加嶋章博著 京都工芸繊維大学博士学位論文 スペイン植民地都市計画法に関する研究 より
フェリーぺ2世法の全訳 home
探索 新入植 平定に関する 勅令(1573年公布)
以下翻訳 全て 加嶋章博さんです、
この頁の打ち込み間違いは トシチャンです
フェリーぺ2世国王から我が海外領土における
副王注1 プレジデンテ注2 アウデイエンシア注3 総督注4 そして以下に言及する者、または
関係者すべてに向けて。
インデアス注5での探索、新入植、平定は
何のためにおこなうのかよく理解した上で、効率よく、または
神の思し召しにしたがって意義ある方法で探索、
入植、
平定を行うこと。次にあげる勅令はとりわけ遵守せねばならない。
1条から 148条まで あります
第一章
探索 注6 (訳者の判断による表記)
【
第1条】
何人もいかなる身分や条件下であっても、自己の一存で
海洋、
陸地の新たな探検を行ってはならず、
侵入、
新入植 野営も行ってはならない。探索した土地はこれから行う予定の土地においても、
許可および
備蓄なくして、あるいは我々が委任する者からの
承諾なしにそれらの行為に及んではならない。それらを実行した者は
死刑および
全財産を国庫に没収する。 また副王、アウデイエンシア、総督や他の司法官吏にあっては、
新たな探索については
我々注7にまず相談し、我々の
承認を得ずして許可を出してはならない。しかし、既に探索された土地においては、ここで行う許可をだすことを認める。そうして探索の済んだ土地へ入植を行った後、我々に
報告書を提出する。
【
第2条】
インデアスにおいて統治を行う者は、
宗教的にも
世俗的にも、自らの領地およびその周辺地区において、
探索、
平定すべき場所があるか、また
それは価値があることなのか、
どの様な国に
どのような民衆が住んでいるのかを
常に詳しく把握するよう務めなければならない。 ただし、決してそのために
兵員を派遣したり争いや騒動が起こるような手段をとってはならず、
最良の方法で情報を集めること。 同様に探索を進めるのに具合の良い人物を調べ、
原住民に危害を加えることなく、公正に遂行されたなら、
礼遇し
恩賞を与えるという
協定を結ぶ。
協定を結ぶ内容や調査内容については、それらを
実行に移す前に副王、アウデイエンシアに報告し、
インデアス諮問会議注8にも
提出する。そこで承認され、許可を得たうえで、以下の法に従って探索を実行すること出来る。
【
第3条】 隣地の探索を行うにあたっては、平穏で、
家臣のインディオの土地でもなく、適した場所があれば、我々の裁量によることが可能な隣接地の利便性の高いところに、
確実な方法によってスペイン街をまず設ける。
【
第4条】 その隣接地の入植した町から
取引、
物々交換を通じて、
土地の探索を行うために、家臣で現地語を話すインディオをまず派遣する。そして
修道士や
スペイン人を送り込み、
物々交換、
贈与、
親睦を通してその土地の
民の主観、
実体、
性質、そこに住む民族、なかでも
統治する者についての知識を得、理解に努める。
把握したすべてを記述し、常に報告書にまとめて総督に送り、総督はそれをインデアス諮問会議に送るものとする。
【
第5条】
インデオに損害を与えずに、スペイン人の入植が可能である地域を、観察する。
【
第6条】
海洋探索を行う場合は、以下に掲げる規定に従わねばならない。
許可あるいは我々の
準備金を得た者は
海洋探索に出なければならない。その際小形の軍船あるいはカラベル船
注9あるいは
容積70トンを越えない船舶で、湾内航行や湾岸航行、河川や河口の航行も可能で
浅瀬の問題がないものをすくなくとも
2艘要する。
【
第7条】 前述の船舶は
、常に2艘で航行せねばならない、なぜなら、1艘が2艘目を援助することが出来、片方が故障した場合はもう片方の船に収容出来るからである。
【
第8条】 前述した規模の船の船員数は、
1艘につき船員をあわせて30人とする。
食料不足に備えてそれより多くはなってはならず、かつ操船をしっかりするためにそれ
