HOME 文責・作成・佐藤敏宏 | 佐藤敏宏の京都ことば閲覧録 2017年1月27日から2月2日 |
牧野研造さん 2017年1月27日京都市内にて その1 その2 その3 その4 |
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8年前でした 2009年夏京都 牧野さん記録へ (絵:2009年夏京都) |
その 1 牧野さん事務所の大きなテーブルに腰掛けている2人 佐藤:8年ぶりの(聞き取り)ことば悦覧活動を始めます 牧野:とりあえず再会を祝い乾杯から 佐藤:あそれはいいですね、牧野さんの近況からお願いします。では始めましょう。準備していただいている紙は資料ですか 牧野:なにもないですがざっと見繕っておきました 佐藤:コップないでしょうか。炭酸飛ばさないと俺、ビールは悪酔いするのでお願いします 牧野:あ、そうですか。じゃー (牧野さんコップを取りに立ち上がる、コップにビールを注ぎ込む音) 佐藤:牧野さんコップから直 呑みでいいの 牧野:僕は缶で直呑みで大丈夫です おひさしぶりです (コップが当たる音、ビールが注がれのどがなる音) 佐藤:自慢でもなんでもいいですから近況ですね 牧野:自慢!今日、一件着工したところです 佐藤;それは おめでとうございます! すでにビールで赤ら顔・酔っている佐藤 牧野:今はビルの改修プロジェクトを一件やっていて、佐藤さんとお会いするのはだいぶ久しぶりだから、その間にいろんな事があったんですけど。 特徴としては住宅の案件が多いとか、そういうことではなくって。かなり仕事の種類がバラバラなねすね ふふふふ。 佐藤:いいじゃないですか、多種多様な仕事に対応できるって 牧野:最近毎年やっているのは北海道でランドスケープの仕事やっています 佐藤:コンペで一位になり実施が始まったんでしょう 牧野:一位というか8組コンペで選ばれて。そこで実作を作って、お披露目するというのがあったですけど。2回目の。北海道ガーデンショーというイベントがあるんですけど。2回目のときはコンペじゃなくって指名で招待作家というくくりなんですけど。 佐藤:招待されたのは去年ですか 牧野:一昨年(2015年)です。それがこの写真です。この一つ前にもっと小さい仕事がありました。この写真のランドスケープの仕事は大雪山、北海道のちょうと真ん中ぐらいに在る山系がある、その山並みを見渡せる岡の上に作らせてもらったんです。ドレスガーデン(Dress Garden KANT) というプロジェクトなんですけど (写真 大塚記憲) 佐藤:ああそうみえる、全体の形がドレスが広がっているように見える。ここ庭の先端に立って写真を撮ると、良い感じーだね 牧野:そういうことです。 佐藤:映画のタイタニックのクライマックスで舳先で手を大きく広げたシーンがありましたね ふふふふ (絵 web より) 牧野:そうですふふふふ 佐藤:ここに彼氏と彼女が一緒に立って、写真を撮ってもらうと (写真 大塚記憲) 牧野:で、これが凄くお客さん来て。集客の効果があって。なのでこれに続く依頼があります。 佐藤:続く依頼〜! 素晴らしいですね〜。この先端に立ち写真を撮ると北海道に来た、北海道の大地に立ったという証になると 牧野:いや。すごく遠い所に在るんですね。行くのに時間がかかる。なのでどうやってここまで楽しみにして来てもらえるかということを真剣に考えないと、なななか来てもらえない。 佐藤:映画の舞台になったとかですか。アジアの観光客が押し寄せて来るとの話題とは逆で、設計者や関係者が物語を提案して来ていただくと 牧野:モデルの人がここに立って。これはインターネットの電子書籍なんですけれども。そういうところに載せてもらったりとか。それで人が来ると。 佐藤:一つの情報がメディアミックスされて多様な行動が起きちゃうんですね 牧野:そうですね。またここで写真を撮った人がインターネットに投稿する。拡散されるんです。 佐藤:メディアミックスの相乗効果が連なり重なって、多様な事態が生まれ続けると。ここに参加されるきっかけはどのようにして知ったんですか 牧野:コンペは、暇だった時期があって。ふふふ。見ていたら。 佐藤:建築のコンペとは異なるように思いますが 牧野:建築のコンペを探しているときに、建築家でもファッションデザイナーでも誰でもご参加くださいと書いてありましたね。当時就職を希望してくれた子がいたんですけど。その子を雇えるような仕事量が無かったので。「コンペでもやる?」って二人でやって。 それで一回目の2012年ぐらいですか、作らせてもらったのが、写真ないんですが、これの小さいものを造りました。 佐藤:計画だけで、土を掘ったりと造園工事は自分たちで手を動かかさないんですか 牧野:盛り土ですか 佐藤:施工は自分でしないんですか 牧野:します。ちょっとですが。 (絵:資料の一部を佐藤が撮影) 佐藤:するの ふふふふ 土木工事もやってしまったと 牧野:土工事と躯体を設置して花を植えたりというのを、自分が全部植えるわけじゃないんですけども。造園のチームを作って。 佐藤:北海道の現地で一時的にチームを作って、仕事にかかるということですか、京都からチームを引き連れていくんですか 牧野:そういう方もいますし、北海道の方もいます。両方います。すごく田舎だったりすると職人さんが居なかったりするので。結構遠い所からも。北海道と一括りになっているですけど。札幌と釧路はだいぶ離れている。京都と東京以上に離れている所もたくさんあるんですが。北海道の方は僕らが遠いと思う所からでもすぐ行けるぐらいの感覚がある。 佐藤:冬は仕事にならないでしょうからね。正式名称を教えてください 牧野:ドレスガーデン・カンテ。ここは高梨沙羅ちゃんとか、原田選手とかスキーのジャンプ選手が数多く出た町で。それをテーマとして盛り込んでほしいという要望があったので。 立つ所も少しだけ傾斜しているんです。もたれかかれるようになっていて。カンテというのはスキーのジャンプの踏切台のことです。 佐藤:スキーのジャンプ台も模しているわけですね。なるほど。作って公開したらお客さんの反応がよかったということですが、牧野さんのなかでは建築との関係からみてどうですか 牧野:建築と関係づいているとは思うですけれども。ランドスケープの作家さんのやりかたを当時知らなかったので。色々勉強になることが多かったんですけども。考えるプロセスが僕とは違う。建築を学んだ人とは違うことが多いんですね。で、建築を学んだ考え方とか、仕事の進め方でランドスケープを作ると、ランドスケープの方が作ったものとは一寸違うものになるかなーと思って。その所ですね。 佐藤:何がどのように違うんですか 牧野:たぶん考え方が、どちらかと言うとプロジェクトとして考えている面が大きくって。 たとえば本当にこの町に人が来るっていうことを、ごく普通に考えたら「なかなか来ないだろうな」と。 で作品をだだ設置するということは、やめようと。作品じゃなくって来た人が主役になるものを作った方が、人を集めやすいかなーと。そこが一つありまして。 自分の心の中の世界を作品として表象させるのは、広大な自然の前では無力に思えて、"作品"を見にお客さんが来るかなーと、普通の頭で、普通に考えたら、”作品”が価値があってもなかなか難しいかもしれないなーと思って。
だったら僕の役割としては、もうちょっと入口になるような。50%以上の人が分かるようなものを作ろうと。で、作品が主役じゃなくって、そこに立った人が主役で、これを誰が作ったとか、そんなことはまったく気にならないで。名所に訪れたときにこの名所の作者は誰か?ほとんど思いませんし。 同じようにあそこに行って写真を撮りたいと。それだけでいいと。 そこからもうちょっとランドスケープに興味がある方とか、それから深く文化的な理解を持てる方というのは、これは入口をして他のランドスケープの作家さんたちが作ったのを読み込んでいってもらうと。イベント自体は成功と。 佐藤:高松先生の弟子とは思えない発言ですね 牧野:ふふふそうですか。でも結果的には目立つものにはなったんですけど 佐藤:ははははは 取り組む姿勢がちょっと違う 牧野:高松先生の名前を出されると次に言うのが難しいですけど。できたら自分の人格とキャラクターと性格が、あんまり無理をしないような方向に伸びていった方がいいかな!と自分では思っている。で、突飛なことを考えるんじゃなくって普通の事を普通に考えていくのを、かなり考えればそんなに普通じゃなくって面白い。 佐藤:普通を定義するのは難しいでしょう 牧野:半分以上の人が共感できるような事ってあるじゃないですか。 佐藤:習慣とか伝統とかになったり、それらに倣うことにもなりますよね 牧野:だんだん普通って時代と一緒に変わっていくはずなんで。だから今見て当たり前のだと思い込んでいると、そのまま当てはめるんじゃなくって、それを本当に普通はどうしたほうがいいかなーと。そう考えていくと。ちょっと考えたらあんまりおもしろくないものになっちゃうかもしれません。もっと考えたらたぶん、面白くって共感ができるものに成るんじゃないかなーと最近思うんです。 佐藤:なるほど。根気が要りますね 牧野:あと発想の転換とか、そういう技術は要ると思うですけど。一緒に作るかたとか、施工もそうですし、お施主さんもそうですし。どれだけ共感しながら作っていく。その方が、当たり前ですけれども。 佐藤:毎年毎年この場所に行くと、お花が咲いている。そうするには手入れしないと、計画のような姿にはなりませんよね 牧野:そこが来る方の数と実際のメンテナンスにかけられるコストと人というのが全部関係してくるんですね。 佐藤:この仕事は永久に残るとうことですか 牧野:そのサイクルが回っていく間は残ると思います 佐藤:それでは永遠に残ることを願って、次の仕事の話を聞かせてください その2へ |