耐震強度偽装問題 審議 内容 を見やすくしてみました   home
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    164-衆-国土交通委員会-20号 平成18年05月16 

森本委員 ありがとうございました。 ほかの士業の関係の方でもそうした保険はあるんですね。ただ、建築の場合は額が相当な額に上りますので、そのあたりが非常に微妙な問題があるのかなということを私も認識させていただいておるんですが、ありがとうございました。そのあたりは、早速もう少しシビアに研究もさせていただきたいというふうに考えさせていただきます。 あと、建築士の身分の独立性ということをお聞かせいただきたいんですが、これは宮本参考人と小倉参考人に限らせていただいて、お願いをさせていただきます。 設計者と施工者が請負契約の関係にあることは極めて異質なんですが、ただ、私ども、設計、施工、監理というのは、三権分立というようなことを言うておるんですけれども、やはり設計、監理が分離するところに非常に難しさも出てくるように、ちょっと読ませていただきますと、御指摘をいただいておるということでございますので。 しかし、今回の姉歯問題は、そこがある意味では本質なところでもございますので、小倉参考人は、私、小倉参考人のいろいろな、こう見せていただいておりますと、構造設計は下請になることを法的に禁止すべきだという思いは、それはちょっと私の解釈間違い、私の言い方が間違ったかわかりませんけれども、いわゆる構造設計がやや建築士の下請になるような位置づけに今あるんではないかということの中、これを変えていくことが必要なんだということなんですけれども、そのことについて御意見を、さらにもう少し丁寧に小倉参考人からは御説明いただけたらというふうに思っておりますので、お二人によろしくお願いします。


宮本参考人 設計と施工というのは、日本ではどうも完全に分離するということは社会通念からなかなかできないことではないかと思いますね。しかし、私は、やはり 設計という行為の独立性ということは非常に大事だと思うんですね。 それと同時に、例えば、公共性の非常に高いというか強い建物、例えば公共建築とか、そうすると、それは設計施工は今もう完全に分離して実際に建設されているわけです。そうしますと、例えばマンションのようなものというのは何十戸というか、そういうような、戸建てと、一戸一戸と違いますから、一つの公共性が非常に強いものと思います。そういう場合などは、設計と施工というのは分離してやるのが、独立してやるのが一番理想的だと思うんです。  ただし、一つの施工、建築主の流れの中で、今度のような事件は、設計施工は一緒というより建築主も一緒でありまして、全部何か一つのグループの中でやっているという、これはもう非常に異常な行為だと思っています。 ですから、やはり基本的には、設計施工というものは、私は、完全になくすことはもちろんできませんけれども、しかし、設計と施工の独立してやるべき公共建築とか公共性の強いものはそうしてやった方がいいんではないかと考えております。 以上です。


小倉参考人 まず、設計施工の問題でございますが、社会通念上、日本というのは、ゼネコンが昔から設計施工をしてきた、世の中、世界的にも非常に特異なケースです。私もこれを壊すということはまず無理ではないかと思いますが、設計施工というのはあくまでも性善説にのっとった制度でございますので、これを何らかの形でもうちょっと第三者的にする。設計施工の中でも、例えば○○建設が、設計部が工事をするということはあり得るわけですけれども、設計契約と施工契約、これをはっきり分離するとか、今のやり方の中でも契約をもう少し明確にすれば、もうちょっと第三者的に内容がわかりやすくなる。そういう改良の余地はあると思いますし、特に、設計者が施工者とペアになって、いわゆる欧米流に言うデザインビルドというようなことになれば、もう少し消費者に対しては歓迎される制度になるのではないかというふうに思います。

 それから、先ほどの職能別の構造の専門家が下請にという件でございますが、元請、下請という概念は我々設計者同士では持っておりませんで、これはイコールパートナーでございます。構造の専門家が我々と仕事をするときには、やはり我々の設計にふさわしい構造の設計者をパートナーとして迎えて、設計を一緒にしていく。上下の関係はありません。ただ、契約上はやはり私どもが一括して受けたものの一部を担当してもらうので、費用をこちらからお支払いするということはございます。 ですから、私どもは、構造の専門家はイコールパートナーであって、必要不可欠でございます。幾ら建築士といえども、今の複雑な構造計算を私どもだけでやるわけにはいきません。仕事の仕方としても、最初はいろいろな知恵を出し合いながらいって、最終的には構造の専門図面、構造計算をパートナーにしていただくわけですから、我々としては、建物全体の統括をしながら意匠の設計をする、その全体の統括の大きな方針のもとで構造の専門家に構造の設計をしていただくというような形の分業が望ましいというふうに思っておるわけでございます。


