衆議院 原子力問題調査 特別委員会
原子力問題に関する件(原子力規制行政の在り方)

(質疑応答編)
1)自民・津島淳  2)国民民主党・浅野哲 3)公明党・中野洋昌
4)日本共産党・藤野保史 5)日本維新会・足立康史 6)立憲民主党・山崎誠 



○渡辺委員長 次に、藤野保史君。

○藤野委員 日本共産党の藤野保史です。

 今日は、アドバイザリー・ボード会員の皆様、本当に貴重な御意見、ありがとうございます。

 今年は三・一一から十年目の節目と、黒川元委員長も御指摘されました。

 私も、改めて、今日の御提言もお聞きしながらもですが、今日の委員会の前に、この事故調の報告書を改めて読ませていただきまして、ところどころ、非常に今に当てはまるというか、まさに今の事態と重なる思いをしながら読ませていただきました。

 先ほど来、東電の柏崎刈羽原発の核物質防護機能喪失の話が出ておりまして、これは、四月十四日に規制委員会が是正措置等の命令というものを出しております。

 これはまさに、これより重いものは設置許可の取消しというものしかないぐらい重いもので、更田委員長も、規制委員会発足以降、最も重大な処分だというふうにおっしゃっております。

 私の当委員会での質問に対して、東電はもう設置許可を取り消すべきじゃないかと私、質問しましたら、更田委員長は、今後の検査の過程に応じて、そういった議論というものが出てくるということも否定はしないという答弁をされておりまして、ですから、東電に対して設置許可の取消しもあり得る、そういう重大な事態が今、目の前で進行しているというふうに私は認識をしております。

 今日、まずお聞きしたいのは、問題は、こういった東電に原発を再稼働させようと、政府が、経産省やエネ庁が、まさに東電ができないこと、あるいは関電ができないこと、これを代わっていろいろやってきているということなんです。

 今日お配りしている資料は福井のやつなので、後で見ていただければと思うんですが、先日の当委員会では、新潟県に、去年の一月から今年の二月末までで八十七回も、エネ庁長官を始め、柏崎刈羽の関連で幹部が新潟に出張している。夜、飲み会までやって、二次会までやっているということも紹介させていただいたんですけれども、そういうことを新潟ではやってきた。

 今日は、福井でも同じようなことをやっているということを紹介させていただきたいんですが、それが配付資料の一であります。

 実は、今日、四月二十七日というのは、今日の夕方十八時から、梶山経産大臣が、福井県知事、杉本知事とウェブで懇談をして、いわゆる地元再稼働の最後の仕上げ、美浜三号、高浜一、二号、これの知事同意を得るための懇談がまさに今日十八時から行われます。

 問題は、実はこれはもう最終的な仕上げなんですけれども、ここに至るまで、経産省は、もう何年もかけて、福井県でも同じような地ならしをしてきた。

 配付資料の一がそれなんですが、これ、二〇一九年四月一日からに限って、資料を経産省からいただきました。実に百十回、あそこは原発も多いですので、出張しているということが明らかになりました。

 この中で、ちょっと黄色く塗らせていただいている二枚目の十月十六日、二〇二〇年十月十六日というのがあるんですが、これは、保坂エネルギー庁長官、小澤エネルギー庁首席エネルギー・地域政策統括調整官始め五人が福井入りして、県知事、美浜町長、高浜町長と面談しております。この百十回のうち、これだけのメンバーが一気に入ったというのはこの十月十六日なんです。

 配付資料の二と三を見ていただきますと、東京新聞と地元の福井新聞なんですが、まさに、東京新聞であれば、左側の方にありますけれども、黄色く塗っている、この日を境に、この日というのは十月十六日です、この日を境に、関電が四十年超運転を目指す美浜原発三号機、高浜原発一、二号機の再稼働をめぐる議論が一気に動いたと。そして次の、配付資料三ですが、これは福井新聞。これは、二人の町長、美浜町長と高浜町長がそれぞれ、再稼働の議論が今日から始動したと口をそろえたというふうに報じられております。つまり、政府が議論を始動させている、スイッチを押しているということなんですね。

