鈴木達治郎先生「2000年代を語る」 作成:佐藤敏宏2024・10・3


(資料篇) 2004年に出回った怪文書の内容   ( 01 02 に戻る)
       「19兆円の請求書─止まらない核燃料サイクル─」
        注 web内PDFを写しもので、打ち間違えがあるかもしれません
       
     
 2頁)
   核燃サイクルの構想の背景

〇昭和29年に中曽根康弘が宇宙開発とセットで予算化
    (2億3500万円→平成15年度4671億円)
 →昭和31(1956)年に国の原子力政策を定める原子力長期計画で
  核燃サイクルに位置付け
〇1970年代の2度にわたる石油危機
      ↓
  石油から原子力への転換
      ↓
  原子力発電の燃料となるウランの量にも限界
      ↓
  核燃料サイクルする核燃料サイクル構想が具体化
      ⇓
  準国産エネルギー、夢のエネルギーとしての原子力!
   参照:佐野眞一著『巨怪伝─正力松太郎と影武者たちの一世紀』下巻2頁

 中曽根康弘予算化 2億3500万円 根拠:濃縮ウラン235でからと答弁・・・
正力松太郎(1885~1969)・初代原子力委員長
科学者が居眠りしているから、札束で ほっぺたをひっぱたいて目を覚まさせた…秘密裏にことをすすめた。われわれは確信犯だった」と述べている。
3頁)
   核燃サイクルとは 


   
 4頁)
    高速増殖炉サイクル構想の挫折

 欧米諸国は技術面、経済面の理由から高速増殖炉サイクル構
 想からい相次いで撤退

 ドイツ・・・・・1991年に計画を断念
 アメリカ・・・・1994年に計画を断念
 イギリス・・・・1994年に研究炉が運転を終了し、その後の計画を断念
 フランス・・・1997年にスーパーフェニックスの閉鎖を決定
 日本・・・もんじゅの事故(1995年)
       →名古屋高裁で設置許可無効判決(最高裁で係争中)
   
     
 6頁
   軽水炉サイクル構想すらも停滞

   欧米では経済的に見合わず、資源的にメリットも少
   ないことから、軽水炉サイクル(プルサーマル)を
   放棄し、再処理せず直接処分へと移行する国が続出
   アメリカ・・・1977年カーター大統領の核不拡散声明により直接処分へ
   ドイツ・・・・1998年以降軽水炉サイクル路線から直接処分へ路線転換
   スウェーデン・・・1970年代に一時軽水炉サイクルを行っていたが、現在は
              直接処分路線を選択
   スイス・・・・軽水炉サイクルは行うものの、2006年から10年間再処理凍結
   イギリス・・・・軽水炉サイクル路線を維持(将来も継続するかについては検討中)
   フランス・・軽水炉サイクル路線を維持(将来も継続するかについては検討中)

  日本・・・軽水炉サイクル(プルサーマル計画)を推進中

   
7頁
  日本がこだわる軽水炉サイクル①

  軽水炉サイクルに欠かせない再処理工場(青森県六ケ所村)の建設費用
  は鰻登りに膨らんでいる
     6,900億円(構想当初昭和54年頃)
       ↓
     7,600億円(平成元年3月)
       ↓
     1兆8,800億円(平成8年4月)
       ↓
     2兆1,400億円(平成11年4月)
       ↓
     2兆2,000億円(構想当初の3倍!)

     ※関西空港の人工島ですら建設費は1.6兆円
     
   
 8頁
   日本がこだわる軽水炉②

   それほどの巨額を投じた再処理工場
      →完成を間近に控え、相次いでトラブルが発生

   ☆使用済燃料貯蔵プールからの水漏れ
   ☆補強金物の金具を不正に切断
   ☆施設内での相次ぐボヤ
   ☆パッキンを間違えて、配管から科学薬品が噴出
   ☆化学薬品の状態をみる温度計を、間違った位置に設置

