403作品巡り 」
02  奥様のシャアオフィス 
03 辻さんの家で(1) (2) (3) 
   (4) 運動会の朝 辻家改修について 
04 洪水の跡地めぐり〜保育園の運動会
2018年から住み始める

佐藤:辻さんはお爺さんの家を引き継いでからこれまでの構想って、辻さんが手を入れる前は今のようにはなっていないんだろうけど。最初にどんな印象でしたか?すぐこうしようと決まったんですか?

辻:全然なんにも無かったですね。とりあえず「落ち着いて勉強する」ということで引っ越して来て。
佐藤:落ちつて勉強するって何を勉強するの?この建物を?
辻:いや、資格の勉強。
佐藤:管理建築士?
辻:一級建築士の勉強、4年前だから。町中では落ち着いては勉強できないなと思って。で、とりあえず2階、1階はなにも手を入れず寝る部屋と勉強部屋だけ設えて。

佐藤:勉強部屋は今の仕事場になっているところですか?
辻:そうです。あれ、後で壁を抜いてます。
佐藤:既存のままの間取りの中で勉強したのね。
辻:そうです。

佐藤:1年間まるまる建築士の勉強という感じでしたか?

:そうですね。2017年に、1年ぐらい勉強して。で、妻がこっちに来るということになって。妻は東京にいまいした。で、「妻が来るなら籍入れないと、じいちゃんの家だから拙いかな・・・」と思って入籍し結婚したんです。

で、息子が生まれたのが2018年で、5月ぐらいから住み始めたんですよ。1番最初は・・・5月に2階の壁をぶっ壊して一部屋にして。

佐藤:自分で解体したということですか?
:妻と僕とで壁抜いて床塗って。畳だったので床張り替えて。それぐらいでしたね。2階はちゃんと事務所にしたいから。ここは(1階居間)は床座でもいいけど。









2022年10月8日雨上がるも曇り
2階東側が辻さんの仕事部屋
 2階事務所東南の角より見る

佐藤:その次の工事はなにを?

辻:庭ですね。2018年は建築士の試験が始まりつつ、2017年は製図で落ちたんですよ。製図だけ2018年の10月に試験がありました。

春先は割と短かったので庭をやって、カーポートとか洗濯物干し場が付いてたので、それを減らして、門扉とかも取って。砂利が青砂利だったんですけど、それをチャート石という今の茶色い石を敷いた。

息子:換えてくれない!
:換えました。で玄関、鍵が壊れていて勝手口から入っていたんです。玄関をとりあえず、鍵は直そうと思ったんだけど・・。なに見るの?

息子:ユーチューブをみながら 小声で歌っている
辻:これ被っていないと寒いよ。
息子:お父さんも?
辻:お父さんはいいよ。なに見るんですか?これまた見るの?これやめなよ。ほしくなっちゃうよ。

息子:だってそれほしいもん。それにして。じゃーそれは?
辻:これ?
息子:ポーズがいい・・・TVから音がでる・・・


:それで玄関を、鍵だけ直そうと思った。だけどアルミサッシの部分も全部換えて。暗かったし「換えるか!!」と言って。・・台所で食器を洗いながら・・

硝子だけ残して、框をアルミから杉に換えたんですよ。かなりすっきりして手前にめちゃめちゃでかい靴箱があったんですけど、それも壊して玄関が明るくなって、庭も軽くなったので。

佐藤:大工さんの足跡がついている(笑)猫の足跡じゃないよ。

辻笑っている

佐藤:猫階段か?この場所が古代から現在まで全部同置されていて、辻家と日本の家の歴史が残っていて一覧できるね。縦に残っているよ。猫はこの地の歴史を

辻:横断していく(笑)

佐藤:そして仕事場に行き着くと。
辻:ここを下げたり上げたりいている時はまだ猫が庭に来ていなくって。猫が来てからここに何か造ったら2階に行くかなと思って。
佐藤:猫がのこの建築の歴史を発見して行き来して楽しんでいると。

:そうそう。
佐藤:猫は椅子から上るのかな?
辻:椅子かこの辺りからジャンプして2階に行く 。

(絵:右 縦穴土間 中間昭和住宅内装昭和の朝日が入っている。 上部 和小屋組 左部屋:畳で食堂兼居間として使用している)