森本委員 ありがとうございました。 それでは、これは日置参考人にお願いをさせていただきます。時間もありませんので、一人に限らせていただきます。 耐震偽装物件のマンションの住民の法的救済の課題があるというふうに考えています。民事訴訟、それから行政訴訟またはADRには幾つかの問題点、課題があるというふうに考えておりますが、ポイントだけ御指摘いただけたらと思うんですが。非常にこれは説明が長くなりますか。そしたら、一つだけでも結構です。例だけでも結構でございます。

日置参考人 やはり、一つは、確認等が抱える問題について言うと、それを実際に係争していくことが非常に難しいという問題です。これは、先ほども言ったように、周辺の住民等が争うような場合に資料が出てこない、行政訴訟に行っても訴えの利益等で争うことが難しいという問題があります。 それから、民事上被害者の方から訴える場合に、やはり、技術的に問題を究明するというのは、裁判で、証拠で証明するというレベルで技術的な問題をはっきりさせるというのは、費用、時間、そういったものがかなりかかります。ほかでもそうですけれども、欠陥住宅の問題というのは、やはりもうローンを組んで、手元のお金をぎりぎりまで出してその家に入っているわけですよね。そこで問題が起こった場合に、費用と時間を出して対応するというのは極めて難しい。そういう意味では、そこの問題がまず第一にあるというふうに思います。


森本委員 ありがとうございます。 時間もございませんので、最後に一つ、これは宮本参考人か日置参考人が書かれておったことの中で、全総廃止されて、将来、地域の自主性を反映した都市計画決定のためには建築家の役割がますます重要になってまいります、今前段でお話しさせていただいたこともそのことにつながるんじゃないかと思います。 建築家の役割を再評価するときに来ておると思いますが、このあたりについて、これは国際的にもこれから日本が大事な立場に立つというふうに私は認識していますので、もう時間があと三分ぐらいしか残っておりませんので、お二方でお答えいただければ大変ありがたいと思っております。よろしくお願いします。

宮本参考人 手短にお答えいたしますが、建築士会は、たまたま、各都道府県にもちろんありますけれども、大体、地方事務所ごとに支部があります。そうしますと、その人たちが地域と日常生活の中で非常に密着しておりまして、特に、最近、まちづくりそれから景観法、そういったものが施行されました。そんなわけで、非常に地域中心型の、そういった意味で、士会の皆さんはまちづくりに積極的に取り組んでおられるというのが大きな特徴です。 士会連合会としましても、そういった運動に内部で助成をいたしまして、どんどん、市民運動、市民参加で一緒にやってもらいたい、そういうような傾向にございまして、目下、大分いい効果を上げております。
 以上でございます。

日置参考人 やはり、これからの地域づくり、まちづくりの上で建築家が専門家として果たす役割は大きくて、まさに今おっしゃられたように、地域に密着した、地域で評価される建築士、その人が行政の計画も地域の視点でチェックする、あるいは住民の意見なんかも専門家としてチェックするというような形で、行政と住民の間に入ってあるべき地域像を確立していく、そういった形で職能を発揮して尊敬を受けていく、そういった姿が望ましいのではないかというふうに思います。

森本委員 ありがとうございました。 先ほど日置参考人が指摘された、地域紛争は法的な中でどうにもならない悔しさのようなものを地域住民の皆さんもお持ちであるという現実を目の当たりにして、やはりこれは これからしっかりと考えていかなければならない課題だというふうに思っておりますので、建築基準法の改正だけでなしに、この課題も私どもしっかりこれから取り組ませていただきますので。 きょうはどうもありがとうございました。