  等々通常では考えられないトラブルが発生

   
 9頁
   日本がこだわる軽水炉サイクル③

   建設費2兆円工場を実際動かすと、総額で19兆
   円のコストが発生することが明らかに!
      ⇓  再処理工場建設費の前例(3倍)をみれば
     総額で50兆円を超えることも!
      ⇓
     これほど巨額の費用をかけてなぜ軽水炉サイクルに
     固執し、推進するのか?
        ←様々な異論が噴出

   
10頁
   核燃サイクル推進の根拠と批判①

  1.ウラン資源の利用効率の向上の観点から
  〈推進根拠〉
   〇使用燃料の再処理により、元の燃料の約2.5~4倍に相当
     する新燃料を再利用することが可能
      ↑ ↑
   〈批判意見〉
   ☆ウランの需給及び価格は長期的に安定(一般物価よりも低位に安定)
   ☆海水ウランの回収技術も開発もあり得る
   ☆高速増殖炉の利用なしでは、核燃サイクルの資源効果は限られている
   ☆高速増殖炉の実用化の目処が立っていない
 
   
 11頁
    核燃サイクル推進の根拠と批判② 

  2.放射性廃棄物の処理処分の観点から
  〈推進根拠〉
   〇最終的に処分する高レベル放射性廃棄物の放射線量を低減
     ↑  ↑
  〈批判意見〉
   ☆低レベル放射廃棄物まで合計すれば、廃棄物の体積は大幅に増加
   ☆再処理の過程で、原発と桁違いの放射線被曝が発生
     
   
 12頁
    核燃サイクルの推進根拠と批判③

  3.使用済燃料の搬出先の観点から
  〈推進根拠〉
  〇原発の地元と使用済燃料再処理工場に搬出することを
    約束。核燃料サイクルをやめれば、原子力発電所の運転
   が止まり、電気の供給に支障が生じるおそれ
     ↑  ↑
  〈批判意見〉
   ☆原発の稼働停止が直ちに電力供給に影響しないことは昨
    夏の東電問題からも明らか
   ☆原発立地他県からも、福島県知事のように、使用済燃料の
     搬出先問題をもってリサイクルを正当化することは「問題
     のすり替え」との批判あり
   
 13頁
    核燃サイクルの推進根拠と批判④ 

   4.費用の観点から
    〈推進根拠〉
    〇再処理を行えば費用が生じることは事実だが、原発全体
     の経済性に遜色はない
     ↑   ↑
    〈批判意見〉
    ☆少なくとも六ケ所再処理工場を動かせば、19兆円の費
     用が発生することは事実
    ☆六ケ所再処理施設の稼働が順調に進まなければ、再処理
     単価は高騰。ひいては原発全体の経済性に支障を及ぼ
     す可能性あり

     
   
 14頁
   核燃サイクルの推進根拠と批判⑤ 

   5.核不拡散の観点から
   〈推進根拠〉
   〇積極的な理由はない(核オプション!?)
     ↑  ↑
   〈批判意見〉
   ☆プルサーマルの目処も立っていないのに、なぜ過剰とな
    るプルトニュウムを再処理により、さらに回収するのか
    (日本は既に38tのプルトニュウムを保有しており、核
    オプションを考えてもこれで十分)
   ☆日本が民生用の再処理を維持する結果、国際的に北朝鮮
     やイランの再処理施設をストップできない
   
 15頁
    現在の議論状況

    国の原子力政策を司る原子力委員会では、核燃
    料サイクルの是非について議論がスタート

    ところが・・・・
    その結論を待たず、前述の様々な批判意見に耳
    を傾けることもなく官民あげて核燃料サイクル
    の実現に向けてばく進中!

