大室佑介入門 2025年5月18日 | 作成:佐藤敏宏 | |
![]() 2025年5月18日曇り、野鳥がさえずり賑やかな庭園美術館。 大室美術館受付のシャッターをあげパビリオンの小屋と作品をもち、8ヵ所のコンクリートの基壇に作品を載せる、注意深く方向を定めセットする。その作業を始める大室さん。 佐藤:ぜんぶ同じ方向だと。 大室:もったいないです。 佐藤:昨日は雨で設置できなかったけど、設置しているほうがいいね。全作品制作者は違うし、それぞれ小さな作品、向きも異なる。 大室:そうなんですよ、贅沢なんですよ。 佐藤:庭園美術館の一部がソーラー発電業者に買われちゃわなくってよかったね。 夜間、気温が下がると、待機から飽和した水は草木に付く、二人は草についた朝露で足元を濡らしながら動いている。 佐藤:晴れていれば毎日設置しなおしているんでしょう。 大室:そうです。 佐藤:そうして閉館すれば受付に引き上げる。 大室:この辺は風がけっこう出るんですよ。高原から吹きおろしがすごいんです。 佐藤:おお、いいね。全部設置されるといいね。 佐藤はパビリオンの設置される様子を見て声をあげる。大室さんは手を休めずもくもく設置作業を続ける。 佐藤:柱状架台の数、8作品並べるんだね。この小屋は大室さんの自作でしょう。何から何まで大室さんがするから、展覧会始まると大忙しだ。朝露たくさん降りるから濡れるね。夜に露おりるんだね。 大室:朝になるとびしょびしょになっていますよ。 ![]() 庭園美術館のこの一角はソーラー発電用地となっていたが、大室さんは違約金を支払い手に入れた。その場所の朝の様子だ。遠方の山並みの中腹に雲がたなびいている。 |
■音 455 18日朝 ![]() |
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佐藤:朝飯ができていた。もう時間ないものね。 大室:一回、ぼく廃品おろしてから、一回戻ってくると思います。 パビリオンの設置を済ませると落ち着く間もなく、朝飯をくっている大室さん。 大室:廃品回収しなければいけないから。 佐藤:庭園美術館に小屋が並ぶといい、獣道も浮き上がってくるし。コンクリートの柱だけだと抽象的すぎた。小屋とセットだと草を背景に落ち着きますね。小屋がない、ある、両方見比べる贅沢な体験です。小さな作品小屋が立ち並ぶと、周りの普通の民家も美術館に見えるね、あの家の中には作品、何入っているんだろうって。周囲が庭園美術館の作品と同化して民家は全部美術館に見える。 朝飯を佐藤も食べながら話している。 佐藤:今日も忙しい、大室さんは今日は朝は小学校支援活動だし、二人とも混乱して重なりなく作業してますね。展覧会開催の日は特別いそがしいのかな。 大室:今日は特別ですね。 佐藤:あまり頑張らないように。 中谷:大笑いしている 佐藤:昨夜発熱したから、心配になるよ。 大室:去年のこの時期も展覧会の展示やっているときに、1回熱出たんです、寝てたら治ったけど。 佐藤:起きた瞬間からスケジュール決まってて動いているんだから、熱でるでしょう。大変だよ。 大室:一気に大変。 佐藤:抜けたりしないもんだね。 大室:ちゃんと抜けてますよ。今週、明日は滋賀県大に行く。明後日は1日我が家にいるから・・・移動しなくっていいし。明日、県大に行っても授業はそんなになくって、沖田君という若いの連れて行って、格子壁の研究している先生がいまして、格子の壁をくれる、というから。それを沖田君の車に積んで帰ってくる。 中谷:明日、滋賀県大、学校に行く? 大室:行く。明日は、それに合わせ1年生とホームセンターに行く、という授業を一コマやってくる。1年生のグループごとに4人だけ。1年生は月曜日しか動けない、と言うから、明日に詰め込んで・・・夕方には帰ってこれる。 佐藤:大室さんの体は正直だね熱出だして、寝かさせるからね。 大室:熱はバーッと出ます。出て、パッと下がるんです。昨日の夕方、みんなでご飯食べているときが熱のピークで、あの時にガッと寝て。 中谷:2時間。 大室:2時間寝てた。 佐藤:男性更年期障害にはまだ早いかな。 大室:そろそろ来てもおかしくない、・・もっと遅いか。 佐藤:そうね・・・初期かも、男性ホルモンの減少作用で、バランスが崩れ始めると寝汗すごくかくようになるよね。俺はそうなった。