渡辺菊眞個展2019 目次へ  記録作成 文責佐藤敏宏 
 07 森田一弥さんに聞く 音源339
■ 近況 ぎっくり腰になる

佐藤:森田さん、静原、遠いところから菊眞展見学に来ていただきありがとうございました。
森田:ぎっくり腰で大変でしたけど。
佐藤:セメント袋を持ち上げたらぎっくり腰になってしまったと。困りますね足腰鍛えないと
森田:最近、鍛えていたはずなんですけどね。
佐藤:頭しか使っていないって、ばればれですなー
森田:そんな事ないですよ。体も使ってましたよ。最近、日本海でサーフィンやっているんですよ。
佐藤:波乗りして、遊んでいるということですね
森田:ははははは
佐藤:労働で体使っているんじゃない、遊んでいると。

森田:遊んでいるんですけど。
佐藤:川下り、カヌーからサーフィンに転向したとは。
森田:最近よく海に行っているんですよ
佐藤:水面に座ってないで、海面に立つ男になったと。
森田:座ってちゃいかんと。

佐藤:そうなの。
森田:そうなんですよ。
佐藤:日本海波乗り男に変身と。以前聞いた時、昔鳥人間だったと言ってましたが
森田:鳥人間は魚谷ですよ。僕はカヌーやっていたんですよ。それが、もう海に出ましたからね、ようやく海にでました。

■ 菊闢Wの「風景

佐藤:ところで
森田:菊眞展
佐藤:ここまで、1分は森田さんの近況報告でしたが、菊眞展はどうでしたか。
森田:僕は京大、1年の時からの付き合いですから
佐藤:学生の時分の作品から、現在まで、全部見せられましたね。見てない作品も、あったじゃないですか。

森田:見てないのもありますよ。なんだろうなー。大学生の頃って、彼は凄く個人的な、町角で感じた、思いだとか、彼の繊細な感受性みたいなところから建築をつくっていると。社会に対する憤りを、建築を通して、ぶつけるみたいな。凄く「私小説的なね、感じがしたんです」よくよく考えてみたら「風景みたいな事を執拗に言っているなー」と思って。卒業設計も「風景」と言っていたし「あーそうかー」と思って。
 なにか「今、ここ」っていう。自分が感じている事と、遥か彼方、宇宙とか地球とか。コスモロジー的な世界が対峙されていた。それは昔から「風景と、言っていたんだなー」と、そのことが、腑に落ちましたね。

佐藤:大学の頃のコスモロジーが地続きの作品になっている。それはどのあたりから思ったんですか
森田:卒業設計ですね。越前岬の卒業設計。
佐藤:会場・左列の、コンセプト模型の最初に展示してある作品ですね
森田:そう、そう。
佐藤:プロジェクト建築、「建てぬ建築」の原点ですね。最近、実作は神社まで来ました。神話の世界、まだ実作はコスモロジーまでは行ってないのでは
森田:まだ、コスモロジーには行ってないけど、日時計があるじゃないですか。
佐藤:お〜!自邸は、日時計のさや堂ですね
森田:そう、そう、
佐藤:自邸スタート時は、コンクリートの塊の日時計でもありました。だが「建てる建築」自邸は、木造で軽やか日時計内包してました。



















 菊眞氏卒業設計 全体伏せ図

■   日時計の裏に住む

森田:それで日時計の裏がある」っていうのが、彼にとって重要で。太陽があって、太陽の当たらない部屋が在るというのが重要で。(註1)ただのパッシブじゃないよと。で、ただ、自邸は敷地と、関係なく建っているんですよね。太陽の方向に向けて建っていて、周りが、ぜんぜん活かせてないなーと思ったんだけど。

 今回、幼稚園の、プロジェクト見て、敷地に合わせつつ、土地の幾何学と、宇宙の幾何学のズレを利用するみたいなのが、保育園では観れたので、それがよかったんです。

佐藤:学生の時から大きく変わった点は、何か気付かれましたか。
森田:何が変わったかなー。

佐藤:森田さんの建築と比べてみると、どういうふうに見えますか、菊眞氏の実作はそんなに多くはないんですが
森田:無いけど、「言語化する能力が凄いなー」と思いましたね。あーそうか、そう言葉にするかーと。そういうふうに位置づけるかと。
 もうちょっと実物が出来てくれたら、いいだろうなーって。
 
