2022/10/01 幸家大郎さんに聞く  @大阪市 作成:佐藤敏宏
 その2        その1  その2  その3 

吉田保夫建築研究所派の人々  海賊(村上水軍)の末裔

佐藤:吉田保夫の建築方式だと現場で造る系だから、病原菌にも混じりやすいよね。病気ではないけど吉田一派も病原菌みたいなもんだから、現場で叩かれ生きぬく者達なので問題ないでしょう

  (共に笑う)

幸家:平たく言えばそういうことですよね。
佐藤:吉田学校には10年ぐらいいたんですか?
幸家:ほんの数年ですけどね(1991〜1993)。卒業してからも呼び出されては手伝ったりしてました。
佐藤:身体と手を動かして造るのが好きなのは、なんでだろうね?幸家さんは瀬戸内海の海賊・水軍の末裔じゃなかったんですか?

幸家:まあそうですね。
佐藤:たぶん海賊のしたっ端だから、海賊仕事だけじゃ喰えない部類で、いろいろ作っては稼いでいたんだ人たちの末端かな(笑)
幸家:瀬戸内海で通行料とっていた(笑)海賊は造ったりするのは、好きなはずないですよ。
佐藤:海賊のしたっ端っていろいろ造って生きていんじゃないかな?村上水軍の上層部だったら潮観る役や行き交う船を見張っていれば暮せたろうが。したっ端は海戦する場合は舟と漕ぎ手がいるから、そういうときに非常勤海賊に仕立てられちゃう(笑)借りだされると。命がけではないんだろうけど、船に乗って水先案内したり、船を漕いだりするわけだよね。そういう事が済んで海での仕事が無ければ丘にあがって畑仕事もしていたようですよ。海賊仕事以外に時間があまると色々な仕事をして暮らす。プロ海賊と派遣的な海賊がいたみたいだ。
近代に近づくと鉄の船に替わって、潮待ち港も海賊も要らなくなる。海図もあるから暗礁があると分って避ける、水先案内人要らなくなっちゃった。でどこかに行って消滅したのではないかな。その末裔が幸家さんで、いろいろ仕事してしまうんだと・・・俺の想像だけど、話しててそういう気がしてきた。根拠はないけど。幸家さんいろいろやるな?と不思議だった。派遣海賊の末裔だったしておこうか?

(共に笑う)

幸家:海賊だったみたいですよ。
佐藤:潮待ちの人のために遊女もいっぱいいたと言われているよ。近代化とともに潮待ち客が少なくなると、どこかに流れていく。流動性の高い暮らし方をしていたのではないかな。幸家さんは今も流動して生きていないと落ち着かない人で、動きまわると血が騒ぐ、元気がみなぎる流浪の民の末裔なのかもね。百姓の感性はもってないでしょう?

幸家:土地にへばりついて生きる、そういう辛抱はないですね。



第一章「海の民」と瀬戸内水軍
参照のこと

佐藤:
この屋上で野菜つくったりしてないものね。
幸家:前、やってましたけどね、あれは遊びですね。
佐藤:流動しつつ自分で仕事を請け始めて何軒つくりましたか。「幸家大郎クロニクル」幸家年表は出来ているんですか?
幸家:年表はないですけどHPにまとめて公開しました。プロの写真家に頼んで撮影したのは2,3軒だけですね。自分で撮ってあとで後悔したんですけど、そのデータだとHPの扱いも悪くって作りにくかったみたいです。扱い悪いのは画像が悪くって使えないみたいな感じで言われました。HPには自分の写真も放り込んでいますし、プロのデータも何人かいます。
佐藤:HPのフォーマットにはプロにお願いしてデータだけ幸家さんが入力しているんだ。
幸家:データと文言だけちょっと入れてます。


