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    耐震強度偽装問題 審議 内容 を見やすくしてみました   home
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      164-衆-本会議-27号 平成18年04月28日  

 目次  01 02 03        

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議長(河野洋平君) この際、内閣提出、建築物の安全性の確保を図るための建築基準法等の一部を改正する法律案及び長妻昭君外四名提出、居住者・利用者等の立場に立った建築物の安全性の確保等を図るための建築基準法等の一部を改正する法律案について、順次趣旨の説明を求めます。国土交通大臣北側一雄君。
      〔国務大臣北側一雄君登壇〕 

国務大臣(北側一雄君) 建築物の安全性の確保を図るための建築基準法等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。

 今回の構造計算書偽装問題は、多数のマンション等の耐震性に大きな問題を発生させ、多くの住民の安全と居住の安定に大きな支障を与えただけでなく、国民の間に建築物の安全性に対する不安と建築界への不信を広げております。 また、今般の問題では、構造計算書の偽装を元請設計者指定確認検査機関建築主事いずれもが見抜けなかったことから、建築確認検査制度等への国民の信頼も大きく失墜しております。

 かかる問題の再発を防止し、法令遵守を徹底することにより、建築物の安全性の確保を図り、一日も早く国民が安心して住宅の取得や建築物の利用ができるよう、早急に制度の見直しを行う必要があります。 このような趣旨から、このたび、この法律案を提案することとした次第です。


 次に、この法律案の概要について御説明申し上げます。

 第一に、建築確認検査の厳格化を図るため、一定規模の建築物について第三者機関による構造計算適合性判定を義務づけるとともに、三階以上の共同住宅について中間検査を義務づけること等としております。

 第二に、指定確認検査機関の業務の適正化を図るため、その指定要件を強化するとともに、特定行政庁が立入検査を行えるようにするなど、指定確認検査機関に対する監督を強化することとしております。

 第三に、建築士等の業務の適正化を図るため、建築士に対して構造安全性の証明を義務づけること等とするほか、構造規定違反等の重大な違反について最高で三年以下の懲役または三百万円以下の罰金を科すなど、建築士等に対する罰則を大幅に強化することとしております。

 第四に、建築士、指定確認検査機関等の情報開示を徹底するため、処分を受けた建築士の氏名の公表や、指定確認検査機関の業務、財務の状況に関する書類の閲覧等の措置を講ずることとしております。

 第五に、住宅の売り主などによる瑕疵担保責任の履行に関する情報開示を徹底するため、宅地建物取引業者に対し、契約締結前に保険加入の有無などについて相手方への説明を義務づけることとしております。

 その他、これらに関連いたしまして、所要の規定の整備を行うこととしております。
 以上が、建築物の安全性の確保を図るための建築基準法等の一部を改正する法律案の趣旨でございます。(拍手)

 
議長(河野洋平君) 提出者長妻昭君。
               〔長妻昭君登壇〕

長妻昭君 私は、民主党・無所属クラブ提出の、ただいま議題となりました居住者・利用者等の立場に立った建築物の安全性の確保等を図るための建築基準法等の一部を改正する法律案につきまして、提案者を代表して、提案理由及び内容を御説明申し上げます。

 一生に一度の何千万円もする、人生の希望を託した買い物。このマンションが、耐震偽装の発覚により、一夜にして価値がゼロになってしまう。絶望のどん底に突き落とされた多くの被害者が眠れぬ夜を過ごしております。姉歯物件以外でも、耐震性を満たさない建物が全国各地で次々に見つかっています。 私たちの法案は、居住者、利用者、購入者などの立場に立って、安全な建物を支える、政府案にはない三本の太い柱を用意いたしました。

 まず第一本の柱は、設計、施工分離の促進です。 姉歯元一級建築士は、国会の証人喚問で、偽装のきっかけとして、建設会社から厳しいコスト圧力があった旨の証言をしました。現在、構造設計士を含む一級建築士の多くの方々が、ゼネコンや建設会社、ディベロッパー等の下請的、隷属的立場に置かれています

