HOME  作成 佐藤敏宏
      
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 質疑応答

 363 

  富士山をリノベーションする、これは富士山のデティールから富士全体をゆるがす物語である



 発表します。お願いします。世界遺産・富士山、この明るいニュースとは裏腹に冷淡無常な富士登山の現状がありました。

 お願いします。具体的に言うと、現在の富士山と人の関わり方は、その山頂に着くことだけが目的となっていて、その過程が無視されていることに気が付きました。

 次お願いします。一方で富士山は建築なのではないかと思いました。それはなぜかと言うと、富士山は建築の持つ幾つかの特徴を同じように持っていることに気が付いたからです。よって富士山は建築であるという仮説を立てました。



 お願いします。仮説を元に富士山を建築的に記述していきます。代表的な記述法が図面です。図面とは物と物との関係性を表した図です。このように既存の図面で観ても、構造として建物を支える柱、そのすぐ横には内外の空気環境を調整する扉、それぞれ別々の役割を持って、かつ共存している姿が露わになっています



次お願いします。同じように富士山の断面詳細図を描てますいていきます。



お願いします。このように、富士山で起こっている一つ一つの事象を個々に描いていきます。

お願いします。今の図面に描かれた一つ一つのものを建築として立ち上げていきます。



お願いします。具体的に説明していきます。

ファクター08

 お願いします。山頂の気圧は約640ヘクトパスカルほどで、地上の半分ほど低いです。この気圧の変化を円柱として立ち上げたのが袋葺きの屋根です。これだけ気圧の変化が大きいと空気が膨張します。よって、山頂に持って行く過程で部材が肥大化して、山頂で初めて建築の構成要素となる部材を成型しました。



 建築自体の自重が非常に軽くなるため、柱が細くなっていきます。しかし一方で富士山の山頂では下から上へ吹き上げる風が非常に強いので、下から上への風圧力が非常に大きくなります。
 なので通常は圧縮のための柱は、むしろ緊張材としてこの場では働きます。ダイアグラムで分かるように、圧縮の柱、大梁が架かり大梁に小梁が架かって小梁は柱が支えます。このように富士山独特の建築が仕上がっています。



お願いします。ファクター02お願いします。



 富士山の斜面に対して、人の登れる傾斜を当てるとジクザク路がうまれます。お願いします。そのジクザク路というのは人の視線を二方向に制限します。それに対して全く方向性の無い水平の床を富士山に挿入しました。この水平の床を支える柱は富士山に対して土着的に立ち上がっています。その場にある岩を金網で吊り上げて積み上げて、力学的に合理的な末広がり型の形になります



 結果的にこの柱の分は逆水平広がり型の景観をつくっていて、これが富士山独特の空間となっています。お願いします。



ファクター01



 富士山には40個ほどの線状の河口が在ります。この亀裂に沿って風が流れて風に沿って雲が流れています。この気流を建築として立ち上げたのがこの屋根状のものです。

 次お願いします。図面で観ると通常は屋根の外に樋が来ますが、この場合はむしろ屋根の内側に樋が来ています。屋根の内側から雲から水という新しい要素を建築の中に取り込みます。



つぎお願いします。ファクター07



 建築は表面を取り繕う仕上げと、その裏に隠された原理の二層によって出来ています。低木が生い茂るこの一帯はまさにこれとは同じ状況でした。
 人の歩く登山道の部分だけ植物が生えていなくって、仕上げが剥がされた状態となっています。だとすると、この登山道の部分にむしろ富士山の噴火の歴史だったり、形成の原理が宿っています



 だとすると、この登山道というのは地ではなくむしろ図であり、この登山道を観るために登山道を設計しました。



お願いします、ファクター04



 富士山のボリュームは非常に大きく、風も非常に大きく、末広がり型の形をしているので、当たった風は上に流れて行きます。よって富士山では雨が下から降って来ると言われています。だとすると



 次お願いします。富士山独特の雨仕舞を考えると、下見板張りではなくむしろ上見板張りとなります。

 つぎお願いします、このように先ほどの断面詳細図で描かれた一つ一つのものを、建築として立ち上げていきます。そうすることで非常に富士山に比べると小さい設計物に、富士山の全体性だったり本質が宿ります。



 建築において、デティールが全体を揺るがしてしまうのと同じように、富士山のデティールから、富士山全体を揺るがすことを試みます。

 設計の計画で富士山が再解釈したので、あれば、これはつまり富士山のリノベーションなのです



以上です

 (5:38)





 質疑応答

:僕は浜松で活動しているんですけど。一個一個ちっちゃい部分的なリノベーションが多くって。で、ある範囲の中に幾つかプロジェクトがまとまっていて。解釈・感触としては、町全体を捉えてリノベーションしているような感覚があって。
 これも一個一個、新築だけど、リノベーションって言ってる、その設計感覚は非常に近いものがあったということ。

 あと、些細な環境因子とか、それぞれの富士山の中にある、コンテクストの差異を、ちゃんと取り上げて建築にしていくっていう事も。僕らがそういう事をやっているんだなーって。ここから学んだんですけど、今。

 それによって、富士山をリノベーションして再解釈し、元々の解釈があって、揺るがした、こっち側があるとすると。それで、伝えたい事って、根本的に何なんですかね。どういうふうに富士山を見せたいのか、感じさせたいのかっていうか。ただ、それぞれのコンテクスト顕在化させているだけだと。少し。つまりこれはクライアントが居ないので。僕らはクライアントが居て、その要求に応えるみたいな事で。ある理由が担保されるんですけど。どこに向かってこのリノベーションをやっているかというのを、聞きたいなーと思いました。

