鈴木達治郎先生「2000年代を語る」 作成:佐藤敏宏 2024・9・25

その02 2024・9・18

9・11と核セキュリティ


佐藤:9・11は鈴木先生の仕事に大きな影響を与えたのでしょうか。
鈴木核セキュリティーという概念が初めて出て、それまでは核物質防護と言ってたんだけど、テロリズムから核施設・核物質を防護しなければいけない。その仕事が増えましたね。

佐藤:9・11以前は防護はなかったですか。

鈴木:あったんですけど、1990年代語り、で話したようにフランスから日本へのプルトニウム移送がたいへんだ、日本は銃で武装警備できない、そういう話だったです。
佐藤:9・11は民間航空機を乗っ取り、民間のビルに突っ込んだので、防ぐの難しそうです。防ぎようがなさそうだと思いました。

鈴木:9・11でちょっと仕事が変わったかなという気はします。それ以外はあまり変わらなかったです。パグウォッシュ会議もキャンセルになったあとは、2007年ぐらいまでは毎年開催してたんです。けど、お金の調達が難しくなってきて、1年半に1回ぐらいになって、実は2017年が最後です。カザフスタン。2020年にカタールのドーハでやるはずだったんですけど、丁度新型コロナが流行って直前にキャンセル。私達は早めに現地に行ってた、飛行機の中でメール見たらキャンセルだ、と書いてあった。着いてすぐ帰りの飛行機を探したんだけど、1泊じゃもったいないから、2泊して帰ってきた。それからドーハのパグウォッシュ会議は新型コロナ感染が起きたので、2回延期になってしまいました。

今は、ネット効果もありますが、若い人が活動し発表し易くなりました。私達もやろう、みたいな感じです。クラブ活動みたいな感じでやってますので楽しい。例えば、中村涼香さんといって、長崎の出身者です。活水高校といって熱心な高校の卒業生が今、始めているのが「No NUKES Tokyo」といって、東京で始めたんです。ついこないだやったものは新しい原爆展といって長崎・広島ではやらない東京でしかできない原爆展。そこでバーチャルリアリティーで、渋谷に原爆落ちたらどうなるのかVR体験、要するに今までのように被爆体験者が話して、それを聞いてショックを受ける、そういう話ではなくって、自分たちの生活に直接影響を与えるようなものだ、ということを分かってもらうために、若い人が企画している。

佐藤:若者は自分たちの生活環境と原爆を結びつけて、原爆を考える。遠い過去の話にしない。
鈴木:被爆者との関係も、我々はどうしても被爆者の方々と距離をおいて、尊敬するというか・・。
佐藤:大切な次元に持ち上げて自分の生活から切り離して、特別な人の話と考えてしまいがち。

若い人との共同活動ICANの活動

鈴木:大切に扱いすぎるわけです、若い彼らは本当にお友達みたいに会話する。

佐藤:3・11津波の被災地でも同じことを感じました。津波被災者は若い人に心情を一所懸命語る、伝えたい。被災地でもオジサンたちが来て上から目線で語る、拝聴する場が多すぎる。対等に言葉を発する機会がほとんど無いんです。だから、また、えらそうにという思い込みが先行します。若い人は白紙できますから話しやすいんですね。

鈴木:おっしゃる通りで年寄りは上から目線でしゃべってしまう。
佐藤:若い人達がもっている発話を喚起する力にもっと注目すべきだと、津波被災地でも思いました。若い者たちは知らないので失礼な事を聞いても問題にならない点がよい。年取ってから失礼なことは聞けない、自己規制しますから。若い人との試みも始まったと。

鈴木:ここ2,3年ですね。
佐藤:楽しみは若い人たちとの試みと交流ですね。

鈴木:凄いいいです。彼らの活動の仕方を見ていると枠にとらわれていないですね。だから平気で他の環境団体と一緒に仕事をしたり、ジェンダーの人たちとも仕事をしたり、今までの我々の核軍縮、核廃絶の運動団体とまるきり雰囲気が違う。今年やる核廃絶の市民実行委員会があるんですけど、去年まではいわゆるシンポジウム。今年は核フェスといって、核兵器の問題をみんなで考えよう!お祭りしましょう・・・みたいな雰囲気です。


 被爆体験の伝承のこころみ(動画)

佐藤:なるほど、垣根が消えたようでいいですね。賢い。

鈴木:賢いというか自分たちが楽しいことをやります。
佐藤:つらいと続かないですからね。
鈴木:だから深刻さがないですよね。いい意味でみんなが楽しく活動する。
佐藤:若い人には被害者意識を軽く受け止められる良さはありますよね。

鈴木:そうですね。被爆当事者にはそんなこというと叱りをうけるでしょうが。
佐藤:自己規制して臨むと扉が開いていても、若い人ははいりにくいですよね。
鈴木:そうなんですよね。そこが違うなと。スチューデント・ヤング・パグウォッシュは真面目な人が多いけど、もうちょっと下の人たちはそうじゃない。アイキャン(ICAN)は大きいですね。アイキャンの人たちはそういう人が多い、被爆者の話も聞いたことがない、広島・長崎にも行ったことがない、けど、核兵器は嫌だ・・・という若い人達が集まっている。