佐藤:腰が痛くて応えてもらうのも、辛そうです。
森田:そうです
佐藤:今日は森田さん軽快に言葉がでません、腰痛に肉声奪われます。
森田:今日は、言葉でないですね

佐藤:辛かったら、ここらで、やめますけど。
森田:でもねー。一番最初に言っていた「ノーフューチャー」って書いてあって。インドでも、建築を造ったときに「ノーフューチャー」って言われた。あれが彼の原点みたいになっている。
 実際に造るなかで「夢を与えなければいけないんだ」という。それが。インドの震災復興住宅として造ったのに「ノーフューチャー」って言われたって、彼は言っているんですよね。
 結局、「ただ住まう、空間を造る」と言うことだけじゃなくって「夢を提示しないと、人の心は動かない」っていうふうに言っていて。それは、今「なかなか日本では感じられらない、意識できな話だなー」と思って。
 そういう、話すスピードが遅いですね。

佐藤:疲れているんですよ。
森田:疲れている。
佐藤:森田さんの精神状況や言葉は、腰、身体の影響をもろにうけると。肉声は腰痛に侵されている。体が弱ると肉声・言葉も弱る。人として正常だね。
森田:そうですよね。

佐藤:腰が痛くって、なかなか言葉にできない森田さん、今夜は珍しい状況になっております
森田:ゆっくりいきますよ。だからこそ、改めて、意識させられる。建築の役割みたいなの、それを感じましたね。しつこいですよね。

佐藤:昔の方が、しつこい感じだと思ってましたが、最近の実作みると、軽やかにやっているように受け止めましたが。
森田:「作り方とか、プランをつくる能力みたいなのは、凄く練られているなー」と思うんです。追求しているテーマみたいなんものは「しつこいなー」と。「テーマが、ぶれてないなー」と。とにかくしつこい。はははは



(註1)森田氏による「陽の当らない部屋=時空が在るというのは重要で」という指摘は、菊眞氏の憎み愛する場であり、菊眞建築の本質泉を突いていて貴重な発言である。それは日本の神話的時空を描いた著者たちの深層にも通底している悩みで、そこに通じていると推測中。 詳細は体験記に書く予定



























■ 実現への意志を期待したい

佐藤:香川県ミュージアムからも評価されて、今日も展示されていまして、建築界の世界とは異なる領域から、評価を受けています。その事についてはどう思われますか。

森田:あー、幸せだと思いますけどねー。
佐藤:建築界からは、あまり評価を受けないような気もしますが
森田:それは、彼の頑張り次第じゃないですか。「評価されない」って、周りのせいにしても仕方がないので。「自分で頑張れですよ」ですね。
 保育園だって、園長に「日時計要らない」って言われても、本人の伝え方の問題ですよね。それが正しいと思うんだったら、嘘ついてでも、意地ででも、実現すべきじゃないですか。だまくらかしてでも実現すると。それが正しいと信じているだったら、実現するべきだと思う。それぐらい実現への意志を、期待したいですね。

佐藤:なるほど、実現への意志が弱いぞと。
森田:施主が分ってねーから、俺はもう引くみたいな話は、甘い、甘いあまい。
佐藤:「建築家としてしっかりせんかい」と。大学生のときからずーっと、30年来の建築友達としては「甘いと、しっかりせい」と
森田:そう思いますね

佐藤:これでいいですか
森田:いいです、メッセージとしては「建築家としてしっかりせい!」と、ははははは。
 音源 340

森田:「現実への意志、その努力を今後の20年〜30年でやって欲しいなー」と思いますよ。
佐藤:実現への意志が弱いんじゃないかと。原因はなんでしょうか。
森田:「紙の上で表現しきった」と思っているところがあるんじゃないですか。

佐藤:頭でっかちということですか
森田:頭でっかちだけじゃないけど、物資化するってすごく大事なことですからね。自分でそう思いますね。






 

■  紙は残らない

佐藤:紙に描いたものを物資化すると、何か自分に返ってくると
森田:紙は残らないですから。建築は残りますから。
佐藤:今日、森田さんに久しぶりに会ったんだけどさ〜。菊眞の父ちゃんは、石を立てちゃったみたいですよ。石は何億年も残ってしまう、可能性がありますよね。どうしますか、あっちは。
森田:そうそう、それでいいと思います、そういう事ですよ。
佐藤:石に比べれば、建築はあっと言う壊れちゃいましからね。
森田:最終的には無機素材で造るのが一番長持ちするっていうとですよね。

佐藤:今日、室戸岬にいって空海さんが修行した洞窟観て来たんです、1200年前修行した住居、その場所が、まま残ってますした。洞窟建築、いつまでも残ってしまいますね
森田:そうですよ。そんなのが残っているんですか。
佐藤:高知には、在るんですよ。
森田:へーえ。
佐藤:暮らした住居の洞窟と、悟りを開いた洞窟と、宇宙と一体になった修行洞窟と、二つ洞窟が残っています。石はいつまでも残りますね。お父さんに先を越されてしまいましたね。
森田:まあ、先に死ぬ方が、そういう事は先にやるべきです。