 本来、建築士は、良心に従って、法令に合致した設計をすると同時に、工事監理者として、建設現場で、建設会社の現場監督を指導する立場で、手抜きや手抜かりがないか厳しくチェックし、防止する役割を担っています。しかし、立場の弱い建築士が、設計段階で、厳しいコストダウンの要求を繰り返し突きつけられた場合、本来のあるべき安全な設計が本当にできるでしょうか。 また、建築士が建設現場で厳しいチェックをすることは、コストアップ要因につながり、立場の弱い建築士が現場で工事監理を徹底できないという事情があることも事実です。 設計が施工の下請になっていては、チェック機能が働くはずもありません設計と施工を分離し、厳しいチェックを実現するには、建築士の地位と独立性を高めていくことが重要です。

 民主党案では、すべての建築士を建築士の会に御加入いただき、自治組織としての運営を図り、独立性を向上させます。その中で、建築士同士の情報交換を密にし、構造を初めとした専門建築士養成のための研修などを充実させてまいります。 実際に、弁護士、公認会計士、税理士、行政書士、司法書士等にも全員に加入義務のある自治組織があります。

 また、現在、建築士の資格を持っていない、建設会社やディベロッパー関係者が建築士事務所を開設し、資本金を拠出して、株式会社として建築士を雇うケースが多く見られます。 民主党案では、建築士事務所の開設者を建築士に限定し、株式会社とは異なる建築士法人制度を新設し、独立性を高めます。同時に、建築士に無限責任を負わせるなど、責任も強めてまいります。


 二本目の柱は、保険加入の促進です。 現在、住宅の十年間瑕疵担保責任を保証するための保険がありますが、加入しているのは、平成十六年度、新築一戸建ての28.4%、マンションに至っては新築のたった1.1%にすぎません。売り主が倒産しても保証される保険の普及が不可欠です。 民主党案では、すべての一戸建て及びマンション販売の広告に、その住宅が保険に加入しているか否かを表示させることを義務づけています。保険に加入していない場合でも、加入していないことの表示を義務づけ、文字の大きさや体裁も規定し、違反には罰則を科します。

 これによって、消費者が保険加入の有無を明確に知ることができると同時に、保険に加入できない物件は売れ行きに影響が出ることになり、保険加入の促進が期待できます。保険に加入する際には建物が保険会社の査定を受けることになり、多角的なチェックがなされます。 また、保険が普及すれば、売り主が支払う保険料は、より安全な建物に関してはより安くなります。逆に、手抜きをすればするほど保険料が上がる可能性が高まり、手抜きは経済的にも割に合わない行為となります。


三本目の柱は、建築確認の確認済み証は、民間確認検査機関の物件であっても、最終的には特定行政庁が発行するというものでございます。 官から民への流れの中で、責任までもルールなく民間に丸投げしたツケをざる検査として今私たちは払わされているのです。 民主党案では、特定行政庁に苦情や内部告発の窓口の設置を求め、民間確認検査機関が手がけた物件でも、不審情報が寄せられたものや不自然に早過ぎる建築確認に関しては、特定行政庁が済み証発行をストップさせることができます。車検でも民間が検査しますが、合格証である自動車検査証は、行政が発行しています。

 さらに、建築主事登録に設計や現場監督経験を要件とすること。すべての建物に中間検査と完成二年後検査を義務づけること。罰則の強化。一定規模以上の建物の建築確認に専門家同士による相互チェック、つまりピアチェックの体制も整備いたします。

 民主党案は、法案名にもあるように、あくまでも居住者、利用者、購入者の立場に立ち、役所や業界に厳しくても、安全な住宅を確保する制度でございます。しかし、政府案は、この期に及んでも、あくまでも役所や業界の立場に立って、余り厳しくない、従来の制度を取り繕ったびほう策にすぎません。