佐藤:最近若い人が一人でデモで街路に立つことも出てきましたね。仲間をつのって毎度同じ人と集まっての活動では、党派的になって喧嘩する、それは避けられる。

鈴木:そういうの無いね。
佐藤:1人街路に立って自分の意見を述べる、若者の方が民主的にこなす。
鈴木:安保法制の法案が通るときに(SEALDs)シールズという学生団体。そのリーダーの一人は林田君といって被曝三世。今は長崎に戻ってきてピース・エデュケーション・ラボというのを作って、起業して、修学旅行とか団体旅行に平和教育をする、というビジネスを始めた。
佐藤:オジサンたちはダーク・ツーリズムとか言ってしまうけど、若者は言わない。

鈴木:言わない、言わない。
 

2000年代の本づくり
       安価な風力発電が日本で広まらなかった

佐藤:2000年代に刊行された本の話にうつります。『エネルギー技術の社会意思決定』この本はどういう経緯で刊行されましたか。

鈴木:これはリステックス(RISTEX)社会技術研究センターというのがあるんです。社会のための技術のようなコンセプトです。

佐藤:
公募ですね、3年間とあります。4,5,6年。

鈴木:公募で3年間です。JCO臨界事故が99年にありました。あの後に文科省が原子力技術と社会の関係を考える研究所を作ろう、という話になった。文科省の中に作ったんです。
社会技術研究センター、当初は原子力が中心になったんです。それが段々大きくなって、2003年ぐらいから大きくなって、JSTという科学技術推進機構に移ったんです。それで公募研究を始めた。で、私は一回失敗して二回目に受かったんです、そこで3年間。テーマは新しいエネルギー技術が社会に入る時に、どういう仕組みで入るんだろうか、それが基本的な疑問です。
エネルギー技術は基本的に公共性が高いので、市場原理だけではたぶん決まらないだろう。そういうことで、じゃ〜誰が決めているの、という話になって。表向きには政府か、電力会社企業が決めていることになっているんだけど、よくよく調べてみるとエネルギー技術ごとに違うんじゃないか。それを確かめましょうというプロジェクト。


佐藤:風力とかバイオマスとかカーシェアリングとか、随分早い段階での研究。
鈴木:いろんなケースをやったほうがいいので、原子力に偏らないでいろんな技術をやりましょうと。再生可能エネルギーもいろいろ技術によって、プロセスが違うんです。

佐藤:太陽光発電は原発事故前に補助金つけていた、が東電から代議士が出てつぶしてます。その後、風力とか太陽光とか電池とかいろいろでました、統制されてない、めちゃくちゃに進展している感じがしますが。
鈴木:統制されてないですね。
佐藤:フクシマ周辺の太陽光発電、もめちゃくちゃしている感じがします。福島市は条例つくって規制しようとしてます。

鈴木:市場メカニズムってめちゃめちゃなんですよ、誰もコントロールしない。で、例えばテレビとか携帯電話はちょっと規制が入っている。新しい技術を入れると、誰かが作って誰かが売るわけです。買う人が要る。そういうメカニズムが働かないのがエネルギー技術なんです。売りたいと思っても買ってくれる人が電力会社しかいなければ、電力がノー、と言えば買ってくれない。逆に電力が買う、と言えば出来てしまう。

佐藤:既存の大きな電力会社が再エネに影響を与える力を持ってしまっていると。
鈴木:再生可能エネルギーは違う。よく見ると多くのケースで影響力をもったのが地方自治体。太陽発電の場合も多少そういう処があるんです。一番典型的なのが風力です。風車ってぐるぐる回っているのを見ると環境に優しくって、いいよね長閑で(笑)、それで初めて風力発電所を造ったのは和歌山だったかな、どこかの村が村おこしのために風力発電所を建てたら、観光に人が来るんじゃないか、と言って導入した。

実は風力も太陽光発電も石油危機の直後に政府は一応プッシュはしているんです。サンシャイン・プロジェクトとして。ところが、みなアセスメントをすると高い高い、と言ってキャンセルになってしまう。なぜキャンセルにしたんだ、とそこがはっきりしないです。どうやら、風力の場合は高い、という結論は出ている。だけど、よく調べてみると、風力よりも太陽光の方が、当時の評価を見ると高いんです。でも太陽光には予算が付いて、風力はキャンセルになってしまった。なぜか、と調べていくと太陽光の方は経産省は半導体メーカーがシャープとか太陽電池を造っていたので、メーカー維持のためにサポートしたんです、じゃなぜ風力はサポートしないんだ、風力は三菱重工が当時は世界でトップだった。ところが三菱重工が風力をやろうとすると、電力会社が「おまえ何やっているんだ、原子力やれ」、と。(笑)

佐藤:既存電力会社が再エネの足を引っ張る。三菱は原発もやっている、汚染水タンクも作って納品している、繋がっているからね電力会社は圧力かけますね。
鈴木:繋がっちゃっているから
佐藤:次の原発建造時にはたのまねーよ、と言われちゃう。残るは子会社で切り離す策か。
鈴木:そうそう、風力やったら仕事くれないんです、だめだよと。で三菱重工が撤退してしまうんです。それでレポートの評価を見ると太陽光よりも安いのに太陽光の方が残ってしまって、日本では風力は風が吹かないから駄目だ、とか。
佐藤:巨大電力会社がメーカーに、いろいろ難癖付けて再エネ系も潰すと。競争したくない。