   
 16頁 
    電力業界の姿勢

    核燃料サイクルの現実を一手に担う日本原燃(電力会社
    の出資により設立)は、本年4月にウラン試験を実施予定
     → 工場全体が放射能で汚染
     ⇓  ⇓
    来年4月にはさらにアクティブ試験(プルトニュウム
    を用いた最終試験)を実施予定
     →工場全体が更に高濃度の放射能で汚染
     ⇓  ⇓
    工場全体の解体費用でも1.6兆円のコストが発生!
    工場の他の用途への転用も不可能・・・・(後戻りできなくなる)
   
   
17頁
    国の姿勢①

   〇経済産業省では昨年から経済的支援策の検討を開始
   〇今夏には審議会で結論を出し、年末には経済的支援
     策の内容が決定される見込み
     ⇓ ⇓
     原子力委員会の結論を待たずに、
              既成事実化を狙う 

 
   
18頁 
    国の姿勢②

   本来ならば原子力政策を司る原子力委員会が、核燃料
   サイクルの是非を真剣に議論すべき

   原子力委員会メンバー構成 (出身元)
   委員長:近藤駿介・・・東大原子力研究総合センター長
   委員長代理:齋藤伸三・・・日本原子力研究所理事長
   委員:町末男・・・原子力産業会議常務理事
   委員:前田肇・・・関西電力特別顧問
   委員:木元教子・・・評論家

   5人中4人が原子力関係者!→これでほんとに中立的なの?

   
 19頁
    やめられない止まらない
    ─国の事情─

    行政の無謬性へのこだわり
    ─今まで核燃料サイクルを推進してきたことが時
      代遅れとなったという政策の誤りを認められない

    行政訴訟の危機
    ─ 政策変更すれば、電力会社から再処理工場建設費の
      2兆円の損害賠償請求が起きる
       ↑  ↑
      電力会社は国策にしたがって再処理工場を建設してきたんだ!  

    
   
 20頁
    やめられない止まらない
    ─電力業界の事情─   

    2兆円もかけて作った再処理工場へのこだわり
    ─今更やめるといえば、電気料金で再処理代金を回収
      してきたものを返せといわれる
    地元との約束
    ─使用済み燃料は六ケ所に持ち出す、といって原発の
     地元を納得させてきた。今更やめるといえば、使用済
     燃料が持ち出せなくなり原発が止まる

   
21頁
   やめられない止まらない
    ─原子力ムラの事情─       

   原子力工学学科の卒業生の存在
   ─国、電力会社、特殊法人。重電メーカーには原子力
     工学科の卒業生が多数存在し原子力ムラを構成
   ─ 国家予算4,700億円、電力の原子力発電費2兆円
     へのたかりの構図
     ⇓  ⇓
   サイクルをやめれば、もんじゅ、次世代原子炉
   といったプロジェクトの意義が喪失し、プロジェクト
   にまつわる利権が失われる

   
22頁
    やめられない止まらない
    ─政治の事情─       

    交付金へのたかり
    ─ 六ケ所村には毎年多額の交付金がおちる
  
    選挙事情
    ─ 自民党議員は電力会社から、民主党議員は電力労連、
       電機労連から様々な支援を受けている

      ある民主党議員の声
       「この問題を取り上げるとすぐ労組から電話がかかってくるなぁ
        もっと世の中が騒いでくれると取り上げられのになぁ」

 
   
23頁
      やめられない止まらない

    国と電力業界の原子力利権を巡る政界、官界
    業界、自治体のたかりの構図
    →既得権への固執
     ⇓  ⇓
   政策的意義を失った19兆円(果ては50兆円?)
   ものお金が国民の負担に転嫁されようとしている・・・
    一人当たり19万円(果ては50万円?)

   
24頁
    ちょっと待った!リサイクル!

    この核燃サイクルを巡る構図は古くは国鉄、住専
   、最近では道路公団、年金問題と同じ
    (問題の先送りによるツケが国民に回ることに)
     ⇓  ⇓
   核燃料サイクルについては一旦立ち止まり、
   国民的議論が必要ではないか

 
   
 25頁 
    〈参考〉
    核燃料サイクルに疑義を唱える有識者


     〇山地憲治 東京大学教授
     〇飯田哲也  環境エネルギー政策研究所所長
     〇河野太郎  衆議院議員
     〇佐藤栄佐久 福島県知事
     〇鈴木達治郎 電力中央研究所主任研究員
     〇加藤秀樹  構想日本代表
     〇吉岡斉  九州大学院教授