佐藤:階段はそのままですか?
辻:観音開きで階段下は収納になっていて蹴上げもふさがっていたんです。クロークをあそこに移して。蹴上げ板も取って廊下まで光りが届くようにして。

佐藤:今ある下駄箱はあとで造ったと。

:その後に洗濯物干し場、縁側の前に下屋があって、洗濯物そこで干していたんですけど、設計的に明らかにそこは庭を見る所で、間に洗濯物が干しているのは良くないなと思って。下屋を壊して西に移したんですよ。というのが一つの流れかな。

ここはここで、折りあげて天井の、今茶色い幕板がある、ちょっと上に化粧石膏ボードが貼られていて。そこからシャンデリアが吊られていたんです。シャンデリアが壊れて、前の製品だったので直せなくって、いいのないかなと思っていたけど。

息子
:痛いんだけど・・
辻:ちょと!お話しているんですけど。ちゃんと足を隠さないとだめなの。世話をしている辻。
シャンデリア壊れてて直せないし、良い製品も無いから。そっちの下屋を壊すタイミングで大工さんが入ったので「天井解体してください」と言って。そこから照明考えますと言って。今の照明になって。

(絵:住み着いた野良猫が猫階段を生かし、縦穴土間、昭和内装、江戸和小屋、そして仕事場へと時空を自由に行き来し暮らしている)

佐藤:パイプの照明。
辻:間接照明になっている。
佐藤:自分で造った?

辻:造ってないです。 テレビの音が大きくなる・・・もともとキッチンに有ったんだけど、こっちに動かして。シャンデリア壊して天井を塗って床は平らにしようかな・・と思って。木の下地して・・・説明しているがTVで聞こえない。ここはなにも変わってない。

佐藤
:床は古代縦穴式住居の土間で、壁は昭和の内装と飾り物で、天井は和小屋で江戸か?この段は?
:猫階段。
佐藤:床暖房?
辻:断熱材は入っているけど暖房は入ってないです。あそこは上から使う地袋があって。あそこの収納を壊して地袋の建具も硝子に換えて。

佐藤:猫が上り下りしてガラス戸の入り口から2階の事務所へ、振り返るとここが可視化なって、辻家の歴史を見下ろせる階段だ。
辻:猫が梁を上ってあそこに入って行くんです。ここは猫の路になっている。

佐藤:なるほど。猫がヘビーユーザーだ。自在に家を使って住み着いているね。

 猫に演技を強いてる 辻

辻:
上にいったら。
佐藤:お!行ったよ。俺に芸を見せてくれた。

:こいつ良い奴です。それがワンセットかな。あとは大正琴の部屋が抜けて、祖父母の寝室から庭が見えるようになった。

風呂に浴槽を入れたいと思ったのと、お風呂がバリアフリー工事で新建材に成り代わっていたので全然よくなくって、お風呂換えたいなと思っていた。

今の祖父母の寝室に嫁入りタンスとか並んでいて。クロークみたいになっていたんですけど、北側だし暗いしあまり良い場所じゃないなと思って。で、あそこの掃き出しに対して庭を見るようにしておくのと・・・嫁入り箪笥が今の硝子の所にあったんで。そのプロポーションというのは残像みたいなのは、そのまま長押のラインで表して残す、だんだん決まって来て。そうすると水回り全部まとまる。大きく分けるとそういう感じですね。

今から改修は、キッチンとか倉庫とか外に階段をやろうかなと


( 絵:洗面風呂場から南の物干し場を見る、ここは祖母のクロークのような部屋を。洗面所(トイレ・バスタブ、洗面器を設えた

佐藤:時間、辻家建築の歴史の重ね合わせになるんだね。コラージュンふう手法だから昔の記憶と今の暮らし方の記憶が合成されていく、郊外住宅ではあまり見たこと無い洗面所になっているんだね。広い。
辻:そうですね、不思議な空間。

佐藤:洗面所周りは以前は物置部屋、畳の部屋だったんでしょう?

辻:うん。畳だし爺婆が寝ていた部屋でした。
佐藤:北の暗い場所が寝室だったのね、それらが辻さん家改修の流れということですね。

辻:そうですね。

佐藤:造りながら何かを発見していくわけですか?