 問題は、そのスイッチを押す十月十六日の前後に、例えば、前だと二〇一九年からだけで見ても七十回入っている、十月十六日の後には約四十回入って、まさに積み上げというか地ならしをしている。ちょうどこれは関電の原発マネーの還流の時期とも重なりますので、関電が表立ってできない様々な調整をやっていたというふうに思います。

 それで、黒川参考人と鈴木参考人にお聞きしたいんですけれども、もちろん、電力事業者というのは様々な、やはりそれは営利事業ですから、そういう動きをするというのは理解できなくはないというか、そういうものだという、側面があると思うんです。ただ、やはり、政府がここまで地ならしで動いていた、この政府の果たしている役割というのは率直に言ってどう見たらいいのか、お考えをお聞かせいただければと思います。


○黒川参考人 これ、福井には何であんなにたくさんあるのかというのは不思議ですよね。だから、何があるのかというのは、今までの歴史的な背景があるんじゃないかと思いますが、分かりません。

 少なくとも、まだ私よりもうちょっと上の方たちは、福井には大地震があって津波もありましたよね、何であんなところにあんなにたくさん造っているのかなというのは私も理解できなくて、何かあるんだと思いますね。

 だから、そこまでは、ちょっと私の範囲ではないんですけれども、是非これは、やはり政府をチェックしているのは国会ですから、三権分立しているというのは国会こそが政府のパフォーマンスをきちっとやる役割があるわけで、それを私が前から言っているのに、日本の三権分立は形だけで政府をちゃんとチェックしていないんじゃないかと言っているのはそういう意味なのでございまして。

 是非そこのところは、やはり国会が是非力を出していただきたいのは、あそこにあんなに、ちっちゃな湾に三つもあって、「もんじゅ」もそうじゃないですか、近くにあって、地震の歴史があるんですよ。少なくとも大地震があったわけなので、そこに何であんなにごたごたあるのかなというのは、私も疑問であります。

 これはすごいなと思いますよね。何かあるんじゃないかと思います。

○鈴木参考人
 貴重な資料をありがとうございました。

 一つ目の印象は、何か事故前と余り変わっていないなという。

 それから二番目は、私は、これは交付金制度ということをやはり国会として考えていただきたいかなと。これも、原発の今後を考えたときに果たして今のままでいいのか、原子力依存度を下げていくということであれば、それに沿った交付金制度に変える必要があると。今のままだと、これは、交付金は、御存じのとおり、石油危機直後に原子力を拡大するために導入した制度ですので、これの見直しが必要かなというのが二番目。

 三番目は、40年で廃炉するという基準なんですが、これはたしかこの委員会でも御質問いただいた記憶があるんですが、そもそもこれは科学技術的には余り意味がない期限ですね。海外でも、科学技術的に決めているというよりは、経済性とか社会的な要請で決めているケースが多いです。

 したがって、規制委員会の資料がついていましたが、40年というのは一つの区切りにして、きちんと評価するということが大事ではないかなと思います。



○藤野委員 ありがとうございます。

 続いて、今、鈴木参考人からもありましたけれども、いわゆる四十年ルールについて、これは是非四人の参考人全員にお聞きしたいと思います。

 原子炉等規制法の第四十三条の三の三十二というのはこう規定しておりまして、発電用原子炉を運転することができる期間は、最初に使用前事業者検査の確認を受けた日から起算して四十年とするというふうに規定をしております。運転する期間はというふうになっていて、それは四十年とする、こういう条文であります。

 これは、いわゆる原発事故を受けて、日本で初めて原発の運転期間を法律で定めた、それまではなかったものであります。実際、同法に基づいて、東海第二原発等々は延長申請を、この使用前検査を受けて合格した日から起算した日時で審査も受け、パスもしている、そういう運用もされてきております。

