東日本大震災における 福島県の応急仮設住宅について 福島県土木部建築住宅課 加藤敏史主幹、新関永土木部次長にお聞きしました 絵:台風15号と共に福島入り、午後4時前福島県庁正面玄関 集合 柳沢究研究室と2019年9月9日 建築あそび編 01 02 03 |
2019年 作成 佐藤敏宏 メモ欄 予定表 京大柳沢究准教授・学生との 交流・意見交換 (木造応急仮説住宅を主に) 柳沢究(きわむ)准教授 京都大学工学研究科/建築学専攻居住空間学講座 男子学生3名 女子学生4名 2019年9月8日 京都〜郡山〜大内宿 左下り観音堂 喜多方泊 9月 9日 さざえ堂 七日町 福島市泊 9月10日 浪江〜大熊町〜郡山〜京都 ■日時2019年9月9日pm4時からの、交流意見交換 タイムスケジュール案 午後4時 県庁集合 4:10〜京大生の質問 と応答 4:25〜県レクチャー 4:55〜両者による討論 5:10 終了 7:00〜我が家で呑み・討論会 雑魚寝 |
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森崎:修士2年の森崎と申します。木造に興味があります。福島県は元々木造に力を入れていたことがあって、その技術を仮設住宅にも利用、活用したということでしょうか。 加藤:仮設住宅について、東日本大震災のときに、最初から木造ということを考えていたわけでありませんでした。「応急仮設住宅というのは災害が発生したときに造る」全国どこの都道府県もプレハブ建築協会と予め協定を結んでおりまして。災害が発生した時に「仮設住宅が必要だ」となると、県の方からプレハブ建築協会に建設要請を出すんですね。その時々の被害規模に応じて、避難される方の人数とか、世帯数に応じて「何戸分の応急仮設住宅を県内に造ってください」とお願いするんです。 東日本大震災は福島県だけじゃなく宮城県、岩手県の方でも凄く被害がありました。3県だけでも、プレハブ建築協会が供給できる応急仮設住宅の戸数を超えてしまったんですね。「3県合計で協会が供給できる戸数は3万戸ぐらいだ」と。福島県への割り当てが1万戸となりました。その時点で福島県で必要な仮設住宅が1万戸よりもっと多い「最大で2万何千戸必要か」と。この戸数は「プレハブ建築建築協会の仮設住宅の建設では足りない」ということで。県内の建設業者さん、住宅を造れる事業者さんを「公募した」んですね。 一次・二次と公募を掛けたんです。一次の応募の時も「木造仮設住宅の案が多くありましたが、特に二次の方は木造、しかも「再利用ができる」という、木造の仮設住宅を造ってくれる事業者さん「そういったところを考慮に入れ事業者さんを選んだ」ということがあります。 森崎:一次公募の時は木造仮設の再利用はまだでしたか 加藤:募集する時の要領の中には「特別再利用」というところまではうたっていませんでした。お配りした資料の一枚目を見てください。3頁の「応急仮設住宅における再利用の対象」戸数というところに戸数が載っているんです。一番左の合計戸数で16,800戸を福島県では造ったんです。その右下の「買取」13,408戸のところ、さらに下に「地元公募」と記述しています。それが今話した公募して造ったもので6、819戸とあります。一次公募4,877戸、二次公募1、942戸と載ってますね。だいたい6、800戸の中でですね6、300戸ぐらいが木造でした。 柳沢:木造を募集した訳じゃないけど、結果として応募があったのが木造ですか 加藤:一次公募では、木造の指定はなく、二次公募で木造の指定をしました。仮設住宅で、プレハブのものはプレハブ建設協会で造っているんで、プレハブとかは地元の一般の事業者さんがやれるものではないこともあって。木造が多くなっています。一次公募の中でも木造以外のものもありました。プレハブのものも実はありまして、中国製だったり、国産ではないプレハブがありました。 |