辻:そうですね。あまり頭で考えてないというか。
佐藤:基本的は庭の風景を見たり、じいちゃん、ばあちゃんが造った所を壊さなかったり。自分たちが快適に暮らせるように少し手を入れ、直し互いの記憶を重ねていくと。

辻:そうですね、じいちゃん生きていたときはほぼ帰って来る可能性はなかったんですけど、もし帰って来たときにあまり嫌な気持ちにならいように改修しました。

息子:ブラシは?

:今お話しているんですけど。これでいいですか?おじいちゃんの家をあまり変えないように、変えたとしてもちゃんと残すように意識していて。で、亡くなったので、それはどっちでも良くなったんです。でも改修やりながらちょっとずつ引き継いで変わっていったほうが面白いんだろうなと思ってきて。
で、今は結構それが継続させるようにしてるんですかね。
神棚を動かしたりするのは出来るようになったので。ちょっと楽ですね。おじいちゃんが亡くなるまでは動かさないでおこうと思っていた。


佐藤:もう少し手を入れると、直したところと、ままのところがはっきりするね
辻:分かって来る。だからここはぎりぎりですけれど、お風呂とかはちょっとやりすぎというか。

佐藤:そうだね。東南角部屋の居間というのか、縦穴式住居のような保存改修方法はいいよね。風呂は手入れ過ぎているので複雑になり光が少ないこともあり分かりにくいかもね。部屋の真ん中に洗面台付きかテーブルが置いてあり。作業も出来るので珍しい台の大きさだよね。

息子:仮面ライダーにならないの?
辻:もちょっと待ってな、なるから。
佐藤:TV流したままにしておくと仮面ライダーになるんだ!
:そう。

息子:どうして普通にさー。
辻:だめだね、あれは。
息子:ケーキに貼らないと
辻:そうだね。 TVの音が大きくなる。

佐藤:俺の辻家一日の経験で思うことだけど、津々浦々に出来た何でもない昭和の郊外住宅地にある家の中に入ると、現在、都市化中で辻家の歴史をも含めた現在の都市の一つに潜入してしまった気がするね。戦後昭和の多様に消費する暮らしと家の姿は、改修が終わるともっと整理されるね。(野良猫の暮らし史も上書きされる)

:だから次はこっちに何かやるじゃないですか

息子:保育園には行かないの?
辻:行きますよ。今お話しているんです。あとちょっとで行きます。路側に出たときにちょっと都市観というか新しさが路にもでてこないといけないので。押さえながらどうやってまとめるか?というのが、外階段付けないといけないし。


親子3代に渡る辻家の暮らしの歴史が一覧できる場所
佐藤:人を雇ったときに外から直接2階に入れるようにする。
:ここの上を増築したんで、プロポーションはあきらかに変なんですよね。だからそれを戻すというか、うまくバランスをもう一回。形的にも機能的にもしわ寄せが最後なので
来てて、凄い難しいですよ。
だから2〜3年、もじもじ考えている。ようしゃく、ちょっとずっまとまってきたかな?という感じ。

佐藤:古い図面をみながらー・・・増築したのはどこだ。ここからこっちか・・・

辻:屋根が切り妻で架かっていた。ここは飛び出しているし。何かバランスが悪い。

佐藤:ここは謎の命令地があるから。
これが3年後ぐらいにはもっとはっきりと。

辻:暫定ですけど、
息子:もうこれ直った。まだ直ってないや。

佐藤:明らかに風呂場洗面所周りは力が入り過ぎているね。
辻:そうですね、だけどやりようが変えるしかなかった。
佐藤:硝子のしきりが無くて湿気は天井に上って抜けるみたいな風呂場でも問題なかったのではないかな。上は何に使っているんですか?

辻:ここはタオルをおいたりとか。
佐藤:物入れか。囲わないと寒いんです。蒸気が貯まらなくって。猫にえさを与える機械とか空気清浄機とか洗濯機とか現代的な器機が一杯入っていて、子育て夫婦の暮らしと生活を支えている、今風の感じになっている、老人なのでハイテクぶりには驚くね。白物家電の比較も面白いね!