鈴木:風力は価格が高い、そういう先入観がその後ずっと続くんです。日本の風は。デンマークがトップだったんですけど、デンマークは一定方向に優しい風ずっと吹くのでペイするけど、日本は風向きがしょっちゅう変わって、しかも台風が来たらだめだから、日本じゃ風力はペイしないという、下らない理屈が通ってしまった。それを聞いても、別にペイしなくっていいよ、と言えたのが観光にやくだてばいい、と言ったのが最初の風力発電所の事例がある。

佐藤:ということは電力会社が原発を続ける限り、関わっているメーカー各社は再エネに関わると、既存電力会社から嫌味いわれて、撤退するしかない。核融合なども重工が関わらないと出来ないのではないですか。
鈴木:出来ない。核融合はわかりませんが、風力と太陽光はあきらかに産業政策とメーカーの関係があったから影響は大きい。太陽光も本当に普及し始めたのは、市民太陽光発電と言って、町おこしで自分たちが太陽光発電の株主になり、電気を売るという仕組みを作った。ヨーロッパの仕組みをまねたんです。政府じゃなくって、自治体の人が積極的に導入したので出来た。カーシェアリングもそうだし、路面電車も自治体です。


地域の声と原発阻止

佐藤:長崎は路面電車、生きてますね。
鈴木:旧来の車輛じゃなく今はまったく新しい路面電車にしてしまった。結論からいうと政府がエネルギー安全保障だ、と言っているが政府の勝手な理論で、技術というのは買う人がいれば普及するわけです。それは誰が決めるかというのは必ずしも政府じゃなくっても、普及する場合は普及する。問題は発電所というのは基本的には必ず立地が必要なんです。トラムにしろ、カーシェアリングにしろ土地を使いますよね。土地の利用の問題というのは公共利益ですので、必ずその土地の所有者とか、土地に関係している団体とか、自治体は当然関与しなければいけない。それを忘れて、立地なんか、あとから考えればいい、とか立地を拒否するのは地元のエゴだ、と言って押しすすめるとうまくいかない。当たり前のことなんですよね。だけど国の政策だから、原子力発電所や火力発電所は建てなきゃいけないんだから、おまえら言うこと聞け、と言って公金で言うこと聞かせる。

佐藤:福島県の場合は県の誘致活動と支援が凄かったから10基できた。
 (参照 製作:日映科学映画製作所 企画:東京電1967年 カラー 26分 科学映像館選定作品
鈴木:本に出て来る、新潟県巻町の巻原発、唯一住民投票で東北電力が原発立地を諦めた町なんです。今は巻町は合併されちゃって無いです。その経緯はすごい面白いです。原発の話が出て、当然地元の人たちは心配するわけです。もちろん推進派の人たちも一杯いたんです。
お酒を造っている社長さんが自民党支持者なんですけど、うちの酒が売れなくなってしまうかもしれない、と心配された。原発建ったら風評被害で売れなくなるかもしれない、そういう心配しはじめた。これは単純に地元のために成る、ならない、と決めてはまずいだろうとなった。彼が住民投票へ、選挙管理委員会を作って自分たちでやるんですよ。彼は自分は原発推進でも反対でもないので、皆さんの意見を聞きたい、と言って、仲間を募って選挙管理委員会をつくって自主管理住民投票をやるんです。これが凄い。
その時は電力会社から、もの凄い圧力が掛かる、「お前ら勝手なことするな」。彼は「いやいやこれは町のためにやることだから。」と頑張る。偉いんです選挙管理委員会を作ったら、投票箱は弁護士が管理する。それから1日ではなかなか投票できないので、投票期間は1週間にする。顔を見られちゃうと電力会社から虐められるので、カメラとかは絶対なしにするとか、いろいろルールを作って住民投票をやるわけです。そしたら95%が反対だった。そしてその結果を持って首長の所に行くんです。首長は唯一推進派だったんですけれど、こういう結果が出たので、正式に住民投票をやってくれませんか、とお願いしに行くわけです。首長はダメダメとやるわけです。それで、彼が市長選挙に出てしまう。

佐藤
:当選しそうだ・・。

鈴木:当選しちゃったんですよ。それで住民投票を本当にする、反対が勝ってしまう。ところが勝ってもぜんぜん法的な意味はあまりない。それで東北電力はふふふ、と笑って見ていた。許認可の手続きはどんどん進んでいく。ところが、新・町長さんは頭がよくって、土地だ!土地が問題だ、町長は、候補地の中にある行政が所有する土地を東北電力に売らない方針を出した。しかし議会が賛成派多数となったため、(町は議会の決定に従わなければならないので)町長は、反対派の住民に売却したのです。そうすると「邪魔してる」と、東北電力は訴訟を起こすんです。でも、町が勝ってしまう。結局土地が買えなくなってしまって、東北電力は住民投票で負けたからではなくって、拒否権を使えるような仕組みを町長が作って、それで東北電力は諦めた。

佐藤:東北電力はその時、お金を住民にまいて潰しに乗り出すと思うのですが。

鈴木:潰しに掛かってものすごくお金をまいた。1980年代だったと思います。原発がガンガン建ったころです。
佐藤:バブル経済期ですね。地上げ屋は自家用車のトランクに金を詰め込んで住民に札束で配る世でした。
鈴木:巻町はお米とか、お酒とか、地元の産業がそんなに貧しくなかったです。原発に依存しなくってもやっていけるんだ、という人たちが居たということです。
佐藤:そういう事例をたくさんのマスメディアが継続報道するとよかったですね。

