「福島県土木部建築住宅課 加藤敏史主幹、新関永土木部次長にお聞きしました」
2019年9月9日 午後4時25分〜01 02 03 
2019年 作成 佐藤敏宏
災害が発生すれば 即!造らなければいけない
 02 
chen:中国から来ました chen Tingです。(英語で質問)
加藤:すみません。通訳をお願いします
柳沢:中国の南京の東南大学の大学院から交換留学で来ている陳さんです。中国でも同じような災害があるので、凄く参考になります。質問としては、こういう応急仮設住宅を設計するときに、一番大事なポイントはなんでしょうか。

 会場 おー 大事なポイント ざわつく

加藤:応急仮設住宅は「災害が発生すれば、即!造らなければいけない」んです。「災害が起きたその瞬間から設計をする」という訳ではなくって、予め標準的な、事業者さんごとに仮設住宅の標準的なプランを持っています。「それで、造ってください」と。発注すると造るという形なんですね。
 ただ標準的なプランを用意するに当たっては、「中身をいろいろと、ここはこうしたほうがいい」とか「ああした方がいい」とか、プランニングする時には「考えてはいる」と思います。

柳沢:基準というものはあるんですか。例えば面積はどのぐらいでとか、設備はどうなければいけないとか。

加藤:面積は平面プランが1K、2DK、3Kです。3パターンが標準的なんです。それぞれの面積はほぼ決まっています。1Kであれば6坪、2DKだと9坪、3Kだと12坪と面積は決まっています
 プレハブ建築協会さんも標準的に決まっているんです。それに合わせて、地元の公募の事業者さんも、2DKとか3Kとかのプランで考えて来ています。面積は決まっています。
 応急仮設住宅で生活するときに必要な設備ですね。当然ですが台所があり、お風呂があり、トイレがあります。基本的な設備は標準的に決めてあるんですけれども。台所にこういう流しを入れるとか。そういうのは事業者さんの中で、当然緊急に準備出来る。即!準備出来るものなので、それぞれの事業者さんが決めています。

柳沢:質問に戻りますと、一番大事なポイント、事前に準備しておくのが一つは大事だということですね。
加藤:はい。
柳沢:(英語に翻訳し伝えている)

加藤:
もともと全体が狭いので「いかにコンパクト計画するか」です。台所とか、トイレであるとか風呂であるとか、設備廻りをいかにコンパクトに計画し、しかも使い易くって納めていくかですね。
 極端な例ですが、中のスペースが小さいんで、洗濯器置き場を屋外に考える業者さんがいます。それは予めプランを考える時には「中に入れられないか」と。そういう事は考えたりしますねー。

柳沢:コスト的な制約はかなり厳しいんですか

加藤:コストは一戸あたり基準が、今(2019年)だと560万円と決まっているんですね。これは2DKの標準コストです。特別な事情がある場合の特別な仕様についてですが、例えば去年の北海道の胆振東部地震です。北海道は断熱性能の高い仮設住宅を造られたんです。その応急仮設住宅は特別な事情「断熱性能を高くしなければいけない」っていうことで一戸あたりの単価、建設費が増額されています。新聞で読んだのですが、1千万円との記憶があります。普通の倍ぐらいだそうです。そういった予算的な制約はあります。



メモ欄
■ なぜ応急仮設住宅の期限が2年間なのか

張:台湾からの留学生で張と申します。修士1年生です。伺いたい内容は、応急仮設住宅の年限は2年ですね。「なぜ2年ですか」台湾は20年前、921大震災ですが、その時の仮設住宅は4年間でした。それと比べて、東日本大震災のときは「さらに大変だ」と想っているのですけれど「なぜ使用年間が2年間と短いか?」お願いします。

