見やすく! 参考人の意見の開陳   home
      打ち込み書き換え間違いがあるかもしれませんので 衆議院TVにて確認ねがいます 

     05  06  07  08
    164-衆-国土交通委員会-20号 平成18年05月16 
 07 

下条委員 ありがとうございます。 過剰反応ができない一方で人的な許容量の問題もあるという、非常に難しい問題だと思います。そういう意味では、御参考にさせていただいた意見をもとにまた私ども検討していきたいというふうに思っております。 次に、指定確認検査機関の業務の適正化について、ちょっと皆さんにお伺いしたいと思っています。 つまり、政府案では、指定要件の強化と特定行政庁による指導監督の強化が挙げられています。これはもう法案にそのままでございます。一方で、特定行政庁に対する指導助言だけではなくて、やはり特定行政庁への指導強化、指導監督強化が必要になってくるのではないかと私どもとしては思っています。 といいますのは、意図的な耐震偽造や構造計算の誤りについては、不十分な審査があったものの六割が確認検査機関によるものだ、そして残りの四割が特定行政庁によって起きてしまったということだと思います。確認検査機関の方には簡単に言えば監督のメスが入りますが、特定行政庁の方には、指導監督の強化は行政庁がやる分にはできるんですが、一方で、国の方からのそこに対する指導監督の強化が今度の法案に盛られていないということだと思います。 この点について、例えば特定行政庁が行った建築確認の情報開示などを求めていく必要があるんじゃないかと僕らは考えて、これは今回だけではなくて将来的にも含めまして、この点について、まず村上参考人の方から御意見をいただければというふうに思っています。

村上参考人 お答えします。 特定行政庁の審査結果を情報公開するという方向、私は妥当な方向であると考えます。 それから、最初に申されました、国が特定行政庁に対して監督を強化するか、その問題はまだ大変新しい視点でございまして、できましたらこれからの建築分科会で審議させていただきたいと思います。

下条委員 ありがとうございます。 野城参考人、いかがでございましょうか。

野城参考人 歴史的な経緯を考えた場合、建築主事というのは御存じのように大変独特な制度でございまして、通常こういった許認可事務というのは首長、知事、市長の方がされるにもかかわらず、昭和25年の設計で、建築主事といういわば役所の中の独自なプロフェッションを設定したということがあるわけでございます。 当然、先ほど言ったように、特定行政庁の方の監督をしなければ片手落ちという側面もございますけれども、民間確認検査機関に対する厳格な査察といいましょうか、チェックを含めまして、その効果等々を考えますと、建築主事の方々も確認検査員の方々も、プロフェッションとして扱う、あるいはプロフェッションとして成長していただく、技能を上げていただくという視点が肝要かと思います。

下条委員 ありがとうございます。 神田参考人、御意見をいただければと思います。

神田参考人 こういった建築行政に関する問題は、基本的に特定行政庁公共性ということで進めていることだというふうに考えられますので、国がそれに対して指導するというような性質のものではないのではないかというふうに私は思うんですけれども、問題は、とか地方公共団体がこういう安全の問題に対してどの程度の責任を持つのかということがちゃんと議論されていないのではないかというふうに思います。 国家賠償法でというような資料もございましたけれども、実際にどの程度の責任が国にあるのか、どの程度の責任が確認をするところにあるのか、そういった議論を正確にしていただいた上で、どういった制度にしていくのかという議論をぜひしていただきたいというふうに思います。 私は、基本的にその地方ごとにやっていく問題ということでよろしいと思います。それで、情報公開されれば、そこで不適切なことがあれば、そこの住民の方々が正すということになるんだろうと思います。

下条委員 ありがとうございます。 大越参考人、いかがでございますか。

大越参考人 私は構造設計者なので的確に答えられるかどうかわかりませんが、この確認の問題は、先ほどの続きになりますが、基本的には、いわゆる見てすぐわかる集団規定であるのと、安全である、いわゆる個別規定ですね、それを同時に見ているところが一番問題ではないか。 今回の事件にしても、いずれにしても安全基準だけの問題ですね安全基準以外については基本的には今まで何も問題が起きていないわけですから。そういう意味では、むしろ一緒に議論してしまうと多分混乱が起きるのではないかと思っております。