 政府案と民主党案とは、提供者側に立つのか、生活者側に立つのか、どの立場から制度を組み立てるのか、この立ち位置が百八十度異なるものです。

 役所や業界に差しさわりがない政府案は、国民の皆様にとっては大いに差しさわりがあります。居住者の安全を二の次にしていると言わざるを得ません。政府は、ざる検査を放置した責任ばかりか、再発防止の責任までも放棄しております。 お集まりの議員各位の良心に訴え、何とぞ成立させていただくことを切にお願い申し上げ、私の趣旨説明を終わります。 御静聴ありがとうございました。
 (拍手)


 建築物の安全性の確保を図るための建築基準法等の一部を改正する法律案(内閣提出)及び居住者・利用者等の立場に立った建築物の安全性の確保等を図るための建築基準法等の一部を改正する法律案(長妻昭君外四名提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(河野洋平君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。望月義夫君。
                〔望月義夫君登壇〕

望月義夫君 自由民主党の望月義夫でございます。
 私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいま議題となりました建築物の安全性の確保を図るための建築基準法等の一部を改正する法律案に係る趣旨説明に対しまして質問したいと思います。
  (拍手)


 昨今のヒューマンエラーに起因する事故やトラブルには枚挙にいとまがありません。去る4月25日、今週の火曜日でございますが、福知山線列車脱線事故から一年を迎えました。追悼慰霊式が営まれましたが、私も参列させていただき、献花をさせていただきました。御遺族代表の慰霊の言葉に胸を詰まらせると同時に、私はこれを、安全、安心がほころびを見せる社会への警鐘として受けとめ、決意を新たにした次第であります。

 もちろん、我々自由民主党は、国民が最も切実に望んでいる食、輸送、治安そして住に対する安全、安心問題について真摯に取り組んでまいりました。 とりわけ、昨年11月に発覚した構造計算書偽装問題は、住宅、建築物という国民生活の基盤に対する信頼を根底から崩すものであり、早急に信頼を回復するための有効な手だてを打たなければ、社会的、経済的に極めて深刻な影響を広げかねないという認識に立ち、この問題に対して一貫して精力的に取り組んでまいりました。

 今回の問題は、建築設計士という専門職のモラルの問題にとどまらず、確認検査会社、建設会社、販売会社、コンサルタント会社、さらには監督に当たる行政を含め、あらゆる段階でそれぞれに問題点が指摘されるといった点で、我が国の建設、不動産業をめぐるさまざまな課題をさらけ出したものと言えます。

 また、本年1月には、全国チェーンのビジネスホテルにおいて、建物が完成し、完了検査を受けた後に、車いす使用者の駐車施設を撤去して客室として使用するなど、63件もの極めて悪質で反社会的な違法工事が常習的に行われていたことが明るみになり、全国の障害者の方々から抗議、苦情が殺到いたしました。まさに、我が国の建築行政に対する挑戦とも言える事件が相次いで起こっているわけであります。

 こうした中、我が国の建築物や建築活動に対する国民の信頼を回復するためには、民間だけでなく、行政の仕事のあり方を含め、全体の構造的問題を徹底的に総点検した上で、問題点を洗い出して正さなくてはなりません。

 自由民主党は、この問題の発覚直後、与党耐震構造設計偽造問題対策本部を設置し、政府に対し、マンション居住者の緊急避難危険な建築物の早期解体のための措置を早急に講じること、再発防止対策を徹底すべきことなどの対策を申し入れました。その後も、耐震偽装問題対策検討ワーキングチームを設置し、現地調査や関係者からのヒアリングを実施し、緊急提言を取りまとめるなど、この問題に対して、真摯に、かつ精力的に取り組んでまいりました。 こうした我が党の取り組みを踏まえ、国土交通省をはじめ政府においては、これまで昼夜を分かたず懸命の対応が図られてきたものと認識をしております。
 