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佐古田:学部四年の佐古田と申します。福島県の仮設住宅に関して調べているときに、令和になった後も「一年単位で利用の可能に、延ばしていく」と。その制度に中にあったと思います。また「今年も1年間延ばす」ということが出ていて、延ばしている事実は資料の中にも出てきます。実際どういう問題で9年近く経つ今でも「引き延ばして」ということが起っているのか。そこが関心の一つです。 加藤:福島県の場合、応急仮設住宅に避難されている方の多くが原発災害で避難されている方です。原発災害で避難されている方は福島第一原発の周辺の市町村から避難されている方です。福島第一原発の周辺は放射線量が高く「原発の傍の地域はすぐに帰れるような状況ではない」とうのが実情です。 そのような地域では除染ということで国の方が中心(直轄除染地域・註1)になって実施しています。除染作業など続けるなかで放射線量も下がって住める状態(註2)、住める環境が整って、戻れるようになった地域から避難されている方々については、応急仮設住宅にお住まいいただける期間が終了となります。 佐古田:元の家が在る人がいまだに「仮設住宅で一次的に過ごしている」というのが現状ですか 加藤:そうです。先日、2019年8月の初めに大熊町と、双葉町の二つの町を除いて今年度いっぱい「来年(2020年)の3月に仮設住宅の供与期間は終了します」となっています。 大熊町と双葉町はまさしく福島第一原発の立地している所なものですから、そこは更にもう一年延びています。そちらもですね、いつの段階で供与期間が終了するかは「2020年の夏ごろに判断する」ということになっています。 |
放射性物質汚染対処特別措法の施行チームによる説明録(平成24年11月13日) 註1:直轄除染地域: 20〜50mSv/年 国が直接除染を実施した。非直轄地域:20mSV/年以下の除染作業はそれぞれの市町村が実施した 註2:除染目標、被曝線量0.23μsv/h 年間被ばく線量1mSv以下 職業被曝限度 年間50mSv 5年間積算線量100mSV以下 (除染等業務従事者特別テキストより) |
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小西:学部4年生の小西と申します。木造応急仮設住宅が、住まい手の方から見たときに、普通のプレファブの住宅とどういう点が異なって、どういうメリットがあるのか。その点をお願いいたします。実際に住まわれている方の声だったり、どういう点が優れているのか。 加藤:「木造のもの方が優れているのか?」っていう処を話をするときに、たぶんプレハブのものに「どういった処がクレームが出たか」「お住まいになる方が不自由をしていたか」という話をすると、一番はプレフハブの建物は暑い寒い。 プレハブは鉄骨の細い柱の間に鉄板の中に断熱材、厚さ2〜3センチだと思うんですけど、薄い鉄板で挟んで。幅30センチぐらい長さ1.8mぐらいのパネル状のものを「柱の間に落とし込む」という作り方なもんですから、壁が薄く、鉄板なので、外で暖められる冷やされると、そのまま中まで伝わってしまいます。 しかも、柱の間にパネル材をはめ込んでいるだけなので、隙間があくんですね。これは床も同じで、木で作ったパネル状のものを填め込んでいくので、隙間があくんです。床下からも冷たい空気があがって来る。暑い寒いとか断熱環境があまり好くないのです。 それに比べて木造のものですと、木造のパネル状のものを同じように、柱と柱の間に填め込んでいる構造のものもありますけれども、プレファブに比べると隙間とかも少ないですし、木なので断熱性はプレハブのパネルよりは高いというのがあります。 木の板だけでも、断熱があるのと、木造で造ったものは内装を仕上げるんですね。中にボードを貼って、クロスを貼ってと、普通の住宅に近いかたちで造るもんですから、そういう処で、造りが一般の住宅に近い。 そういった意味で、木造のものは住む人にとっては、仮設ですけれども、普通の住宅とそんなに遜色ない。そういった処にお住まいいただける、「そういう感覚だったんじゃないかなー」と思っています。 柳沢:かなり好評だった、言い方がよいのかは分かりませんが。 加藤:ものにもよるんですが、全体的に好評だったと思います。 |
