福島県土木部建築住宅課 加藤敏史主幹、新関永次長にお聞きしました」
2019年9月9日午後4時50分から01 02 03 
2019年 作成 佐藤敏宏
■ 木造 応急仮設住宅の再利用について
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小西:再利用には2種類あると思っていて、一つは同じ場所で応急仮設住宅を復興公営住宅に変える。同じ場所で宿泊施設に変えるというパターン。もう一つは総社市の事例のように同じ応急仮設住宅ではあるけど、違う場所に再利用するという二つのパターンがあるように思ったんです。
 例えば他の町で災害が起こって「プレハブより温熱の居住性がよい、木造でやりたい」となった時に被災地の方で新しく木造の応急仮設住宅を造れるように発展していくべきなのか。それとも被災地外、違う場所から再利用できるような態勢を伸ばしていくべきなのか、どっちの方が可能性が高いでしょうか。

加藤:木造のものをどこかでもう一度再利用しようとする時に時間がネックになります。福島の仮設住宅って再利用するまでに、仮設として5、6年とか、今だと8年以上にわたり使っています。実際に解体していって観ると、結構材料が傷んで来ていました
 先ほどお話した岡山県総社市に持って行ったものもそうだったんです。中には腐ってる材料も結構出て来るもんですから「どこかに在る木造仮設を、災害が起きたときに再利用しようというのは、なかなか現実的ではない、のかなー」というふうに思いますね。「どこかで使っている」と言う以上は「そこでまだ使う必要があるんだ」と思うんです。
 なので、「災害が起きたから、じゃーそこにこっちのを持って行こうか」とはなりません。なかなか資材をストックして置くとか、予め準備しておくとか、一回使ったものバラシてストックして置くというのが、なかなか出来ないので「災害が起きれば新しいものを造る」となって、木造の場合は「そう成らざるを得ないのかなー」と思います。

小西:東北の地域、木材の供給地域であって、木造仮設にとっては恵まれた条件があったわけじゃないですか。そのことは他の地域ではなかなか難しい。木造の応急仮設住宅は東北エリアの特殊解であったということですか。


加藤:福島県は、県内で出来た木材というものを使い易い地域だとは思うんですけども、結構、この木材料って、いざ災害が起きて仮設住宅を造らなければならないと成って遠くからでも運んで来ていました。色んな資材、製材所さんとかも、全国が「みんな一致団結してそこに供給しよう、そういふうな態勢を民間事業者さんが、とっていただいたのかなー」と思います。福島とか東北に限らず、全国でもやれるんじゃないかなーと思います。

■ 「木造仮設 好し」 どこから来ている

佐藤:
柳沢先生にお聞きしますが木造仮設は好!その偏見というか、刷り込みみたいな含みを持った感じの意見ですが。「木造だと再利用もできるし、だから、プレハブ仮設住宅はだめ」みたいな、そのような情報は大学内では多くの人に共有されているんですか

柳沢:そういうイメージを持っていたのはあるんです

佐藤:今日、福島県の仮説住宅の建設や維持の現実を教えていただき、少し事前のイメージは変わりましたでしょうか。プレハブ仮設は早く住める。僕も縁あってプレハブ仮設住宅に泊めてもらい1週間ほど住んでました。体感した環境だけど、音が伝わるし、床がほにゃほんやと揺れるんですよ、隣の人が歩くと。微かに揺れるんです。真夜中一人の時は、特に隣人の行為を感じますね。だから一人で避難の方は「長くは住みたくはないだろうな」と思いました。だけど、体育館の床で寝起きし暮らすよりは、断然に好いですよ。


 (絵、ネットより 雑魚寝状態)

加藤:そうですねー

佐藤:そのあたりの問題。早さで入居か、性能確保して遅くても入居なのか。仮設住宅解体後の再利用問題では資材が腐る、運搬費、解体の手間など課題があると。プレハブ建築協会の方に性能改善要求を出せば対応してくれそうに思いますが。改善点を提案すことは可能なんでしょうか。

加藤:福島県でもですね、仮設住宅を造ってる途中で、福島大学の先生に座長になっていただき、「応急仮設住宅の環境改善に関する研究会(註3−1)というのを作って。2、3年間の研究会を経て最後に、県の方に「応急仮設住宅のこういう点を改善していったらいいんじゃないか」という提言をまとめて出してます。改善提案は有ります。

 去年、7月の西日本豪雨災害時に仮設住宅建設の応援で広島県に行きました。その時にプレハブ建築協会のプレハブ仮設の仕様を改めて見せてもらったら、東日本大震災のものよりも、よくなってました
 一番、なにが変わったかというと、プレハブ仮設の内装を仕上げるようになっていたんです。標準仕様で中にクロスか化粧したボードを張るようになっていて、本当に中の写真だけ観ると「普通の木造住宅かアパートの部屋の中」と思えるような内容で造ってました。「プレハブ建築協会の方も、どんどん改善を加えて来てくれている感じだ」とは思いましたね。

柳沢:私は万能の解決策はなくってプレハブはプレハブの好いところはあり、木造の好いところもあり、ということだと思うんです。「木造仮設住宅」今日お伺いして中身がだいぶ分って来たところです。
 「いいな」と思ったのは地元の工務店に対応が出来ると。プレハブ建築協会は全国規模の大手のメーカーが行うことですけども 、震災後の仕事が無いときに地元の事業者さんができる。それは一種の公共事業という側面もあるわけでしょう。地元ができることは。そういう意味では木造に限る必要はないんですけれども。「その土地で引き受けられるような「仮設住宅の造り方はもっと模索できるといいのかなー」とは思っていたんですが。

