p -2
☆スライド10
これが平面図です。屋根が横方向に平行に架かっている。先ほどルイスカーンって言いましたけども、こんときもまた
ルイスカーンなんですが・・。こういうコアな部分とスペースの部分というのを交互にですね。コアー部分には構造体とかトイレとかいろいろサービス機能が入って、で空間が入っているような感じになってます。
院長先生といろいろ話していて、「
病院と言うと病室があって廊下が有って大きなリビングスペース」、デールームって言うんですけども、そういう構成が標準的なものなんですけども。「
あんまり大きなスペースが一つあるっていうのも面白くないんじゃないか」というふうに院長先生が言っていて、「
むしろそれぞれの人が勝手にくつろげるようなスペースが、いろんな所に分散して、いろいろ有る。そういうふうのが面白いんじゃなか」と話をしてたんですね
それは僕も個人的に面白いなって、思ってですね。それをそのままプランに反映さしてます。ベットが有る部屋はばーっと繋がっていると思うんですけれどもそこに廊下が取り巻いてるンですけれども、角とかですね、交差点みたいな所に、リビングルームって書いてある。それが机とか椅子が置いてあって普通にくつろげる場所。
そいいうのが廊下の要所要所に出来ていて、かなり廊下全体が・・中庭がこう幾つか囲んでですね。大きく言えば
8の字型。
さらにそこから分岐した8の字みたいな・・グルグルグルグルいろいろ回れるようになっているわけですね。そうすると「
グルグル歩いて別のリビングスペースに出たり・・街の中を歩いているような雰囲気になるんじゃないか。」
だから「
病院という割と限定された場所ではあるんですけども自分の住むスペースとリビングスペースが分散していることで・・、生活しているっていう状態がもっと幅広くなって面白いじゃないか」と・・そういう話をずーっとしていて、それを設計に落とし込んだ。
さっきお見せした絵のように、いろんな切り妻屋根が連続しているんですが、一つ一つの屋根は・・ある落ち着きを持ってて、同時にそれが連続していることで、広さというか・・ある解放性いたいなものが・・そういうのが生まれる・・
落ち着きと解放性みたいなものが同居しているような状態を、さっきの屋根のですね、断面方向で作り出そうとしています。が作り出そうとしています。
それにプランがからんできて、動き回ったり、座ったりという生活をいろいろできるようになっている・・そういうモノを構想しました
☆スライド 11
実際こんなふうになってるんですね。屋根が、
いろいろな傾斜の屋根が架かっていて、それぞれのスペースはそれぞれなんか屋根であるスペースが・・隣のスペースが直ぐ見えたり、中庭越しに外が見えたりして、
そのスペースで完結していないですね。 ドンドンドンドンつながりつつも、ぼこぼこまとまりがある。
これはさっきの95年のSDレビューの2年後の・・97年のSDレビューに出しまして・・また選んでいただいて、SD賞という賞をいただきました。その時の模型です。
その時には案はポシャッテ、病院の設計としては断られていたんですけども、それを
「一寸まとめておいた方が良いだろう」と思って・・まぁー仕事も無かったっていうのもあって(笑い)・・やりました。結構デカイ模型。1/200で作ったんですけども、全部で2×1mぐらい、畳一枚ぐらいの模型を作って展示しました。
☆スライド 12
これはその時に出した断面模型ですね。この模型は結構そのー病院の・・断面の構成をよく表していて、いろんな屋根があってそれぞれスペースがあるんですけども、それがまた微妙に繋がっていて、脈がこう・・廊下歩いていると
脈動するみたいな、そういう空間の流みたいなを同時に表している。
一番初めの建物で・・
グルグル回っていろんなスペースが現れて来てるって話をしましたが、そういう考えっていうのは微妙にここにも影響してて、廊下はグルグル回るようにして、そこにいろんなスペースを配置してですね、そういうことを一寸興味があってやっていた頃なんですね。
☆ スライド 13
これもその時の模型です。中庭がデスね結構たくさん作ってあって。壁がガラスですね。このへんで墓穴を掘ってども仕事がポシャッたような雰囲気があって。やっぱり値段という問題は有ってですねー。(笑い)「
これは無理だろう」って向こうは判断したみたい。ホントに無理だったかどうかはたぶん無理だったのかもしんないけども、やってやれないことはなかったんじゃないかと思いますけれども。結局ポシャッテしまいました。
今別の設計者の方が設計した病院が3年ぐらい前にオープンして、それが実際使われている。もちろんこっちの方が良いんですけども・・
会場 微笑む