以下でもいけない。
【
第9条】 船1艘につき
操縦士2名 、可能であれば
司祭あるいは
修道士2名を登場させ改宗に従事させる。
【
第10条】 船舶には、出発の日から
最低12ヶ月分の食料を積み込む。また、ろうそく、アンカー、引き綱、その他の漁具、艤装品を調達し、
2艘航行する。【】
【
第11条】 船で到着した土地のインデオたちと取引を行うために、
あまり価値のない商品を船に積んでおく。例えば、はさみ、櫛、刃物、斧、釣り針、色帽子、鏡、鈴、ガラスビーズ、そのた同じような価値のもの。
【
第12条】 前述の船や操縦士や水兵たちは、
常に船の位置を測定し、航路や潮流、風向き、増水、
飲料水補給基地、年間を通じて季節を注意深く観察しながら進む。 礁や浅瀬では推進調査を
手で行い、発見したもの、水面下の地形、島、沿岸の地形、河川、港、入江、小さな港に出くわした場合は
形状を良く観察し書き留める。 その
航海日誌はそれぞれの船が持ち、常に全ての記録内容についてそれがあった海抜、位置を互いの船で確認しあい、日時を書き留める。
互いの調査結果に違いが生じた場合に、可能ならどちらが事実であるのかを究明し、結果を統一させることが目的である。それが無理な場合は、最初の記録をそのまま残しておかねばならない。
【
第13条】 水陸とも探索に出た者は、辿り着いた土地では、その地方、地区すべての土地を
我々の名の下に所有する。そして公衆の面前で、信頼を呼ぶ形で、必用な
儀式や
聖史演劇を行い、
信仰と誓いをたてる。
【
第14条】
探索に出た者は、発見した土地やその地方、その地の主要な山河、その地にあるいは自ら築いた村や町に
名前を付けなければならない。
【
第15条】 探索者はどの土地に行くにも、
通訳のため何人かのインディオを最も相応しいと思われる所から
連れて行く。 あちこちの土地を探検しに地方へ行った場合もそのようにすればよいが、
とにかく通訳は厚遇する。彼らの言葉を介して、あるいは出来る限りの手段によって
現地の人々と会話し、その土地の習慣や会話、人々の生活を理解するように務める。またその
土地の宗教、彼らが崇める
偶像、どのような
供犠、崇拝方法があるのか、
文書になった
教理や
流儀があるのかどうか、どのように
統治、
支配しているのか、
王は存在するのか、またそれは
選挙なのかあるいは
世襲によって選ばれるのか、
協和政体として統治されているのかあるいは血統によるものか、どういう
収入源や
税収があるのか、またそれはどの様に誰に対してなのか、その土地で
何が最も貴重とされているのか、また彼らが高く評価するもののうち何がその土地で作られ、何が他の土地から仕入れられているものかなかを調べること。たとえば
金属は採れるのか、どんな質の金属なのか、
スパイス類あるいは
薬品や
芳香性のものはあるのかを調べる。 そのために
コショウ、
クローブ、
シナモン、
生姜、
ナツメグなど幾種類かのスパイスを用意し、彼らに
見せたりそれらを知っているかどうかだ
尋ねる。同様に、我が国で高く評価される類の石などはあるかどうか、そその土地の
家畜や
野生動物の性質、
栽培植物、
樹木および自然のものの質、そしてそれらによって利益を生じるのかどうか、といったことを調査しなければならない。そして記述を残したものは全て
それがなんであるのか把握していなければならない。
【第16条】 入植地にある食料を把握しておき、そのうち味の良いものは遠征時に備える。
【第17条】 人々が外部の人間になれており、それでいて彼らの中に何か宗教的なものがあるために我々による宗教や良好な習慣の値付けを無駄だと考える者がいる場合には、そのままにし、1年若しくはできればそれまでに再びその地に戻ってくることを約束する。
【第18条】探索者は、どのような理由があっても探索地内に留まってはならず、食料が底を突くのを待ち受けてはいけない。出
発時の蓄えの半分を消費した時点で