幸家さんHP扉絵 
ロの字の音響ボイドを持ち合わせたエンクロージャー。共鳴によってボイド部分に音響の濃淡が生じ、ボイド前後に柔らかく音響が響き渡る仕組み(制作ワークショップを開催/随時募集)幸家さんHPより

幸家大郎のHPより

佐藤:
ではHPを眺めながら初期作品から説明してもらいましょう(笑)
幸家:はい 初期ですと。ストーブですね。この前の炭なんかは・・
佐藤:飲み水を一生懸命研究してないのはなぜ?幸家さんと言えば最初は火、ロケットストーブ。最初は音、スピーカーだったのかな。

幸家:2008年あたりは火と音関係を適当に埋め込んだ感じですね。年代順にはなってないですね。HPは順番は前後しているんです。

佐藤:火と音を扱い、次に什器と、そうあるけど。どういう什器作品ですか。
幸家:2007年ぐらいの時のどこかの店舗内装の家具ですね。
佐藤:予算が無いなかで家具まで作っていたと。
幸家:これは図面で発注しましたね。

プロパンガスボンベの廃品利用として開発。垂直方向に分割し、ストーブ本体をケーシングする組み立て形式で、焚き口を蓄熱体に、ケーシングによりストーブを内包した中間部を放熱体としている。上部は砂利を使った蓄熱式簡易石釜として利用可能。

佐藤:その次は家だね。
幸家:これは2006年初期の住宅ですね。
佐藤:HPは記録作成しながら見るとして分からなさそう。聞こう『天川道具講』ってどういうことですか?
幸家:これは展覧会ワークショップをしました。
佐藤:幸家さんの活動の全てが記録されているんじゃない?
幸家:舩橋耕太郎は大工で自分で独立してやっています。この辺のPDFとかもダウンロードして、道具をテーマにしています。

佐藤:
お洒落なHPだね。データもいろいろ入っているし。誰も見てないのかな?HP見た人から注文きましたか?

幸家:この前、HP、先々週ぐらい出来たばかりです。今のところ注文の話はないですね。まだ告知してないんです。
これは、コテコテ、ヒュウラノラっていう名前の あつらえて作ったんです。昔の林業家が住んでいた佇まいを改修というか、剥がし人が集まれるようにした。それだけというパターンですね。デッキ作ったりとか、斜面に建っている小屋なんです。


佐藤:こういう処置の仕方は幸家さん上手よね。金が無いとアイデアが出ちゃうのかな、そうして困った人の環境を改善していく。
幸家:ヒュウラノラの詳細はPDFで見ることができます。どういう意図で、どういう空間をみせたかったかをちょっと書いています。 

佐藤:いい感じだね、図面もあるね。

幸家:一回り下の舩橋君とスタッフが書いたんです。彼は大阪が地元で仕事している若者です。施工1本なんだけど設計もできる感じです。
HPはざっと年代順でいうと・・・・全体を見ることにしますか。この辺りの内容は最近といえるもので、天川村のゲストハウスです。
佐藤:旅館とは違う幸家大郎建築が天川村にできたと。
幸家:古民家を改修しました。このクライアントさんは一緒に活動していた方なんですよ。元々は行政の人でして、退職して余生のライフワークで、この施設(坂屋半治郎)は人気です。1泊6,7千円です。村に食堂は無いんですよ。こういう施設があったり

低空飛行を続けてしまう原因は「どうにかしてよ、バージョン改修」

幸家:これも最近は建築でブラックジャックみたいな事をやりました。三棟連棟の店舗だったんですけど、ほぼ腐っていて、梁と柱が離れていたんです、壁もこけそうでして、ぶらぶら風に揺られて、なかから空が見えるんですよ。ギリギリよかったのはトラスだったんです。トラスを組み直して挟むだら、やっといけたみたいな感じでした。カットスタジオ、2棟使って、1棟はがらんどうにして、残して、マーケットやったりして使えるようにしました。内部がこれです。(IDREN+)