下条委員 ありがとうございます。 ちょっと時間も迫ってまいりまして、最後の質問になるかと思いますが、次に、いろいろ今同僚議員含めてお話しさせていただいて、やはり人間の限界というのはあると私は思います。そして、チェック機能の限界もある。そうすると、残されたものは何かというと、私はやはり罰則しかないんじゃないかと思っているんです。 私もちょっと海外に長くおりましたが、やはりこの日本は、いろいろな物事が起きた後の罰則の部分がどうも諸外国と比べて甘い。極端な話、今、日本国じゅうに偽装をやった人は一人いるか百人いるか知りません。ただ、今全部出したら法的な処置によって罪に問われない、でも、一カ月後だと無期懲役に近いほど罪に問われるよと言ったら、日本国じゅうから もしかすると物すごい数の構造偽造のものが出てくるかもしれない。かもです、あくまでも。そういうのを踏まえると、どうも罰則規定が甘いなという感じはいたしております。  今回の改正案では、建築士等に対する罰則の大幅強化、免許取り消し後の再交付の期間を延長すると盛り込まれている。そういう意味を踏まえて、罰則をもう少し、経済的な面も含めて強化していったらどうかなというのは、今回を含めて、また将来的にも改正が出てくると思いますが、先生の御意見をお伺いしたいと思います。 村上先生、いかがでございましょうか。

村上参考人 お答えします。 私も、先生の御趣旨とおおむね今回はそろった形で建築分科会の中間報告をまとめたつもりでございまして、いろいろな形で、建築士に対する処分の強化、あるいは建築士事務所に対する罰則強化ということが盛られております。 それで、問題は、罰則強化はいわゆる質の悪い違反建築を排除することには役に立つけれども、本当に質のいい建築をつくるインセンティブにはならないという、そこのところの限界はあると思います。

下条委員 ありがとうございます。 神田参考人、いかがでございましょうか。

神田参考人 今までの罰則規定というのがかなり時代の古いものでしたので、やはり今回のような形で罰則が強化されるということは、社会に対する説明性ということからも自然なことだというふうに思います。 ただ、ここで、最初から繰り返しておるんですけれども、建築主の立場で、特にそれを業として行っている場合には、やはりそういう人の責任というのは非常に重いと思うんですね。それが、やはり専門家がちゃんと見て建物を不動産として業として扱うのであれば、そういう人たちの責任ということも明らかにしていかなければいけないんじゃないかと思っております。

下条委員 本当にありがとうございます。 もう時間が来ているので以上にいたしますが、いずれにしても、建築士、そして業界の方、ほとんどの方がまじめに働いていらっしゃいます。その方の汗が実るようにしっかりとこれから後、きょうの参考人の方々の意見をもとに議論して、いい法案にしていきたいというふうに思っています。きょうは本当に皆さん、御意見ありがとうございました。 以上で終わります。

○林委員長 斉藤鉄夫君。


斉藤(鉄)委員 公明党の斉藤鉄夫でございます。 きょうは、4人の先生方、本当に貴重な御意見を賜りまして、ありがとうございます。心から御礼申し上げます。 私の番から、いわゆる小さな政党、弱小政党になっていきまして、時間も短くなってまいりますので、早速でございますが……弱小政党と言いましたのは我が党だけでございます、ほかの党に失礼いたしました。短い時間になってまいりましたので、早速質問をさせていただきます。 まず、最初の二問は、四人の参考人の方全員にお聞きをさせていただきます。

