大室佑介入門   「日野町、 私立大室美術館へ」     作成:佐藤敏宏

 日野町から大室さんの自宅へ向かう─車中雑談篇
(音源 0434)

■ 大室さんの家へ向かう


佐藤:家に戻ったら草刈りですか。
大室:昨日(2025年5月15日)の午前中に最低限は刈ってあるんです。
佐藤:明日から(17日)第二弾の展覧会が始まり、作家も来場するんですか。
大室:作家は明日の夕方くるかな・・・。沓沢佐知子さんの家は我が家から山のほうに15〜20分ぐらい行った所です。旦那さんが日本料理屋さんやっています。大室美術館で初めて展示します。

佐藤
:料理店の女将さん、人選が面白いですね。
大室:やってて面白くないとね・・・。
佐藤:前回のチラシ見ると石っころのような作品で、味わいありますね。
大室:全部コンクリートで作っていて、大量に作ってますね。
佐藤:中山英之さんは紙で擬石を作ってましたね。中山さんの性格を著すように(?)表面の操作だけでが石に見える作品で軽い。前回展示したのはコンクリートで擬石を作って並べた。
大室:うちの庭園美術館にも石の作品を転がしてくれた。


「原ちけい」
松延総司制作 「私の石:MY Stones」

2025/04/12〜2025/04/20

ドイツからも 作家滞在

佐藤:小屋のような展示ケースは大室さんが作ったんですか。あの手法は以前、東京の自邸でやっていた手法で。
大室:自邸での小屋からスタートしているから小屋はいつでも幾らでも作れます。


左絵:大室さんFB 2013年7月19日投稿 より
近所の空地に「百年の小屋」の移築が完了。
ご近所さんの視線を気にしながら台車で移動する姿はおもしろかった。
夏のうちにリビング部分を使って宴会でも開きます。

佐藤
:庭園美術館にある展示用の小屋は風で倒れたりはしないんですか。
大室:大丈夫ですね。台風だと飛びますけど、柱脚(架台)自体は飛ばないんです。明日と明後日は雨模様なので、展示できるかな〜・・・という感じです。午前中だけ雨の予報です。
佐藤:今日は幸運なことが多かったので、明日雨の中で、庭園美術館と展示されている作品を観るのもいい。奥さんエライよ俺みたいな爺さん来ても泊めてくれる、「嫌だ」と言わない、んだね。素晴らしい!

大室:(微笑み)先週はドイツ人のファミリーが泊まってたんです、ふふふふ。4才と1才の女の子と男の子、連れてきてました。
佐藤:宿泊客も国際色豊か!凄いねアーティシトレジデンスに発展してるんだ。
大室:結構来てくれますね。彼らは妻が、ドイツに行ってたときの友達の友達とかです。ドイツ人が来て1泊してみると、言葉通じなくっても子供同士が仲良くなって、娘は遊んであげてました。その次の日は志摩の知り合いの家に送っていきました、ふふふ。

佐藤:俺の想い描いてた旅暮らしだね。老人になったら、話の中の家族のような旅を実践しよう・・・と想ってた。友達の家を泊まり歩いて1年過ごす老後、それがいいなと、空想してたんです。実現できませんでしたけど、大室さんの家には泊めていただく(笑)。若い人たちは世界じゅうに友達つくっていると、地球一周できますね。奥さんが作家で国際化可能な作品を制作しているだろうね。

大室
:妻はドイツのドレスデンにくらしてました。元・東ドイツですね。東も東の田舎って感じで西ドイツとは全然違いますね。
佐藤:ドレスデンで何年修行したんですか。
大室:最初5年間で、その後2年追加で、計7年です。
佐藤:長い期間、ドレスデンに滞在してましたね。大室さんが一人前になるまでドイツで修行してたって感じですか。
大室:いやいや、ドイツに行ってる間は、知り合いになっていなかったんです
佐藤:二人はどこで知り合ったんですか。
大室:妻が日本に帰ってきたときに、一緒に展示やった時です。

大室さん自身は作家じゃない、建築だ・・・と語る


佐藤:作家繋がりでご縁ができ結婚した、と。
大室:私が作家まがいの事をしてたので、出会いました。
佐藤:ナイスですね、大室さんは自身は作家だと思ってないんですか。
大室周りに作家がいると、自分が作家じゃないと分かりますよねやっぱ、建築だな・・て思います。建築で作家だ、と思っている人はは周りに作家がいないからそう思えるんじゃないかな・・と思ってます。

