編集者と建築家について語る 記録 01 | 文責と作成2021年8月佐藤敏宏 | ||
2021年8月4日 13:30より ZOOM開催 | タイム・キーパー岸祐さん | ||
渡辺淳悦:佐藤さんと初めて出会ったメディアの人間ということで、今日お招きいただきました。相応しい内容のことをお話できるかどうか分りませんけれども、簡単に、事前に提出したレジュメに沿ってお話したいと思います。レジュメ通り読み上げても詰まらないので、簡単に。 私は1981年に社会人になったので、70年代後半に学生生活を送った者なんです。その頃、一種の都市論ブームというのがございまして、どちらかというと建築というよりも都市論に関心があって、いろいろ関係の本を読んでいたような気がします。 高校の同級生がたまたま建築に2,3人進んたのがおりまして、東大と、早稲田と武蔵美なんです。彼らの模型作りを手伝いに行ったり。そういうことで建築との関わりと言えば都市論への関心と友人の模型作りといったところから始まりました。ちなみにその3人は建築を出たんですけれども、今、建築をやっている者は一人もおりません。差しさわりがあるので、どういう事かは触れませんけれども。今、63,4歳になるんですが、建築出た同級生が一人も建築に係わっていないというのは、大変残念な気がいたします。 レジュメに戻りますけれども、そういうわけで佐藤さんと出会ったんです。けれども佐藤さんが建築家ということは全く意識しておりませんでした。どういう経緯でイラストを依頼したのかもちょっと記憶に無いんです。何となく佐藤氏は福島における一種の文化ムーブメントの仕掛け人といいますか、イベンターというか、そういった印象がありまして。特に、東松照明写真展の全国巡回では福島における中心人物でしたので、何となくそんな感じの人ということでお付き合いが始まったわけです。 ですので、佐藤さんの作品そのものを知ったのは福島を離れずいぶん後で、福島県の梁川という所の駅前に建てた物と、それから千葉県の松戸に建てた個人住宅。その二つを案内していただいて拝見したことはあるんです。そういう意味では佐藤さんを建築家として意識したことは、ずーっと後のことでございます。 その後、新聞社であちこち周りまして、意識的に建築と接点を持ったのは名古屋におりました時です。名古屋はどういうわけか、建築家の方々が文化活動に熱心に取組むというか、そんな背景がありました。特に「C&D」という雑誌は建築に限らず色々なイシューを特集する形で発行する雑誌で、いろんな方が集まっておりました。そんな所からヒントをもらって「スペース」という、名古屋を中心とした東海三県の都市空間のエリアを一つずつ取り上げて探訪する、そんな連載を3年ほどしました。それが一番濃密に建築家を通して都市と関わった時期だったのだ、という気がします。 当時、名古屋は世界デザイン博覧会。それからその後、私は名古屋勤務3度目の時に、2005年の万博ということで何となくあげあげの雰囲気の時代で、もしかしたら「名古屋の建築家の方々はそういった時代の気分を、ちょっと背負っていたのかなー」というふうに今になって思い起こします。 その後、東京に勤務しまして、たまたま美術記者を数年やることになりました。丁度、劇場や美術館が続々建ってる時期で、私はコンテンツに即して書くというよりも、器ですね。つまり金と美術について関連記事を幾つか書いた記憶があります。 当時、朝日の学芸部には松葉一清さんという、この方は建築評論でも名をなした方ですけれども、先輩格としておりました。彼は個人的な著作活動は社業とは別にしていたわけですれど。たまに文化面に建築ないし都市論的なこどを書く事がありまして、そんなことを眺めたり。年下なんですけれども、大西若人という記者がいまして彼は編集員やってます。レジュメに書いた通り、たまたま松葉氏は京大の建築で、大西氏は東大の都市工学を出ているんです。そういった建築、都市工学をバックグランドとする人間が美術記者だったという、ちょっと変わった環境で刺激を受けたと。そんなことを思い起こします。 今、建築ということで振り返ってみると、やっぱり学生時代の都市論ブームというんですかね、その辺の影響がいまだに、個人的には読書をしても強い印象があります。原広司さんの『集落への旅』ですとか陣内秀信さんの『東京の空間人類学』であるとか、そういった著作に刺激を受けて都市をふらふら歩いて来たといったところが、私と建築との関わり、ということが言えると思います。 特に編集者として建築と関わったということは今申し上げた通り、ほとんどございません。若干建築家の方々と連載を組んで、仕事をしたということが数少ない思い出になります。とりあえず時間的にはこれぐらいでよろしいでしょうか。 佐藤:岸さん時間どうですか。 岸:あと7分ぐらいあります。 渡辺:でも他の方が長くなると思いますので。僕からこれ以上膨らまして話すことも特にございませんので。 佐藤:渡辺さん、ありがとうございました。 井口勝文さんの講話録へ |
1982年12月18〜26日東松照明の世界展 福島実行委員会刊行のパンフレット 梁川駅前の建築 同上内部 |
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