 最初の質問は、建築基準法に対する考え方、また、いわゆる行政が建築の設計や施工にかかわるかかわり方の問題でございます。 お話をお聞きいたしておりますと、神田先生だけ少しお考えが違うようでございまして、私、建築基本法の起案書等も読ませていただきました。それによりますと、基本的に、細部にわたって公は、行政は設計や施工にかかわるべきではない、ある意味で行政のかかわりは集団規定だけで単体についてはいわゆる建築技術者の責任に任せるべきだと。 非常に極端な言い方をすれば、もう建築基準法は要らない、こういうお考えかと思います。それに対して三人の方は、きょうのお話をお伺いしますと、建築基準法という行政の関与は必要なんだというお考えかと思います。 このことにつきまして、特に建築についてはほかの経済行為に比べて公の関与が大きい、このように言われておりますが、この問題についてどのように基本的にお考えになっているのか、いわば建築基準法の存在意義とでもいいましょうか、四人の参考人にお聞きしたいと思います。

村上参考人 お答えします。 現在、調べてみますと不祥事がこれだけたくさん発生しておりまして、いろいろ調べるほど増加する状況がございまして、こういう状況のもとで、すべて建築基準法をなくして建築関係者に任せればいいというのは、現在の状況では社会は受け入れていただけない、そういうふうに考えております。

野城参考人 私は、法律の歴史的な変遷と性格の変遷をよく認識する必要があるかと思います。戦前、御存じのように市街地建築物法というものがございまして、これは警視庁が所管していました。戦後の民主化の中で基準法と建築士法ができたという歴史的な経緯は確認しておく必要があるかと思います。 何が言いたいかと申しますと、基準法というのは当初は大変簡素でございまして、むしろ独立の技術者である建築士がその裁量において建築の品質を担保していくという考え方でスタートしたわけでございますが、その後、さまざまな災害等々があり、基準法が当時の簡素な姿をとどめないほどにどんどん改正されて複雑化を増していった中で、一方で建築士法というのは、当初想定したようには建築士のあり方というものが機能を発揮しなかった、こういった事実を考えた際に、ちょうどその二つをペアで考えていく必要があるだろう。
 要は、技術者の裁量がしっかりしてくれば法の規制というものは簡素にすべきだし、そうでないとするとある程度関与すべきだ、この二項関係の中で考えていくべきではないかというように思います。

神田参考人 今、斉藤議員の御質問で、私だけ何か一人仲間外れのような御紹介があったんですけれども、直ちに単体規定をやめて、行政は単体を見なくていいかという質問をすれば、大半の方はそうではないというふうになると思います。 私が申し上げたいのは、やはり建築の理念ですとか、あるいは、たくさんつくればいいという50年代、60年代、50年代と、今はストックをどうしていくのかという、社会と建築の役割が随分変わってきたときに、それから、専門家もいろいろ細分化してきて、責任とか技術の内容とかプロフェッションが変わってきたときに、今までの建築基準法を前提にしてどうしたらいいかという議論ではなくて、そもそも建築が社会の中でどういう役割を持って、どういうことを我々は建築として考えなきゃいけないのかとか、建築にかかわる関係者、たくさんいるわけでありまして、だとか自治体とか、設計者施工者不動産業の方、非常にたくさんいらっしゃる方、その人たちがどういうふうに責任を分担していくのかという議論をまず始めていただきたい。それは建築基準法を前提にするのではなくて、そもそも今の社会でどういう役割があって、どういう建築の理念があるのかという議論をしていただきたい。 そうする中で、建築の安全性というのは行政がまず守るんですよということではないと思うんですね。安全性を守っていくのは、やはり建築を設計したり施工していく人たちにまず責任があるわけですし、そのあたりの責任の分担をどうするのかという議論をぜひこういう場でもしていただいて、それをもとに建築基準法が簡素化できる部分は大いに簡素化していく、そういうステップで議論を進めていただければというふうに思っております。