帰路につき、調査した事、発見したこと、関わりをもった人々について把握していること、情報があればその他近辺の人々に関しても見聞したことを報告する。
【第19条】 海からの探索にあっては、前に挙げた運搬品を積んだ船舶で多量に搭載した船がある場合は、まず注意して沿岸航行し安全は港を探し、そこに船をかくまう。そこから小さいほうの船舶で別の安全な港がみつかるまで沿岸航行で探索、測深しながら進む。
そうして戻って大きいほうの船を安全な箇所を通って移動させる。さらに同じように次の安全な港を見つけて前進する。
【第20条】
水陸ともに探索を行う者は、いかなる場合も
戦争を引き起こしたり、征服をおこなったりしてはならない。また
対立しあう、インディオ衆の一方を味方したりしてはならず、
彼ら同士の問題や小競り合いに介入してはならない。またいかなる理由があっても
彼らに危害を加えてはならない。ぶつぶつ交換あるいは彼ら自らの行為による場合を除き、彼らの意に反して
所有物を取ってはならない。
【第21条】 探索、視察を終えた者は帰ってから派遣された、アウデイエンシア及び総督への報告を行わなければならない。
【第22条】 海においても陸においても探索者は見たもの調査したこと、起こったことすべてに関して日毎に記入後にその探索に関する内容をすべて人前で読み上げる。 何人かの主要な人物の著名を求め、そうして
書かれた内容の信憑性を高める。その記録誌は
安全に保管し、戻った時に探索の認可を受けたアウデイエンシアに提出せねばならない。
【第23条】 海および陸地におけるいかなる探索を行った者でも、戻ってから何を発見したのか、何を行ったのかをアウデイエンシアに届け出、それらを全てを完璧で十分な報告書にもとめたものをインデアス諮問会議に送る。 そうして報告書を見て、主にイエスおよび我々にとってそれらが有益かどうか、探索者に探索した土地への入植を委託するかどうか、それまでの仕事や出費に相応し謝金を与えるかどうか、あらかじめ取り決められた内容が遂行されたかどうかを審議する。
【第24条】海、陸地を探索する者は、
インデイオを連れて帰ってはいけない。彼らから
奴隷として売るという申し出や
同伴したいという希望があっても、
それがいかなる状況であっても許されない。違犯した者には
死刑を科す。ただし、現地語通訳のための3〜4名までは例外とするが、
彼らを厚遇し、その奉仕に対しては
報酬を与えねばならない。
【第25条】 すべてはインデアスを探索するという我々の
強い熱意や願望による探検なのであり、それはまた、
キリスト教の福音書を広め、原住民が我々のキリスト教信仰に理解を示すよう行うものである。そのような敬虔な目的を掲げた事業に対しては、国庫よりその費用を支出する。しかし、これまでの報告を注意してみると多
額の資金を費やしたものや十分に
注意深い探索が行われていなかったり、
手続きが不足していたりする。目的を達成するための王室財源の有効活用から逸脱してまで職務を遂行しようとするのなら、探索、入植は王室財源の負担で行わない。また総督府も、国の出費でそれらを実行できる特別な
権限が与えられていない場合は、たとえ探索、探検に関する我々の代理権や指示を受けていてもそれらの
出費を負担してはならない。
【第26条】 インデアスに渡ることが許される教団の
修道士で、神に仕えるために土地を探索しキ
リスト教の福音を流布したいという意志をもつ者は、
他の者に先立ってインデアス探索を行う。またそのための許可も与えものとし、その申し分ない任務に必用なもの全てを我々の
出費のもとに
援助供給する。
【第27条】 探索の任務を負う者は、キリスト教で認められたもので
神の栄光をたたえる熱心で良心のある者であること。 また
平和を愛する者で、
インデオに危害を一切加えることなく彼らがまったく満足するような方法で改宗を行う者であること。善と美徳によって我々の希望および自らの勤めを果たすようう信心と節度をもって努める。
【第28条】 我々の王国に属さない外国人やインデアス入国許可されていない者は探索の任務を追うことは出来ない。また、そのような者を連れて行ってはならない。