佐藤:建築家は邪念の固まり転がるみたいな種族だし、アーティスト作家は邪念ないく制作に集中している人は多そうだろうからね。建築家が純粋だったら建築物は実現しない(笑)不純な領域、だから建築家は作家だ・・、と言い張りたいんだろうね。他人の金銭を使って好き勝手造っているんだから、周りの人から尊敬されなくってもいいんだけどね。

自宅から県大まで毎日片道、2時間通うとなると真冬は大変ですか。

■ 大学は学ぶ場所

大室:冬はこの山を越えられるかどうか・・心配ですね。
佐藤:スノータイヤ要るね。吹雪くと速度遅くしないと危ないから時間は要する。
大室:今までは非常勤で通っていた、ときは大雪には遭ってないんです。
佐藤:非常勤で期間はどのぐらい通ってたんですか。
大室:3年間です。冬季に1,2課題でやっていたんです。大学の木々も葉が落ちた時期だったんです。今年、初めて琵琶湖周囲の桜をみましたし、新緑も体験してます。
大学って学ぶ場所ですから、教える場所でないので、学生が勝手に学んでくれるといい。長くやっていると指導して博士を何人育てたとか、教え子が学会賞受賞したとか、何かになった・・・と言いたがる人もいるでしょうね。

佐藤:話変わるけど、柳沢究先生、吉野荘を改修しているんだけど会ったことありますか。FBの投稿を観ると、学生たちが集まって飯作ったり、道路というか路地にでて、バーベキューしてた。その絵が投稿されてて、学生たちと一緒に飯作ってワイワイできているのはいいよね。学生に暮らし方を伝えてるし。
俺は建築の理想は路上だと言ってきたので、吉野荘全体が路上的になっていく、そのことに好感を持ってしまいます。柳沢先生は幸せ建築家ですが、益々磨きがかかって観てるだけでも嬉しいです。
仲間とともに『住経験インタビューのすすめ』という小冊子を刊行し、今は研究仲間も全国に広まり、外国にもひろまっていて、年に数回研究会を開いていて、柳沢先生の幸せが多層構造になってきてます。関連した展覧会を「日本橋の家」で開催しTシャツ干してた絵が投稿されてました

大室:この前やってましたね。Tシャツにするのはいいアイディアですね、洗濯物だけど展示物でもある



『銃経験インタビューのすすめ』
柳沢究、水島あかね、池尻隆史著
2019年11月刊行



辻琢磨さん

大室:佐藤さんが辻琢磨君の家に泊まったのはいつですか。
佐藤:2年半ぐらい前(2022年10月)。大阪からの帰りに辻さんの家によって、改修している家だけ眺めて帰るつもりで行った。「みかわや」という、辻さんの奥さん・村上さんが街角製本を開いていたね。その場所は町づくりの見本みたいで、いいんですよ。辻さんの家の行く前に感銘をうけてしまった。この場を成立させるのは凄いよ。辻さんはその場所に無関係だった。プロデューサーがいて千葉大でてURを経て浜松で会社を起こしている人だったかな。多くの人が参加して成り立っているんだけど、動きを見ていると各人に無理が無い。やっている感もださない。
その後、村上さんが季刊新聞『みかわや』を送ってくれて読むと、素直に成立させている。リーダーがいない、やりたい人達が集まって自然にできている。行政指導だとモデルをなぞりながら、そこに達成する、目的合理で、やったふり出したり、マウンドとる奴がでてきてしまう。「みかわや」にはそうい硬い目的がない、それがいい。集まっている人にとって自由に活動できる場が欲しい、ということが核になっている集合体。

辻さんは爺ちゃんの家を継いで、更新設計を編み出したから、まぁいいだろう。始めは大室移築家の弟子になり、移築家と名乗っていたそうです。

大室:そうですね。

佐藤:最近は移築家離れして、更新設計家になっている
大室:自分の言葉を見つけた。

佐藤:先ほど語ったことですが、小室さん自身は芸術家には成れない、と結婚して分かった。大室さんは結婚してよかったね、そこに気づいたのはいい。大室さんもとうとう幸せ建築家の一人だ。奥さんは、大室さんがアートと建築を融合させ、暮らしを成り立たせている、その点を評価しているんじゃないですか。

大室:そうですね。自分の展覧会の時に僕が会場設計とかアドバイスじゃないけど、下働きさせられたりしています。
佐藤:それは大室さんにとって非常にいいことじゃないですか。
大室:(笑) ガソリン入れます。

 ガソリンスダンドに車を入れる大室さん

大室さんの自動車はうねうねした道を走りつづけた。途中「ここから下りになります」と教えてくれたが土地勘がないので、どこを走行しているのかわからなかった。

雲出川を渡ると白山中学校の校舎が見えてきた。

 私立大室美術館へつづく


2022年10月
下:「みかわや」、上:辻琢磨さんの家