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2003年12月28日 建築あそび記録
菅野裕子 さんによる 建築と音楽
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菅野裕子さんには数度建築あそびに参加頂いていたので、菅野さんの研究テーマを講演していただくことにした。「建築と音楽」ということなのだが、タイミングよく田中浩也さん達のバンドから演奏実施申し込みがあったので、講演前日に公共建築を私物化して演奏会を開くことになった、おおよそのお題目と内容の一部は・・
街を使ってみよう! 住宅を使ってみよう !
今回の 建築あそび は初めての公共建築の私物化!・・を試みることに・・。プライベートな空間をパブリック化する行為は、数を重ねていたが、HP公開後は他者の所有するプライベートな空間をパブリック化する行為が行われていなかったので、コレを機会に実践することにした
2日にわたることと、2ヶ所での建築あそびとなるので、車で移動しなければならない。車は2台確保出来ている。・・・募集人員は講演者も含め総勢10名が限界かもしれない・・溢れたら場合は車持参で参加していただくほかない・・。こんな感じで募集してみた、演奏会は成功して・・翌日の講演会である・・連続建築あそびは初体験なので準備に大わらわ・・・・であった・・午前中の買い出しを済ませ・・今夜は手抜き気味の焼き肉パーティー・・いよいよ・・菅野さんの講演である・・
s 今日コレから来る仙台の・・牡蠣を差し入れてくれた・・くるのですが・・じゃー菅野さん・・なに喋っているの田中さん・・
昨夜の古関裕而記念館でジャズの演奏をしてれた田中浩也さん雑談に注意する佐藤・・
・・菅野さん講演準備を始める・・
s 会場暗くしよう・・原稿 読よめないね・・そこにスタンドある。
y ああ
s ・・部屋を暗くして、菅野さんの廻りを明るくする準備をする。ワイワイ
t
(田中浩也) 寒い・・
s それは炬燵に入っていないと寒いよ
t あぁ花踏んでる花踏んでいる
昨夜のコンサートでもらった花を気遣う田中
s ビデオ回っている
s長女 回っている
s ではよろしくお願いします・・拍手パチパチ
y
(菅野裕子) じゃ
建築と音楽について・・
s 一寸まってください・・これじゃ声が記録できないぞ・・どーしようかなー
ビデオ機材の移動を始める・・
わかった菅野さんをコレに座らせて・・膝掛けをあげると・・菅野さんの声が入らないと後で困るので・・
ゴソゴソ機材を動かしている・・位置の準備やり直し
s田中さんスライド係たのむ・
t これどっち
y 私のコート取ってきて・
会場 わいわい
会
場拍手パチパチ
s よろしくお願いします
Y じゃいいですか
私の研究は建築と音楽を比較するという研究で、切っ掛けというか始めようと思った時は大学3年生の時で、最初
マドセンという人の「
アール・ヌーヴォー」という本を読んでアール・ヌーヴォーとその当時の音楽との関係が一言二言触れられていたので、一寸興味を持ったということと。「
建築は凍れる音楽である」という
シュレーゲルの言葉を大学3年生の時に知って、何か引かれて・・やりたいというのが切っ掛けでした。
始めたのが4年生の卒業論文なんですが・・
今日の話の構成は卒業論文でやった「
西洋の中世の建築と音楽」と修士論文でやった「
ルネサンスからバロックの建築と音楽」のことと、それ以降にやっている、「
ルネサンス時代のいろんな文献で建築と音楽を比較する」ということを話すので、
3部構成ということになります。
建築というのは
絵画や
彫刻とともに、
空間芸術と分類されていて、
音楽はそれにたいして
文学や
詩などとともに
時間芸術というふうに分類されているので、空間と時間という分類で分けると、違うジャンルになるのですが、もう一つの分け方で・・
再現芸術と非再現芸術と考えると絵画や彫刻や文学というものは、実際の具体的にある何かを再現するという芸術であるのに対して、建築と音楽というのは実際にあるものではなくて・・
なんだろう・・
建築家や音楽家の
頭の中から作る空間や時間というものが現れてくるような芸術ではないかと考えました。
建築や音楽というのは空間観や時間観というものが表出され易いのではないか、というふうに考えて、
その建築と音楽を空間と時間として対比させて比較したら面白いのではないかと、最初に考えました。
空間の軸と時間の感覚というのはよく「先天的」とか「先験的」というふうに言われているのですが、その時考えたのは、
