ふりかえり 記録す(パラレルプロジェクションズの6年間) | 作成:佐藤敏宏 | ||
2021年12月04日21:00〜 ゲスト:川勝真一さん 辻琢磨さん 佐藤敏宏 01 02 03 04 |
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佐藤:2016年のパラレルセッションズにはに130人集まりましたか? 辻:それ以上、集まりましたね。150人ぐらいでした。 佐藤:そりゃ凄いや。 川勝:130人から何人か落とすみたいな事は止めましたね。 佐藤:何グループかに分けて最初から討議形式だったんですか? 辻:13グループですね。10人ずつに何となく決め、それぞれのテーマ、あるいは問いみたいなのを、そこは立てさせてもらった。それにつて考える。 佐藤:各グループのテーマは川勝さんと辻さんが決め与たんですね。 川勝:セッションテーマとグループ分けはこちらでしました。 佐藤:初対面の人がほとんどだろうに、うまく分けられましたか? 川勝:会ったことない人だったので難しかったですね。テーマは割と、どうしたんだっけ。 辻:テーマは後でタグ出ししてから、参加者のエントリーリストを見て、グループ分けをして、何となく、このグループだったらこういうことを話すだろうなーと。参加者にエントリーの時に自分たちのキーワード、黄緑の冊子にまとめたキーワードと作品の画像とか、研究者も居たので活動概要を表現する画像も頂いて、それをインプットして見比べて。で何となく、この人とこの人が合うかなーと。そうした結果このグループはこのテーマにしようと後で考え。 撮影:長谷川健太さん 佐藤:その時点で150人を編集してグループ分けしたと。その人の仕分作業は大変そうだね。 辻:そうですね、大変でした。 佐藤:記憶に残っているテーマやグループがありしたら。教えてください。 |
2016年刊行 辻さん奥さまの製本 |
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辻:テーマというよりは展示を、トークセッション。初回の内容は13セッションあるんですけど、初日に130人、とにかく集まって10日間のうちに各セッションは、もうワン・セッションやるんですよ。やってないときは展示バージョンに切り替えて、初日の議論の内容をその場に案内できるように、会場構成を設えて。動画も撮影して。初日の議論が流れていて、痕跡も残っている。そういう展示として展開していった。 それがあって、展示が印象深かった人たちがいました。大工さんたちだったかな、モックアップをひたすらたくさん持って来る人たちがいて。常滑の水野さんとか、滅茶苦茶展示の迫力が有ったり。 佐藤:議論の部分で印象深かったのはなかったですか。 辻:議論は僕らはがっちり入れてなくって、運営に徹していたんです。正直何が話し合われたのかは、各年も深くコミットできる感じではなかったんですよ。 佐藤:今年2021年10月16日連続12時間の各組30分の対話で初めて知ることになった。 辻:今年のあのインタビューはそういう意味では初めてちゃんと話したんです。 |
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2021年10月16日 9〜21ZOOM対話動画 | |||
川勝:特に1年目は全体の場をね、企画するというのが大きかった。 辻:それは終った後に新建築にまとめさせてもらう機会があったので、それで各セッションの代表者テキストを書いてもらいました。断片的にはどういうことが話したのかは新建築の2016年の12月号にあります。 佐藤:『新建築』の記事を見れば当時の様子は分ると。 川勝:ある程度まとまっています。 佐藤:毎年、『新建築』に掲載、まとめて発表していたということですか? 辻:2016年の最初だけでした。 川勝:1年目は本当に130周年だったんで、会期も長かったし展示という形で、議論を見せたい、ということと、初日にディスカッションをして更にもう一度ゲストを入れて公開で話すということで、かなり濃かったのです。それで『新建築』も方も取り上げてくれたんだと思います。翌年からは1日限りで開催していた。 佐藤:2020年からはZOOMが使えるんだけど、2016年当時の事前打ち合わせはどうしてたんですか。 川勝:ZOOM無かったです。どうやって事前打ち合わせしてただっけ。 辻:確かに分からないね。 佐藤:当日建築開館にいきなり集まってワイワイを始めるって出来ないじゃない、無理でしょう。 川勝:何か使ってたかなー。どうしたてたかな。 辻:事前に集まってたんじゃないかなー。僕が京都に行ったり 川勝:その時、住宅の注文受けていて、プロジェクトみたいなのを起こそうとしていたので、辻さんが来てくれたんじゃないかな。 辻:京都で打ち合わせした記憶があるなー。 |