○林委員長 伊藤渉君。

伊藤(渉)委員 公明党の伊藤渉でございます。 本日は、お忙しい中当委員会のためにお時間をいただきまして、大変にありがとうございます。早速、質問に入らせていただきたいと思います。 まず冒頭は、久保教授に、技術者の育成という観点から御質問をいたします。 近年の風潮として、経済性が重要視される一方で、安全性といった当然 確保されるべきものが 失われている、これはさまざまな分野で散見をされております。今、建築に携わる教育者というお立場から、肌で感じていらっしゃる教育現場での、特に技術者の育成、御専門が耐震ということで、日本はある意味、耐震設計、耐震構造というのは、世界広しといえどもこれほど難しいお国柄はないと私は思うわけでございますが、教育現場での問題点、あるいは懸念をされていること、これについて御教示いただければと思います。

久保参考人 議員の御質問でございますけれども、教育現場で建築構造が今何か問題を抱えているかというと、差し迫っては特にないと思います。 若い学生も、次の世代を担う、大学院に進学する学生もおりますし。やはり、建築学科というのが日本のシステムとして工学部の中にございまして、特に私どもの大学は教養課程から進学という制度のときに、建築という名前でデザインに行く方は比率的には多いのは事実でございますけれども、後継者ということでは、私どもは育てておるつもりでございますし、今後、私の後の人間も必要な人間がそろっているという形でございます。


伊藤(渉)委員 ありがとうございます。 続いて、やはり同じような観点から、宮本参考人と小倉参考人にお聞きをいたします。 今回の法改正に当たって、公明党としてもさまざまなヒアリングをしてまいりました。そんな中で、私が持った認識としては、先ほど小倉参考人からも専門別の資格制度というお話がありましたけれども、構造を専門とする建築士の育成、増員をやはりしていかないと、制度を幾らつくってもそれを専門的にやる方の絶対的な人数が足りないんじゃないかというような認識を持ちました。 そもそもの認識が違っていれば別ですけれども、そういう認識の上で、そのために今からなすべきこと、これをちょっと御専門の立場から御助言をいただきたいと思います。

宮本参考人 宮本です。 構造専門の人が設計する人の中で非常に少ないという現実がございます。例えば、私は長野県で仕事をしているんですが、長野県に一級建築士が2名以上常時おります設計事務所が約200社ぐらいございます。そのうち、構造計算を専門にやる事務所15ぐらいしかございません。そのようにして、非常に、まず少ないということは言えます。 それから、例えば、設計事務所の200社の中で構造の専門のエンジニアを常時所員として抱えている事務所というのは1社しかありません。そうすると、ほとんどの設計事務所は構造の事務所と、外注という言葉は余りよくないんですけれども、コラボレートして、協力し合ってやっていく、そういう実態にあります。  ですから、今、御質問いただきましたとおり、私ども建築士会としましては、やはり、建築士のいわば素養として、とにかく、最初から構造は構造、意匠は意匠と分けるのではなくて、まず素養として構造も勉強せにゃいかぬ意匠も勉強せにゃいかぬというわけで、ある程度、基礎的素養というものが今どうも不足しているのではないか。そういうところに力を入れて、やはり、CPDといいますか、継続能力開発とかそういったことをもっともっと、とにかく積極的に、自主的にやってもらうように考えております。 資格でただぴしゃっと決めるのは、なかなか、これは問題がまた出ると思いますが、一つは、建築基準法で言う構造の、例えばルート二とかルート三という相当高度なものがありますが、そういったものは建築士の資格を持っていてもさらにそういった研修をして認定をしてもらう、そういう人でないとそういう仕事はできないというふうにこれはやるべきではないか。これはすぐ手をつけられる問題だと思って、そんなふうに心がけております。 以上でございます。

小倉参考人 構造設計者の育成、これは大学レベル、日本建築学会、学会レベルでも、実は非常に多くの先生方とそれから学生がございます。それから、特に日本の構造というのは世界的に見ても非常に充実したものでございまして、それがなぜ逆に構造事務所の数が減ってしまうかというのは、テーマとしては非常におもしろいテーマですが、それを開設し成功していく成り立たない一つの条件があるわけで、これは設計料の問題だというふうに思います。 特にこの問題につきましては、姉歯元建築士がどのぐらいの設計料を一件当たりもらっていたかというような状況と彼の生活のレベルを考えていただくと大体類推できると思いますけれども、そういうような健全な技術者が成り立ちにくい条件はやはり設計料でございまして、これは元請と言われる設計事務所のもらうフィーが少ないものですから、それに対して構造のフィーというのは、大体15%前後になると思いますけれども、非常にわずかなものになってしまう。  これも、我々がいつも直面している、設計者を入札で選ぶというような法律があるというところも直接の大きな原因でございまして、我々としてもぜひ健全な構造事務所がもっと育ってほしいと思いますし、我々が元請になったときにもうちょっと払いたいという気持ちは十分ございます。そういう点も、実は会計法に起因する問題としてぜひ議論していただければと思っております。