認識に関しては 空間と時間というのは必ずしも先天的ではなくて、
学習的であったり、経験的であったり、ということが
キットある!のではないかと思って、それを歴史を追って
建築と音楽を比較することによって「何かみいだせたら・・いいのではないか」・・ということを考えました。
というのが私の研究のスタンスなんですけども、その他の視点としては建築と音楽の研究で「
比例や数を軸にした研究」というのがよく研究されていて、最も有名なのは
ウィットコウワーのルネサンスの建築研究で、「
音楽の中の調和音比例」がルネサンスの建築のいろんな部分の比例に用いられているという研究があります。
もう一つの研究のスタンスとしては 建築というのを「
音楽を演奏する空間」として考えてその演奏される空間とそこで演奏される音楽とがどういう関係があるか、という研究もあります。
劇場の研究とか、
作曲家がどういう劇場を好んだかという話です。
4年生の時に私が「
建築と音楽の研究をしたい!」というふうに最初に指導教官の先生に話をした時は先生は「
劇場の研究などいろいろあるけど・・そういうのもよいではないか・・」と仰ったんですけど、その時の事を思い出すと・・
私はきっぱり、「
それはあまり興味なくて、建築と音楽と芸術として対等に比較したい」ということを 言ったことを覚えているので、なにか私には最初からそういう事じゃなくて、「
空間と時間を比較して 建築と音楽を対等に比べてみたい」という考えが一番最初からありました。
実際に「
どういう時代のものとか、どういう地域のものを研究テーマにしようか」と考えたんですが、音楽というのはピアノとかオーボエなどの楽器をやっていたことがあって、いわゆる西洋の音楽をある程度勉強したことがあったんだけど、日本の音楽は全く知らなかったので、西洋の音楽の方が 自分にとって親しい というかよく知っているから、それやったほうがいいじゃないかということで、
西洋音楽を最初にするということを決めて、その後
どの時代にするかという事を考えた時に・・・
「歴史なので古くからやって行くのがいいじゃないかなー」と思って、4年生のとき漠然と思って、調べてみたんですけども・・ギリシャ時代の建築が残っているけど
ギリシャ時代の音楽の楽譜が残っていないと書いてあったので・・研究対象としては「
楽譜が残っているところから始めよう」ということで中世を始めようとしました。
ということで
中世の建築と音楽を比較するという研究でした。
卒業論文の「建築と音楽」を比較したときは「
5つの点で類似点がある」というふうに言ったんですが、その5つの点というのは、基本的な性格として、
ロマネスクは統一的でゴシックは分割的で多様性がありおおくの部分から構成されているということをやったり、
創作の手法として・・
ゴシックの建築で正方形を基本として平面から立面まで全ての構造を導き出すというものがあったんですが、音楽も
ある基本となる旋律とリズムを組み合わせる事によって一つの曲を作る、
イソリズムという作曲方法があったりして、それを比べたりとか・・あと
リズムが分割的なものから付加的なものになるということが、
建築においても音楽においても言えるということを言ったりしました。
後は・・
音楽を聞きながらどういう印象を受けるかということを自分なりに言葉で表したりしてみる、というのもやってみました。そのとき考えたのはグリゴリオ聖歌というのが
ロマネスク時代の宗教音楽の主流なんですけども、
低く太い音で歌われるのに対して、
ゴシックになるともう少し高声が入って
細かい音の重なりになる。
ロマネスクの建築は部材が太いというか鈍重な感じなんですが、ゴシックはもう少し細い部材があるとか、そういう
空間を体験したときと音楽を体験した時にどういう印象を受けるかというのを自分の言葉で書く・・というのをやっていたのですが・・。
今日はその中でも
各部分がどういうふうに構成されているかということと、ロマネスクからゴシックにかけて
建築も音楽も付加的なものから分割的なものになっていったということを一寸紹介したいと思います。
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(追記)
2008年10月03日 NTT出版 より 「建築と音楽」 出版されました
買い求め読んでいただければ幸です 佐藤敏宏
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