なんだろうと思ったら更年期障害の始まりだった。 大室:寝てる時だけですか。 佐藤:毎朝がた、目覚める直前にびっしょり汗かいたね。 大室;それが過ぎると、汗かかなくなるんですか。 佐藤:そうだね、ホルモン剤打たなかったので、落ち着くまで5年ぐらいかかったかな。他には50肩になるね。いろいろ連動して起きて老化現象はゆっくり進んでいくよ。やる気がなくなる男性もいるようだけど、俺はそれはなかった。 佐藤は自身の更年期障害について、肉と卵とチーズを喰うと男性ホルモンはたもちやすいなど・・俗説かもしれない。コレステロール値を上げることにもなる・・・など話している。 佐藤:お爺さんが集めたモノたちとミチコさんの作品と仲間の作品は、この家屋敷に渾然一体にあるのがいいね。その中でミチコさんの作品進化プロセスが繋がって見えてきて分かる、ような気がする。バラバラで見るとグシャグシャしているけど、中谷作品が育っち続けるのが、ここに来ると分かるよ。それにしても、お爺ちゃん大きな家屋敷を手に入れ、庭も作ってくれたね。 中谷:そうですね、これだけ・・・。 佐藤:イヌの首輪もありましたし。 中谷:ありました!・・・ふふふふ・・・あれで一儲けした・・・。 佐藤:爺ちゃんの原動力はこれか!と確認しました。爺ちゃんこの泉はのちに普請道楽を走らせた。アーテストは普請にはハマらないから・・・。 中谷:たぶんそうなんですよね。昔は行商の人がすごい出入りしてて、なんだか分からない物を売りつけて帰っていく、そういう物、一杯あるんですよ。この辺の人は「これ、家にもあるわ・・・」と、開けてみるとプラスチックだったりする。 佐藤:余ったお金を吸い上げる賢い行商人が回遊してたんだね。 中谷:回っていたんですね。 佐藤:掛け軸とか絵とか置物とか売り歩いて、彼らは口上が上手いから皆買ってしまう。 中谷:今はこないですね。 佐藤:スーパーができ、究極のアマゾンができちゃったから、行商しても売れない、債権投資しにふけってるでしょうね。 中谷:木を200万円で買ってくれたら、貴方の彫像作りますという人がいたんです。ふふふ。 佐藤:それだな・・ 中谷:そんな仕事が成り立った・・・ふふふふ。 朝飯を食べている。佐藤はサラダに豆乳とヨーグルトをかけている。来週する小学校の運動会の話をしている。大室さんは食事を済ませ、廃品回収の段取りをしに行ってしまった。 佐藤:中谷作品、ここに至るまでの模索期間けっこう長かったですね。 中谷:そうです。彫刻って凄い時間かかるんです。大学でてから30半ばまでは・・。 佐藤:朝の片付けは俺がやりますので、そのまま置いててください。分担しましょう。 中谷:大学の教員に入ってから勉強しました。ふふふふ 佐藤:そんな気がするよ。自覚しないと教えられないからね。 中谷:そうですね。 佐藤:教えるために勉強するしかない。 中谷;本当にコンプレックスというか・・。 佐藤:現代人は個人の成り立ちの社会に生きるから、個はそういうものを背負わされる宿命にあるんで、コンプレックスは近代の呪いみたいなものでしょう・・・。 中谷:アカデミックなことを、もう一度ちゃんと自分で整理しなおそうとしました。 大室さんは廃品回収の支度済んだようで、いったん食堂に戻る。 佐藤:家事の分担、朝飯はどうするとか役割は決めているんですか。 中谷:自然に。 佐藤:10年、暮らしていれば、適材適所で分担は自然に決まる。 中谷:ルーティンワークは決まっているので、大室君が機動的に、すごい気が回って動いているから。 佐藤:さすが建築家だ。 中谷:はははは。 佐藤:基礎ができないと建物を建てられないから、ベーシックな事はさっさっとこなすと。 中谷:イレギュラーが嫌いです。 佐藤:建物歪むからね。柱建てるの忘れった!とはいかないので、緻密に考えられる人間たちだからね。彫刻はだいたいokでいけるかもしれないけど、建築つくりはイレギュラーはできない。さらに建築造りに関わっている職業は多いから、情報整理してから作業始めないとトラブル。現場で手待ちさせると日当に響くから職人はおおいに嫌がるよ。仕事に来ても仕事やれない、職人は飯の食い上げになる。 中谷:調整の仕事がすごい。 佐藤:調整力と決断力が要る。後で決めるということはできないからね。 中谷:大室君は普通の世界に通じている、いろいろ調整できる役とか、社会に通じる言葉にしてくれる、整理整頓してくれるタイプという感じなんです。