HOME  作成 佐藤敏宏
      
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 質疑応答 



 227(女性)


 発表させていただきます。よろしくお願いします。



 この先島の営みはどれだけ続くだろうか。近年地方からは人が減り、島の営みも一つ一つ消えていた。
 ある人の家であり、ある人の癒しであり、国にとっての重要拠点である島々が、この先も続いていくために、モヤイの航海、塩から始まる島の未来を考えます

 現在の日本には421の有人離島があり、そのうち約9割が人口減少、近い将来無人化が懸念される島も多くあります。つまり多くの人々の故郷や伝統文化が消滅し、広大な海の維持管理が、困難な状況に陥いることが想像されます。

 離島は海上交流を通して、独自な根強い文化や個性が形成されていますが、東京都に属する伊豆諸島では、コメの代わりに塩を税として上納していた歴史を持ちます。海上交易など島々のネットワークを構築してきた需要は、人々の重要な営みであり、大規模な塩田風景は島の生業を支えていた証であったのです。



 本設計では、塩を通した人々の営みを再考することで、塩田が織りなす建築の可能性を提案し、島国日本の社会像を模索します。

提案を大きく三つに分けて説明します

 敷地は、伊豆諸島のうち伊豆大島と新島の二つの島で、特色の違う三つの港を選定、必ず全ての島に止まる諸島の航路を活かし、島の玄関口である港を再編していくことで、新たな船のドックとしても生まれ変わります。




 二つ目は、島諸間における工程の細分化です。塩には大きく分けて「採かん」と「煎ごう」という二つの工程があります。伊豆七島でそれぞれの「煎ゴウ」法を使って製塩施設を作ることで、島全体の生産の安定化を図り、塩と人の運搬に伴う島諸間のネットワークを構築します。



 三つ目は製法の継承です。現在、製塩を行っている伊豆大島から、南へ製法を伝承していきます。それぞれ見習い職人が泊まるゲストハウスを設け、塩職人が一人前になると言われる、10年のスパンで伝承させていきます。
主な塩づくりの方法を図にしています。



 続いて三つの建築について説明ます。サイト・ワン。伊豆大島の主要港である、本町港です。ここには階段状の広い堤防があり、塩田を這わせることで堤防に新しい機能を生み出します。

平面図です。






サイト2、漁港の波浮港です



、ここでは海水を上から流し蒸発させて、塩を造る装置を、空き地や空き家に挿入し、住居スケールのシェア塩田を提案します。シジョウカ (枝条架)と呼ばれる装置をカーテンのように動かしたり、上にあげたりすることで、空間の大きさを自由に調節できます。



 空き地が増えるとシェア塩田が拡張していきます。住み手が床や壁を挿入し動線を作っていき、塩田は無くなったり、また造られたりしながら、人々の営みのあふれ出しによって、彩られていきます。



平面図とパースです。





 サイト3 新島港です。新島はシーズンによって観光客数の変動が大きく、よりフリキシビリティーに使える宿場が強く求められます。



 そこで一部の立体塩田の 枝条架を動かし壁や床にかえることで、夏場は内陸に集中する商店街のサテライトショップとして開け、オフシーズンである冬場は製塩が出来る装置建築とします。



 この建築は、固定のドックと浮遊する建築の二つに分かれて、固定建築にはサテライトショップや温泉などの機能が入り。浮遊建築には、主に宿場、カフェ、舞台となるようなプログラムを入れています。

 浮遊建築は、船に曳かれることによって海からしか行けない場所に行くことができ、そこに滞在することを可能にします。また気候や海流に左右され易い塩づくりですが、移動させることで、適所での製塩がで来ます。



 詳細はこのようになっており、海水を貯める、地下には一時的に避難する部屋やトイレなどを設けています。



 この建築のファサードは三角のフレームを作り、そこに三角形の小さなパネルをはめることで、それぞれのプログラムに適する遮光率に変えるようになっています。
 宿場は訪れた人がフレームに新島硝子をはめることで、記憶を積層させる装置として働きます。そして、そのファサードは市場化の稼働と共に万華鏡のように変化します。













 最後になりますが、モヤイとは、この地域に現在も伝わる助け合いの意味です。もモヤイの航海それは、現代の島国・日本の進むべき未来であり、立ち返るべき原点でもあるのではないでしょうか。

以上です ありがとうございました (6:10)

 会場 拍手 ぱちぱちぱち 






 質疑応答

磯:模型で観ると、板状の物を三角形の、トラスに組んでいく、その建て方が非常に印象的なんですけど。この形によって、塩を採るというそういう事なんですか。採かんのための形がこれで、それが建築の構造に成ることなんですか

227:はい

磯:分かりました


辻:島同士のネットワークの仕組みを、もう少し教えてもらえますか。

227:今回、伊豆諸島全体の計画にはなっているんですが、私が実際に建築をしたのは、二つの島で、三つの港です。その港にそれぞれ製塩施設を造ることで、
あ、先ほどお伝えしたように、塩には、二つの工程があるんですけれども。
 その片方の採かんという工程の場所を、それぞれの島に造って。その次の煎ゴウという工程は大島でしか作っていません。その煎ゴウの工程に持て行く塩水と一緒に、観光客や住民の方を運ぶこということで、生産のネットワークと観光のネットワークを構築しています