佐藤:ははははは
森田:菊眞の年で、あれをやったら拙いですよ。ふふふふ
佐藤:分っていても、やってはいけない、物には順序が大切だと
森田:そうそう、順序がある。

 横穴は建築なのだ

佐藤:単管・鉄管の神社を造ったから、次は石の神社に行く可能性もある、ないとは言えないですね
森田:あると思いますよ。
佐藤:洞窟建築家、何もしないけど、洞窟掘ったり、石を建てたりして「これが建築なのだ」と言う可能性がある
森田:横穴、あれは建築ですよね。
佐藤:それも楽しい話だね、森田さんも数億年、永遠の残る建築を造ってください
森田:僕も造りたいですね

佐藤:次回インタビュー楽しみですね。お子さんが沢山いるから、子供が造るかもしれませんね
森田:そうですね、子どもが造るかもしれませんね。「あの、ばかオヤジが」とか言いながら。はははは
藤:孫の可能性もある、「森田爺さん、そういうこと、言ってたから、俺が造ってやった」と。

 雑談になりますが事務所を新しく造ったでしょう。

森田:そうですよ。隣、買って、佐藤さんが来たあと、隣の畑買ったですよ。
佐藤:道路わきまで
森田:あれも付いた来たんですよ。
佐藤:事務所建築は畑についてた、おまけ建築だったんだ
森田:今事務所にしているのは、おまけだったんですよ。あの建物も在ったんですよ。だから今は隣の一軒家買って、そのおまけの駐車場を買って、その駐車場を事務所にしていて。下の事務所も使っているんです。で、隣の大きな家を直してて、そっちを自宅にしようと思っていて。
佐藤:もともと住んでいたところでしょう
森田:いやいや元々住んでいた所の隣を、また買ったんですよ。

佐藤:身の回りの家ばっかり、買ってるんじゃない
森田:家ばっかいり買っています。今、360坪持っているんですよ。ふふふ
佐藤:大尽じゃん! 民宿やってくださいよ、俺泊まれるように
森田:佐藤さん泊まれますよ、いつ来ても。

佐藤:やった〜。京都の我が家出来ていたと。
森田:和室があって、風呂とトイレも付けたし。人、ちょこちょこ来ますよ。

佐藤:静原の老人集めて、わいわいする居場所づくり、やっちゃいそうですね。
森田:それも「別な場所でやろう」と思っているんで。今考えているんですよ。
佐藤:さすがですな。現代の少子高齢の社会問題、厚労省、多いに喜ぶ居場所づくり、構想してましたか。
森田:じじいの集まる場所をつくりたいなーと。爺さんたち、生きがい無くしてしまって、引き籠ると、もったいないしね。自分もそのうちそ、仲間入りするので。そういう場所を作っておかないと。ふふふふふ。また来てください。京都に来たらうちに泊まれますので。こないだ来られたのって、何ねん前でしたっけ。
佐藤:2017年ですね、5年ごとに聞き取る予定だったんですけど、311来て予定崩壊でしね。

森田:うちの娘が「滋賀県大に行っている」の知ってました。
佐藤:川井さん聞き取りにした年だったね。
森田:そうですよね、うちの娘に会った。
佐藤:2ショットしましたね。まだ大学は決まってなかったような気がします。森田さんの家から、川井さん家に行き「川井さんしゃべる、俺きく聞く」で、話盛り上がりすりましたね。記録をアップ大勢が見てしまい、川井さん、もりもり、炎上気味になってしまって。

森田あのインタビュー(2017年1月29日)は、面白かったですよ。
佐藤:今日は川井さん、調子悪いみたいだよ。声かけてやってください、飯食わしてやって。
森田:来週、静原に来る予定なんですよ。彼、家を買ったんですよ、足軽屋敷ですよ。
佐藤:聴きました、奥さんとも仲良しそうだし。どんどん雑談になっていくな
森田:そうそう、雑談、重要ですから

   341 聞き取り難い

森田:菊眞本人によると、「真ん中にある、感涙の風景がいちばん大事だ」と。それが展覧会で一番示したかったことで、自分の作品はどれも到達しているとは思わないけど、そこを目指している」そういう宣言だと。そういう話でしたね。
佐藤:自分の実作は「感涙の風景」の建築群には負けていると。そんな事を言っていいんですかね。
森田:いいと思いますね。「ああいうものを、建築的にどう実現するのか」っていう方法が、幾何学であったり、世界観であったり、建築的な方法によって、近づこうとしている。それは共有可能です。

佐藤:それで難しいと思うのは、時間の経過というか、自然と時間と組み合っで成っている。作るということと反しているから、なかなかの凄技になるね、そうでもないですか。
森田:時間を含めた設計は可能じゃないですか。可能だと思います。

佐藤:ありがとうございました。腰はやく治してください。

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