加藤:「2年」と決めている根拠が日本の建築基準法の中で「応急仮設住宅は、2年まで認めます」とされています。そういう法律がベースになっています。
 災害が起きたときに、災害救助法という法律もありますが、その中でも「応急仮設住宅は2年」とされています。建築基準法の中で、通常建物を造りますと「基礎はコンクリートで造らなければならない」とされています。「構造はこうしなければいけない」とか、いろんな規定があります。それらを満足しないと建物を造れません。
 応急仮設住宅はそのような建築基準法の規制が免除されています。ですから、例えば「基礎はコンクリートじゃなくって、木の杭を打って、そこの上に土台を回して建物を造る」という具合に、長い耐用年数を想定した法の規制を受けない建物なのです。そういう構造で耐えられる目安ということで「建築基準法は2年まで認める、ということにしてるのかなー」と思うんです。
 福島では実際は「2年以上お住まいいただかなければいけない」そんな状況があります。東日本大震災と原発災害による被災者の方々は、9年近くになろうとしています。仮設住宅の基本は2年と決められていますが、毎年更新、更新で建築基準法上の許可を得ながら使っています。そのようなことで、実質・実際は2年間よりもっと長く認められているような状態です。

■ 配布いただいた資料について

佐藤:ここからは先ほど配布いただきました資料の説明をお願いいたします

加藤:2種類配布しました。それら資料は「ゆっくり読んでいただければなー」と思い準備しました。
 白黒の資料、『福島県応急仮設住宅の再利用に関する手引き』に平成28年4月と書いてあります。応急仮設住宅は段々と使い終わって来ています。
 そこで解体する方向に行くときに「木造のもの、地元公募で造ったものは再利用に配慮したもの」ということで造って来たので「これらをそのままゴミにして捨ててしまうのはもったいない!」、「再利用を図りたい」ということです。
 我々県側も「再利用はこんなふうに出来ますよ」と、手引きということで編集した簡易な冊子です。内容はご覧いただければと思います。いろいろモデルプランを示しております。「仮設住宅の材料を再利用して、こんなふうに住宅造れます」とか、モデルプランを考えて皆さんにお示ししております。
 「是非とも再利用を興味を持ってやっていただけないかなー」という思いで冊子を作りました。どんな提案かは後でご覧いただければと思います。

 もう一つの資料、カラー印刷の記事(絵1)ですが、これは半年ぐらい前ですが、建築土木関係の積算の為の資料を出している出版社があって、その社で刊行している『土木施工』という雑誌がありまして「そこの中に、特集記事を載せたい」というで、福島県に原稿依頼がありました。
 「応急仮設の対応している方に、再利用に関する福島県の事例は、こんな事をやっていますよー、ということを紹介しよう」と思って原稿を書いたものです。


 
 この記事の中に福島県で再利用に取り組んだ事例を載せてあります。住宅に再利用しているというのもが結構多いんです。応急仮設住宅の木材を再利用して復興公営住宅を造った事例もあります。3頁に「写真6」がありますが、再利用後の完成した城北団地の全景写真です。応急仮設住宅を建てた敷地でしたが、そこに在った仮設住宅を解体して、復興公営住宅に木材を再利用して造りました。
 また、宿泊施設になっているようなものとか。色んな事例が載っていますので、こちらの方もご覧いただければと思います。
    


(絵1)

■ 事前に木造仮設住宅を準備していたか

柳沢:
木造による応急仮設住宅は阪神淡路大震災の時には無かったと記憶しておりますが、1995年から20数年経って速やかに造ることが出来た。というのは、阪神淡路の時のプレハブはあまりにも居住性が悪くい、そういう問題があって、木造仮設住宅は事前に準備されていたから、実現出来た事なんでしょうか。

加藤:私の知る範囲ですと、阪神淡路大震災の頃のプレハブの仮設住宅は「今のプレハブよりもずーっと質の悪い」と言いますか。「本当に工事現場で造る現場小屋の中に、台所とか、お風呂とかを入れたくらいのものだった」と聞いてます。
 阪神淡路大震災の後に新潟の方で地震があったりして。仮設住宅を造ったと思うんですが、阪神淡路大震災などを経験するごとに、プレハブ建築協会の方も、プレハブ仮設住宅の仕様は「グレードアップ」といいますか「改善した」といいますか、そういう事になって来てまして、東日本大震災の時には「更に何段階か改善されてたものが造られた」と思うんですね。