そこで、まず国土交通大臣にお伺いいたします。
 改めて、今回の問題をどのようにとらえられているのか、大臣の基本的認識と再発防止に向けた今後の取り組みに対する決意についてお伺いをしたいと思います。 また、偽装された構造計算書により建築された危険なマンションの居住者の方々への対応と現状についてお伺いしたいと思います。

 さて、今回の問題は、資格者である建築士が悪質な偽装を行ったことが直接的な原因と考えられます。本来、建築士は建築物の質の向上に努める立場にありますが、私は、建築士の適正な業務の遂行を確保するための制度について課題が多いのではないかと考えております。 また、建築確認や検査については、平成10年建築基準法の改正により、指定された民間の機関でも実施できることになりました。一方、今回の問題では、民間の機関だけでなく地方公共団体の建築主事においても構造計算書の偽装を見抜くことができませんでした。このことは、そもそもの確認検査制度に問題点があると考えざるを得ません

 そこで、国土交通大臣にお尋ねいたしますが、今回の法改正を含め、建築士の業務に関する制度をどのように改善し、また建築確認検査制度をどのように変えていこうと考えているのか、お答えを願いたいと思います。 いずれにいたしましても、私は、今回の法改正を初め、建築にかかわる行政について徹底した改革を断行し、住宅、建築物に対する国民の不安が解消されることを心から望むものであります。

 さらに、ストック型社会への転換期にある今こそ、建築主、設計者、施工者はもとより国民全体が、安全で安心なすぐれた品質の建築物をつくり、これを社会の資産として長く大切に使っていこうという認識を共有できる、成熟した社会の実現を目指していかなければならないと考えております。 このような社会を目指す上で、建築物や建築活動を支える基本的なインフラとして、建築基準法、建築士法を初め建築にかかわる各種の制度がさらに改善され、万全な形で運用されていかなくてはなりません。

 最後に、危険な分譲マンションの居住者やホテルのオーナーの皆さんを初め、今回の問題で被害に遭われた方々に対する万全の支援を強くお願い申し上げ、私の質問とさせていただきます。 ありがとうございました
(拍手)

    〔国務大臣北側一雄君登壇〕

国務大臣(北側一雄君) 望月議員にお答え申し上げます。 今回の問題の基本的認識と再発防止に向けた今後の取り組みに対する決意についてお尋ねがございました。

 今回の問題は、本来法令を遵守すべき資格者である建築士が構造計算書の偽装を行い、その偽装を指定確認検査機関のみならず地方公共団体でも見逃してしまったものであり、まことに遺憾であります。

 今回の事件は、一部の建築士が偽装を行ったことに起因するものではありますが、それにとどまらず、建築物の設計、施工を行う側に課された課題、さらには偽装を見逃した建築行政側の問題としてとらえるべきであり、建築士制度や建築確認検査制度等の抜本的な見直しによる再発防止策が必要であると考えております。

 このため、指定確認検査機関及び特定行政庁の審査の実態を調査するなど、制度の総点検を行うとともに、この結果を踏まえまして、2月24日社会資本整備審議会建築分科会において、早急に講ずべき施策について中間報告を取りまとめていただきました。この中間報告を踏まえ、再発防止策として、早急に対応すべきものについて、構造審査の厳格化指導監督の強化罰則の強化などの観点から、建築基準法等の改正案を提出させていただいたところでございます。 今後とも、引き続き、今回のような事件が二度と起こらないよう全力で取り組んでまいります。
 

次に、危険なマンションの居住者の方々への対応と現状につきましてお尋ねがございました。 危険な分譲マンションの居住者等の安全、居住の安定確保のため、地域住宅交付金を活用した、相談、移転から取り壊し、建てかえに至る総合的な支援策を昨年12月6日に提示するとともに、昨年度補正予算において地域住宅交付金50億円を計上したところでございます。 このような支援策をパッケージで提示したこと及び移転費、仮住居費に係る助成を実行したことにより、これまで居住者の方々の約95%に当たります294戸退去が進んでおります。