【第29条】
探索の任務を果たしても称号や名声を与えたりはしない。それは平和と善意による探索を我々は望むのであって、名を上げることが、インデオに強要したり、損害を与えたりする機会を与えたり、その口実になることのないようにするためである。
【第30条】探索者は本書の法令、特にインデオの利益に関する法令や彼らに関する特別な指示を尊厳すること。 これらは探索する土地や地方の性質に相応しくなるよう解釈すること
【第31条】 他の者が探索を行った場所やこれから探索される事になっている所では、いかなる探索者も探索や入植をしにその地に入ってはならない。
探索者の間で境界線にかんして疑問や認識に違いがある場合は、両者とも当該地の探索や入植をとり止め、当該地を管轄するアウデイエンシアに報告する。 そしてどのアウデイエンシアに該当するかが不明な場合や異なったアウデイエンシアにまたがっている場合には、双方のアウデイエンシアおよびインデアス諮問会議に報告する。 それらの
アウデイエンシア間で合意が得られるまでは、探索および入植を進行させてはならず、(インデアス)諮問会議、またはアウデイエンシアによる決定事項を遵守しなければならない。さもなければ
死刑および
財産没収が科せられる。
・・・・
【第148条】まであります 日々追加しアップ予定
注釈
1)西語でVirry。 スペイン国王の副王の役職 スペイン植民地統治において、代理国王である副王を任命し植民地を統治する副王制を設置した。
2)西語でPresidente アウデイエンシアの長官の役職
3) アウデイエンシアとは、元々はスペイン・カステイーリヤ国王の王立大審問院であり、
司法関係の最高機関であった。 新大陸に設置されると、
司法、
行政、
立法、機能も果たす機関となり、植民地の重要な主室機関として、
副王と並ぶ権限をもった。
長官と1名とオイドール(
聴訴官)数名を重要官吏とした。
管轄区域の控訴審を担当し、司法上は
スペインのインデイアス諮問会議に従属した機関である。
サント・ドミンゴ(1538)、メキシコ・シテイ(1528)パナマ(1538)リマとグアテマラ(ともに1542)、ムエバ・ガリシア(現メキシコ北部1548)サンタ・フェ・デ・ポゴダ(現ポゴダ)ベェノス・アイレス(1661)等に設置された。
副王同様
暫定的な地域立法も認められた。アウデイエンシアは、植民地において王室を代表する最高官職である
副王を補佐する諮問機関機能を持つと同時に、
副王の権力の絶対化を抑制する機能も備えていた。植民地における数々の統治機関のなかで
最も長く存続し、安定した機関であった。 (大貫良夫他監修「ラテン・アメリカを知る辞典」平凡社、1994、PP、19ー20参照)
4)Gobernador インデアス植民地における総督の役職
5)インデアスとは、スペイン人が探索、征服、入植、した地域をさす。現在の
西インド諸島、
南アメリカ、
北アメリカの一部のほか
フィリピン諸島も含む。従って
スペインの王とは
19世紀に植民地が独立するまでの
インデアスの王であり、その臣下であるインデオを
インデアス諮問会議という特別の機関を設置し統治した。
6) 原文にはこの章題はない。この勅令の表題がまず「探索、新入植、平定に関する勅令」となっていること、第二章、第三章に相当する箇所にそれぞれ「新入植」「平定」と章題が付されていることから、訳者の判断によりここに「探索」という第一章章題を付け加えた。
7)原文では幾つかの条文中において、本国スペイン王室、王国フェリーぺ2世を指す箇所で、「我々」という語がよく用いられている。
8) Consejo de Indiasu
インデアス諮問会議。1524年に設立された
新大陸統治のためのの最高審議機関。
9) カラベル船とは15〜16世紀にスペイン、ポルトガルで用いられた、3本マストの快速小形帆船をいう。
コロンブスが第1階航海において率いた
ラ・ビンタ号、
ラ・ニーシャ号もカラベル船であった。