鈴木:巻町も本に入ってます。それが一番面白かったので論文にして発表しました。北海道のケースも面白かったです。


 絵『エネルギー技術の社会意思決定』 p250より
   


『エネルギー技術の社会意思決定』
社会評論社2007年8月15日刊行

筆者 鈴木達治郎
山城英明 松本三和夫
青木一益 上野貴弘 木村宰
寿楽浩太 白取耕一郎 西出拓生
馬場健司 本藤祐樹

目次
第一章 問題意識・研究の視点・研究のアプローチ
1問題意識
 1.1エネルギー技術と社会問題:公共目的を巡る相克
 1.2エネルギー政策決定とプロセスの変化とその評価
2研究の視点
 2.1「エネルギー技術」について
 2.2「技術の社会導入」について
 2.3「社会意思決定プロセス」について
 2.4本研究の焦点
3 研究のアプローチ:事例研究
 3.1事例研究の進め方
第1部偶然が左右する意思決定:意図せざる結果と学習効果
第2章事 例1風力発電技術導入における経路依存とアウトサイダー
 はじめに
 1 経路依存性についての見取り図と研究のねらい

 2 経路依存性と風力発電プロジェクトの展開
 3 神話の起源と経路依存性
 4「有意なアウトサイダー」による神話崩壊─Mプロジェクトの事例
 5「有意なアウトサイダー」による経路創造─Nプロジェクトの事例
 6「有意なアウトサイダー」による経路の創造─A社の事例
 7市場外部の「有益なアウトサイダー」B町の事例
 8 まとめ提言

 
第3章事例2太陽光発電技術(PV)の導入における政府支援の形成とアクターの対応
 1はじめに
 1.1背景と目的
 1.2分析の視点
2事例の記述
 2.1日本におけるPV開発導入の経緯既観
 2.2サンシャイン計画におけるPV選択の社会意思決定とその影響
 2.3市場創出に向けた社会意思決定
 2.4市場創出策がもたらした影響
3 事例の分析:PV開発と導入の社会意思決定プロセスの特質
 3.1行為の連鎖と予期せざる出来事の総体としての社会意思決定
 3.2支援政策の影響と企業・消費者の対応
 3.3PV開発導入へのコンセンサスの定着
 3.4技術のユーザー・サブユーザーの関与

4知見と提言
第4章事例3カーシェアリングの導入における社会的実験と学習効果
1はじめに
 1.1背景と目的
 1.2分析の視点と方法
 1.3事例選定の理由
2事例の記述と分析
 2.1横浜を中心に事業展開するCEVシェアリング社
 2.2福岡市のNPO法人カーシェアリングネットワーク
3横断的な分析と戦略的ニッチ管理論からの評価
 3.1ニッチの形成とその性格
 3.2「戦略的ニッチ管理」の視点からの評価
4知見と提言
 4.1知見
 4.2提言
第一部 [偶然が左右する意思決定:意図せざる結果と学習効果]のまとめ
第2部技術を社会に埋め込む意思決定:技術システムをめぐる課題設定
第5章事例4 木質バイオマスを用いたエネルギー技術導入をめぐる社会意思決定プロセス
1はじめに
 1.1背景と目的
 1.2分析の視点と方法─特定技術に固有な技術システムの視点
 1.3調査手法と事例選定の理由
2事例記述
 2.1技術システムの帰結に生じた相違
 2・2事例@
 2.3事例A
3事例の分析
 3.1事例@─公募市民主体によるコミュニティーモデル事業の得失
 3.2事例A─実用性確保と需要喚起の相克
 3.3両事例の相対的評価─比較分析の視点から
 4知見と提言
第6章事例5 路面電車をめぐる社会意思決定プロセス
1はじめに
 1.1背景と目的
 1.2分析の視点と方法
 1.3事例選定の理由
2事例記述と分析
 2.1岡山市
 2.2高岡市・新湊市
3横断的な分析:フレーミング効果及び集合行為のディレンマ緩和の視点から
 3.1フレーミング効果
 3.2非公式ネットワークの活用
 3.3オード間の利害調整と交通の全体に関わる議論
4知見と提言
第2部[技術を社会に埋め込む意思決定:技術システムをめぐる課題設定 ]のまとめ