大越参考人 私は、日本とほかの国を比較しながら感じることですが、やはり世界でもビルディングコードというのは必ずあります。それはやはり、よいまちづくり、それから質の高い社会資本を確保するためには必ず要るわけです。そういう意味では、団体規定は必ず要ると思っております。 ただし、そういった個別規定の問題で違うのは、日本はやはり非常に災害国である。世界でまれな地震であり、大雪なんかも世界で珍しくすごいんですね。それから台風だって、サイクロンよりちょっとちっちゃいかもしれないけれども、これもすごい。この三つがあるということ自身が、また大変厳しい国なんですね。 そういう中で、ではどうやってやるかというのは、基本的には、私が感じていますのは、安全基準は、やはり我々設計者がこれだけ大きな災害をどうやって責任を持って設計するかというのは、わからないわけですね。ですから、そういう意味では国家資格。国家資格はもし難しいのであれば、本来、例えばイギリスとか諸国がやっていますようなBSとかDINに相当する、日本でいえば要するにJISの建築基準みたいにするという手はあると思います。 いずれにしても、今の安全基準はかなり重層構造をとっております。そういう意味で、多分ほかの人にはほとんど理解できないという意味は、平易に書かれていない、全部この重層構造の中で書かれている、そういった建築基準法令が非常にわからなくなっていると思います。 そういう意味でわかりやすいのは、やはりJISの例えば建築安全基準なんかを使って、実際、ではその担保をどうするかというところに、先ほどの罰則規定というのは当然あります。世界的には、やはり罰則規定保険が入って、さらに、我々その安全を守る資格者がペアになった上での法律ということになっていると思うんですね。 そういう意味で、私は、ちょっと違うのは、やはりそういった別の意味でもっと平易な基準にして、それをもう国ではなくて準の国、つまりJISみたいな形がよろしいと考えております。

斉藤(鉄)委員 大変参考になるお話をありがとうございました。それぞれにお考えがあるというのはよくわかりました。 それと関係するんですけれども、今回の事件の背景に平成10年の建築基準法の改正があるのではないかという議論もございました。平成10年の建築基準法の改正は、一つは仕様規定から性能規定へ、それからもう一つが建築確認の民間開放、この二つが大きな柱だったわけですけれども、この平成10年の建築基準法の改正をどのように見られているかということでございます。 特に一番目の仕様規定から性能規定へということで、これはある意味では、神田先生がおっしゃっている技術者の、建築家の自由度の拡大という方向性だ、このように思いますけれども、逆にこれが今回の事件の背景にあるのではないか。私は個人的にはそうは思っていませんけれども、とてもそういうレベルの今回の話ではなかった、このように思っておりますが、この点について、四人の参考人の方の御意見をお伺いできればと思います。

村上参考人 お答えします。 基本的に、仕様規定から性能規定への流れは正しい方向であると思っております。 それから、今回の事件がこの仕様規定から性能規定への流れと関連しているかといいますと、私は、ちょっとは関連していることはあるかとは思いますが、基本的にはないというふうに考えております。

野城参考人 私は、私どもが参加いたしました調査委員会でも、偽装の起きた原因というところでレポートさせていただいておりますけれども、性能規定というのはこれからのあり方として必要ですし、成熟させるべきだと思いますが、では、その法で書いた性能がどのようになっていれば法に適合しているかということについての基準が極めてあいまいで、恐らく10年の改正の際に、その基準があいまいだという議論があったがために、非常に羈束的に、一律的に基準を決める、その中の一連のあり方としてプログラムなどの認定の強化等々があり、それが今回の悪用されるすき間をつくってしまった。 ですから、これは、制度をつくったときでは全く予想できなかったような副作用が起きてしまったということでは、間接的ではございますけれども、性能規定における法的適合性をどのように検証したらいいかということについての命題を今後も考え、かつ、こういったことが起きないようなあり方を考えていく必要があろうかとは思います。