 また、建てかえに関しましては、都市再生機構等が作成した再建計画案をもとに、居住者の方々と地方公共団体との間で鋭意検討が進められております。現在、建てかえの対象となっておりますマンション11棟のうち1棟において除却工事が行われました。また、六地区において建てかえ推進決議がなされているところでございます。 今後、居住者の方々が可能な限り早期に合意形成を図り、建物の取り壊し、建てかえを円滑に進められるよう、地方公共団体と十分連携をとって取り組んでまいる決意でございます。

 次に、建築士の業務に関する制度及び建築確認検査制度の見直しについてお尋ねがございました。 今回の改正案においては、建築士の業務の適正化を図るため、構造安全性の証明書の交付の義務づけ、建築士等に対する罰則の大幅な強化、処分を受けた建築士の氏名等の公表などの措置を盛り込んでおります。

 また、建築確認検査の充実強化を図るため、審査方法の指針の策定による確認検査の厳格化、第三者機関による構造計算適合性判定の義務づけ、三階建て以上の共同住宅についての中間検査の義務づけ、民間検査機関に対する指導監督の強化などの措置を盛り込んでおるところでございます。 さらに、専門分野別の建築士制度の導入など、建築士制度の抜本的な見直し等の課題につきましては、夏ごろまでに方針を取りまとめ、所要の改正措置を講ずる方針でございます。
(拍手)

 


議長(河野洋平君) 馬淵澄夫君。
    〔馬淵澄夫君登壇〕

馬淵澄夫君 民主党の馬淵澄夫でございます。
 私は、民主党・無所属クラブを代表して、ただいま議題となりました政府提出の建築物の安全性の確保を図るための建築基準法等の一部を改正する法律案について質問を行います。(拍手)

 さて、さきの千葉7区の補欠選挙では、我が党の太田和美候補が劇的な勝利をおさめました。それは、小泉構造改革と、その結果もたらされた格差拡大に国民がノーを突きつけた瞬間でもありました。(拍手)

 小泉構造改革は、重点七分野の一つとして都市再生を掲げて、容積率を緩和し、都心にマンションを乱立させました。また、格差拡大社会は、この国の安心と安全の暮らしを脅かし始めました。つまり、小泉構造改革の影の部分であり、そして安心、安全に対する国民の信頼を足元から揺るがしたのが、それこそ、昨年11月に発覚した耐震偽装問題だったのです。

 期せずして、私は、この問題に深くかかわることになりました。すべては、昨年の11月の24日私の国会事務所に突然届けられた二冊の構造計算書から始まったのです耐震偽装のやみを暗示するこれらの資料をきっかけに、以降私は、参考人質疑、一般質疑、証人喚問、集中審議など、国土交通委員会並びに予算委員会にて合計十一回にわたって耐震偽装問題の質疑を行ってまいりました。

 しかし、残念ながら、今もって耐震偽装問題の真相は明らかになったとは言えません庶民の夢であるマイホーム、これを失い、多重債務など将来の不安にさいなまれているマンションの被害者住民の方々、政府の支援を一切得ることができないホテルオーナー、さらには、非姉歯物件の耐震偽装が明るみになる中、果たしてうちは大丈夫なのかと心配している多くの国民の不安と不信は、払拭されるどころかますます高まるばかりなのです。 一昨日、昨年12月20日の一斉家宅捜査から127日目にして、八名の逮捕者が出ました。しかし、関係者の逮捕で事件は一件落着ではありません。耐震偽装問題は、事件化しても終わってはいない、何一つ解決せずに今も続いているのです。

 私は、まずこのことを、政府に対して、同僚議員の諸氏に対して、そして国民の皆様に対して強く申し上げたいのです、関係者の逮捕によって、姉歯元建築士を初めとする一部の者が起こした単なる事件として片づけてはならないということを。冒頭、まず大臣に、耐震偽装問題を単なる事件に終わらせないという強い御決意をお聞かせいただきたいと思います。