第3部地域社会における立地決定の意思決定:調整のための非公式な場と手法
第7章 事例6 ウィンドファームの立地における環境論争と社会意思決定プロセス
1はじめに
 1.1背景と目的
 1.2分析の視点と方法
 1.3事例選定の理由
2ケースの記述
 2.1三重県久井市における自然公園立地ケース
 2.2山形県酒田市における自然公園立地ケース
3ケースの分析
 3.1アクターの多様性
 3.2課題設定と専門知の取り扱い
 3.3公式・非公式プロセス
4知見と提言
 4.1得られた知見
 4.2提言
第8章 事例7 原子力の普及における社会意思決定プロセス
1はじめに
2分析の視点・方法
3日本の原子力研究開発の経緯と発電所立地
4事例
 4.1事例の選定
 4.2新潟県巻町の住民投票
 4.3北海道エネルギー問題委員会
5各事例の分析と得られた示唆
 5.1論点分析
 5.2得られた示唆
第3部[地域社会における立地の意思決定:調整のための非公式な場と手法]のまとめ
第9章分析と考察:社会意思決定プロセス設計の課題
1技術を巡る意思決定プロセスについての知見
 1.1導入の社会的文脈と課題設定
 1.2技術の特性とプロセスの関係
2社会意思決定プロセス全般を巡る知見
 2.1公式プロセスと非公式プロセスの合成としての社会意思決定
 2.2予期せざる出来事と不確実への対応
3エネルギー技術導入の社会意思決定プロセスの設計上の留意点
 3.1技術の公共目的を議論する場の設定
 3.2非公式プロセスの活用
 3.3十分な情報に基づいた選択肢と評価基準の提示
 3.4社会意思決定の段階にあった「場」の設定
 3.5「プチ失敗」の活用:社会学習の機会確保、社会実践の有効利用
 3.6アウトサイダーの役割とその活用(経路依存への対応)
4エネルギー政策、及び技術政策への示唆
終わりに



エネルギー環境と技術と未来社会

佐藤:2004年から『日本の未来社会─エネルギー・環境と技術政策』この中にですか。
鈴木:それは別です。それは東芝の寄付講座です。エネルギーの環境のサステナビリティの講座を東芝が寄付してくれたんです。そこに特任教授として雇われた。そこは原子力は関係なく地球環境問題です。

佐藤:高齢化、都市交通、農業など広範囲ですね。
鈴木:これはどういうプロジェクトかと言うと、エネルギーというのは、エネルギーを考えた時に、どういう社会を我々は望むか。それを考え出してそれに合ったエネルギーシステムを選べばいい。実はいままでは逆だった。エネルギーがあって、それに合わせて我々は生活してたけど、本来は逆じゃないかと。2030年の日本の未来を考えましょう、と言ってシナリオ・プランニングという手法を導入してやりました。

佐藤:2024年だけど今からでも6年後、予想されたのは2030年ですね。

鈴木:エネルギー、特に関係のある三つのテーマを選んで、食の未来と都市の未来と、技術の進歩、その三です。シナリオ・プランニング、ご存知ですか
佐藤:分からないです。
鈴木:シナリオ・プランニングは未来の可能性を皆で考えましょうと。
佐藤:サイエンス・フィクションとは違うんですか。
鈴木:近いですけど、そうじゃなくって、傾向としてはっきり分かっているものは、当たり前なんですよね。例えば人口は減るだろうとか、気候変動、温度は高くなる、今だったら分るけど、どっちに転ぶか分からないものがある。政権交代が起きるか起きないか。例えば電力自由化が進むか進まないか。日本の平和憲法が変わるか変わらないかなど。ひょっとしたら日本のエネルギーの将来にとって、凄い重要だけども、どっちに転ぶか分からないものを皆で考える。どっちに転んだら世の中どう変わるかを、皆で考えシナリオ書く。面白いですよ。
この手法はシェルという石油会社が開発した手法で、シェルが石油危機を予測したことで有名になってしまった。70年代にシナリオプランニングを石油会社がやった。当時は石油は高くって中東が牛耳っている。石油会社はみな中東に行って交渉してたわけです。ところが石油危機が起きるかもしれない、というシナリオをシェルは考えていた。中東の石油輸出、しなくなるかもしれない。中東以外の石油探査とか、備蓄とか、そういうことを既にやっていて、石油危機で生き延びた会社として有名になってしまった。

佐藤:初登場の寿楽さんはだれですか。
鈴木:寿楽浩太、彼は東大の私が教養学部でゼミをやっていた時の学生です。今は偉くなってしまい東京電機大学の教授。当時は東大の原子力工学科の研究員かなにかだった。
佐藤:いまでも古書で探すとみつかりますか。
鈴木:あるかな・・・。エネルギー未来の方は東信堂、

佐藤:『技術と未来社会』の方も東信堂です。
鈴木:日本評論社です。こちらは高額です、5000円以上するハードカバーで学術書だったので、高くてもいいということでした。他方は一般の人にも読んでもらいたいということで安くしてもらった、あまり売れてないですね。





佐藤:三冊目が『科学技術とガバナンス』この本は6年間かかってますね。これも東信堂です。
鈴木:それは、また話が長いです、東大の法学部の先生で城山英明という人が、彼は若いんですけど優秀な男で私がMITにいたときに、ボストンにやってきたんです。その時彼は科学技術政策に興味ある、と言ってやってきた。そこで話をしたのが切っ掛けです。
工学部のなかでは珍しく科学技術オタクなんです。オタクといったらおかしいですけど科学の行政について興味がある。専門は行政学です。私が東大の公共政策大学院に行く前に、法学部の特任教授を2〜3年やっていた。その時のプロジェクトの続きなんです。
日本科学振興会があるんです。そこが人文社会科学は世の中に役にたっていないと、総合科学技術会議みたいな人たちが文句を言っていた。

佐藤:今でも言ってます(笑)
鈴木:そう、それでそうじゃない人文社会科学も世の中のためになるんだ、という公募研究を始めたんです。その時に私は呼ばれて、「何か科学技術に関するものを始めましょうよ」、となり始めたのが科学技術のガバナンスプロジェクト。私は科学技術と国際問題というグループを作った。そこで、輸出管理、いわゆる先端技術で今で言う軍事デュアルユース、軍民両用技術というのは開発した人は民生のために作ったんだけど、実は軍事目的にも使われてしまう。第4章「安全保障と軍事技術をどう防ぐか」を書きました。