伊藤(渉)委員 今の御質問、さらに小倉参考人にお聞きしたいと思いますけれども、今のお話で、もう一回確認ですが、設計コスト、トータル、合計としての設計コストは大体いいけれども、その中で、例えば意匠の方に行く設計料と構造の方に行く設計料の、その分配に問題があるのか

小倉参考人 分配は、大体工事費の割合によってなされるのが通常でございますから、全体の工事費の割合の設計料の割合で大体どこでも決められていると思います。 ただ、パイ全体が小さいものですから、全体の設計料が小さいものですから、それを割っていくわけで、それぞれ設備とか構造とか、我々も含めて、もらう額というのは非常にわずかで、それがやはり、特に構造のような専門化する事務所を構えるということが、そのわずかな設計料ではなかなか難しくなっているというのが現実だと思います。


伊藤(渉)委員 ありがとうございます。 続いて、設計施工のあり方については先ほど来御質問がありました。現実論としては、なかなか完全に分離するのは難しいというような皆様の御意見であったと理解をいたしました。 その上で、建築主、設計者、施工者、この責任の明確化という観点からお伺いをいたします。 これは弁護士の日置先生にお伺いいたしたいと思いますけれども、今回の事件をきっかけにこの法改正は起こっております。しかし、大多数のこういった建築に携わる方々は、当然に、法を犯して利益を追求することなど今もって考えられない、健全な建築に携わる方が大多数だと私は思っております。 ただ、現実、こうしてこのような問題が発生してしまった以上、さまざまな防止措置を施さなければならないのは当然でございます。その意味で、建築主、設計者、施工者の責任を明確にする必要があると思いますし、そのためには、それぞれの立場での結果責任を求めなければならないと考えております。 今回の法改正では、建築士に対する罰則強化というのが主に盛り込まれておりますけれども、建築主あるいは施工者に対する罰則、これは、今までいろいろな訴訟を見られてきて、整っているかどうかというところについて御意見をお聞かせください。

日置参考人 先ほどもお話ししましたが、建築主あるいは施工者に関して言いますと、違法な建築基準法違反があるという設計だということを知っていたいなかった、あるいは知る機会があったかという点が非常に大きいと思います。建築主と設計者が共謀して基準法を無視したような設計を行った、そういうものを施主の方も望んだ、そういうケースに関しては、当然、建築主に関しても行政上あるいは刑事上の責任を追及するということはあっていいかというふうに思います。
 
ただし、多くの場合、建築主は建築の専門家ではないです。特に個人住宅においてはそうです。そういった場合に、どこまで基準法違反、あるいは、そういうものを認識しているのか、設計者が説明しているのかというところの問題をきっちりと判断する必要があろうかと思います。それを説明されないで、結果的に基準法違反があったからということで処罰されるということはおかしいと思います。ただ、結果的に、行政上、是正とかの責任を負わされるということは 一面やむを得ないのかなというふうに思います。

 それから、施工者についてですと、施工者の側はある程度建築的な知識がありますから、明確な故意による違法行為あるいは明確なミスというようなものについては、専門家として気づく機会があるのではないかということで、建築主よりは、ある意味厳しい責任が問われる場合が広がるかというふうに思います。 あくまでも、認識していたかどうか、認識することができたかどうかという点をきっちり考えていくことが必要かなというふうに思います。


伊藤(渉)委員 ありがとうございます。 では、フェールセーフという言葉がありますけれども、そういった観点からお伺いをします。 これも党内でさまざま議論していく中で、完全に故意的に今回のような事件が発生すると、買い主である一般の住人等では到底見破ることができないと思います。そうすると、やはり最後の砦はある意味、チェック機関、ここにかかってくるのかな。フェールセーフという考え方は、御存じのとおり、万が一失敗があっても安全側に傾くようにしておく、そういう考え方でございます。