 私は、問題発覚の当初より、犯人捜しをするだけでは本質的な解決にはつながらないということを再三申し上げてまいりました。一部の人間の悪質な行為そのものは罰せられるべきものでありますが、一方で、制度の本質的な欠陥にも目を向けなければなりません。イーホームズ、日本ERI等の民間の指定確認検査機関のみならず特定行政庁でさえ、悪意を持って偽装が行われれば見過ごしてしまうというのが現行の確認検査制度なのであります。 本来であれば、制度構築時にこのようなことも十分予見すべき立場にありながら怠ってきた行政の不作為の責任は、相当に重いと断じざるを得ません。

制度構築に深くかかわってきた国土交通省、政府・与党の責任は徹底的に追及されるべきであり、そのけじめをつけずして、この国会での制度改正論議を始めることは許されません。国土交通省及び政府・与党の責任について、大臣からいま一度明確な御答弁をいただきたいと思います。

 私は、これまでの委員会の質疑でも、指定確認検査機関を導入した平成10年の建築基準法の改正時にさかのぼって政府の責任を追及してまいりました。当時の建設委員会の会議録をひもとくと、委員からの、民間開放によって確認期間が短くなるのかという質問に対して、時の住宅局長が、「格段にスピードが速くなる」とした上で、続けて次のように述べています。「民間にお任せした場合には、確認対象法令に合致しているか否かという、ただその一点を事務的、機械的に淡々とさばくというふうなことが業務になります。」これは偽装を見抜くことができなかった指定確認検査機関の主張と全く同じものであります。悪意の者が構造計算書の偽装を行った場合には見抜くことができない制度をつくってしまったという責任は明確にしなければなりません。

 現在の確認検査制度では偽装は見抜くことができない場合があることをお認めになった上で今回の法案を提出されるのか、この一点を端的に大臣からお答えをいただきたいと思います。

 私は、参考人質疑の中で、ホテルルートと呼ばれるビジネスホテルをめぐる耐震偽装問題への総合経営研究所、総研の関与の可能性を指摘してまいりました。そして、国土交通委員会での証人喚問では、総研が平成設計に対して具体的に鉄筋量やくい本数を指示したメモを示し、総研内河所長に対して「指示じゃないですか。」と迫りました。総研内河所長は、自分は知らない、はっきりとわからないと答弁をされました。

 確かに、指示性を明らかにするのは困難かもしれません。しかし、例えて言えば、会社の社長が、普通に行けば三十分かかるところを十五分で行ってくれと雇用関係にある運転手に言えば、それは暗にスピード違反をしろ、つまり法を犯すことを教唆しているのと変わらないのではないでしょうか。そのあげくに事故を起こしてしまっても、指示した者には責任はないと言えるのでしょうか。 まさにこれは、川上から川下に、立場の強い者が弱い者へと無理を強いながら責任を押しつけていき、その結果、全く過失のない者が知らない間にそのしわ寄せを押しつけられてしまうという、無責任、責任回避の構造そのものではないでしょうか。この無責任構造をたださずしてどうして改革と言えるのか。

第三者による構造計算書のチェックや罰則強化といった小手先の改革では、根本的な問題解決にはつながりません。大臣の御所見を伺います。 私は、建設業界の抱える根本的な問題に踏み込んだ改革こそが国民が求めるものであると考えています。そこでポイントとなるのは、設計、施工の分離であります

 我が国では、みずから設計し、のみを振るい、かんなをかける大工の棟梁に代表されるように、施工者が設計、施工一貫で請け負う伝統がありました。しかし、明治時代に入り西洋建築が日本にも導入される中で、次第に設計、施工の分離が推進され、建築家が施工を指導監督する監理の役を担うようになりました