佐藤
:このような目的で本のために議論していると面白そうですね。
鈴木:面白かったですよ。いろんな人と話をしたり、私も先端技術の会社をいろいろ訪問するんです。日本のハイテク企業はみんな優秀なんです。だけどそれが軍事利用に転用されているということが分るとまずいので、どうやって歯止めをするのか、と考える。そういう研究なんです。

佐藤:鈴木先生、ふり出しに戻ってコンサルティングのような仕事になっています。
鈴木:そうそう、コンサルティングに近いんです、けど企業への提言ではなくって。あくまでも最終的には行政府への提言

佐藤:科学技術の影響評価は本にはなってないんですか。あ、『』だから本になっているんですね。書影がないだけですかね。
鈴木:科学技術のガバナンスという本になったのかな。
佐藤:新進技術の社会的評価・・・。

   

鈴木:あ、それは最後の、2008年に先ほどのリステックスにもう一度公募したんです。で通ったプロジェクトなんです。私の原点であるテクノロジーアセスメント、それがなんで日本に根付かないか?というのがテーマです。

佐藤:このテーマは学部生時代に戻った感じですね。

鈴木:本当に戻った感じ。もう一度原点に戻って、何でテクノロジーアセスメントが出て来て、なんでヨーロッパでは普及したのに日本では普及しなかったのか、という研究をやった。で、普及させるためにはどうしたらいいか、という提言。3年プロジェクトだったんですけど、私は2年目に2010年に原子力委員会に任命されたので、途中で抜けたんです。城山先生に後任をお任せしちゃった。結論を一言でいえば日本の行政府が抵抗した。そこが他の国とは逆。

佐藤:抵抗の理由が、上意下達が好きなのかな・・。
鈴木:海外での様子を観てもスンナリとはいってないんです。最初は抵抗勢力があるんです。で、どうやっているかと言うと、最初はちっちゃく始めるんですよ。それで実績を積んでいって、これは社会にあったほうがいい、と言ってから制度化するプロセスがある。大きく言えばです。
いろいろ違う点があるんです。その国、その国に合ったかたちで制度はできている。必ずしもアメリカのような仕組みがいいわけでもないし、ドイツの仕組みがいいわけでもない。韓国はもう出来ているんです。日本だけ出来ていないんです。役所の抵抗もあるけれど、国会で作っている国が多いんです。国会の調査機能というのかな、日本はそれが弱いですよね。国会にちゃんと予算を付けて調査機能をあたえ、立派な人、研究者でやりたい人は一杯いますから雇う。国会が採ってあげれば出来るはずなんです。
我々の提言は、国会図書館に調査室があるんです、それをまず拡大することが現実的なんです、という提案。あとはしょうがないから民間でやる、民間のTA。アメリカはそうなっている。大学とか民間のシンクタンクが実際にテクノロジーアセスメントをやっている。それを政府に提言する。日本だったらそれも出来るよと、幾つかオプションを示して、終わりました。

佐藤:2008年には『科学技術のポリテクス』。政治と関わるのは当然として、2000年代は4冊本が刊行されました。
鈴木:そうですね、『科学技術のポリテクス』は城山先生がまとめた本です。私は核と原子力の話を書いたんです。核政策でも原子力政策でも科学者グループというのが必ず存在していて、その人たちが政策決定に影響を与えた、というストーリーを書いた。「科学者コミュニティーの役割」を書いた。

佐藤;タイトル見ただけでもいいですね。2000年代後半は研究に参加され、たくさん提言を書いてましたね。
鈴木:それは原子力委員会に入る前ですね。
佐藤:次回は2010年代です。10年代は鈴木先生も過酷ですね。
鈴木:過酷です。

佐藤:聞くも涙、語るも涙、で思い出したくないですね。でもどうしようかなと迷いますね。
鈴木:佐藤さんとも出会える切っ掛けになった。

佐藤:原子力委員会で先生もしんどかったでしょうが、俺も家族も周りの人々もシンドかったですよ。
鈴木:つらかったですね

佐藤:つらい話を涙ながらに語って記録を。
鈴木:涙ながらに語りましょう。


鈴木達治郎全集の準備を

佐藤:共著ですけれど、本が4冊刊行されたのは大変貴重でいいですね。今も先生は本を持っていますよね。
鈴木:あります。
佐藤:鈴木先生、全集刊行されたらいいのではないですか。花田先生は、5〜6年掛かってました、自分で全て目を通し、補記をつけて、解題を頼んで刊行しました。生きている本人が全集編集作業するって珍しいです。

鈴木:過去に書いたものを全てまとめて全集にしたんですか。

佐藤:そうです。新しい順から言えば、WEBに書いた内容も、新聞記事も、ドイツでの提言も全て収めています。過去の記事はスキャンすると文字に変換してくれるソフトがあるそうです。でも、間違いを修正するのは書いた人で、その作業は大変だったと語っていました。