神田参考人 性能規定化という形で平成10年に導入されたわけでございますけれども、実際に、それが性能規定化という形で、性能が見える形の設計というふうな運用にならなかったということが最大の問題だというふうに思っております。それは、やはり技術といったものは社会の仕組みの中で非常に密接に結びついておりますので、一年、二年の審議で設計法を変えるというような形にはとてもならないんだと思うんですね。
 ヨーロッパで、EUが統合することによって各国の構造基準を、経済統一ということもあって、ユーロコードというのをつくって議論しておりますが、これなどもやはり十年、十五年議論しております。10年、15年議論する中からある程度様子が見えてくるというような形だと思うんですが、性能規定化にしますということを法律で決めて、2年間で施行令、告示を全部つくってしまった。それが現在の技術の流れと余りにも別の、机の上でつくってしまったということがやはり矛盾をいろいろな形で出しているのだと思います。
 法改正というのは、そういう意味で、拙速になることが世の中にとって、方向性が与えられるという形であればいいんですけれども、それが決まりになってしまうとなかなか実態と違った形で機能してしまうということがあって、性能規定化の場合も、例えば風とか雪の場合ですと、再現期間を幾つにするということが最低基準だというふうになっておりますので、もう少し長い再現期間にすることで性能が上がるということは見えるんですけれども、地震の場合などは、そういった性能がどういう形で見えるのかというのは非常に見えづらくなっております。 再現期間も、解説などでは国土交通省などの御説明にあるんですけれども、法文の中にはその性能がなかなか見える形になっていない、そうすると、性能規定と言っておきながら実際は非常に詳細な規定になってしまっている、そういった実情だと思います。

大越参考人 この議論の前段として私は一つお伝えしたいと思いますが、阪神大震災以降に、その翌年1996年に、実は官庁施設については、官庁施設の安全基準として、重要度係数を含めた、それから免震制振を含めて、建物のカテゴリーを安全基準から五つに分けております。ですから、そういう意味で、政府の建物いわゆる官庁の建物はちゃんとそういった性能が区別されて設計されております。一方では、民間の基準については、最低基準であると言っておいて、例えばデパートではどうするとか、それから高層のをどうするということは実は何ら触れずに、最低基準という形でつくられてしまったわけです。 そういう中で、本来、平成10年の仕様から性能規定に至ったというのは、この複雑な流れ、つまり性能規定が何であるかということをその当時国民にちゃんと知らせなかったことが問題であって、やはり、官庁の建物はこんな五のカテゴリーがあるよとか、そういうのを本当は言わなくちゃいけないんですね。その上で、基準法は最低であるということを言って、その最低の議論をした上で、そういったカテゴリー、自分の建物はどういうカテゴリーにあるか、そういう性能ですね。これは車だったらもうはっきりしているわけですね。そういうぐらいに、建物も、ある意味では最低の建物と、それからちゃんとした建物はどうだという、そのカテゴリー分けをする必要がある。ですから、それを国民に言わなかったことが私は問題だと思っております。 ちょっと補足しますと、それをバックにしているのが、今、住宅性能表示制度です。ですから、それは本来ペアで、それも2000年の前の1999年に品確法の方が先につくられておりますから、これをペアだという理解がないとなかなか難しいと思います。

斉藤(鉄)委員 大越参考人にお伺いいたしますが、専門家の資格制度、構造設計士とかそういう専門家の資格制度を設けるべきだという御提言をされております。これに対してはいろいろな反対意見もある。例えば、設計事務所協会とか意匠設計をされている方からは反対意見が強いようでございますが、今回の事件を考えれば、構造設計をされている方、また、そのほかの専門の人たちも表に出て責任を明確にすべきだと私自身思いますけれども、この点について、設計界にそういう反対意見があるということを踏まえて、それに対しての御意見をお伺いできればと思います。

大越参考人 今の御質問、全くおっしゃるとおりで、本来、先ほどの繰り返しになりますが、日本だけ唯一、建築家とエンジニアを一緒に混同して、ある意味ではみんなわかったような形でつくられている。そういう中で、今回の法案も、多分資格制度が後回しになっておりますので、非常に苦しい提言がされております。 それは、やはりこれは多分本当はペアで議論していただくと非常に明快だったと思うんですが、責任一つとっても、今回つくられた責任で、あくまでやはり元請の建築家になります。それから罰則規定についても、資格がないのでしたら罰則できませんよね。そういう意味で、確かに、認める、つまり社会的に専門資格と認めると同時に、罰則規定もありということにしておかないとやはり何か、今、多分審議中だからそうなんでしょうが、もうこれは世界的に見ても当然の制度だと思っております。

斉藤(鉄)委員 時間的に見て最後の質問になろうかと思いますが、野城参考人にお伺いいたします。 緊急調査委員会の報告書の「取りまとめの視点」におきまして、建築物を消耗品のごとく考え、すぐれた建築資産を構築し、長期にわたり大事に利用するという認識の欠如ということを挙げておられます。このことについてちょっと教えていただけますでしょうか。