 今回の法改正では、公正中立な第三者機関によって建築確認段階のチェック機能を設置すると考えていますけれども、実質的なチェック機能を向上するためには、やはりヒューマンエラーの低減ですとかダブルチェックの導入ですとか、実際の設計実務を適宜経験するために、第三者機関と設計会社あるいは建築主等との人事交流というか、本当の現場をやはり理解していくという努力も必要だと思うんですけれども、このチェック機能の向上のために今後とるべき方法について、これは済みません、宮本参考人と小倉参考人にお伺いをしたいと思います。

宮本参考人 宮本です。 私は、今御質問いただきましたとおりでございまして、チェック機能を例えば何段階かやりますと、問題は、例えば確認のところで一応完璧にピアチェックされて、それが満点であったとしても、今度は工事が始まりました場合に、現場監理というのが非常に大事だと思うんです。 私どもは、現場というのは、大体一週間に最低一回ぐらい、現場で設計者が、現場の状況の工程の検査あるいは材料の使われ方の検査、あるいは仕様書どおりにやっているかというようなことを大体一週間に一遍ぐらいやらなければ、実際に工事はどんどん進んじゃいますから、完璧に確認できません。 ところが、現状は恐らく、そういった一週間に一度の、例えば私どもはそれを定例監理とかと呼んでいますけれども、そういった監理業務を十分に設計者側もやらなくちゃ、幾ら検査検査で検査にお願いしても現場はうまくいかないと思うんですね。 ですから、私どもは、今度の教訓として一番大事なものは、現場の監理、それを一週間に最低一回は監理するんだ、それから、中間でいろいろな工程監理を、極端に言えば毎日やってもいいわけですから、そこまできめ細かくやらなければ、実際に完全なものはできないのではないか、そんなふうに考えております。 以上です。

小倉参考人 フェールセーフということに対して、チェック機関のレベルの向上ということはとても必要なことだと思います。特にコンピューターによる計算が導入されてから、本来は、構造設計、構造デザインということの中に構造計算があったわけですけれども、コンピューターソフトが発達するにつれて、だんだん構造設計、大きな物の考え方から詰めていくというよりは、非常に容易に情報、データをインプットしてアウトプットが出てくるというような、全体を把握する力を かなりの設計者あるいは チェック機関の方々が なくされているとすれば、それはやはり、十分構造の設計を経験した人がそういうチェック機関に入っていくべきではないかというふうに思います。 チェックというのは、いろいろ建築の中では行われているわけですけれども、我が国で、設計契約の中で、公的機関によるチェック以外にも我々としてはしておりますが、他の国、特にほかの国と比べてみると、銀行のローンの貸し付けのときのチェック、これが完全に担保物件になり得るかどうかというようなチェックとか、あるいは、保険に入るときに、これは保険の対象になるかどうかというときのチェック、ここら辺が欠けているように思いまして、それは消費者保護の視点からも、いろいろな分野からのチェックが建築になされるべきではないかと思っております。


伊藤(渉)委員 ありがとうございます。 では最後に、保険制度の構築について日置参考人にお伺いをします。 今回の法改正では、保険への加入の有無など、瑕疵担保責任の履行に関する情報の開示、これを義務づけることとしております。さらに進んで、保険への加入など、瑕疵担保責任の履行確保措置を義務づけることについては、被災者救済に必要な保険金の支払いが安定的に確保されるかどうか、あるいは、故意、重過失によって瑕疵が生じた場合の取り扱いをどうするのか等々、多くの課題があって引き続き検討という現状でございます。 では、この保険制度が確立をできると仮定をしてだれが保険に加入すべきなのか、建築主、設計者、施工者、それぞれがそれぞれの成果物について責任を持つために、おのおのが保険に加入すべきなのか、この加入者の設定について参考までに御意見をお聞かせください。

日置参考人 消費者の立場からいえば、基本的には、購入あるいは請負でやった場合の瑕疵担保ということで、過失責任等の有無に関係なく、瑕疵があれば保険金が支払われれば、それで救済はできるというふうに思います。あとは、そのときに、今度は保険会社が、設計ミスがあったような場合に、設計者に求償するか。そうすると、設計者が自分の負担で負担するのか、さらに自分で保険を掛けて対応するのかといった、いわば建てて供給する側の内部負担の問題に実質的にはなるんじゃないかと思います。 そういう意味では、出口である瑕疵担保のところがきっちりされれば、消費者の救済としては原則的にはいいのではないか。ただし、途中で増改築の場合だとか、それにおさまらないような事例というのがあるので、やはり建築家の賠償責任というのも必要な側面は残るのではないかというふうに思います。