鈴木:それを誰かに手伝ってもらおうかな・・。
佐藤:その作業、推しですね。今から準備始めると全集できますね。花田先生は、へとへとな感じでしたが終わってすっきりして、元気になり新たな原稿を書き始めました、全集後は、若い人と組んで本も出そう、と出版社回っています(笑)。
鈴木:へとへとになるよね。
佐藤:花田先生は弟子を囲い込んで神輿に乗ることは自己規制していたので、1人でこつこつ全集作業やってまして、刊行しました。全集はいいもんですね。
鈴木:えらいな〜。

佐藤:花田先生全集は早稲田でも東大でも出してくれず、出版社をみつけないといけない。四半世紀付き合っているからですけど、全集はいいですね。鈴木先生、方々に書いてますからここらで全集の準備に取組むのいいですね。
鈴木:全集、来年から楽になるから考えてみてもいい。

佐藤:どういう出版社がいいんですかね。
鈴木:先ほどでた東信堂とか、教科書的な学術書を扱っているところですかね。

佐藤:鈴木先生の人生語りと核に関する話を聞かせていただいて、誰でも知るべきエネルギーの話なんだけど、どのような問題を共有すべきだったのか、それさえ事故が起きて以降も共有される気配はない。多くの人は知らないですよ。

鈴木:知らないですよ、ふふふ。
佐藤:主権者が知らないと、マスコミの表面語りが流行ります。原子力政策を歪めてはいけない、そこが致命的。次の世代に負の遺産が伝わる。中身を知る機会が無いのはたいへんまずいです。今はフクシマ問題を語り合う場もないです。ですから、東京電力と政府、行政マンたちの上意下達圧で満ちていて活発な議論にならない。県庁に行っても、お前何しにきた、そんなことも知らんのか、という応対されたりしますし。


政権交代はおおきい

鈴木:政権交代はおおきいですよ。私が原子力委員会に入るなんんて、とても考えられなかったんです。
佐藤:パグウォッシュ会議で鈴木先生、日本政府のかたも知る機会になった、それとも近藤委員長経由ですか。

鈴木:六ケ所再処理工場に反対していたことで、当時の社会党がどうやら推薦してくれたらしい。社会党は連立政権に入ってましたので。それで、当時の政務官の津村(啓介)さん、今は浪人しちゃっているんです。彼が内閣府の政務官で原子力委員会を新しいメンバーにするとき、役所が用意したメンバーを見て、だいたいお年寄りのかたが原子力委員になるんです、引退されたかたがなる場合がおおい、65才以上のかた。津村さんがこれは駄目だ、と言って若い人をもっと入れなければいけない、と。原子力の立場も幅の広い人を考えろ、と言って、津村さんがいろんな人に聞いたらしいんです。候補の中の一人に私が入っていた。電力中央研究所だったので、そんなに反原発じゃないだろう、と。確かに当時は反原発ではなかった。

佐藤:反原発という括りかたは違いますね、科学者ですし、問題を指摘していたんですから。
鈴木:そう、反原発じゃないということで、当時の民主党もいいんじゃないの、という話になったみたいです。自民党もOK。近藤先生が委員長だったので、いいんじゃない、と言ったと思うんだけど。

佐藤:全党賛成しないと就任できない、反対する政治家はいなかったんですよ。参考人招致もそうですね。
鈴木:達ちゃん、いいんじゃないと(笑)
佐藤:鈴木先生が原子力委員会にいなかったら、事故当時の詳しい原子力に関する政府内部の議論は私は知らなかったですね。

鈴木:普通はね、分からないですよ。世の中にはそういう事例は一杯あると思いますよ。

佐藤:国会の議事録を読むと分るんですけど、会って肉声を知っていると議事録読むんでも身近に感じます。が・・会ったことない代議士の話では疎遠です。エネルギー問題、原発問題は国民の生活に影響大です。知りたいけど、どうして知るか?そこが分からないのだと思います。事故起きたけど、マスコミの情報じゃない一次情報をどうやって手に入れるのか、私は一番大切だと思って漁ってました。県庁、市役所にも詳しい人は少ないです。やはり国会の議事録ですよね。

事故後の混乱期に鈴木先生が北極星のように現われた。鈴木先生の話を聞いていれば、問題点が分る。当たり前のことを言っているというか、筋を通しているというか、胡麻も摺らずに、淡々と研究者科学者の立場から話されている、国賊とレッテル貼るほうがおかしいですよ。日本の将来を思って研究しているのに、国賊発言は無知ですよ。そう思います。そのかたは誤解の仕方が意図的で酷いですよね。


午前中の記者会見

鈴木:今日、午前中に記者会見やったですよ。反原発のグループの人たちと一緒に記者会見。今、経産省がやろうとしているのは、総括原価方式のような電力会社が原発に投資しやすいようにしようとしているんです。電気料金に上乗せしちゃう。それに反対するグループが7,8人呼びかけ人になって、反対の記者会見を開いた。みなさん、反原発の方々です。私だけ入った。
佐藤:鈴木先生が入るとバランスよくなりますね。反原発の偏り、党派性はどうもよくないですね、市民は参加しにくいですよ。推進派も反対派も同席して議論しないと、回答が偏りますね。
鈴木:そうそう。
佐藤:共産党系、社会党系、ノンポリは入れず。有識者は市民を上から目線で扱います。
鈴木原子力資料情報室みたいな、明らかに反原発のカラーを出しているグループと、フレズ・オブ・アース(FOE)とか、グリンピースとかはいいんです。でも大学の先生かたが私も含め入っているんですけど。その先生かたはもうちょっと客観的というか、そういうことでやって欲しいですよね。どちらでも参加できるようにやってほしいですよね。