ところが、我が国では、設計、施工一貫の伝統が強いために単独の設計行為にお金をかけるという意識が薄い、そういう中で建設会社は、設計部門で人材を抱え、一貫で請け負うという現在のスタイルをつくっていきました

 今回の法改正の中にも建築士法の改正が含まれておりますが、建築の専門家を資格として位置づける建築士法は、昭和25年、第7回国会において議員立法によって行われたものであります。提出者を代表して委員会での提案理由を説明されたのは、当時2期目の若かりし日の田中角栄元総理であります。

 当時の会議録を見ますと、提案理由の中で、「建築の設計は建築士に工事の実施は建築業者にと、おのおの責任の所在を明確にすることにより、相互に不正、過失の防止を図ることができます。」と、設計と施工の分離の建前が述べられております。しかし、このときも既に、委員会では、設計、施工がより明確に分離されなければ材料のごまかしや不正工事が発生する、こうしたおそれがあることが指摘されていました。私は、設計、施工の分離の明確化にまで踏み込まなければ抜本的な改革は行えないと考えますが、大臣の御所見を伺います。

また、私は、金融機関の責任ということについても考えなければならないと思っております。多くの方は、マンションを購入するに当たって銀行等から住宅ローンを借りています。現在、偽装マンションの被害者救済については建てかえの検討が進められていますが、現実には、二重ローンの負担に耐えることができないという悲痛な叫びを耳にします。

 欧米では、貸し手の責任が明確で、貸し手が担保価値を厳格に評価します。しかし、我が国では、不動産の財産価値は土地本位で、建物については数年たつとほとんど価値が認められることはありません。欧米に行きますと、古い住宅が大切にされています。手を加えることによって長期の資産としての住宅の価値を維持し、それが正当に評価される仕組みが我が国においても必要と考えますが、大臣の御所見を伺います。

 もう一つ、耐震偽装に絡んだ大きな論点がございます。一連の耐震偽装発覚の中で、伊藤公介元国土庁長官による口きき疑惑が問題となりました。小泉総理と同じ派閥に属し、総理の3度にわたる総裁選挙を支えてこられた伊藤元長官は、自民党の住宅土地調査会長を務め、ヒューザーの小嶋社長を初めとする業者や国交省の天下り先の法人から政治献金を受け、ともに海外視察にまで出かけられる間柄でもありました。次から次へと明るみに出てくるこうした政官業の癒着の構造をたださない限り、政府が幾ら再発防止に向けた取り組みを行うと言っても国民は決して信用はいたしません。大臣の御所見を伺います。
(拍手)

 以上、指摘をしてきましたように、今回の政府案は耐震偽装問題を受けた法改正としては余りに安易で本質を見据えないものであり、マンションの居住者、ホテルの利用者といった国民の側に立ったものとは到底言うことができません

 それに対して、我が党の法律案は、居住者、利用者、購入者の立場に立ち、保険加入、危険情報公表の促進、建築確認における行政の責任の明確化、建築士の独立性の確保の三点において政府案より実効性のある改革案となっていると思います。今挙げた三点について、それぞれ、政府案との違いを提出者にお伺いいたします。

 最後に、私の地元奈良にはたくさんの古い木造建築があります。法隆寺、薬師寺を手がけた伝説の宮大工棟梁、西岡常一さんの言葉を御紹介したいと思います。西岡さんは、家は、管理さえよければ、手入れをすれば三百年もつとおっしゃっておられます。我が国にはかつて、わざと誇りを持つたくみが建てた三百年間住める家があったんです。それが現在ではどうでしょう。地震で倒壊する危険のあるマンションにおびえながら住むことを余儀なくされている人たち、あるいは欠陥だらけの住宅を買わされた人たち。耐震偽装問題を機に、私たちにとって住まいとは何なのか、社会資本としての、国土創造の手だてとしての建築とは何なのかをもう一度真剣に考え、制度を抜本的に見直す必要に迫られていることを再度申し上げて、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)
 
   〔国務大臣北側一雄君登壇〕

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