岩堀未来さん (35回) 環境と交流する建築 
 その1 その2 その3 その4 その5
2020年8〜10月 作成 佐藤敏宏

 その04 筒の家2


(上田宏 撮影)
 その次は筒の家2という、2011年で三年後に建てた住宅なんですが。こちらのクライアントは50代の御夫婦になります。その御夫婦は都心に住んでまして、この敷地は、千葉県の都心から車で1時間ちょっとぐらいの海辺の別荘地に在りまして、西側には海が、200mぐらいに近づいていて、東側は反対に山が迫って非常に自然が豊かな郊外の環境になります。

 当面は終末住宅として使うということなんですけど、将来は移り住むということも視野にいれた住宅になります。建設された当初は新しい別荘地だったので、何も建っていなかったんですが、今はたくさん別荘が建って、町並みが形成されています。

 この敷地は南側に大きな庭をとることが出来る面積があって、北側に町のストリートになる、写真のこの部分ですが、走っていました。この南の庭と北のストリートにつながりを持つ、平屋の住宅を考えました。

 こちらも、南側と北側はつながりを持たせるために、非常に大きな開口部を造っていまいして、そのために東西にすこし膨らんだ平屋になっているんですが、その中に先ほどと同じように、このように3本の幅の違う南北に抜ける筒のような空間をつくっています。これは先ほど都市部の2階建の小さい住宅で試みた事を自然の中にある平屋の別荘で、応用できないかと考えました。

 このように南北に抜けているのが分るかと思います。室内から見ると、このように向こう側に空間が抜けています。水回りなんかも一番細い小さい筒なんですが、その中に浴槽とか、洗面台とかを置いて、非常に開放的な水回りになっています。


(上田宏 撮影)
 この建築のもう一つの大きな特徴は、この大きな木の梁で屋根を造っているということです。これは海辺なので、塩害を避けるために、構造を木造にして、かつ南側と北側に開きながら、都心では得られない、大きいワンルームが欲しいということで、東西方向に大きいいスパンを飛ばす必要がありました。このように非常に大きい木の梁を造ったんですけども、これは木で梯子のような骨組みを造ってその両側から、合板を貼って、合成梁というものなんですが。こういう非常に大きな梁です。この大きな梁を構造だけじゃなくって、何か他の使い道に使おうと思いまして、例えばトップライトから入って来る直射日光を一回ここで反射させて実内に落として来る。そういうふうにすることで軟らかい光が落ちてくるような、屋根を考えました。このように梁の間が少し白く柔らかい光に満たされていて、こういう光が上から落ちて来きます。

 部屋を区切るための、建具ですとか、家具、そういった物は梁の下までの高さとしてます。こうすることでこの上は梁の背があるので、空間的には全部の空気がつながるような形になっています。こうする事で、例えばこちらにご主人が居て何かしている。家具の後ろ側に奥さまが何かしているとして。見えない生活の距離もとれるんですけど、上が繋がっているので何となく気配は感じますし、何か声を掛ければ直ぐ分かるというように、先ほどと同じように、大きな梁を使って生活の中に距離感と一体感というものを両立させようと思いました。



 この建築も同じように非常に単純は工業部品の組み合わせで造ることを考えました。このように、南北に抜ける筒に南や北から光が入って来て、この建物は大きな木の梁に天窓から入って来る光を反射させて、上からの光が入って来きます。その中を風が通り、こちらの直行方向の断面ではこれが大きは梁ですけれども、全部の建具は家具は梁の下までで、音が抜ける。こちらも床はモルタル仕上げなんですけど、その中に温水パイプを埋設して、そのモルタルを暖めて放熱するという方法で室内の室温を保っています。












 このように、南北に抜ける筒とそれを覆う大きな木の梁という、非常に単純な仕組みの中に、このように光とか風とか様々な環境要素を交流させているという、そういう建築になります。この二つの個人住宅で考えた事は環境交流装置としての建築という考えからスタートしていますけども、それを実現するために筒のような長い空間を造って、そこに環境要素を交流させると、それが非常に豊かな生活空間になるのではないかという、そういう発見を出来たのではないかと思います。

 その5へつづく