 配付資料の四を見ていただきますと、規制委員会は昨年の七月二十九日に、この条項に関する見解というのを発表しております。一番左の上の方に、何でこういう見解を出したのかということがこの文書自身で説明していまして、「この意見交換は、事業者側から、」、これはATENAとかそういう組織なんですが、「事業者側から、運転期間延長認可の審査に関し、」云々かんぬんで、「一定の期間を運転期間から除外してはどうかとの提案がなされたことに端を発するものである。」という性質の、そうやって始まったんだというふうに規制委員会自身が言っております。

 意見交換自身は、私、いいと思うんです。議論することはどんどんやったらいいし、いいと思うんですが、ただ、それを通じて規制委員会という組織が何で新たな見解を出したのか、何でこういう見解を出したのかということが問題かなと思っております。

 というのは、この見解、いろいろ書いてあるんですが、ポイントはこの二つかと思います。一つは、黄色く塗っている左側の三のところで、「運転期間を四十年とする定めは、このような原子力規制委員会の立場から見ると、かかる評価を行うタイミング(運転開始から一定期間経過した時点)を特定するという意味を持つものである。」、期間じゃなくてタイミングだという解釈変更というかあれなんですね。

 もう一つは、右側の六のところで、「このように、現行制度における運転開始から四十年という期間そのものは、上記3.の評価を行う時期として唯一の選択肢というものではなく、」「立法政策として定められたものである。」ということでありまして、要するに、条文上は、四十年、期間というふうに明示されているんですが、いやいや、それはもう、期間じゃなくて、評価を行うタイミングだと。

 これは何のことかよく分からないと思うので、電気新聞を紹介したいと思うんですが、電気新聞の二〇二〇年七月三十一日付。実はこれは、七月二十九日にこの見解が出ておりまして、電気新聞は七月三十一日付なんですが、その前の日、自民党の原子力規制に関する特別委員会というのが三十日に行われております。この特別委員会の井上委員長が発言したのを三十一日に電気新聞が紹介していまして、こう言っているんですね。「井上委員長は「四十年」の運転期間は「寿命」ではなく、運転期間延長認可のための「身体検査」を行うタイミングとの認識を強調。規制委の文書でも同様の見解が明確化されたことを高く評価した。」こうあるんですね。



 つまり、高く評価されている。それはもう、条文上は、先ほど言った原子炉等規制法の条文では、四十三条の三の三十二では、運転することができる期間は四十年とするとなっているわけですけれども、これはタイミングだ、寿命ではなくて身体検査のタイミングだと。

 これは、条文から見れば、縦にしても横にしても斜めにしてもタイミングとは私、読めないと思うんですが。政府とか与党とかが言うならいいんです、ああ、政府は駄目なんだけれども、条文ですから。いろいろな立場の人がいろいろなことを言うのはいいんですが、規制委員会がこれをタイミングという見解を出したというのは、私、これは重大じゃないかと思うんですが、皆さんはどのように、鈴木参考人からお聞かせいただければ。

○鈴木参考人
 私も質問されたんですね、たしかこの国会、この委員会で。

 それで、科学技術的に考えれば、規制委員会のおっしゃっていることは多分正しい。40年というのは、技術的に限界が来るわけじゃないので、審査する必要が必ずあるわけですけれども、それを法律で40年と決めたということだと思うんですね。問題は、それがどうしても推進派と反対派の道具に使われてしまうというところだと思うんですね。そのときも私、発言したんですが、原子力規制委員会は、与えられた仕事をきちんとするという意味でやっておられるというふうに解釈しております。

 この問題を議論するときに、国会で多分議論する上で重要な点は、やはり、脱原発であろうが推進であろうが、規制委員会の独立性ということをどうやって担保するかということの視点で議論していただければと思います。

 私自身、個人からいいますと、何回も申しますが、科学技術的に40年というのは余り意味がないので、常に、実は、元々の安全規制は毎年チェックするということになっているんですね。これが、毎年新品みたいにしなきゃいけないということで、過剰規制だということで、それが緩和された経緯がありますので、海外から見ても、毎年新品じゃなきゃいけないということはないので、やはり状態を見ながらチェックするということなので、そういう意味では、規制委員会のおっしゃっていることは技術的には正しいかなと思います。



