HOME  作成 佐藤敏宏
      
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 質疑応答へ

 118

よろしくお願いします。ファザードの転回による都市風景の再編計画。敷地は大阪市福島の呑屋街、梅田の西に位置し周囲にはビルが建ち並び、都市化のエッジに位置します。
 この町のストリートには多様なマテリアルが、高密に集積し雑多な質が展開します。本計画ではこの町の質を保存しながら、新しい都市の形を描きます。

 このエリアには50店舗以上の呑屋街が集積し、夜には独特の賑わいを見せます。



 しかしこの町の賑わいは、呑み屋が在る夜のストリートにしかありません。町の利用時間帯による、濃淡、時間帯による利用の偏りを、色の濃淡によって示しました。日中には利用の中心が高層部、住居とオフィスの在る高層部に移るんですが、閉じられたファザードによって、それらは表層に現れることはありません。



 この町には様々なマテリアが用いられ、ストリートを歩く人はマテリアの切り替わりによって建物の意匠を認識します。





 呑屋街を構成する通りに面するファザードに対して、マテリアの切りかわりに着目しリサーチを行いました。1階部分ではマテリアルの切りかわりが頻繁におこり、通りに対して賑わいをつくりだしていますが、二階以降になるとマテリアルが単調であったり、切りかわりが無かったりして、賑わいが途切れいる状況にあります。



 この町のファザードを二つの手法によって、展開し新しい都市の風景を描きます。

 一つ目の手法はファサードの回転です。この町の建物は内部空間から決定されたファサードで構成され、隙間なく建つことで、同じ建ち方や同じ窓の開け方がされ均質な空間が連続します。

 ファサードを採取し回転することで、ファサードに影響されて空間が出来るという、これまでの反対というの図式が出来、多様な思想をもった空間が生まれます。



 そこでは、天高と間口の関係が反転したり、既存のファサードについている付加物のオーニングや庇もそのまま活用し、プライバシーを守りつつ、外に対して開くことが可能に出来るであったり、開口部の位置なども、そのまま利用します。



 ストリートが垂直方向にも展開し、この町に、この建築に迷い込んだ人々はストリートを歩く感覚を覚えます。

 二つ目の手法はファサードの反転です、通りに対するファサードのリサーチと同様に、建物内部から、ストリートを見たときのインテリアについても同様のリサーチを行いました。
 マテリアルの切り替わりに着目すると、内と外両方とも切り替わりのピッチやリズムが似ていることから、内外を反転させたときもこの町の雑多な質を保持することが出来ます。



 その操作をしたときに屋外と屋内しかなかったこの町に外を感じられるような内部空間であったり、内を感じられるような外部空間が出来上がります。

 店舗では路地まで店が延長し、店の中に抜け道を通すことが出来たり、住居では、生活の場としての路地、や土間の空間、庭などの、格子や内外のグラデーションを持った生活が展開されます





 内の設えを持つバルコニーには都市のボイドとなり、住人の暮らしが展開します。

 この町の動線も変化して行きます。建物ごとに、完結していた動線は外部階段やエレベーターとバルコニーにより、立体的な動線が可能になります。



 また外と遮断していた生活は最小単位の内部空間と半屋外、半屋内空間のある暮らしへと変わります。

 二重ファサードによって、生まれた空間は、開口部やマテリアル抜けの操作によって多様な必要領域を持つようになります。



 そこではファサードの共有や抜けによって、庭が路地まで続いたり、隣り合う店舗同士が大きなテーブルを介すことで、広い宴会場が出来たり、中庭に机を持ち出して、ちょっとした会議が行われたりします。




 プログラムの決定はこの町にある店舗、住居、オフィスから、利用(量)の重心が偏らないよう設定しました。



 この計画を通して、既存の素材を扱うという意味でのリノベーションを、都市スケールでの思考・試行・実験として行ったとき、資本の論理での都市開発とは異なる新しい町のつくり方の可能性を提示します。




以上です 





 質疑応答

赤松:えっ〜と、すみません。ちょっとよく分からなかった処があるのですけど。これは二重ファサードっていうことは、今ある既存の建物に対して、新たにもう一枚ファサードを重ねる。その手法によって間の空間とかが、また新たな場所を産み出すという、そういう事なんですかね。

118:ではなくって、既存を、まず潰してしまうんすけれども。
赤松:完全に無くすということなんですね
118:はい
赤松:最後に、のリノベーションとかというような話も、ちょっと一瞬出て来たような感じだったので、そこがよく分からなかったんです。完全に新築なんですね

118:新築でいって。その建物の構造としては、最小単位の内部空間のコアがあって、それに対してファサードがくっ付いていって、スラブや外部階段によって空間をつないでいく、という操作で二重ファサードっていう言葉を使わせていただきました。


司会:はい磯さん

:いいですか。これは普通の商店街、例えば二階建で建物が並んでいる。それを縦横ファサードを回転させて、それぞれの建物が一挙に高層化するっていう事。容積が一挙に上がるっていう、そういう想定で考えているっていう事。