加藤:地元の建設事業者さん方は、地域の気象条件などは当然分っていて、いいところがあります。そういうところもきっちり評価したかたちで「仮設と言えども、造っていただけるのかなー」と。そういう意味はありますね。
 地元の事業者さんに木造仮設住宅を造っていただけるというのは「いい面もあるかなー」と思います。地元の業者さんだと、そこにお住まいになる方も「何となく、安心できる」。どうしても仮設は急いで造るので、何かしら不具合とかも、お住まいになられてから出て来るので。その時に県の方でも「不具合でたから見に来て」と。そこを造った業者さんは地元にいるので、すぐ行ってくれます。地元の業者さんなので、きっちりやってくれます。










































 (註3−1) 研究開発成果実装支援プログラム 実装活動の名称「応急仮設住宅の生活環境改善のため の統合的実装活動プログラム」 PDFが公開されている 








■ 提案に対して それぞれの評価は難しい

新津:
木造の応急仮設住宅の中にもタイプがたくさんありますけども、この再利用と資料の下に書いてある何%という数字が、ありますが。

加藤:再利用率ではなくって、建設された数の割合です。



新津:在来の軸組が出来る業者さんが一番多かったということですか

加藤
:そうですね。例えばログハウスは一社しか造れません。ログハウス協会というところが造っていたものですから。木造在来軸組は地元の、選ばれた事業者さん何社かが、木造在来軸組みで提案いただいているので、数としては多いんです。在来軸組といっても事業者さんによってみんな違いますので、それぞれちょっと違う仕様ではありますね。

新津:これらは、全部工期とか費用とかは、だいたい同じぐらいなものなんですか

加藤:お金・事業費の面では差は出ます。

新津:そうすると「今後、こういう技術は広く持っててもらいたいなー」というものが出てきたりするかも知れないですか。例えば、「木造の板倉工法が一番早く出来る」という事が分かって来ると。他の事業者さんも似たような技術を持っててもらうと、次の災害には対応し易いとか。

加藤:仮設住宅を「どういタイプのもの」「どういうものを造るのか」といのはそれぞれ事業者さんの方で「自分たちはこれがお薦めだ」と「こういったものが得意だ」ということで、提案してくるので。我々の方でどれか一つのタイプに絞り込んで行くという事はしないです。例えば「質もよくって、比較的安くって、事業費も安くって、早く造っていただける」という事業者さんであれば、万が一の災害の時にはそこの事業者さんにお願い出来るような。
 今はプレハブ建築協会と協定を結んでますけれども。「そういった事業者さんがいれば、予め協定を結んでおくと、万が一の時にはいいのかなー」と考えたりもします。

■ どのタイプ? 

柳沢:
直感的でもいいんですけど、このタイプの中で加藤さんご自身はどのタイプが一番いいと思われますか。

加藤:いいか悪いかですか〜。

柳沢:個人的に、総合的に見てですね。「今後、事業者が出来るか、どうか?という問題はあるか」と思います。「どうような災害が起きたときに、このタイプが増えるのはいいなー」というのは、お答えしにくいですか。

加藤:そうですね。どうしても、発注する立場になると「質もいいには越したことはないんです」が、費用の問題もあるので。一概に「この建物」とは言いずらいですね。ただ、仮設を造っている時に中を観たり、外から観たりしてまして、「住んでみたいなー」って思うのは、個人的にですからね。

  会場 ほほえむ

加藤:好みですが、ログハウスがいいかな〜・・分かりませんね。

柳沢:そうかなと私も思っていて、おうかがいしました。

加藤:ログハウスは作りもしっかりしていてるし、中は、ほとんどが木ですので。
柳沢:価格的にはお高くなってしまうのでしょうか
加藤:そうですね〜、しょうがないですね。

柳沢:使っている木材の量も違うでしょうから。ログハウスは解体もし易いですし。仕上げも要らないし、凄く向いているような工法だとは思うんです。

森崎:コストが高くなる要因は木材量が多くいるからでしょうか

加藤:結局「そういうことかなー」と思いますね。在来軸組とかだと内外装、共に一般的に安く出来る工法とか仕様があるんだと思うんですね。「そういった意味で在来の軸組だと安く出来る」と思うので。どうしても「ログハウスは特殊」というか、木材の量が全然違うんですね。

森崎:それだったら競争というか、これはもうちょっと洗練というか、されていって安くなる可能性もありますかね

加藤:安くできるのか?そうですね〜。「たくさん需要が有れば、安くなっていくか」とは思うんですけど。

佐藤:いろいろ興味が尽きないのですが、予定の時間になりましたので 〆とさせていただきます。お忙しいなか加藤主幹、新関次長 ありがとうございました。

 会場 ありがとうございました 
 




























『福島と原発』早稲田大学出版部2013年刊行2800円+税。

福島県内における仮設住宅以外の原発後の様々な様子が簡潔に記述してある。直接紙面を手に取ることをすすめますが、福島県紙が伝えた311直後の福島がわかるかと思います。



 2019年9月9日の福島県庁における京都大学柳沢究研究室との交流の記録でした。仕舞まで読んでいただきありがとうございます。 記録作成、および文責は佐藤敏宏です。お気づきの点がございましたらお知らせいただければ幸いです。よろしくお願いいたします(2019年)  homeへ戻る