辻:塩と一緒に人を運ぶっていうことですか

227:はい。そうです、塩水を船の地下などに貯めて、船の上に人を載せて運びます。

辻:ネットワークと産業を考えると、単純に僕は、それぞれ違った役割を島同士に持たせて、交易というか、交換。この島は農業が盛んで、こういう漁業が盛んで、やるみたいな。交換の方が重要なのかなーと思うですけど。それに対して、全て塩でいこうという理由というのは、あれば教えてもらえますか

227:まず、その塩の、先ほど言った工程のうち、煎ゴウという工程は、採かんは割と何処でも同じような水が出来るんですけれども。煎ゴウ工程には気候の条件や場所の条件で、その必要な施設も全く異なって。出来る塩の種類も大きな粒だったり、小さな粒だったり、苦いもの(塩)だったり、甘いもの(塩)だったり、全く別の塩が出来ます。

 そこで、同じ塩まで、同じ条件で同じ煎ゴウ法を使うのではなくって、それぞれの島に、それぞれに合った煎ゴウ法を使うことで、あまり採れない塩の島、だけど高級で、凄く求められている島だったり。安定して塩が採れるけど安価な塩っていう。それぞれの塩の生産される塩の種類を、それぞれの島で分散させる事で、伊豆諸島全体で、塩の生産の安定化を図るっていう事が目的です



中田:気になった事があったので、二つ聞きたいんだけども。
 船に、タンクに塩を積んで、塩水を積んで移動する、それに人が乗ります。それは乗っている船のタンクに入っている塩水って言うの、生産のプロセス上、濃度が高いとか、あるところで、なんて言うのかな、加工していって。それをどこかに移動させて、再加工。さらに加工する必要があるから、移動させる必要があるっていう事ですよね。
 それは、製品、プロセスになる塩水を運ぶニーズが有るから、そにたまたま人が乗り合うということですか。それを定期便みたいに設定しているんですか

227:定期便、ああ、はいそうです。

中田:もう一つ、使ってないそういった製塩の空間を泊まる所に変えます、みたいな話をしましたけど。そういうふうにフレキシブルに用途を行ったり来たりできるような、物にリアリティーがあるんですか。

227:私は実際にその製塩の施設を観て、そういうふうに稼働させる事で、よりフレキシブルに使える宿が出来るのではないか、という可能性を感じて設計しています。実際、詳細とか動くシステムなども設定していたんですけれども

中田:それは、可能性を感じて詳細を造るというのは解るんだけど。
実際に、それが塩を造ってるメカニズムの中に、人が寝泊りするということが、介入するわけでしょう。

それは本当に出来る事なのか〜・・っていうのが。

話を聞いてて、もしそれが理想だと思ってしゃべっているだけだど、買えないなーと思ったんだけど。何が、その説得力のある材料として、貴方、考えてなかったの、もし今説明できるんだったらしてほしいなーと思うんだけど

227:私も、実際にその塩の工場を観に行くまでは、本当にそんな、色んな用途に使える工場だとは思っていなかたんですけども。
 実際に、その製塩施設に入って、工場の方に許可を得て、見学させていただいたんですけれども。実際に人が手を掛けて、その装置を修復したりだとか、その上を土足で上がって歩ったりだとか。そういうことは実際にされていて。

そういう事も加味して、実際に私は実現可能な建築だと考えています。

司会:よろしいですか

司会:赤松さん、さっき言いかけたんですけど

赤松:工程の細分化ということが、どういうふうに島同士をつないでいるのか、というところをちょっと聞きたかった。先ほどのことで

司会:出来そうだという一点張りですけど、中田先生よろしいですか

中田:出来そう、出来そうって言われても。計画をしているところで、もう少し、出来るっていう根拠を知りたくって聞いているのね。

何か凄い、安易に出来そうだから、出来ますっていうふうに言い切ると、ジャンプしてリアリティーを獲得するような事。僕は設計では難しい気がしていて。とくに卒業設計のときはね。


磯:具体的には模型で言うと何処の所に人が泊まるようになるの。

227:造りは同じなので、大きさはそれぞれ違いますが、造りは同じなので、全て可能ではあるんだけれども。この動かすのに人が要るとか、そういう事をも考えると、最初は私は、ここの、こちらの長い方の建築だけで、考えています。

磯:三角形の中に人が入って人が寝るって、そういう事

227:はい、そうです。

磯:寝るためには何か壁で閉じなければいけないよね〜。夏の、寝るときだけ閉じるっていう事なの

227:実際に一応、壁はこの

磯:これが泊まるようにしたときの状態ってことですか

227:はい、そうです。

司会:よろしいでしょうか。後ほど多少質問できる時間もあるかとおもいますので、今のところここでおきましょう。どうもありがとうございました、みなさん大きな拍手をお願いします

 会場 パチパチパチパチパチパチ



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