柳沢:おそらく木造仮設住宅で造られたのは東日本大震災の時からです。

新関:福島県も準備していたわけではなく、他の都道府県と一緒で災害時の協定を結ぶ先が「プレハブ建築協会」しかなかったんです。木造仮設は準備していなかったんです。プレハブ建築協会に発注したんですが、当初「14,000戸必要だ」という事に対して「プレハブ建築協会では1万戸しか提供できません」と。
 福島だけじゃない、岩手、宮城もそれぞれ1万戸。「3県全部で、3万戸しか提供できませんよ」ということになってしまって。「どうしようか」という話になって「地元の工務店さんであれば、木造でいけるのではないか」という発想がありまして。また建設業協会からも、そういた事で「出来る」という返事をいただいきまいた。そこから「公募」ということになった、というような経緯ですね。

柳沢:3・11や原子力災害が起きる前に「木造仮設住宅を造ろう」と思っていたわけではなくて、「応急仮設住宅が足りなくって、何とかしないといけない」から苦肉の、と言うとあれですけれども。そこで「木造でいこうか」というか考案したと。

新関:やってみたら、応募する方も一杯いまして、結局は総数で16,800戸ですけど、その内の6,800戸が木造です










■ 木造、仮設住宅に関する先入観

柳沢:今日お伺いする前に色んな話を伺っていますと「木造仮設住宅は居住性もプレハブに比べて「ずーっといい」し、大手のハウスメーカーじゃなくって地元の工務店さんでもコンパクトに対応できるし、で再利用もできるし、恒久住宅にもし易いし、だから好い事ずくめ!のように思われるんですけども。
 今後の災害に遭っても同様の災害が仮に起きたとした、そのときには「木造仮設住宅をどんどん造れるように準備して置く方がよい」と思われるますか。

新関:プレハブ建築協会だと資材をストックして置くことが出来るんですね。木造についてはそういう場所も無いし、ストックして置くと「木材が変形してしまう」という欠点があります。ですから「木材のストックは、今でも難しいな」ということ。それから、やはりプレハブだと工期の短縮1か月程度で出来ますので。その辺では勝てないんです。
 ただ、今は「居住性がいい」ということで、段々分ってもらったんで、福島での東日本大震災、その後の熊本県ですとか、西日本豪雨ですね。速さとか欠点はありますけれども、地元の工務店との合意が出来れば木造仮設住宅は出来ない事はない。ですが「これからは木造が主流ですね」とまでは言えないですけど。

佐藤:木造応急仮設住宅の工期はどの程度かかりますか
新関:1ヶ月では無理ですねーやはり。
加藤:1ヶ月半は速くても掛ります
柳沢:それは発注してから完成まででですね
加藤:はい。
柳沢:プレハブだとどれぐらいですか
新関:1ヶ月です

佐藤:半月のタイムラグがあると。半月長く体育館の床などで寝るなどして暮らすしかない。そうなると、体育館暮らしが長いほど避難所暮らしをしている方から様々な苦情ががでやすなりますし。応じてマスコミは叩くでしょうし。

新関:あとは、少子高齢化社会における空き家・問題というのがあります。民間のアパートも提供できる。応急仮設住宅とみなして、提供できる状況ですから。段々数的には「空き家を利活用しよう」というもの増えていくはずです。

柳沢:
みなし仮設住宅ですね
新関:福島県の方でも結果的には「見なし仮設」の方が多いですから。造った仮設住宅の最大数が16、800戸、それに対して借り上げ仮設が25,000戸ぐらいです

柳沢:地域の資源の有効利用という点でも、そっちの方がいいわけですね。
新関:そうですね。

■ 台湾における仮設住宅

佐藤:少し話は変わりますが、台湾では空き家問題はあるんですか

張:台湾も最近空き家が一杯あります。けれどこの場合は空き家が自由に使える。一応、法律があるけど、皆が優しいので自由に使える。
 最近は色々電気代とかが発生して、家の持ち主が「やめてください」と。そういう声が段々増えている。
佐藤:空き家の所有者は優しく被災者を受け入れるけど、暮らしを維持するための経費を誰が負担するのか、そこに問題が起き始めていると

張:いろいろ費用が掛かるので
新津:それは災害の時ですか
張:災害時の空き家の使われ方、どうやって使うは変わらないので、ちょっとわからない。

佐藤:では、それも今後研究して教えてください、では次の質問などお願いします

 50:25
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