118:はい、そうです

:それは普通の商店街って、それぞれのお店が、それぞれデザインを考えて、自然に出来上がって行ったその町並みっていうか、ファサードになっていくわけだけど。この場合は、貴方という建築家一人が一挙に建物を全体のデザインを考えて造りたいと。そういった事ですか。

118:そういう事になります。

磯:はい、分かりました

辻:二つの、手法っておっしゃってましたけど。回転と反転を選んだ理由と、あるいはそれ以外の手法の可能性は無かったのかと、いうことを聞かせてください。

118:回転と反転を選んだっていうのは、まず、リサーチからファサードを分析して、それ、ファサードのマテリアルの切りかわりに着目したので。その切りかわりというのを、どう設計に取り入れていこう、ってなったときに、そのまま使うんではなくって回転することで、縦が横になって、切り替わりのリズムが、水平だけだったのが町に対して垂直に延びるっていう展開で回転というのを選んで

 もう一つは、通りに対して、ファサードをリサーチしたときに、その裏側のインテリアがどうなっているかっていう興味が出て来て。その内側を見て来たときに、そこも、切り替わりが凄く頻繁で。内と外でけっこう似ているけど、それを反転したときに、内側、内部空間と、外部しかなかった町に。そういた曖昧な空間が出来るんじゃないかっていうので、反転を選びました

辻:やっぱりゲームっぽい感じがして。そのルールを自分で決めて、その中でくるくるさせて、パズルでこうやって行って、面白い空間を作ろうと。
 その面白い空間を作りたいというのは、なんとなく分かるし、外部と内部が反転してとか。その雑多な空間が上まで続くっていうのは、分かるんだけど。それによってどういう、なんていうのかなー。他の人も共感できるような、いいことがどこにあるのか。君の個人のルールに、誰が乗っかるのかっていうのが。ずーっと気になって。
 それでルールに乗っからなくっても、出来た空間が、人が乗っかれれば、それでいいと思うんだけど。出来た空間によって、なんて言うのかな。生まれているいいこと、教えてください

118:いい事というのは、まず、建物同士の関係というのが無かった現状を、まず、関係を持たせること。ボリュームごとで、ファサードを共有したりであったり、開口から光や風を通したりっていう関係を作る事と、空間として均質であった、この町に多様な質をもたらすということですかね。



門脇:済みません、確認ですが、周辺にけっこう容積が高い、高さが高い建て物が建っていますけども。高容積型の再開発が凄くジェネリックな建物になっちゃう。そこに対して抵抗したいということでいいですか。

118:はいそうです。

門脇:で、ある種のルールを無根拠に決めることによって、青木さん的な言い方だと思うけども、プログラムやツールは後から付いてくるのであると。そういうことですか

18:はい



辻:それは意識したんですか。そこまで、僕はなにか青木さんほど、何て言うのか。済みませんね。ふふふふ。なんていうのか、ストイックではない、主観が入っていると思うんですよ。
 既存のファサードが魅力的だっていう事と、それをひっくり返したりっていう君の意図が入っていて、それについてジレンマは無かったのかっていうか。割り切ってよくやれたなー、という感じが凄くするんですよね

 さっき赤松さんがおっしゃったみたいに、リノベーションならまだ、それを新築で全部出来る。そのゲームに引き連れて出来るというのは、やっててどういう気持ちだったのかっていうのを僕は一番知りたいです。

司会:どうですか

118:・・・・とりあえずやってみようって思って、やった結果がこれです。

 審査員たち笑う 

:思考実験という言葉が一番しっくりくるわけだよね

:やってみて、よかったという、そういう実感は得たから、やってみたという事だと思うけどね。実際見た感じは凄く意欲的にできている様に僕も思いましたけどね

司会:どうですか、そのへんは。そう自分でも思っている

118:はい、思ってます。

司会:時間もうちょっとありますかねー



中田:いいですか、思考実験っていう事で、その対象物を観る。そういったゲームをしてみたら、こういうアウトプットが出来ました、ということが分かって。ちょっとその議論のなかで、我々の議論の中でね、内部空間を貴方は設計しているの、っていう議論があたわけ。
 で、今の話を聞くと内部空間っていう事は、壁の外側と内側がぎりぎり関わったり、壁の外側のモチーフはスライドして、どこかに行っちゃたりする事が起きている訳だよね。この場合って。

118:はい

中田:ということは、内部空間も意図的に計画をしている、っていうふうに理解していいですかね。設計しているかどうか。

118:もう一度お願いします

中田:内部空間っていうのが、壁の内側と外側が入れ替わったりさー。壁の外側の壁の表面がどっかに移動したり、展開したりし、って違う所に貼りつけている訳でしょう。

118:はい

中田:そうすると、その内側の、壁面の内側の要素も一緒に移動する訳だよね

118:移動できる物は移動しています

中田:ということは、そこで、内部の平面っていうのは、内部空間そのものは、それに伴って設計をした、っていうことなのかしら。

118:設計しました。

中田:設計しました。うん。それを確認したかったのです。ありがとう。

司会:では時間ですので。どうもありがとうございました。皆さん拍手をおくってください

    会場 はちぱちぱち


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