○橘川参考人 私は文科系なので、鈴木先生が言うことは否定できないんですけれども、この国会を通って、原子炉等規制法を変えて四十年規制になったわけですね。これは、私は当然だったと思います。何といっても福島第一の一号機が爆発したのがあの事故の最大の問題だったわけですが、七一年三月に運転開始したものが四十歳の誕生月に爆発したわけです、まさに四十年たったとき。そういう状況を考えれば、こういう規制が入ったのは当然だと思います。

 それに対して、今、割と、推進派の立場の人から、運転していない期間は外した方がいいんじゃないかとか、六十年じゃなくて、もっと、八十年に延ばした方がいいんじゃないか、こういう意見が出ているということは承知しています。それはもしかすると科学的に正しいのかもしれない。だけれども、そういう意見が出ること自体が、原子力がもう駄目だということを僕は示していると思います。そんなこそくなことを言わないで、きっちり新しい炉を建てるんだということを言わないで、そんな何か古い炉をどんどん延ばしていくというやり方を言うこと自体が、もう原子力の終えんを示しているんじゃないかと私は思います。



○石橋参考人 石橋でございます。

 今の御質問は、また事故調のダイジェスト版ですけれども、三ページ目に提言五というところがございます、「新しい規制組織の要件」の「2)透明性」というところに尽きるのではないかというふうに思います。様々な議論はきっとあるのでしょう、そこにはいろいろな判断があるのでしょうということなんですけれども、そこに疑念を差し挟まれるというのは、まさに透明性の欠如、プロセスの公開性の欠如にほかならないというふうに思います。

 この提言五の2)には、様々な意思決定プロセスから、電気事業者等の利害関係者の関与を排除する、全ての意思決定プロセス、参加者等々を先生方に対して報告をするということが書いてあります。それを実効性を持たせるためにも、提言四のところに、電気事業者に対して立入検査を含む監査権限を国会が主導してつくってくださいというふうに書いてあります。是非、この提言の実行をお願いしたいと思います。

 以上です。

○黒川参考人 特にありませんけれども、実は、あれをやって、私は素人だったんですが、あれをやっているうちに、終わってからIAEAに呼ばれてしゃべりました。

 それから、スウェーデンのヴァッテンフォールというのはドイツの原発だかを造っているところですが、みんな、IAEAはだんだん、事故があるたびにルールを変えてくるわけですよね、やはり安全が一番大事ですから、ところが、日本はそれをちゃんと守っていないということを知っていましたよ。それで、もちろん、あそこは、二番目にお金を出しているのがあの頃は日本ですから、経産省の人が来ているわけですけれども、どうしてやらないのというと、いや、日本じゃ事故が起こらないことになっているからというので、何だか理解できないなという話をしていました。

 だから、外でそういうことが分かっているときに、ああいうことが起こったときの信用が、やはりすごくまずいなと思いました。

 だから、ああいう意味では、さっきから言っているように、今のようなネットの時代だとやはり透明性と公開性というのは物すごく大事で、これが違ったときの信用のがた落ちというのは物すごい大事なことだなと思います。

 特に、原発というエネルギーは世界共通の資産ですから、オペレーターもレギュレーターも同じようにやって当たり前なので、私もアメリカのときは、そのときしゃべりましたけれども、これからはオペレーターもやはりローテーション、一、二年いろいろな国に行ってやると、いざとなったときにすぐに自分たちで、お互いに、英語が共通になりますけれども、できるので、是非一、二年交換してどんどんどんどん回ったらどうだと言ったら、ヨーロッパの人たちもアメリカの人も、それはグッドアイデアだなんと言ってくれます。

 そういうことをやはり自発的に電力会社がやってほしいなというのが私の提言しておるところであります。

 ありがとうございます。

○藤野委員 終わりますが、黒川参考人の配付資料で、規制のとりこの問題も残ったままだという指摘がありまして、私、こうならないように力を尽くしたいということを述べて、質問を終わります。

日本維新会・足立康史