佐藤:資本がない、若い人がこれからビジネスやっていうとする。そういう人たちが幸家さんに改修を依頼してくるんだね。
幸家:そうなんですよ。「どうにかして!」みたいな感じですね。どうにかしてバージョンの一個前がこれです。
佐藤:長期・超低空飛行の原因はそれだね!「どうにかしてバージョン」が一杯押し寄せてきている。
幸家:予算は無いんだけど、大阪の片田舎に普通の倉庫借りて、その中でスポーツジムをやりたいとか。

佐藤:改修工事だけど、写真撮ってみるとお洒落に見えるから。内部はどうなっているのか分らないけど、どうにかして建築がこのように変身しちゃうと、新築で依頼するよりダンセンいいじゃないか?
幸家:どうにかして!でシャッター開けたときの、扉だけ恰好つけたかったらしいんです。扉一面だけやるのもちょっと、僕たちは面白くないし、どうみたいな話しをしてて、あげくの果て海上コンテナを差し込んで、これを入口にして、上にも床を貼れるし、ラウンジもできるし、ギャラリーみたいなのあるし、一枚の扉を作るのはやめて。
佐藤:コンテナは入口通路だけどキマイラ入り口となり、コンテナの裏表活かして場を変えてしまったと。

詳細をHPで見る

幸家
:入口はコンテナの脇に付いていて、そこから入ります。コンテナの外壁は看板にそのまま活かしてます。これは安くすみました。
佐藤:これだと安く済み場が変わるし、現代アート風だね。
幸家:で、コンテナの上に観客席を作って、クライミングのコンペとかちょっと遊べるような感じにして、これは一人で作りました。



佐藤:アート風手さばきによって、物置をクラブの場に変えて活かす、少数の手数で若者の場を、造作しているね。
幸家:これはスポーツジムなんです、これを作って、クライミング事務に練習しに来る子が美容室やりたいというので「これでやりたいから助けて・・・」みたいな感じで。これも、どうにかしてバージョンやったんですよ。数百万円で扉一枚作るみたいなこと言われて、「これはねーやっても効果でないので、コンテナ差し込むだけだったら安いし、いろいろ出来るよ」と提案。レッカー来てもらって吊っておろして、ゴロゴロと定位置に座らして、半分差し込んでますね。

佐藤:どうにかしてやる建築家が幸家大郎だということだね、なるほど、どうにかしてバージョンが連続していたわけね。
幸家:ちょっと疲れましたけど(笑)
佐藤:デザイン料、アイディア費は無料だものね。
幸家:工費の一割はもらってます。施工でも稼ぐしかないです。
佐藤:一割は工事経費だろうから、3割もらわないと喰えないよね。
幸家:それではでかすぎるので無理ですよね。(笑)自分で工事に入ったので、元請けしないとこういう工事はできないです。それでなんとか勘弁してみたいな感じです。
佐藤:なるほど、それをやってしまうと魅力的でやりがいも大きいし、「どうにかしてよ!」バージョンから、幸家さんは脚抜け出来なくなるよね(笑)
幸家そうなんです!その間に自分が工事に入ったり、現場にずっと入るじゃないですか、だから工事終わったあと、やたらに疲れて数ヵ月、だら〜としてしまって。次にはコロナに感染して(笑)
佐藤:もう、男性更年期も来る、オジサンになってきているのだから、どこかで工事仕事は区分けしないと「どうにかしてバージョン」は継続できないよね。
幸家:本当はこの辺のネタをつかって運営するみたいなことをやっていきたいですけどね。
佐藤:年取ってきたから、体力無いとか言って、そういうやり方に切り替えたらいいんじゃないのかな。
幸家:それもあって、HPつくったのもあった(笑)
佐藤:幸家さんは、予算ない案件でもクライアントにとって、いいの造ってあげるんだけど、だけど、自身は低空飛行から脱しられなくなってしまう(笑)次はさらに低空飛行か?



 その3へ続く