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佐藤:事前合わせの大きな議題やテーマはなんでしたか。実施するにあたり、予算が無さすぎるとか、人が集まるのか?などいろいろ、予想しますが。 辻:毎年ありましたね。人集まるのかといことは毎年ありましたね。初年度はうまく150人でオーバーでしたが、だんだんそこから人数が減っていったり、エントリー制と謳っているだけに、こっち側が主導権を握れていないので。蓋を開けてみるまで分からなくって、〆が近づいてきて、増えない!参加者増えねーと。半ば強引に声を掛けるとか。エントリーしてくださいと(笑)そういう感じになったなー。 佐藤:130人から150人ぐらいが顔を認識できる人の集団としては良いそうだ(山極寿一さんの話)けど。 川勝:どちらかというと、130人が集まって議論をするということが、これは一種のイベントなので、イベントとしてどう成り立つんだろう?がありますね。何ていうか、勉強会とか、自分たちがやってるだけじゃない。そのものをどう作れるのか。普通だと建築の、皆さん今関わっている作品を出してください。あるいは作品を並べて、皆さん見てください。そしてシンポジュームやりましょう、みたいになると思うんです。 2016年のときは基本的に、それぞれ今やっている企画・計画などの資料は持ち寄って会場に置いたんです。いわゆる作品を見せる展示とは違って、むしろ議論そのものがここでのコンテクストです。その議論というコンテンツをどう空間化するか?という処。僕はすごくそこが難しいなーと、だから考えたいと思った処でしたね。 佐藤:各自がセルフプロモーションを上手に行ったとしても、そこから議論展開していって空間化するって別な話だから、お二人はどちらも両方やらなければいけなかったと。ハードルが高かったというか仕切り方が難しい。どう着火させるのか、その点があったと。10グループのリーダに任せて、プロジェクトをも各自が持ち寄って見せ合いそこで、それぞれで語り合っていただいたと。 川勝:いろいろ考えたけど。 辻:基本的にはそうだけどゲストのメンター(建築家)の人にやってもらって。建築家というか大人というか、初年度は上世代の人たちに参加願いました。馬場さんとか西田さんに入ってもらって、最初ブリーフイングでその人のやっていることを説明して、各自が「こういうお題で考えようとしているんです」と。そこから始めた。割と、コミュニケーションの仕組みづくり、そういうのは割と考えたいたような気がします。 |
絵:三枚撮影 千葉正人さん |
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推し曲 動画:カタチト ナカミ - architect |
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佐藤:見ず知らずの人が130人集まって語り合いがなり立つその事です。喧嘩にならなかったですか。 辻:喧嘩にならないですね。喧嘩は無かった。 佐藤:建築関係者が、つくりだしてる公共圏の力だと思って観てました。不思議な力です。日常では意識することはないけど、例えば道路上10人居る人と一斉に語り合いせよ、と命じても語り合いが成立するかどうか。うまくいかないですよ、話術の達人ならできそうだが。 辻:それはそうですね(笑) 佐藤:そこにある力、共有している建築人の公共圏感覚を少し知っておきたいと思いました。二人が議論が上手くのは参加者にお任せしていると。その源や土壌を自覚してみたいということです。それらは建築界の先輩が育ててきたり、参加する人たちが議論の場を作ろうとしているから成立する、そういう何かモチベーションを共有できている、概念があると思うのですが。建築関係者の人が集まってすぐに語り合いが出来ることは興味深いです。喧嘩も発生せず進んでいく。 私が30代の時の20歳ぐらい上の人たちは集まっては、罵り合いや喧嘩をしていたのを見ていたけど。彼らは喧嘩し合わないと会って語りしている気にならないようだった。川勝さんたちの世代に会うと喧嘩しないので、楽しい語り合いが多い。成熟していると思う。今は、パワハラやセクハラは社会問題になっていますし、ジェンダーバランスも問われています。 川勝:最初に言ったようにエントリー制で、主体的に活動してもらっていので、その辺はばったり会った人とは違う言葉になります。基本的にはアトリエ系の設計事務所の設計者、組織の設計者、ゼネコンの設計者も居ました。構造とか設備とかの研究系の人や開発系の人とか、大学で歴史をやっているとか、建築論をやっているとか、そういう人がパラレルプロジェクションズと言っているのもあって、今自分が抱えているプロジェクトを持ち寄るとう感じだったと思います。「作品を持って来てください」ではなく、それは2021年の10月16日の30分ずつの聞き取りでも谷繁君が話してましたが、プロジェクトというものが作家と建築家と研究者を二項に分けずに共有して議論できると。そういうものだったんじゃないか。まだ若いので参加者の皆さんも完成してなくって、これからこういう事をやりますみたいなのをプロジェクトとして持ってきている。そこで割とフラットに自己紹介の地平に立てる、一つの切っ掛けだったんじゃないかと、今から考えると思います。 |
