大室佑介入門     私立大室美術館  2025・5・17 作成:佐藤敏宏
制作中作品の模型の一部

中谷ミチコさんのアトリエにて

佐藤:作品全体の長さはどのぐらいになるんですか。
中谷:12mです。
佐藤:それは長いですね。これが完成の模型ですね、
中谷:そうです、これが1/10の模型です。今回は着色しないで展示中も触れるようにするんです。触って鑑賞する。
佐藤:無着色も、触って鑑賞するのはいいですね。全体も大きいけど一人一人の像も大きいから子供は作品には入れちゃうね。
中谷:そうです。

 中谷さんは作品から保護シートはがし全体を開けようとしてくれている。

佐藤:開けなくっていいです、乾きすぎちゃうといけないですから。
荒川:凄いね。
中谷:今回は寝かせないで制作し、これを石膏で型採りしちゃうんです。幾つかに分割して。
佐藤:粘土は取り出したら、お役御免になるんですね。
中谷:そうです。
佐藤:ここまでの制作日数は何日目なんですか。
中谷:これは3月から始めたので2ヶ月半です。ここはこないだ落ちゃって、作り直しているんです。

佐藤:制作中にはがれ落ちちゃうこともあるんですね。粘土の形状は完成じゃなく、凹凸が逆になって完成なんですね。
中谷:そうです。ギリギリまで有るようにつくらないと存在感でてこない。粘土がなくなったときに不在感、喪失感がでてこないんです

佐藤:完成作品は面白いだろう、と想う点は、鑑賞者・人間が移動するときに影と陰の見えかたが変わるので、そこは凄い興味深いですね。、不在なのに生きている感じがでてしまう。型のまま完成として制作するんだと、鑑賞者が移動しても存在は揺らいだりしない、見た目は固定されたままでしょうからね、大発見ですね、
中谷もともとあったんです。型採らなくちゃいけないので、皆(制作者)は見てたんですけど、それを作って・・・。
佐藤:鑑賞者の立ち位置と作品からの距離と、凹凸と陰が変わる。人は身長が皆さん違うから、見えかたは皆さんそれぞれ違うはずでしょう。下から光当ててないのにそう見えたりしますね。人為的な操作を加えてないのに変化しますよね。歩きながら移動しても観るし、振り返ってみたりもする、眼の位置によっても作品は変わり続けるのは魅力的です。
中谷:そうですね。

佐藤:今回は色彩付け加えなんいんですか。
中谷:付けないで仕上げようと・・。
佐藤:その方が不在はさらに幻影的になり、幽玄かもしれないですね。荒川さん、色彩の専門家としては色彩をなくすことに対していかがですか。
荒川色彩無い方が形に集中できるから・・角をまるめたりしないんですか。
中谷:しない。
荒川:欠けたりしないですか。



佐藤:一つの制作を始めると、このアトリエにほとんど籠っているんですね。
中谷:ずっと籠ってます、ふふふふ。しかも粘土が乾いちゃうので。
佐藤:粘土とは言え急激に乾燥させない方がいいでしょう、注意しないと硬くなりすぎちゃいそうですね。。縮まないですか。
中谷:乾燥すると縮みひび割れちゃうんです。やり直しになっちゃう。

佐藤:ああ、それはたいへんですね、独身の時に比べ作品は変わりましたか。
中谷:変わったのかな・・・まそうです。
佐藤:子供がでてきたり。
中谷:子供がでてきて、子供が生まれて、その前は自分が子供だった。ふふふふふ。
佐藤:子供の自分も自分の子供も客観視できるようになった。
中谷自分が子供であり親であり、二重の関係。その関係が行き来できるようになりました

佐藤:それは好かったですね、客観視に厚みがでそうですね。ここに置いてある固まりが粘土なんですね、これは販売されているんですか。
中谷:売ってます、何回でも使えるので。
佐藤:湿気を保っていれば使い回せる、と。
中谷:そうなんですよ。

佐藤:コンパネもありますね。今の下地は曲げ加工したコンパネですか。
中谷:これは合板で、裏側に枠がついてて、それに貼り付けてます。設計は大室です。制作は私とお手伝いの人、同級生のこが手伝ってくれます。
佐藤:大室さんが下地を設計したものを皆で作る。合板を突き合わせても目地処理が難しいですよね
中谷:そう、けっこう難しいです。下地、これでずれちゃうと大変なことになるので、これだけは製造しっかりやります。
佐藤:きちんと下地ができているというのは目視だけですか、何かで計測するんですか。
中谷レーザーで測ってます
佐藤:今は便利な計測器があるんですね。
中谷:そうなんですよ。最終的にできるだけ今の状態で水平を出しています。