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新津:修士2年の新津と言います。これだけの災害で「初めてプレファブ仮設住宅が不足した」そういう問題が起って、そこで初めて「地域社会に公募しよう」という話が出て来たのだと想います。震災発生から1か月後の「短い期間で公募された」と思います。「こうした時の地域・周囲の方の反応」は、「すんなり応募されて来た」のか、分からない事だらけだったのかということです、その状況をできたらお聞かせください。 加藤:地元の建設業者さんたちも、こういう災害に遭った後だったので、「ご自分たちも被災されている」という状況下でした。そこで仕事をするという状況でない方もたくさんいらっしゃったと想うんです。自分自身も避難しなければいけない。そういう中ではあったんですが、やはり地元の建設業者さん方は「何とか復旧復興に自分たちも役立ちたい」という、その思いが凄く強く、公募したときも、かなりの数の事業者さんに応募いただきました。福島の事業者さんたちは思いが強かったのですね。好評というか「やります!やります!」と。応募が有ったんです。そう感じていました。 |
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伊藤:修士1年の伊藤と申します。福島県さんは「応急仮設住宅の再利用」というのが新しいと思うんです。例えば、また別の地域で大きな災害が起こったとして、僕自身も三重県出身なので「東海大地震くる」と聞いているんです。他の地域と、他の災害と「どういうふうに今回の災害の体験を活かされていくのか」です。 加藤:プレハブ建築協会は、災害時のために仮設住宅の資材を準備してストックして有ります。 例えば福島で使い終わった資材は、自分たちの倉庫とかに、ちゃんとストックして置いて有るんです。プレファブ建築協会の応急仮設住宅の資材に関しては「又どこかで災害が起きれば、そちらで使う」という形になるんです。けども、東日本大震災の時には数が多すぎまして、資材を新たに工場で作っています。 前もってストックして有った資材で造ったものはリースなんです。「最初は2年契約で2年間で幾らです」というような事で借りていました。それが延長、延長で、毎年、毎年リース料を払っています。それで「使い終わったときにはお返しする」ことになります。 プレハブ建築協会さんの中でも、その時に資材を作って現場に仮設住宅を造った分は、「リースじゃなくって県が買い取っています」造るのに資材の費用とか全部合わせて。 地元の公募の方も同じなんです。使い終わって、解体して、「木造のものは再利用し易い」ものという事で造ってもらっていますが、「再利用に回すために解体して、どこかにその資材を置いて置けるのか?」というと、そこまではどの地元の事業者さんも態勢を整えてはいません。なかなか難しいんですね。「地域の別な災害の時にそれを使えるのか?」っていうと「ほとんど使えない」という現実があります。
加藤:ただ、仮設住宅として再利用した事例があります。2018年7月に「西日本で豪雨災害」起きまして。その時に岡山県の総社市から「福島県に造った、板倉工法の仮設住宅をいただけないか?」と、お話がありました。 「なぜ?そういう話があったか」と言いますと、板倉工法の仮設住宅を福島県のいわき市に造ったんです。が、その当時、板倉工法の仮設住宅を考え出された筑波大の安藤先生の研究室で学ばれていた方が、今は岡山県立大学の先生をやられていて。去年の7月の豪雨災害の時に、福島県いわき市で造った「板倉工法は、再利用し易い」そういうことで考え出された工法なので「それを何とか岡山県の総社市に持ってこれないか」と話がありました。 福島県のいわき市に在った板倉工法で造った仮設住宅が「丁度これから解体をしようか」という時だったものですから、タイミングが合いました。それで解体して岡山県まで運搬し持って行って、そのまま仮設住宅として造り再利用できました。今も使われています。 それは本当に稀な事態でした、本当に相方の時期がピッタリ合った。そういった事例もありますが、再利用も「タイミングが好い」というのが一番の鍵かなーと想います。「両者のタイミングが合わないと、なかなか進まないかなー」とは思っています。 (絵:岡山大学HPより) |
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