さっきの病院もそうなんですけども、・・全部オープンなんですね。「
柵とか鍵とか全部ないような感じで、単純に居住スペースを出きるだけ理想的に作る」というのが課題だった。そういう意味では
精神病院というのは特殊な建物だって感覚があると思うんですけれども・・。実際はもっと
普通に作っていい建物なんですね。たぶん。普通と言うか、建築の一般性というようなものに通じている、そう考えて作ってました。だから
住宅を設計したり、そういう作業と、やっていることは共通していたと思います恵まれていたのは逆に・・自分が精神病院で育ったということもあるんですけども、
むしろ居住環境というものを住宅とは違うもので・・違う方向から考えていたなーというのが面白かったです。
特殊性より一般性のほうが僕は興味を持ってやっていました。
☆スライド 14
あ・・これは一寸恥ずかしいんでが。さっきのSDレビューのたぶん一寸後だと思うんですが、アイデアコンペなんですね。
一回だけ一等というのが取ったことがあるんですね。(笑いながら)今だにそれを持ち出しているんですけども。これはテーマが「
マルチメデア時代の住まい」とかっていう・・審査員は隈さんとか妹島さんとかですね、何故かゲームクリエータの飯野さんとか、最近マルチメデアのところで最近有名になってる、東大の広瀬先生という方なんかが審査員でですね。
何故かマルチメデア時代の住宅・・一等に選ばれたんですけどもこれはですね、
先ほどの病院の考え方を一寸延長。わりとピュアーに示してるんじゃないかなと思うんです。
このころですねー・・その前、病院を設計をする頃なんですけども。最近流行っている「
複雑系」ってやつの本を読んだんですね。ブリコージンとかっていう人のね。「
複雑系っていうのは結構面白いらしい」という話を聞いて・・じゃそれ読んでみようか。 僕なりに勝手に解釈したのは「
あんまりでっかい秩序じゃなくて、なんかチッチャイ秩序で出来てるような」・・感じでですね。
例えばさっきの病院の話だと、「
デールーム一個、リビングルームを一個作るンじゃなくて、それを分散して。でそれを結び付けてやると・・分割することでなんか逆に一個で大きいのがあるよりいろんな事が起こり得る」そういう話かなー・・って僕は勝手に解釈してですね、これはマルチメデア時代の住まいということなんですけども、
家を分散して建てる。
アイデアコンペでわりとありがちな提案。回答ではあるんですがそういうアイデアです。始めにマルチメデアって言われたときに「ジャーどうしようか」って。「
まず歩くのかなー」って思った。それは一寸ひねくれてるというか、アイデアコンペの基本というか、まず・・斜めの方から
会場 笑い
まず斜めの方からやるっていう。「
マルチメデアだから逆に歩くのだろう」すごい単純なんですけどもね・・でタイトルも「
ネットワークバイウォーク」というちょっと微妙にセンスが悪いんですが(笑う)
会場 笑い
歩くっていうのがまずあったんですね。町中を歩く。右側の地図は新宿の地図なんだけど。僕がだいたい今住んでいることなんですね。
あの紅いラインがありますけれどあの辺が僕の住んでるところなんです。丸いポッツがある。そこにですね・・
部屋の断片みたいなものがある。例えば一個部屋があるとか、一個お風呂があるとか・・キツチンとダイニングがくっついた部屋があるとか。分散してて、「
その間をまぁー・・歩いてください」ということなんですね。「
歩いた痕跡とか軌跡みたいなものが赤で書いてある。それが何となく家というものなんじゃないかなー」という。それが
いろんな家が重なっている。青もそうだし黄色もそうだし・・で実際ですねこの頃っていう今もそうなんですが僕はわりとこういう生活をおくっていたんですね。
部屋はもちろん一個しか無かったんだけども、一人でやっていてて・・やることもあんまりないので・・
佐藤 笑う
あんまり無いので (笑い)ブラブラすることが多くてですね。
近隣をブラブラしている。そうするといろいろ面白い場所があったりして、この辺にもう一個ぐらい居場所があると面白そうだなーと。単純にマクドナルドとかまだスターバックス無かったですけども、そういう所で
一寸くつろいでですね。こいうの考えたりとかっていう・・。あんまり
自分の6帖ワンルームが家っていう感じは無くって、こういうふうに歩き回っているのが生活の全体だった。でそれかナー・・っと勝手に解釈して。
それを
自分の生活をそのままですね一般化して、こういう案を作りました。でこの辺の下に一寸出ているのはですね、一個こっち側だけだと広がりがないけど、二個以上になってくると、段々その歩くルートなんかが開拓されたりしてですね。