佐藤:こんなぬめぬめしていう物(粘土)を相手にして作っているんじゃ亭主も子供もかまってられないよ・・・。
中谷ははははは。こないだ娘が、これに、おもむろに「これを書いていい、」と聞いて書いて、黙って出て行きました。
佐藤:お母さんとワイワイしたいんだろうね、家族ってこういうものなんだよ、お母さん、と批判的・・・かもだね。
中谷メッセージ性が強い、はははは。

佐藤:そうですね。そういう親子の交流は作品つくるより大切ですよ、娘さんのこの絵は全員眼鏡を掛けているから違うのかな。これが娘んさん自身かな。自己探求はじまってる!
中谷:そうです。
佐藤:手も足もあるし、顔もあるし、ぞんぶんにお母さんは娘さんをかまっている感じしますね。

荒川ニコニコしているし

佐藤:この絵をみながら子供に好かれるように努力して、自分自身にも自分に好かれるんでしたね。作品は想像していたより薄いんですね、もっと分厚いのかと思ってました。
中谷作っているとどんどん厚くなる
佐藤:そうなんですね!深みがあるほうが完成したときに陰影が深まる・・・。

中谷真っ暗になって穴みたいになってるの、そういうのも作ってみたい・・なと。
佐藤:お!真っ暗とは、キツイですね。集ったり離れたりしてしまうと、暗黒の人型・世界みたいに見えちゃうかもしれませんね、鑑賞者はドッキと驚くでしょうね。この人達、娘さんにだんだん似てきてるんじゃないですか。
中谷:ふふふふ。
佐藤:完成が楽しみです、そろそろ美術館にもどりましょうか・・・。寝食忘れて制作し、完成予定はいつでしたか。

中谷完成は9月です。
佐藤:あまり時間がないといえば無いね。
中谷:そうです。

佐藤:2ショットしましょう。あとで大室さんに送っておきます。やかましい爺さんでした。
中谷:いやいや、ふふふふ。
佐藤:では引き籠って制作を続けてください。

ドアを〆てアトリエをでる、荒川さんと佐藤。




今日(17日)雨だが女性の来館者が多い。


大室美術館の下屋にもどる。しばらくすると中谷さんが休憩しに美術館にやってくる。

佐藤:大室さんは昼寝した方がいいね、いろいろやり過ぎて疲れでちゃう。休みとらないと。
中谷市役所の若いの紹介するから帰ってこい!ふふふふ。
佐藤:じいちゃんは、資産継承するために、いろいろ考えて発言してたんだね。
中谷:まんまと。
佐藤:長女が帰ってきた。
中谷どこにも行く場所がない、ふふふふ。

   中谷さんはお嬢さんと遊んでいる

佐藤:お爺ちゃんは夢のお家をつくった。今は孫が引き継いで暮らしていると。大室さんは東京から引っ越すの嫌だ、と言わなかったね、議論したんですか。
中谷:何回か作品などを運びに来てたので・・・・。

佐藤:住宅の衛生設備は、都内の暮らしと変わらなかった、と語ってました。
中谷:水回りが綺麗、ふふふふ。
佐藤:汲み取り式下水なら、来てもすぐ帰ったか?。水回り綺麗なんで定着できたんだ。



庭園美術館 8箇所のパビリオン基壇、その中をうねった獣道、防草シートの上には松延総司さん制作の石が夕日にてらしだされ始めている。 

午後すぎると雨があがったこともあり、大勢の来館者がやってきた。陽が傾きはじめ午後4時すぎると、大室美術館の窓のサッシは元どおりに立てられ、出入口の引き違いは戻され、閉館となった。来客数を数えていなかったが、佐藤の予想に反して多かった。

昨日から大室さんは働きすぎたようで、夕飯のカレーライスを食べた後熱をだし一時寝ててしまう。

17日夕飯、中谷ミチコさんと語るへつづく 

    中谷ミチコさんの作品を観て (それ書こうか・・・迷っている)