岩堀未来さん (35回) 環境と交流する建築 その1 その2 その3 その4 その5 |
2020年8〜10月 作成 佐藤敏宏 | |
その1 ただいまご紹介いただきました岩堀と言います。よろしくお願いいたします。本日は皆さま大変お忙しいなか、この講演会にご参加いただきまして誠にありがとうございます。またこのような話をさせていただける機会をつくっていただいた福島県建築文化賞企画会議事務局の皆様ありがとうございます。 |
画像クレジット ・ 新建築社写真部 ・上田宏 ・ 坂口裕康 ・ 淺川敏: ・ 長尾亜子建築設計事務所 ・ 岩堀未来建築設計事務所(記載ないもの全て) |
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■初めに 初めに、本日午前中に矢吹町中町第二災害公営住宅、福島県建築文化賞に表彰していただきまして、主催者の皆様、また審査員の皆様、ありがとうございました。 |
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この建築は非常に多くの方にご協力いただいて実現した建築になります。建築主である矢吹町の野崎町長さんはじめ、都市整備課の福田課長さんや監督員をされた星さん。また施工に当たられました伸和建設の橋本社長さん。現場監督の安藤さんや橋本さん。また、まちづくりを先導されました東京大学生産技術研究所の村松さん腰原さん、太田さん。また地元の設計事務所として、ご協力いただきました、郡山市の山口建築設計事務所の吉田所長さんと実際担当された國分さん。最後の我々の設計チームの共同設計者の長尾亜子さんはじめ各専門分野の多くの方にご協力いただきました。ここで改めて感謝を申し上げたいと思います。 | ||
■講演 環境と交流する建築 それでは講演の方です。本日は建築文化に関する講演ということでお話をいただきました。私は事務所を始めてから12年ぐらいになります。この間に多くはないんですけども、幾つかの建築を設計しています。幾つかの建築を設計してきますと、自分の中でどの仕事にも「共通するテーマが存在する」ことに気付きました。 それが今日の講演のタイトルにあります「環境と交流する建築」という問題です。本日はこのテーマについてのお話と、またこのテーマに基づいて設計しされました矢吹町中町第二災害公営住宅と、その他幾つかの建築について、ご紹介させていただいて、本日皆さまと共に建築文化というものについて、考えを深めていけたらと考えております。 |
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一番始めに「環境と交流する建築」という考え方を、私がどのように考えているのか、少し概念的なお話をさせていただきます。 二つ目に、その実例として矢吹町中町第二災害公営住宅の計画の内容について、詳しくお話をしたいと思います 三番目に最後ですけれども、環境と交流する建築の、その他の実例として、矢吹町の災害公営住宅以前に私が設計した建築を三つほどご紹介させていただきたいと思います。 |
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■概念 環境交流装置としての建築 それでは早速、環境と交流する建築の概念的な話をしていきます。 初めに、「環境と交流する建築」というのを自分で考えるのに、言葉をつくってみました。「環境交流装置」という言葉なんですけども、そういうものとして建築を考えるということです。言葉を作ることで自分の中で曖昧に考えていた事を整理しようと考えています。 この環境交流装置という言葉なんですけども、これは3つの言葉を合わせてつくりました。一つは「環境」もう一つは「交流」そして「装置」という三つの言葉になります。それぞれの言葉というのは、それぞれ意味が広い言葉なんですども、これを自分なりに、定義をしています。 |
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■環境 まず一番初めの「環境」という言葉ですけれども、これは自然環境と社会環境を含む生活をとりまく現象を一般であると考えています。自然環境というのは、例えば光であるとか、風であるとか、熱の流れですとか、そういう自然現象一般も含みますし、もしくは、周りに生えている樹木であるとか草花であるとか、そういう具体的な自然というものも、ここに含まれます。 一方、社会的な環境というのは、例えば建築が建つその地域や町といったもの、そこに住まわれている人たちや、実際その建築を使う人たち、もしくはその地域の風土とか風習。こういったものを社会環境というふうに呼んでいます。 このように建築の生活を取り巻く現象全てを「環境」という言葉でイメージをしています。環境と言いますと、自然環境との共生というような形で少し狭い意味で捉えられることもありますけども。私はこの環境という言葉をもう少し広いものとして考えています。 |
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■交流 次に「交流」という言葉ですけれども、これは能動的に係わる、それを生活に取り込む事であるというふうに考えています。建築をつくりますと、その内側と外側というのが出来ているわけですけれども、外側から様々な働き掛けがあります。例えば、日光が建築の中に入って来て、それをコントロールして生活しやすいように、調整をしたり制御をしたりします。制御とか調整というのは、どちらかというと日光を受け取るものと認識してりいることが強いですけども、「交流」という言葉は、例えばその日光をどういうふうに建築に取り入れれば生活が豊かに成るであろうかと、楽しくなるんであろうか、そういうふうに、外からの働きかけを考える、というようにしています |
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■ 装置 三つ目の「装置」という言葉ですけれども、これは生活を楽しむための、道具であるというふうに考えています。建築家が設計する建築というのは、時には芸術作品のように考えられる事もあるですけども、私はどちらかと言うと、これを生活の道具として、デザインしているという感覚に近いなと思います。道具であるからと言ってそれが単なる生活の手段に成る事ではなくって、それを使う事を追求することで生まれて来る質、もしくは品みたいなものを備えた道具であること、というふうに考えています。 以上をまとめますと、環境交流装置としての建築というのは、自然環境と社会環境を含む、生活を取り巻く現象に積極的に能動的に係わりをもって、それらを生活に取り込むことで、生活を楽しくする、豊かにするそういう道具、そういうものとして建築を考える。というような考えになります。 |
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■環境交流装置としての建築をつくる方法 この環境交流装置としての建築をつくる、設計する方法として二つほど大切にしている事があります。 (単純な仕組みでつくる) 一つ目は全体を単純な仕組みでつくるということです。これは先ほど申し上げましたように、建築が現象、様々な現象に関わっていこうとすると、設計条件というのが非常に多岐に渡って、かつ複雑になっていきます。これをこの設計条件を一つ一つに、一つの形を与えていこうとすると、その建築は自ずと複雑な仕組みになっていきます。これを、多様な複雑な多岐に渡る条件を、例えば一つの形や一つの空間で解決出来ないか、出来る方法を探していく。そういうような物として考えています。つまり複雑な条件を解決するための、単純な仕組みというものを発見していこうという、スタンスに成ります。 |
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(工業製品でつくる 現代における民家) 二つ目の、既成の工業製品を組み合わせて造るということですけれども、これは建築の構成する部品というのが、例えば構造材、仕上げ材、設備部材などいろいろありますけれど、現代ではほとんどが工場で生産された工業製品となっています。 これを使うときに、例えば非常に特殊な物を使うとか、特注品を使ったりとかするのは出来るだけしないようにして、一般的に手に入り易い部品で構成する事を考えています。これは日本の工業製品という物が非常に精度が高くて、かつ性能も高いので、それを経済性や建築全体の性能を考えてバランスよく組み合わせていく。 例えば現代における民家を設計してるとか、そういう事に成るのでないかと思って非常に面白く感じております。 以上で概念的なお話をしましたけれどもここからは、今の考えを反映しました事例として、まず初めに矢吹町中町第二災害公営住宅の話をしたいと思います。 その2へつづく |
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