野城参考人 今の文言は座長をされました巽先生の言葉でございますけれども、意図しているところは、先ほど申し上げましたように、消耗品と考えれば、目に見える性能だけに着目して購入すればいいだろうというような風潮が助長されるわけでございます。 これは先ほど申し上げましたように、長い年月にわたって使う、そうしますと、先ほど大越先生がおっしゃいましたように、必ず台風や地震や雪になっていくということを想像すれば、やはり目に見えざる性能に対する関心は一般の方々がどうしても払わざるを得なくなっていくかと思いますので、そういう意味で、消耗品ではなくて、これは長く使う、あるいは住み継いでいくものであるといったような国民的な意識が出てくることが、目に見えざる性能、その代表としての構造性能に対しての関心を高め、供給者に対して購買圧力をかけて建物をよくしていくような手がかりになるのではないか、そういう気持ちを込めて書かせていただいた次第でございます。

斉藤(鉄)委員 本当にきょうはありがとうございました。 今回対象になっております改正法律案だけではなくて、長期的にわたってこの建築制度について議論をして、制度をよりよいものにしていかなくてはいけないというのがこの委員会の共通認識でございますので、きょうの御意見、本当に参考にさせていただきます。本当にありがとうございました。


○林委員長 穀田恵二君。


○穀田委員 私は、日本共産党の穀田恵二です。 参考人の諸氏には、本当にきょうは貴重な御意見をありがとうございます。 座って質問いたします。 まず、神田先生にお聞きします。配付された資料によりますと、「設計者が独立性を維持し自律的な判断の保証される制度こそが、安全性確保のための制度設計ではないか。」とおっしゃっています。この点で、いわば設計者の独立性という問題は決定的だと私はこの問題について考えているんですけれども、どのように担保すべきかお話しいただければというのが一つです。 二つ目に、先ほど98年の法改正の問題について、性能で見るということがありましたけれども、あわせて民間開放ということがございました。それでいいますと、例えば検査機関というのは、私、実は日本ERIの社長に質問しまして、厳しくすると逃げるということで、いわばお客さんとしての顧客の扱いをしているということが明らかになりました。 検査機関は、厳しい検査をすればするほど、つまり、よい仕事をすればするほどお客さんから敬遠されてしまうという立場にある。普通、よい仕事をすれば歓迎され、悪い仕事をすると敬遠されるという形で、悪い業者は自然淘汰されていくのがいわゆる普通の市場原理かと思うんですが、しかし、検査機関はこの関係が逆転し、正常な市場原理が働かないという現実があるんじゃないか。その中に潜んでいる重大な問題というのは、コストダウンというものが貫かれている点に非常にありはしないか。 まず、この二点についてお聞きしたいと思います。

神田参考人 設計者の独立性という問題ですが、特に構造安全の問題に関しては、やはり構造技術者が自律的で独立の判断ができなければいけないわけでありますけれども、現在は、多くの場合がやはり下請的な状況に置かれております。雇われている身でああしろこうしろということはなかなか言えないわけでありまして、そういう意味で、制度的にどのようにしていくのかということになりますと、構造技術者あるいは構造設計者が、社会から見てもこの人が構造設計者だ、自分も、私は構造設計者であって、建築総括はやらないけれども構造はやるんです、そういったことがやはり見える形にしていくことが一番大切なことだというふうに思います。 もちろん、契約の仕組みですとか、それから例えばゼネコンの中の構造設計者の役割をどうするのかとか、細かい議論はいろいろ残ると思いますけれども、今は、まさに構造設計者が完全な匿名性の中にあって、建築士と一くくりにくくられて、多分十分の一ぐらいしか構造設計者はいないと思うんですけれども、外から見るとだれが構造がわかっている人か全くわからない。そういう中では、社会の信頼に足る仕組みという形にならないんだろうと思いますので、そこを変えていくことがポイントだと思います。