363:僕にとってのクライアントのような者、というのは富士山を登る人であって。すみません。質問ってどんな質問でしっけ、すみません

辻:富士山を、どういうふうにリノベーションすることによって、何を揺るがしているのかっていうか。どういうふうに見せたいのかっていうか。今の富士山、あるじゃない。イメージもみんなで共有しているじゃない。揺るがないものとして、あると思うんですよ。それを揺るしたい、と言っているわけだから。それがどうしてなのかっていう。

 揺るがした事によって、何が生まれているのか、っていうのを聞きたいということですね

363:失礼いたしました。現在は富士山を歩くに連れて変化する事象だったり、変数がたくさん有るんですけど。現在は通り過ぎてしまっているような、富士山に眠っている、潜在的な富士山の魅力を建築として立ち上げる事で暴き出す。そうすることで、今までは気付けなかった富士山の本当の面白さだったり、奥深さを、建築を通して、人間が知覚する事で富士山が再解釈される、もっと新しく解釈されるということです


磯:現状、富士山には幾つかの小屋というか、そういうのは建っていると思いますけど。そういう現状の建物は、363さんが観た限りでは富士山的ではないというふうに見えてしまうんですか

363:僕から観ると富士山的ではない。現状の例えば山小屋であったり、建っているんですけど。それはその建築がそこにいて、壊れないようなものが、そこに備わっているんですけど。どっちかと言うと消極的で、最低限そこに建てられる、建築というか、建物なんですけど。
 もっと富士山には魅力が有るはずで、今は隠れてしまっている魅力を、建築化させることで、視覚化するというか。建築を通して知覚できるように設計しています。


五十嵐:利用人数って、例えば同時に何人使えるとか考えて作っているの。

363:同時に何人使える・・

五十嵐:だって使えない物を造ったってしょうがないわけだよね。

363:具体的にこの建築は最大何人とかは決めてないですけど。もちろん作るに当たって想像はしています。

五十嵐:これは何、ここで何をするの。何人ぐらいが。

363:これはですね、何人ぐらいと今、数字をあげるとすると、10人から最大20人は入れると思うんですけど。
 何をするのかですか。これ山頂に在って。もちろん富士山の方は樹木も何も生えてないし、日影が無いので。山頂まで登って疲れた人達に対して日影を与えてあげる。人間のためにはそういう意味もありますし。
 同時にこの袋葺きの屋根というのは山頂でしか成り立たなくって。ここにこういうふうに存在出来ているのは、気圧の変化であって、そこまで人が知覚することで、富士山の山頂と、地上の気圧の大きな変化というものが、この空気の袋葺きの屋根を通して知覚できると思っています。

五十嵐:他のやつは。とりあえず全部説明してみてよ

363:全部っですか

司会:簡単に、簡単に。これ何をするやつですと

363:何をするやつ。これは登山道を観る第二の登山道を設計していまして、同時に富士山は、非常に水はけが良くって。あれだけ大きいんですけど、川が一つも無いので。水が非常に貴重であるという事に着目して、通常の屋根、切り妻の屋根を反転させてるだけで、それが富士山の樋になるという話を乗っけています。

次は説明したので、飛ばしますか。

 これは物見台と言って大丈夫だと思うんですけど。同時に柱が林立している下の空間が面白くなっていて。冒険するように中を潜り抜けて、最後はそれまでは、制限されていた視界を完全に開いて富士山の下の景色を観ることが出来ます。

 これで何ができるか。そうですね、登山道の視線の方向の制限に対してそれに垂直のチューブを入れりだとか。この点から観る一番遠い距離、遠い地点に対して、この木の椅子を向けていたりしていて。このチューブに入ることで人の視線を制限するし、その椅子に座っていれば、リフレッシュ休憩にもなると思います。

次いきます。これはですね、富士山の下の方は木も生えてるし、植物もたくさん生えているんですけど。その豊かな植生を壁の向きだったり、関係性に置換して、この、ポルゴン状の多角形の壁一つ一つに、それぞれ違う植物が生えていることで富士山の壁を通して、この物体を通して富士山の植生の豊かさを知覚できる。

それに対して、それを垂直に、富士山というのは斜面を登る連続的な動作に対して、上に上がる断続的な動きを人間に与えることで、富士山が同時に新しく知覚できるとしています。

時間大丈夫ですか。

 最後ですけど、富士山の山頂の方はドンドン傾斜がキツクなっていって、その変化する傾斜に対して、立ち上がったのがこの屋根です。この屋根というのは、段々人は地面に這う様に登って行くんですけど、どんどん山に歯向かうように登っていくのに対して、ここに、ふっと屋根が架かることで、そこ人は立ち止まって、振り返るだろう。そういう傾斜の変化に対して立ち上がった屋根です。

簡単にですけど。

五十嵐:僕、富士山に登ったことがないんですけど。こんな過保護な事をしてあげなければ、富士山を感じる事が出来ないような状態なんですか。山の上って。

363:冒頭で説明したよう写真の様に、やっぱり先を急いでしまう。山頂に着くことだけが、今は目的となっている。僕は二回登ったんですけど感じて。一方で過程にこそ富士山の魅力があって、それを建築の設計を通して表すことが出来たら、それは凄い自分のやりたいことだなーと思って設計をしています。



司会:時間ですのでよろしいでしょうか。どうもありがとうございました。それでは拍手をお願いいたします

   会場 ぱちぱちぱち 

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