建築家の中に行くと変わった人と・・・。 佐藤:俺には変わって見えないです。大室さんは自覚して言葉にできる人だと思う。車の中ではミチコさんのような芸術家にはかなわん!と言ってたよ。 中谷:本当ですか・・馬鹿だなと思っている。 佐藤:中谷さんに対して、大室さんはそんなことは思ってないですよ。被害妄想しすぎてるのでリセットしてください。決断する、道を狭め集中しないと作家になれないでしょうから、建築家はそうじゃない、何をやっても建築に通じるから、楽しいですよ。時折、困った、相性の合わない発注者もいますけど(笑)。 中谷:その能力はどこでも必要とされているから・・・。 佐藤:そうだね。建築と建築家を理解してない、分からないで我がままだけ言う人が多いかもしれないですね。ここ白山町では大室さんはフル活用されちゃって、地域の各種問題も請負わされている。使い勝手がいい人だし、能力があるからですよ。 中谷:構造的な考え方というのは。 佐藤:いろんな人がいろんな考えをもって決断して生きているから、建築家はそれらを強引に統合しなきゃ建築として建たない。 中谷:その俯瞰している・・・。 佐藤:そうだね、だからアーティストは集中して制作し続けるので、大室さんは個を追求したいりすると、ミチコさんに劣等感を抱くしかないね。建築家の宿命です。 中谷:ははははは 佐藤:作家は集中力がすごいからね、建築家は散漫度高いほうが対応しやすいから、いい。建築家が集中して作ると依頼者は迷惑するので注文しない、ね。ここに並んでいる作品は同じ作家が作ったんですか、この適当さは凄いね。不揃いさが際立つ作家だ。友達の作品ですか。 中谷:友人です。 佐藤:だいたいでいいよね、って感じ。幻視人(原始人)が石ころ拾ってきてお皿にした感じで制作している、それあるよね。 中谷:この人は繊細だと思います。 佐藤:女性作家でしょう。 などと目の前の器を見てはなしている、中谷さんは台所で流している。 (芳名帳) 佐藤:こういう意図をもつ器があると生活を楽しめるね。サラリーマン家族では使いにくい、って言われそうだけど、生活をノンビリ楽しむ。目的合理の人には使いにくい・・・・。 ここに外国人も含め、友人もたくさん来ているようだけど、芳名帳はつけてないんですか。 中谷:それ、何もやっていなかったですね。今まで考えた事なかったです。 佐藤:いつ、だれが、どのぐらい、どこから来ているのか分かると思う。雑記帳を兼ねててもいいので、あると後々便利ですよ。いろんな人と作品も、いろんなのあるし凄い力が集まっている場ですから・・・交友録は要る。もっとも贅沢に生きて暮らしてる館長さんですね。館長さんは忙しいけど幸せな人でもありますね。 中谷:遠いから理解してくれる人しか来ないです。 佐藤:それも言える場所だね。都会から遠いって、そういうフィルターかかるよね。都心で展覧会パーティーあると変な人もきて、飲み食いして帰えって行く、誰も知らない人も集まってくるのは、都心の美術展のオモシロさだ。 庭園美術館に獣道あると説明うけたけど、雨ドジャブリの時は良さが分からず今日の朝の方が分かって、よかった。 |
■音 457 |
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中谷:(敷地境界にもうけた)橋も最初真ん中だったんだけど、獣道に合わせて向こう側に橋を置いたことで、どこに連れていかれるか、分からない感じがでました。終着点の作品も利いているし。 佐藤:そうですね。我家を出るとき、鹿がたくさんいる白山町とは想像してなかったです。鹿専用の橋もつけてあった。 中谷:鹿の家族が、群れで6,7匹で移動してます。 語り合っていると、娘さんはウクレレをもってくる。 佐藤:ウクレレで親子で歌ったりしているんですか? 中谷:歌っても誰も聞かないから、歌い放題ですふふふふ。 佐藤:娘さんと二人で歌っているんだ、いいね。 中谷:歌を覚えさせている。ふふふふ 中谷さんの絶えない微笑みは、歌好きな人たちに囲まれ、歌いながら育ったからだろう・・・と佐藤は想った。ウクレレをもち食堂を出ていった親子。朝食後の食器、あらいものを続ける佐藤。 小学校の環境整備へ つづく |
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