伊藤(渉)委員 ありがとうございました。 いずれにしましても、きょういただいた貴重な御意見を参考にして、本当に現場で起こっていることをしっかり把握して、本当に実際に物をつくる方々の役に立つ制度、そういったものをつくり上げていきたいと改めて決意を申し上げて、質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。





林委員長 穀田恵二君。

穀田委員 私は日本共産党の穀田恵二です。 きょうは、参考人の皆様方は、貴重な御意見を本当にありがとうございます。私も質問いたします。座らせていただきます。 まず、日置参考人にお聞きします。 私は、この一連の耐震強度偽装事件の要因また背景に規制緩和があると考えています。そこで、私どもが資料としていただいた大阪弁護士会の言を少し参考にしたいと思うんです。 これでは、「チェックする者がチェックを受ける者に雇われるシステムでは公正なチェックは期待できない。建築確認検査業務を全くの自由競争に委ねてしまえば、必然的に市場原理が導入され、「安く早く緩く通す」業者が生き残ることとなり、その公正中立性は瓦解することになる。したがって、真の民間開放は、民間の人材を活用しつつも、市場原理を排除する制度として再構築されるべきである。」このように言っております。 私どもは、共産党として、建築基準法の改正に当たっての提言を発表していまして、少なくとも建築確認については非営利の法人とし、検査業務は地方自治体からの委託によって行うという考え方を提案しています。この点についての御意見をお伺いしたいというのが一点。

 もう一点。参考人は先ほど、最初の御説明の中に、政府の規制緩和の問題、「長期的視点から対応すべき都市計画や建築の問題を、経済に対する規制の問題ととらえ規制緩和・民営化・自由競争の流れに安易に乗せてきた政策の存在を指摘すべきだと思います。」こういうふうに陳述の中での文書として提案されています。私もそうだと思うんです。 問題は、政府の規制緩和がそれを助長し、そしてそれが各分野における、建築業界ですね、その中でのあしきコストダウンにつながって、安全がないがしろにされるという事態を生んだのではないか、この二つの点についての御意見をお伺いしたいと思います。

日置参考人 大阪弁護士会の方からも提案されていますし、私も述べたとおりですが、やはりお金ですね。民間企業の場合、よって立つ収入源と、そちらのものに対するチェックをするというのは相矛盾するところがあります。 これは公認会計士等の問題でもやはり今回問題になっていますが、依頼される人からのお金でその人の問題点をチェックして、場合によっては許可を出さないという判断ができるか。法律上は、それは第三者としてやる、できるんですけれども、やはり会社としての経営という視点を考えると、経済的には難しいということがあります。これをやはり経済的に分離するためには、直接申請者から確認業務に当たる者はお金をもらうという形ではなくて、一種、何らかの形でクッションを置く、それはおっしゃるようなNPO的なものを設立するというような場合もあるでしょうし、幾つかの自治体で一部事務組合的なものをつくって、そこがやるとか、方法は幾らでもあると思うんですけれども、やはり経済的な依存関係を一たん分離するということが必要ではないかというふうに思います。

 それから、規制緩和ですけれども、私は全部民営化とか自由競争がいけないというふうに思っているわけではございません。ただ、物によって、やはり公的なコントロールが非常に重要な部分というのはあると思います。だから、民営化あるいは自由化をするに当たっては、これまで公共が担ってきた問題をそういうところに権限を与えるというときには、その弊害が出ないようなチェックシステムだとか、それを十分考えていく必要があろうかと思います。 それから、それとともに、やってみないと率直に言ってうまくいくかどうかわからないというようなものもあります。それは、やってみる上で、問題が起こればなるべく早期に兆しを見つけて対応していく、そういう姿勢が必要だろうと思います。 ちなみに、地下室マンションの問題、ずっと、立法後指摘されていて、やはり条例等で対応できるまで10年もかかっているんですね。その間につくられた建築物というのは一種の既存不適格という形で何十年も残っていくわけです。まさに、一過性の商品じゃなくて、この問題というのは長く社会に影響を残すということを考えると、慎重な対応とともに、問題が発覚したときには速やかに対応するということが重要かと思います。