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佐藤:パラレルセッションズの企画は凄く良い視点だ、提案だと思いました。それまでは一人でコツコツ籠って自分のプロジェットを磨いていたりして成していたんだろけど、みんなに見せ合うことによって思いや問題・課題・企画の源をシェアしたり、さらに相対化されている。若い人にとっては他者の視線が入りやすくなり客観視の支援を得ることができるのでいいんじゃないかと思いました。 というのは田舎で一人で設計していたので、他者と話合って設計し建築を相対化する機会を持つことがなかった。建築に係わる人々が、若い時分からいろいろな人の声を受けとめる、交流する事が出来る場が在るのはいいと思う。メディアに作ってもらうのではなく自らが運営する場。風通しが悪い場しかないと権威主義や自家中毒に陥り易い環境が保たれてしまいますからね。 絵:サイトより |
絵:ウエブより |
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絵:このサイトより |
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佐藤:今はZOOMで作品を批評してもらうことも出来るから、そうはなりにくいだろうが、建築界はジェンダーアンバランスが極端で男性中心主義の世界だと思います、学部の時は女性が多くいたとしても、男性の社会を勝ち抜いてきて生き残るので、旧来の男性的な価値観が投影されている方かもしれません。 まずは、建築好きたちが集まって、あれこれ語り合える、シェアできる場があるのは幸いだと思う。そういう場を辻さんと川勝さんの二人は作りつづけて5年間+1年終えたと。そこは多いに評価すべきことだと思います。 |
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川勝:交通費も何も出ないんですけど、遠方から参加してくれていた。九州や北海道、関西とか。だからそういう人にとっては相対化の場所になったかも知れない。組織の人たちからすると、アトリエ系の人と同じ場所で語り合う、相互に建築家の職能の相対化だったかも知れない。相互にジャンル間の相対化、そういう事も起こりえたと思いますね。僕は京都だし、辻君は浜松だし、二人とも東京に暮らしてるわけじゃない。地方の若い人が交流することも一つの特徴だったかなーと思います。 佐藤:同意します、だから学会の会合というと研究者が実作を手にいれて名高い人たちが集まって批評し合うような雰囲気があったけど、変えた。辻・川勝二人が行った活動はそこには至ってない人たちを集めて、プロジェクトを見せ合って語り合うという従来には無かったことを行った。建築学会をつくった辰野金吾さんには叱られるかもしれないけど、130年の今に合う、ある種の豊かさをつくったと思う。良いと評価されるのかどうかそれは分からないんだけど。なんとなくアカデミックハラスメントじゃないけど、研究者の集まりってそういう臭いを感じさせてしまう。暗い穴に堕ちていくような、風通しが悪というかタコつぼ部屋というか。それに比較するとだいぶ健康的な10日間の行為だったのではないですか。俺の単なる感想で、現場に立ち会って裏取りしてはないけど。 川勝:いい会でしたよね。 |
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佐藤:辻さんの聞き取りは仙台のSDL2018審査員だったので、その感想を聞いたのが初めてでした。あの催しモノも学生が大学を離れて仙台圏+東京書籍情報有名人に評価されるんだけど。大学を離れた場で評価してもらいたいという学生の多様な考え方を受けて盛り上がったんだろう。その後日本一位の学生がどう成長したか?しらない。だけど、お二人のお友達の大室祐介さんは2010年に聞き取り記録を作ったから知っている。 日本一位を選ぶとはいえ審査員の合議で決める時間は無く、合意が成り立たないので、挙手で決めちゃう。建築の計画の価値すら合議・合意のもとに一番と決められないことが露わになっていた。建築作品も良し悪しを評価するのは個人の価値の域を出て共有されることは難しい、メディアが強引に情報を流しているうちに何となくそうなっていく。 そう例もあって良し悪しを決めるのは難しいんだけど、2016年に今後30年の事を語る課題を見つけるというのも予測し提示し語り合うのも凄く難しいと思うんですよね。そう言っていたら議論が出来ないので間違いがあることを共有して記録を残して語り合いを30年後にまた語り合いを繰り返すしかない。2016年に語り合われたことが生きない事にはなる。記録を残さないと皆忘れてしまう。2046年って俺は生きていない、2016年参加の彼らがどうなっているかは確かめようがない。でも川勝さんと辻さんは60代半ばだろうから確認し合える。そういう事に共感し合って参加した、その記録を残して置いて、後の後、語り合う機会を設ける人も場も少なすぎるよね。 辻さんと川勝さんたち世代は、インターネットの影響、煽りをくって、紙媒体の力や学会の力が弱まって来ていて価値が拡散している、その事を実感した第一世代だと思うんです。しかしその世代の集まりでも圧倒的に男性だけが集まる、男だけ。ジェンダーバランスが偏り過ぎていて、とても良い環境じゃない。その辺りの30年後に向けて記録とジェダーバランスの問題は何も考えてなかったですか。 |
佐藤のサイトにあるSDL2018の記録 |
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その3へつづく |
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