改修完成予想図、CG作っているんだ!予想図がはこうなるんだと。

辻:まだ分からないですけどね。

猫階段は現在の辻琢磨さんの暮らしに最短で直結している2階地袋のガラス戸が見えている
佐藤:外部階段を付けた予想図はない?

辻:スタッフと一緒に協力して、これが現状ではいいのではと。

佐藤:このCGは現状のままね。ここが踊り場なのか・・・繋がっていないように見えるけど繋がっているの?

辻:あ、この階段はCGの途中、ささら桁とか無い。母屋とは切り離して。

佐藤:階段の屋根は?
辻:じいちゃんがポリかでここの屋根は延長させているんです。こっちから庇を延長させた方が作りとしてはいいかなと。でここの壁を抜いて、ここは建具にして。

佐藤:物置は今の雰囲気を変えちゃうのね?
:変えると思う。どうしても空気が貯まっちゃうというか。キッチンもここを土間にしてこいつを今の緑の所に

佐藤:今いる場所、ここだけ高いままと?
辻:そうですね。この辺までは床を残しておいて。

佐藤:段差もあるし老人には危ない家になるよ!

辻笑う



佐藤:うっかりしたらこけて骨折るよ。この玄関脇の片開き戸を開けた途端、ここけて怪我するよ。

辻:
知らないとこける。

佐藤:危ないところが一杯ある。俺が真夜中うっかり階段の下に入って、段板に顔をぶつけたように、危ないよ。

辻:それは例外ですよ(笑)ここから向こうへはそのまま行けるようにするので。この辺は同じ高さにして。アイランドにして。こいつは

佐藤:ここは家族の記憶が横に、個人史、歴史が品々で繋がるんだね。南側の部屋は縦に縦穴から始まり2階に昇る、土間から現在の辻家の仕事場へと。ここは歴史を縦と水平に刻むまれ家の歴史を体験出来ると。


家を建てることが地域の祝い付きお祭りだったことが分かる写真。

現在は単なる消費行為となってしまった家の作事行為全般である


昭和はことあるごとに宴会をしていた。宴会(情報交換)をしなくなった人々はネット情報とともに社会で孤立化をさらにすすめていく。家造りといえど単なる個人の消費経済として活動の一つになっている令和社会。

佐藤:改修後もキッチンは家の真ん中になるのね。
辻:テーブルを真ん中にもってくるというのがどの部屋もあるので。

佐藤:ここで飯を飯くうんじゃないの?
辻:今、話し合っているここでは喰わない?

佐藤:作った料理は跨いでよいしょ・・・と運ぶの?
辻:そうそう。ここに台がこうきてここに配膳して。

佐藤:作った台で喰わないんだね。
辻:今もほぼ向こうで喰ってます。

佐藤:俺の家に畳の部屋ないから、戸惑うけど。お爺さんが造った辻さん家のような昭和の和風住宅に住んだことないのよ。昨日寝てて思ったけど。映画では見ているど「こういう戦後・昭和の家に住んだこと無い・・」と。川勝さんの家には構成も近いかな。

改修し終えたら記憶が織りあげられていると。そうなるのね、いいじゃないですか。家族三人だと・・広すぎないかね・・・もう一人ぐらい他人入れた方がいいんじゃないの、そうすると面白いし家賃とれるよ

   辻笑っている

佐藤:この辺だと借りる学生いないかな・・。
辻:そうですね。

佐藤:辻さんが弟子を取らずに生徒を取って授業料を取り住まわせるなんていいかもね。辻式建築住み込む学校。

辻:僕がお金をもらって!? 大笑いしている。
佐藤:生徒に改修費を払ってもらうと!

辻:それは新しすぎる。

佐藤;そうすると他者も混じるから都市化が明確化するね。

辻:確かに3人は窮屈ですね。

佐藤:「千鳥文化」を思うとここに二部屋出来ちゃうよ。そろそろ運動会に行こうか?

辻: 準備してください。


掛け軸の靄から松を描いた襖紙、戦後昭和の住宅内装と令和のオモチャが同置、同時に消化しててよい 和室の一部。令和の住宅は何を発明するのだろう?楽しみでもある。


水の跡地めぐり〜保育園の運動会