家って言うのがそんなに固定されてない状態になってくる。
これは今一枚の絵で書いてありますけども、赤っていうラインがドンドンドンドン複雑になってくる。そういうふうに変化していく状態なんですよね。
あともう一個下にいま切れてますけれども、・今の丸いポツチをやめて違う所に作ると・・
また線が有機的に動いてて、ルートが動いていくような感じで・・どんどん広がっていくんですけれども。さっきの病院のデールームも同じで、
分散して・・一個だったものを分散してやることによって、もう一回
別の手段でつなげてやることで・・なんか「
今までと違った事が起こるんじゃないか」というふうに考えていた。
で実際その
街の中のいろんな、不純な状況がですね家の中に入り込んでくるような・・
そいういことを許容出来るシステムになるんじゃないかなーというふうに考えました。
☆スライド 15
今の一等案で気をよくしたっていうこともあるんですけども。それから半年後に実家で病院をちょっと増築するって話がありまして。98年ぐらいですね。これは病院なんですけども、やつぱり先ほどのその住宅コンペの、そのまま今度は逆に建築に戻してやることをやりまして。これプランなんですね。今だと妹島さんのスダットシアターとかっていうのは有るんですけども・・それを
パクッたわけじゃーないです。
会場 笑う
あのー微妙なんですけども・・一生懸命やったんですよ。ほんと、基礎が出来上がったころに、あのコンペの結果をたまたま雑誌で見て、びっくりしましたね。やばい、って。
会場 笑う
まあ、あまりいうと言い訳がましくなるのでやめますが(笑い)これはですね、また話は単純で・・JAかなんかに書いたんですけど。病院っていうのは中廊下がまずあって部屋がくっついてる状態。
大きな中廊下っていうのがあんまり気持ちよくないんですよね。それは一寸つまんないだろうと。それでもう一個デールームがあって大、きいのがあって。みんなそこに行かなければいけない。というのもつまんないだろうと。
じゃー
廊下とデールームみたいなものをく付っけて。混ぜちゃってですね、で分散させてやると面白いんじゃないかと。
これですねわざとシングルラインで書いて病室も廊下も全部一緒に書いてあるですけども。ここが部屋、ここからグルッとですねー部屋伝えに伝わって行くような感じですね。廊下を通っているというよりもリビングルームみたいなモノを次々通り過ぎて行って。その部屋の片隅には、机みたいなのが置いてあったりして、ま・・タバコは飲めないですけども、くつろいでる人が居たり。
廊下とも・・リビングスペースがズーット続いていて、そこから自分のベットルームに入っ行くっていうあり方が。特に精神病院だと完全に家みたいなモンですから・・普段の生活としては。むしろ
病院というよりは住宅みたい感じに近い作り方の方が良いんじゃないかっていうことで、こういうプランを考えました
同時に先ほどのコンペの話から・・都市の中の状況っていうのも、そのへんに結構近いナーって思うんです。大きい通りはもちろん有るんですけども。一歩変な道に入って行くと・・家の周りは、先ほどの西新宿がそうなんですけど。ほとんど真っ直ぐな道がない。だいたい
見通せないんでねー。で次々に現れて来るスペースを横切って行くみたいな、そう言う雰囲気は濃厚に漂っている。
そういうのを
家みたいな状況と、都市にある状況が、一緒になっていると一番面白いんじゃないか。もしかしたら学校とか・・そういう中廊下の・・あういうー・・モノを持っているのは、全部こういうふうに
翻訳し直せるんじゃないかということを考えてこれを作りました。
☆スライド 16
これ模型ですね。上から見ると部屋がぐちゃぐちゃく付っいている感じが・・。右に見えてるのが既存の病院。さっきの一番初めの白い建物の写真の続きですね。
☆スライド 17
これは実際出来た建 物ですね。中は例によってお金が無くてですね、シンプルな作りになっているんですけども。一応、
修道院の僧坊のような、簡素で豊かな空間、とか書いたような気がします。雑誌に。これは手前洗面所です、洗面所は一緒にしちゃってですね。廊下の延長として洗面所のスペースみたいなスペースがあって。こっち側に有るのが一寸細長いデールームみたいなものを、リビングみたいなもので。こっちが病室ですね。ドアの向こうに病室。
☆スライド 18
こうやってですね手前の部屋と向こうの部屋が微妙に分かれていて・・さらにこの辺にもまた向こうのリビングルームが一寸見えてたりして
、廊下って言うよりは部屋の連続になっている。一寸わざとらしく椅子が置いて有るんですが・・あういう感じで、一寸くつろぐ。誰もここでくつろいで居ませけれども。(笑い)
次 p3へ
■