 それと、民間開放のことに関しましては、平成10年の段階で、今までは税金で確認検査をしていたわけですね。実際に申請料をもらっておりますけれども、確認審査に費やす時間とかコストはそれを上回っておりますので、税金がかなり補てんしていた形になっていたと思います。ですから、それを民間機関に移行した場合に、それだけでは業務が成り立たないんですね。それだけで業務が成り立たないということになると、ほかの会社から出向で来てもらうですとか、ほかの仕事をやりながら確認検査をやるというような形でないと成り立たないということが、やはりゆがんだ形でのスタートになってしまったのではないかというふうに思います。 ですから、民間機関で公共的なことをやってはいけないということはないと私は思うんですけれども、民間がやるのであれば、コストと人が適切に配置できるということを十分検証した上でスタートしなければいけなかった。それがやはり拙速だという私の意見でございまして、今回も、構造計算の適合機関をつくるとおっしゃっているんですけれども、それをやる人がいるんでしょうか、あるいは、どのくらいコストをかけてやるんでしょうかというあたりの議論が全くされないで、機関だけつくるということになると、やはり全く同じ問題が出てしまうのではないかというふうに危惧しております。

穀田委員 ありがとうございます。特に最後の方では、同じような危惧を私も覚えます。 次に、野城参考人にお聞きしたいと思います。 緊急調査委員会中間報告では、やはり検査の公正並びに中立性の問題について語っていまして、民間機関は建築主からの圧力を受けやすい立場にある、こういうことにかんがみて、民間機関が確認事務を適正に行うための動機づけの問題が大切だという、大体そういうことを触れています。 その中で、利潤追求を目的とする株式会社等において、株主への利益還元及び顧客へのサービス向上と国民の利益の保護が対立相反する場合が多々ある、国民の利益の保護に立った行動を当該機関がとるための行動規範の整備の問題が極めて重要だと。この点、私はとても大切じゃないかと思うんですね。このことの意味している点、国民的に言えばどういう点を今理解してもらうべきかというあたりはいかがでしょうか。

野城参考人 二点ございます。 一つは、実は民間へのこういった業務の委託でうまくいった例としてあるのは、例えば、日本の住宅性能保証機構に当たるNHBCという民間の会社が英国にございますけれども、ここは保険を付与している。そうすると、その保険の検査員としてNHBCの社員が足しげく現場に通い、検査をするわけでございます。そういった人々に日本で言っているところの中間検査を自治体が委託するというのは、これは双方の利害が一致しているわけでございまして、大変うまいやり方だと思います。 先ほど申し上げた、二つのベクトルが相反する側面があるということ、今思えば相反するということがあり得る。そうすると、やはり、民間企業としてこのような社会理念を持ってやっていますよ、国民の利益に基づいた業務をしていることが我々の会社の存在意義だということが確実に見えないと、逆にお客さんが来ないような構造をつくり上げていかないといけないのではないか。つまり、あくまでも当事者の利益ではなくて国民の利益にしている会社が信用されて、そうした民間機関にこういった確認業務が行われるような仕組みによって、そういった内在しているベクトルの対立を何とか補正できるのではないかなというように思いながら、そういった報告を書かせていただきました。

穀田委員 ありがとうございます。しかし、なかなかそれは難しいんですよね。しかも、現実の市場原理の働きというのは、どちらのベクトルで動いているかというのはなかなか現実は厳しいものがありまして、私はその点を危惧するものです。 村上参考人にお聞きします。 村上参考人だけが、ごめんなさい、神田さんも言われましたけれども、救済について言及されましたので、一言ちょっとお聞きしたい。 今、政府の提案で、現実に進行している事態というのはなかなかうまくいっていないと私は考えているんです。やはり不備がある。その最大の問題は、二重ローンをどうするのかということが解決されていない点があると思うんです。 住民は、被害者の方々は何ら責任がないわけで、とりわけ銀行も責任の一端があるということを述べられて、実は、自民党のワーキングチームも金利の減免などを初めとした銀行責任ということを言っています。私もその問題について銀行責任もあるんだということを言っていまして、その辺は、参考人、いかがお考えですか、率直のところ。

  次の頁へ