今後の電力需要

佐藤:そうですね。エネルギー要る。反原発を言うのはいいとしても。電気なしでは暮らしが成り立たない生活になっている、これから電気はどうするの、ベースが語られていない。電気自動車、空飛ぶ自動車、自動貨物運転、自動宅配システム、そしてクラウドに生成AIと、電気の使用量が劇的に増える、と言われている。日本は人口減るのに電気の使用量は増えていくと言われるし、どうするの・・そこを語り合う場が無い。

鈴木:おっしゃる通りなんですよ。そういうことを、そうだよね、だからエネルギー需要どれだけ、本当に増えるか調べてみましょう、というテーマだったらいいんだけど、そんなこと言う奴は、けしからんと、必ず電力需要は減るんだ、と言っちゃうから喧嘩になっちゃう。
佐藤:人口集中は一局・加速している東京は、夜もピカピカです。東京は電気使用量は減らないでしょう。
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鈴木:7,8年は減ってます。原発動かしているんだけど、火力も動かしているんだけどCO2は減っている。理由はエネルギー効率が上がっていて自然エネルギー増えているからなんで。今の傾向を延長したら減っていくんです。
電力会社の予測をみると2030年ぐらいまでフラットです、ほぼ変わらない。人口減っていくのに、産業構造はどんどんソフト化しているので放置しておくと減るはずなんだけど、デジタル化だから電力喰いますね。ほぼとんとんで、水平の予測なんです。
ところが2035年から不思議なことにガーンと増えている。説明を聞くとデジタル化なんです。そしたらもっと早くから上がっていかなければいけない。デジタル化で増えているのはもちろん可能性としてはありうる、否定しませんが、実は他の研究機関のものを調べてみたんです、極端に差があるんですよ。分からないですよ

佐藤:分からないけど、ロボット、農業工場に移してロボット工場で農業、地上での魚の養殖などもあるし、運搬もそれを全部繋げるデータ交信は増えそうです。人は減らせるけど電気を使った仕事は増えそうですね。
鈴木:コンピューターチップのエネルギー消費効率はがんがんあがっている。電気は食うように思うけど機器それぞれの電力効率は凄い上がっているので、結果的に見ると増えてない。それがいままでの現状です。だからなんで電力需要が減っているかと言うとLEDにしようが、TVにしようが、洗濯機にしようが効率がガンガン上がっている。チップそのものの効率も凄い上がっている。何パーセントではないですよ。半分とか100%とか桁違いにあがる。計算能力があがるということは効率も上がる。パフォーマンス当たりのエネルギー効率から考えると二重に効くわけです。だから意外と増えないかもしれない。そこは分からないですね。

佐藤:介護ロボット要るだろうし、エネルギー反対、原発反対と言って電気を使うし、ふえなければいいけど、代替えエネルギー水素だと福島県では言ってます。
鈴木:だから電力需要見通しが真面目になされていないんです。一本線を引いてこうなっちゃうと、決めつけている。
今日の記者会見は東京でした、が私はオンラインで参加しました。会議自体がオンラインです。私も反原発運動の人たちと一緒になるのは考えたんだけど、とにかく声を挙げないと経産省はやりたい放題やっている。だから声を挙げた方がいいかな、と思っています。
佐藤:経済も考え方も自立していて、役人ではないという人の存在が少ない、重要です。鈴木先生の存在価値をはやらせなければいけませんね。

  鈴木:はははは、いますけどね。おっしゃる通りシステムなので個人がいくら頑張ってもガチガチになっちゃって、で、福島原発、あんだけ大きな事故が起きても変わらなかった。
リチャード・J・サミエルズさんが著書、『3・11 震災は日本を変えたのか』をご存知ですか。日本政治の専門家なんです。3・11のときにたまたま日本にいたんです。日本の研究者で日本にいたんです。彼はいろんな人にインタビューしている、私も話ました。一言でいうと日本は変わらないという結論。私はいやいや、さすがに今回は変わるんじゃないですか、と言ったんですけど、彼はいろいろインタビューしたけど、守旧派の力は強い。換えようとしている人たちも、真ん中の人たちが多いので、変えなきゃいけない、と言っている人たちは今までと同じような人たちだと、真ん中の人たちはどちらかというと、今のままでいいという人たちは換えたほうがいいよね、という人たちはあまり変わっていない、と。その人たちは絶対変えたくないという人たちに負けてしまうんだ、と。端的に言えばそういうことでした。本はもっと理論的に書いてます。その本が出た時に、さすがにサミエルさんこれ変わるでしょう、と言った。

佐藤:サミエル本を県図書館から借りて目を通してみます。ウィーンから戻られて、オンライン記者会見にも参加して、聞き取りも付き合っていただき元気で何よりです、対応ありがとうございます。2時間経ちましたので〆たいと思います。次回は辛い2010年代語りですけど・・。

鈴木:楽しく話ましょう!
佐藤:そうですね、文字にしてお知らせいたしますので、目を通してください、よろしくお願いします。

鈴木:長崎の話もやりましょう(笑)ありがとうございます。

ともにさようなら


 (2010年代を語るにつづく)

   

 鈴木達治郎先生2000年代を語る 読んでいただきありがとうございました。
  文責:佐藤敏宏