穀田委員 ありがとうございました。 事後チェック体制の強化というのは、当然、緩和の際には必要だという点は私も同感です。 次に、小倉参考人にお聞きします。 先ほど、まちづくりという観点を強調されました。私も同感です。同時に、それとの関係で、集団規定に関する相関関係を少しお話しいただければと思うんですが、短い時間では無理かと思いますが、そこで、私は、建築行為というのは周辺環境に大きく影響するわけですから、確認過程に地域住民が参加できる方向に改善すべきではないのか、そして、特に住民の多くの目が当該建築計画の適法性を監視する、こういうふうなことなど、とりわけ景観法などとの関係では望ましいと考えます。そういう意味で、国際的な例も含めてお話しいただければ、短時間で本当に申しわけないんですが、ありがたいんですが。

小倉参考人 建物は個人の資産でございますけれども、周辺の環境もその周辺に住む人たちの資産でございます。そういう意味で、景観を守るということは資産を守るということで、これは多くの国でそういう姿勢は持たれています。日本では、それぞれの建築はすばらしいけれども、町の景観、それが一体となったときの町の醜さ、これが多くの人々から指摘されているところです。 一つの例を出しますと、オーストラリア、これも非常に景観を大切にしている国でございますけれども、この国で住宅の確認申請を出すときに建築家がまずやるべきことは周辺住民への説得でございます。周辺住民が自分たちと同じようなクオリティーを保つような建物だと認めてくれたときに初めて同意が出されまして、その同意が出された同意書を持って行政に行くと、初めて個別規定、向こうではテクニカルチェックと呼ばれていますが、構造とか基準に合っているかどうかということを審査される。 そういう、やはり第一番になすべきことは、私は、それぞれの人たちの財産を守るという意味で、建築の枠の外の、周辺の環境までを含めた資産価値というのを認める方向に行くべきではないかというふうに思っております。


穀田委員 ありがとうございます。 それでは次に、建築士の問題について宮本参考人にお聞きします。 建築設計者の独立性が重要であることは、戦前からも含めて、1917年の日本建築士会が定めた徳義規約にも書かれています。そこには、建築士は、依頼者の意志にあらざる報酬を受くることを得ず、さらには、材料に関する営業を営むことを得ず、また、建設請負業を営むことを得ず、また、請負業者の使用人たることを得ず、そして、依頼者以外の利害関係を有する第三者または請負業者より手数料または物質上の報酬を受くることを得ず、こういうふうに気高く訴えています。要するに、基本的に設計依頼者の利益を第一とするということが職能の中心課題であったということは見てとれます。 ところが、今日に至るまでも 法的に確立し得なかったのはなぜなのかということについて、一点お聞きしたいと思います。

○宮本参考人 宮本です。 建築士の職責と申しますか、その職責については、私ども内部でも倫理規定等をつくりまして、絶えず制度委員会でその問題を徹底させるようにやっておりますが、基本的に、建築士の立場というのは施主、要するに発注者から受け身なんですね。その受け身ということをただストレートに受け身ということで片づけないで、社会的責任というのは非常に大きいわけですから、そういう意味で、自分たちの職務というのは絶えず市民の皆さんとか社会に対して非常に大きな影響力を与えるんだというようなことの、私ども、職能教育みたいなことを自主的にやっております。 この問題は、このような事件が起きて顕著になりましたけれども、まだまだ私どもはやらなくちゃいけない、徹底しなければいけないと思いまして、この間、この問題が起きましてから、全建築士11万人対象にアンケートをやりまして、最近ようやくそのアンケートが出てまいりました。回収率も非常に高くて、そのアンケートによりますと、やはり建築士の立場は弱いんだけれども、弱いというただ受け身だけれども、受け身だからといってそのまま言うなりになってはいけないという関係を、もう一度職能倫理に照らして、社会にうそをつかないように、自分にうそをつかずにやろうではないかというようなことを今、全会員とそれを話し合っております。 恐らく、大分こういった倫理規定が徹底してくれば、やはり必ず効果はあると思うんですけれども、ただ、先ほどからちょっとありましたように、できるだけ士会に入ってもらって、要するにその入っていない人が非常に大勢いるものですから、できるだけ士会に入って、当然入るべきではないかということで、これからもぜひ進めていきたいと思いますし、御指導いただければと思っておりますが。

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